著者
永島 広紀 藤岡 健太郎 久米 朋宣 六反田 あゆみ
出版者
九州大学
雑誌
国際共同研究加速基金(国際共同研究強化(B))
巻号頁・発行日
2019-10-07

本研究は、「演習林」を通じて学問領域を横断的に、かつ大学・部局をも横断的に、しかも最終的には、各「帝国大学」と「内/外地演習林」との関係史を考究することによって、大学と演習林」の史的な連環を繙く作業である。演習林は大学組織としては<準部局>的に存在し、また広大な敷地と研究・実習用標本、そして植林/伐採にまつわる現業部門をも有した重畳的な組織である。本研究は演習林のこうした組織的特性から、狭義の「大学史」では取り扱いづらい「大学史料アーカイヴ」「技術史/技術官僚論」「水環境と地域史」「山林生態学」「災害/災害予防学」という文理両系に跨る各領域を統合した、新たな研究の地平を開こうとするものである。
著者
桑木 共之 高橋 重成 森 泰生 大塚 曜一郎 柏谷 英樹 戌亥 啓一 陳 昌平 黒木 千晴 米満 亨 上村 裕一
出版者
鹿児島大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2013-04-01

Transient Receptor Potential (TRP)イオンチャネルの1つであるTRPA1チャネルが環境ガス中に含まれる低酸素および有害物質のセンサーとして働き、これらを体内に取り込んでしまう前に忌避行動、覚醒や呼吸変化を引き起こす早期警告系として役立っているのではないかという仮説を検証した。仮説は実証され、しかも鼻腔内の三叉神経に存在するTRPA1が重要であることが明らかになった。
著者
北野 慎一
出版者
金沢大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

漁業・漁村の多面的機能を発揮していると思われる日本国内の事例をピックアップし、一般市民の方が景観に対して持つ様々なイメージに基づいて、その類型化を試みた。空間的特性、歴史文化的特性から4類型が可能であることが明らかとなった。その類型から特に歴史文化的特性を持つ事例(岐阜長良川鵜飼)をピックアップし、経済評価を試みた。伝統漁法が創出するレクリエーション効果(価値)が確認された。
著者
水野 文月 大橋 順 熊谷 真彦
出版者
東邦大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

列島日本人の成立を考えるためには、弥生時代人(渡来系弥生人)とはどのような人たちであったのかを明らかにすること、特に、ゲノム情報からその遺伝的多様性を明らかにすることは不可欠である。しかし、これまで限定的な報告しかない。そこで本研究では、大陸から渡来した人たちが最初に移住したと考えられている北部九州ならびに山口西部地域の弥生時代の複数の遺跡から出土した渡来系弥生人(古人骨)のミトコンドリアゲノムならびに核ゲノムの分析をおこない、渡来系弥生人の遺伝的特徴を明らかにした。
著者
山口 典之
出版者
長崎大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

(a)雄の配偶者防衛行動は雌の受精期にあたる、産卵日の数日前にピークを迎える。雌は、喉部の赤い羽毛の面積が小さい雄(=遺伝的に優れていない)とつがった際に、雄による配偶者防衛行動からよく逃げ出し、つがい外配偶行動を求めることが明らかとなった。また、このような雌は実際に多くのつがい外子を残していた。しかし喉部の羽毛面積や雌の浮気強度は雄の配偶者防衛行動と関連が見られなかった。一方で、雌が積極的につがい外配偶を求めたつがいの巣では、雄が養育投資を削減することが明らかとなった。(b) 2つがいからホルモンを採取し、変動を調べたところ、受精期前に高いレベルを示していたテストステロンレベルが、初卵日の数日前をピークに減少することが明らかとなった。配偶者防衛行動などの行動と関連することが示唆された。
著者
進藤 宗洋 池田 正春 黒岩 中 清永 明 田中 宏暁
出版者
福岡大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1995

