著者
友利 涼 二宮 崇 森 信介
出版者
一般社団法人 言語処理学会
雑誌
自然言語処理 (ISSN:13407619)
巻号頁・発行日
vol.24, no.5, pp.655-668, 2017-12-15 (Released:2018-03-15)
参考文献数
22

本稿では,将棋の解説文に対する固有表現を題材として,テキスト情報に加えて実世界情報を参照する固有表現認識を提案する.この題材での実世界情報は,固有表現認識の対象となる解説文が言及している将棋の局面である.局面は,盤面上の駒の配置と持ち駒であり,すべての可能な盤面状態がこれによって記述できる.提案手法では,まず各局面の情報をディープニューラルネットワークの学習方法の 1 つである stacked auto-encoder を用いて事前学習を行う.次に,事前学習の結果をテキスト情報と組み合わせて固有表現認識モデルを学習する.提案手法を評価するために,条件付き確率場による方法等との比較実験を行った.実験の結果,提案手法は他の手法よりも高い精度を示し,実世界情報を用いることにより固有表現認識の精度向上が可能であることが示された.
著者
荒井 弘和 中村 友浩 木内 敦詞 浦井 良太郎
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.46, no.7, pp.667-676, 2006-07-01 (Released:2017-08-01)
参考文献数
26
被引用文献数
4

本研究の目的は,主観的に評価された睡眠の質と,身体活動および心理的適応(不安・抑うつ)との関連を検討することであつた.本研究の対象者は,夜間部に通う大学1年生の男子186名であつた.測定尺度にはPittsburgh Sleep Quality Indexの日本語版(PSQI-J),身体活動評価表(PAAS),Hospital Anxiety and Depression Scale (HADS)日本語版を用いた.本研究は,横断的研究デザインであつた.相関分析の結果,運動や日常身体活動を行つていない者ほど,睡眠時間が長く,眠剤を使用していた.また,日常身体活動を行つている者ほど,睡眠困難や日中覚醒困難を感じていないことが明らかになった.次に,階層的重回帰分析を行つた結果,運動の実施はPSQI得点を予測していなかつたが,日常身体活動の実施は睡眠時間,睡眠効率,睡眠困難,および日中覚醒困難を予測することが明らかになつた.結論として,本研究は,身体活動が主観的な睡眠の質と部分的に関運することを支持した.
著者
鈴木 亘
出版者
美学会
雑誌
美学 (ISSN:05200962)
巻号頁・発行日
vol.68, no.2, pp.13, 2017 (Released:2019-01-02)

One of Jacques Rancière’s contributions to aesthetics is his re-reading of the history of aesthetics. Rancière refers to the regime that has identified art as “art” since the end of the 18th century as “the aesthetic regime of art.” Against the short divisions of art history by modernism or postmodernism, he seeks to describe the long term. For Rancière, ideas of “modernism” and “postmodernism” need critique because the two cannot treat general transformations in the aesthetic regime of art. We will explain how his thinking can renew the discourses of modernism and postmodernism. This essay first examines the pre-existing modernist and postmodernist thinking that Rancière criticizes. It then deals with his view of the history of art history by reading Le partage du sensible. This reading aims to emphasize the work’s originality with regard to modernist and postmodernist thinking. We finally investigate his analysis of political art in Malaise dans l’esthétique, whose arguments offer us a new point of view fot reconsidering contemporary political art. We conclude this essay by stating that Rancière recognizes the political effectiveness of the “mixtures” of the heterogeneous that fundamentally characterize the aesthetic regime.
著者
中川 拓也 井上 さゆり 横畑 泰志 佐々木 浩 青井 俊樹 織田 銑一
出版者
日本野生動物医学会
雑誌
日本野生動物医学会誌 (ISSN:13426133)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.13-20, 2012 (Released:2012-08-23)
参考文献数
42
被引用文献数
1 1

日本の中央部および西部で1982~2002年に収集された70頭のニホンイタチ(Mustela itatsi)および12頭のタイリクイタチ(M. sibirica)の寄生蠕虫類を調査した。吸虫1種(浅田棘口吸虫Isthmiophora hortensis(Asada, 1926)),線虫3種(日本顎口虫Gnathostoma nipponicum Yamaguti, 1941,Sobolyphyme baturini Petrow, 1930および腎虫 Dioctophyme renale(Goeze 1782))がそれぞれ岐阜および愛知県,兵庫県,石川および福井県および京都府,兵庫県産のニホンイタチから得られた。 鉤頭虫の1種,イタチ鉤頭虫 Centrorhynchus itatsinis Fukui, 1929が東京都および静岡,石川,福井,岐阜,三重,滋賀および鹿児島の各県産のニホンイタチおよび三重および滋賀県産のタイリクイタチから検出された。今回のS. baturiniの検出は,本種のニホンイタチからの,また中部および西日本からの初記録となった。他の種については新しい産地の報告となった。
著者
遠藤 薫
出版者
横断型基幹科学技術研究団体連合(横幹連合)
雑誌
横幹連合コンファレンス予稿集 第3回横幹連合コンファレンス
巻号頁・発行日
pp.72, 2009 (Released:2010-04-05)

This paper makes clear differences between the fads in former times and the internet fads mediated by social media today. Then, it points out that various fads or collective effervescences have been triggers of big social changes, or rather the triggers of social formation. Finally, it discusses that in today's world, which can be called as "inter-media" society because multi-layered media including social media are embedded, collective effervescences are easy to be caused.
著者
Shohei Higashiyama Masao Utiyama Eiichiro Sumita Masao Ideuchi Yoshiaki Oida Yohei Sakamoto Isaac Okada Yuji Matsumoto
出版者
The Association for Natural Language Processing
雑誌
自然言語処理 (ISSN:13407619)
巻号頁・発行日
vol.27, no.3, pp.499-530, 2020-09-15 (Released:2020-12-15)
参考文献数
54
被引用文献数
2

Although limited effort has been devoted to exploring neural models in Japanese word segmentation, much effort has been actively applied to Chinese word segmentation because of the ability to minimize effort in feature engineering. In this work, we propose a character-based neural model that makes joint use of word information useful for disambiguating word boundaries. For each character in a sentence, our model uses an attention mechanism to estimate the importance of multiple candidate words that contain the character. Experimental results show that learning attention to proper words leads to accurate segmentations and that our model achieves better performance than existing statistical and neural models on both in-domain and cross-domain Japanese word segmentation datasets.
著者
舘山 元春 坂井 真 須藤 充
出版者
日本育種学会
雑誌
育種学研究 (ISSN:13447629)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.1-7, 2005 (Released:2005-03-12)
参考文献数
23
被引用文献数
12 9

複数の低アミロース性母本に由来する系統を供試し,イネの食味に大きく影響する胚乳アミロース含有率の登熟気温による変動を調査した.日本の寒冷地域で作付けされている,「ミルキークイーン」(wx-mq保有),「彩」(du(t)保有),および「スノーパール」の低アミロース性母本に由来する育成系統と,「山形84号」(wx-y保有),「探系2031」,対照としてうるち品種の「つがるロマン」(Wx-b保有)を供試した.人工気象室,ガラス温室および自然条件を組み合わせ,低,中,高温の3つの温度条件で登熟させた時の胚乳アミロース含有率を測定した.「つがるロマン」のアミロース含