高齢者を対象に、適度な運動習慣が免疫機能に及ぼす影響を、以下の視点から検討し知見を得た。1.中高齢者の非特異的免疫能に対する定量的運動の影響:運動習慣のない健常な高齢者を対象にして、ザイモザン刺激に反応した好中球の活性酸素(ROS)産生能は80%LTとLTの軽強度長時間有酸素性運動によってのみ一過性に高められる可能性が示唆された。次に、LTとほぼ同等である50%V02max強度のトレーニングを定期的に継続している高齢者と運動習慣のない高齢者を対象にして、安静時とLT強度で1時間の一過性の運動を負荷して、運動中と運動終了直後、運動終了1時間後のROS産生能を検討し、この軽強度の有酸素性運動の長期間継続が高齢者の非特異的免疫能を高め得る可能性を明らかにした。次に、健常高齢者を対象に縦断的研究を行ったところ、トレーニング効果はLT強度で1回1時間、週3回の頻度では5週間以上で有酸素性作業能を、10週間以上では非特異的免疫機構の中心を担う好中球の機能を十分に高め得る可能性が示唆された。2.中高齢者の習慣的運動がT,Bリンパ球およびNK細胞におよぼす影響:若年(20-39才)、中年(40-59才)、高齢(60才以上)の年代でジョギングやサイクリング、テニス、水泳など運動習慣を持つ運動群と持っていない非運動群のリンパ球サブセットと好中球のROS産生能及び貪食能を測定比較した結果、自然免疫については、NK細胞の割合は年齢によっても運動習慣によっても変わらないが、好中球のROS産生能及び貪食能は高齢非運動群に比べて高齢運動群の方が高かった。3.中高齢者のストレスと免疫能〜若年者および運動群非運動群での比較:ストレスで起きる免疫能への悪影響も防ぐ可能性を、2と同じ対象についてSTAI心理テストによるストレスレベルとリンパ球サブセットを測定し検討した。適度な運動はストレスを軽減し免疫機能を改善する可能性が示唆された。
著者
戸井 和彦
出版者
愛媛県新居浜市立角野小学校
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2012

「コンパニオンプランツ」とは、異なる種類の植物を植えることで、相互に成長を促進し合える作物種の組み合わせのことである。農薬や肥料を削減する取り組みとしても、農業において大変注目されている技術である。特に家庭菜園など小規模栽培において積極的に導入されており、学校教育の場においても導入可能な方法である。しかしながらWebサイト等で学校でのコンパニオンプランツの取組を調べてみたが、ほとんど例は見つからなかった。学校花壇は、ヒマワリやアサガオなどほとんど単一植物の栽培である。コンパニオンプランツは、農家や家庭菜園では浸透しているが、学校では全然行われていない。理科専門の教育者でさえ初めて知ったという人もいた。本研究では、農業現場の技術を取り入れたり、環境に優しい栽培方法を実践したりしていくという意味でぜひ、学校教育の場に導入したいと考え、その基盤作りとしてコンパニオンプランツを実施することことにした。それぞれ、単独で植えた場合と、コンパニオンプランツをした場合とを比較した。どのような結果が得られるか子どもたちと予想し、楽しみと意欲を持って栽培させることができると考えられた。ここでは、子どもたちに「コンパニオンプランツ」という栽培方法について教え、実際に単一栽培をしたケースと対比させることで、その有効性に着目させたいと考えた。対象は小学校の4年生の児童とした。このような体験をもとに、作物栽培のあり方により興味、関心を持たせ、生物多様性を含めた作物相互の関連性に着目させることを意図した。主な例である。(1)ヒマワリとトウモロコシ(トウモロコシによる風よけ効果)(2)ヒマワリとダイズ(大豆による窒素固定(養分供給))(3)トマトとトウモロコシ(空間の有効利用)(4)アサガオとトウモロコシ(空間の有効利用)子どもたちは実験にいる作物の成長の違いに驚いていた。一人一人の記録を見てみると、よく分かった。実際に家庭でも試してみた子もいた。該当年度末に実施児童に対してアンケートを行った。結果は次の通りである。コンパニオンプランツで作物を育ててみたいですか。はい23人…よく成長する農薬や肥料が少ない面白そうだおいしいのが作れる家族に自慢したいいいえ4人・…時間がない収穫できないこともある家で場所がない分からない2人…あまり興味がない(1)ほとんどの児童は「コンパニオンプランツ」について、養分を補いあう場合などお互いの成長がよくなることに気づいたと言える。(2)本校が学級編成を1年ごとに行っているため、コンパニオンプランツについて気づかせ、教え、実際にその良さを実験によって確かめさせるのは期間が限定されており難しい。(3)教師が別に栽培をするなどして、ある程度、事前に並行して栽培をするなどし、肝心な所を観察させるなどの工夫やスキルが必要である。(4)小学校の栽培学習にコンパニオンプランツという農学的・生態学的な視点を導入することにより、マンネリ化している栽培活動を活性化していけるのではないかと考えられる。
著者
柴田 弘紀 千々岩 崇仁 服部 正策 熊澤 慶伯
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

国内産ハブ3種(ハブ、トカラハブ、サキシマハブ)の遺伝的集団構造を詳細に検討するため、12の島から計44検体を収集し、ミトゲノム配列の決定を行った。最尤系統樹を構築したところ、ハブは沖縄クレードと現在のトカラハブを含む奄美クレードの間で大きく遺伝的に分化していた。また、トカラハブを独立種とする従来の考え方は、ミトゲノムデータからは支持されなかった。また奄美クレードと沖縄クレードの分岐年代は、600万年以上前と推定され、奄美群島と沖縄諸島の地理的な分断(150万年前)よりも古かった。さらに、沖縄クレードに比べて、奄美クレード内では遺伝的多様性が高く、島嶼集団ごとの遺伝的分化が顕著であった。
著者
齋藤 茂
出版者
生理学研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2019-04-01

生息環境に応じた温度感覚の進化な変化とその分子メカニズムを解明するために、異なる温度環境に適応した両生類(カエル)を対象にした研究を行う。幼生(オタマジャクシ)が冷涼な環境で生育する種、温暖な環境で生育する種、また、高い温度でも生育できる種を用いた比較解析を行う。生息地において温度の経時的な測定を行い、各種の幼生が自然環境下で経験する温度を調べる。また、実験室にて幼生の温度応答行動を観察し、温度耐性や温度選択性に種間で差が生じているかを検討する。次に、温度感覚のセンサー分子の機能特性を比較し、温度感覚の進化的変化が環境適応に果たした役割およびその分子メカニズムを解明することを目指す。
著者
齋藤 政彦 山田 泰彦 太田 泰広 望月 拓郎 吉岡 康太 Rossman W.F 野海 正俊 大仁田 義裕 三井 健太郎 佐野 太郎 小池 達也
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2017-05-31

本年度は、代数曲線上定義された放物接続や放物Higgs束のモジュライ空間の代数幾何学的構造の研究を継続して行った。また、付随するリーマン・ヒルベルト対応の幾何学、モノドロミー保存変形の微分方程式のパンルヴェ性などについても研究を行った。特に、現在残された一般の分岐的不確定特異点を持つ場合のモジュライ問題の設定、モジュライ空間の構成、次元公式、非特異性、シンプレクテック構造などについては、稲場がすでにプレプリント「Moduli Spacs of irregular singular parbolic connections of generic ramified type on a smooth projctive curve」において、肯定的な解答を得ている。また、確定特異点でスペクトル型を固定したときのモジュライ空間の構成、モノドロミー保存変形に関わる方程式のパンルヴェ性の証明についての論文を出版する予定である。岩木・小池は位相的漸化式とWKB解析の関係において、具体例による研究を進め、新しい例を構成しつつある。名古屋は、第6q差分パンルヴェ方程式のタウ関数がq共形ブロックでフーリエ展開で得られるという結果を得て、論文を発表した。また、この分野の国際研究集会を11月に神戸大学で開催した。望月は、円周と複素直線上の特異モノポールについて、色々な角度から研究し、新たな結果を得た。大仁田は、微分幾何学と可積分系の関係、特に調和写像の分類問題を研究した。山田は、多変数モノドロミー保存変形について、パンルヴェ方程式の退化や、パデ法の応用研究を行った。入谷はトーリック軌道体の標準類を保たない双有理変形の下での量子コホモロジーD加群の変化を研究した。また高種数グロモフ・ウイッテンポテンシャルの保型性を調べた。細野は、カラビ・ヤウ多様体のミラー対称性について詳細な研究を行った。
著者
花村 克悟
出版者
岐阜大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

本研究は、多孔質体内部で燃焼熱を光や熱ふく射に変換し、熱光起電力電池(Thermophotovoltaic Cell : TPV Cell)によって発電する,新規なエネルギー変換システムを提案し,その熱効率や自立分散型発電システムとしての可能性について検討したものである.その構造は,断熱された30mm×30mmの流路内に厚さ10mmのセラミック多孔質体を流路中心に充填し,その両側に20mmの燃焼空間および石英多孔板(厚さ3mm,φ2.5mm×75孔,開口比35%)を1mm間隔で10枚づつ配置したものである.ここへ周期的に流動方向を反転させながら空気を供給し,流動方向に合わせて燃焼空間に燃料を供給し中央のセラミック多孔体を加熱する.この燃焼ガスは下流側の石英多孔質体を通過する際,顕熱が蓄熱されるので,温度低下を伴って排出される.流動方向が反転すると,この蓄熱された熱により空気が予熱された後,燃焼空間に流入する.この熱循環により,わずかな燃焼熱でセラミック多孔質体が1500K程度まで加熱される.数値計算によれば,燃焼熱の約70%がふく射エネルギーとして系外に取り出され,2.2μmまで電力に変換できるTPV電池により熱効率15%が期待される.また,試作した実験装置を用いて発電したところ,電池への入射ふく射エネルギー強度の非一様性であるとか,電力変換に有効な短波長成分が周囲の断熱材に吸収されることなどにより,トータル熱効率は0.2%に留まっているが,この装置で最高温度が目標の1500Kに達していることから,発展性が期待できることが明らかとなった.なお,このシステム内の加熱用として,直径5mmのミリサイズスワールバーナーも同時に開発し,このような微小サイズでは壁面での角運動量損失や熱損失の影響が大きく,スワール数1前後の最低な条件で利用する必要があることが明らかとなった.
著者
花村 克悟
出版者
東京工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

本研究は,加熱された表面近傍(光の波長程度)に生ずる近接場光をナノスケールの隙間(ナノギャップ)を介してGaSb系の熱光起電力電池(Thermophotovoltaic Cell : TPV Cell)へ導き電力を得る,ナノサイズ発電システムについて検討したものである.真空容器内にこの電池と鏡面研磨されたタングステンエミッター(放射体)を向い合わせ,両面をゴニオメーターで平行に保ちつつ,高精度マイクロメーターで接触するまで近づけた.8mm×2mmのエミッター面積に対して隙間が40μm以下となると,形態係数はほぼ1となり,隙間が10μm程度までは出力電力は一定となる.さらに隙間を狭くした場合,この領域では簡易マイクロスコープを用いて隙間を測定することができない.そこで,出力がゼロとなる接触した位置をゼロ点とすることを試みた.したがって,多少,この領域での隙間の精度が低い.出力がほぼゼロ,すなわちその位置において,外部負荷を変化させたときの電流-電圧特性曲線が得られない位置を隙間ゼロとすると,隙間が約2.5μmにおいて急激にエミッター温度が低下し,出力も低下した.さらに,隙間が1μmより小さくなるとエミッター温度が低下し続けるにもかかわらず,出力がいったん増大した.そこからわずかに近づけると出力は急激に低下し,そこでは外部負荷を変化させたときの電流-電圧特性曲線を得ることができなかった.これらのことから,隙間が2.5μm以下になると,電力には変換されない長波長域のふく射に対して近接場効果が顕著となり,熱移動が促進される.このため,加熱用のレーザー入力が一定条件では,エミッター温度が低下する.これに伴い,出力電力が低下する.隙間が1μmあるいは400〜500nm程度まで狭くなるとエミッター温度が低下するものの,電力に変換される波長のふく射の近接場効果が顕著となるため,出力が増大したものと考えられる.したがって,加熱面近傍に生ずる近接場光による,熱エネルギーから電力へのエネルギー変換の実現が示唆されたものと考えられる.
著者
花村 克悟 伊原 学
出版者
東京工業大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

本研究は、様々な熱源によって加熱された赤外線放射体表面近傍に生ずる近接場光領域に、真空ナノスケール隙間(ナノギャップ)を隔てて熱光起電力電池(Thermophotovoltaic Ce11;TPV Cell)を向かい合わせ設置し、その領域の高電界強度を利用することで高い発電密度を得ようとするものである娘まず、既存のTPV電池(フラウンホーファー研究所製)を用いて実験した。その表面には高ざ4μm、幅20岬の金電極が60μmのピッチで配置されている。そこで、接触を避けるためにタングステン放射体表面には溝が設けてある。長さ8mm、幅2mmの放射体表面を、高精度マイクロメーターにより近づけた場合、50μm以下の隙間では形態係数がほぼ1となり、それ以下に近づけても伝播成分の範囲では出力は増大しない。しかし、隙間が.1μm以下となると、短絡電流が4倍、開放電圧が1.4倍増大した。すなわち近接場効果により出力は5〜6倍に増大することが明確となった。さらに、この電極間隔を拡げる、あるいは、P型半導体内部に電極を埋め込んだ独自のGaSb系のTPV電池を、ロードロックチャンバーを接続した簡易薄膜装置により製作を試みた。n型GaSb系基盤上にp.型GaSb半導体をエピタキシャル成長させることに成功し、アンドープでありながら、p-n接合であることが確認でき、キャリア密度5.73×10^<17>cm^<-3>と.モビリティ1.35×10^2cm^2/Vsを得た。一方、GaSb系のTPV電池は、波長1.8μm以下の電磁波を電力に変換できるが、それより長い波長の電磁波を電力に変換できない。そこで、金属放射体表面にナノスケールのキャビテーを多数設け、光導波管の原理により放射光の波長選択を試みた。表面研磨されたNi表面の2mm×2mm'の領域に、縦横500nm四方、深さ500nmのキャビテーが幅250nmの壁を隔てて周期的的に作製されている表面を用意した。このサンプルを真空容器内に入れて裏面から炭酸ガスレーザーにより1052Kまで加熱した。分光測定の結果、波長が2μm以上ではNiの鏡面の放射率にほぼ等しく、それより波長が短くなると徐々に増大し、キャビテー幅が半波長に等しい波長1μmよりやや短い波長の放射率が0.95と極めて高くなることが明らかとなった。これらの組合せにより、選択波長近接場光を用いた新たなエネルギー変換が構築できることの手がかりを掴むことができた。
著者
花村 克悟 伊原 学
出版者
東京工業大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

鏡面研磨されたニッケル金属表面に製作された0.5μm×0.5μm×0.5μmのマイクロキャビティにより、遠方で計測される伝播成分について、このキャビティサイズに相当する空洞共振波長(0.89μm)近傍において放射率は0.95と高く、また、カットオフ波長1μm より長い波長では、鏡面放射率に等しいおよそ0.2程度であることが示され、波長が制御できることが明らかとなった。さらに、このマイクロキャビティ内部からの放射を、マックスウェル方程式を解くことで、近接場成分がキャビティ外部まで達していることが明らかとなり、擬似的な近接場光として検出できること、さらに伝播成分と同様にこのキャビティにより波長制御が可能であることを示唆した。そこで、この擬似近接場光強度とその波長選択性を明らかにするために"真空型近接場光学顕微システム"装置を独自に開発した。一方、分子線エピタキシャル装置を用いて、波長1.8μmまでの赤外線を電気に変換できるアンドープGaSb電池を作製した。そして、黒体炉を用いた等強度半球入射光による発電効率測定装置を独自に開発し、伝播成分による発電効率を明確にできることを示した。さらに1000Kに加熱された放射面と電池を真空容器内で数百ナノまで近づけることにより、伝播成分に比べて、開放電圧1.4倍、短絡電流4倍の出力が得られることを明らかにした。
著者
花村 克悟
出版者
東京工業大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

本研究において、熱エネルギーにより加熱されたタングステン製平滑面エミッター表面をGaSb製光電池に近づけることにより、通常の伝播光に比べて、エバネッセント波効果により、およそ4倍の発電密度となることが示された。さらに数値シミュレーションモデルを独自に開発し、対向するピラーアレイ構造表面において、ピラー間隙間の表面プラズモンがその深さ(ピラー高さ)により周波数制御できる(すなわちエバネッセント波の波長制御となる)ことを示した。
著者
花村 克悟 牧野 俊郎 宮崎 康次 高原 淳一 森本 賢一 若林 英信
出版者
東京工業大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究において、ピラーアレイ構造表面を対向させることにより、ピラー間隙間の表面プラズモン共鳴より波長制御輸送が可能となること、およびピラートップ面においてs偏光波となる電磁波はピラー側面おいてp偏光波となることから、長波長成分のエネルギー輸送はむしろ平滑面に比べて抑制されることが示された。また、スプリットリング共鳴器アレイ構造を利用した白熱電球により、電気から可視光への変換効率が通常の2倍となることが示された。
著者
春田 吉備彦
出版者
沖縄大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2018-04-01

研究目的のモチーフは、①排他的基地管理権、②間接雇用方式、③日米地位協定とMLCの関係をそれぞれ解明することである。2019年度の研究実績はつぎのものがある。(1)研究目的のモチーフのうち、とりわけ①の問題に焦点を当て、2018年12月18日に在日米軍横須賀基地内に停泊中の「空母ロナルド・レーガン」において実施された「日米合同訓練」の見聞記を執筆した。これが、春田吉備彦「Invisible baseworker(見えざる基地労働者)―ロナルド・レーガン乗船記―」『沖縄大学法経学部紀要第31号』(29頁~36頁)である。(2)日韓の国交が正常化していなかった、1956年に発生した、千代田丸事件をモチーフに「戦争災害(戦災)」「自然災害」 「労働災害(労災)」「NBC災害」 「CBRNE(シーバーン)災害」 「武力事態災害」 等の多様な災害概念を整理、労働者の労務給付拒絶権について試論を展開した。現在、基地労働者が直面している、「労務指揮権」の問題の基礎的考察としての位置づけをもつ、研究業績として、春田吉備彦「災害時の労働者の労務給付拒絶権にかかわる一試論―千代田丸事件最高裁判決(最三判小判昭和43.12.24民集22巻13号3050頁)の再読を通じて」大曽根寛/森田慎二郎/金川めぐみ/小西啓文編『福祉社会へのアプローチ 下巻』(成文堂)(353頁~366頁)がある。両業績とも、主として、日米地位協定上の①排他的基地管理権に関連する考察である。日本国内にありながら、米軍基地内の労働問題や米軍関係の労働問題は、可視化が難しいという特徴がある。両業績は、この点に着目している。
著者
中田 理恵子
出版者
奈良女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

葉酸が欠乏すると、ホモシステインからメチオニンへの代謝が阻害されて、血漿ホモシステイン濃度の上昇を引き起こすことが知られている。過剰なホモシステインは、血管内皮に損傷を与えて、動脈硬化性疾患の一因になることが注目されているが、その機構については十分に明らかにされていない。そこで、葉酸の欠乏により上昇したホモシステインが、血管の機能にどのような影響を与えるのかを検討するとともに、葉酸欠乏によるホモシステイン上昇の調節機構を、遺伝子レベルで明らかにすることを試みた。3週齢雄性ラットを2群に分け、葉酸欠乏食(葉酸フリー)と対照食(葉酸8mg/kg diet)各々自由摂取させた。実験食開始後4, 6, 8週目に血液,血管,肝臓を採取し、血漿と肝臓の葉酸量およびホモシステイン量を測定した。また、血漿中の一酸化窒素(NO)量を定量するとともに、血管中の血管内皮型NO合成酵素(eNOS)のたんぱく質量を測定した。さらに、肝臓にホモシステイン代謝酵素のmRNA量を測定した。血漿および肝臓中の葉酸量は、欠乏4週目から有意に減少した。一方、血漿と肝臓のホモシステイン量は有意に増加した。血管では、TBARS量の増加とグルタチオン量とビタミンC量の減少が見られた。血漿中のNO量は欠乏6週目から有意に低値を示し、eNOSたんぱく質量も減少していた。葉酸欠乏による血漿ホモシステインの上昇は、血管に酸化ストレスを与え、血管内皮の機能障害を誘導して、NO量の減少を起こすと考えられた。さらに、葉酸欠乏ラットの肝臓では、5,10-メチレンテトラヒドロ葉酸還元酵素(MTHFR),メチオニン合成酵素(MS),シスタチオニン-β-合成酵素(CBS)のmRNA量が、対照群に対して有意に減少しており、葉酸欠乏によるホモシステインの上昇は、MTHFR, MS, CBS各遺伝子の発現が減少することによって起こると考えられた。
著者
中屋 晴恵 武内 章記 石橋 純一郎
出版者
大阪市立大学
雑誌
挑戦的研究(萌芽)
巻号頁・発行日
2017-06-30

本研究はフィリピン海プレート収束域を対象として,有害元素である水銀の循環過程とプレートテクトニクスとの関連を明らかにすることを目的として行った。結果は以下の通りであった。1)水銀はマグマ性流体を含む深部流体を起源とする。火山のない地域では水銀は深部流体から気液分離した後に気体として上昇する。2)地下水の水銀汚染はプルーム状に出現する。出現地点は大阪平野とその周辺部では複数の活断層が交差するか,密集する地点である。地殻を切る活断層はマントルから上昇する気体の経路となっている。3)水銀は沈み込むスラブからの脱水に由来するかもしれないが,ウェッジマントルから流体に付加されている可能性は高い。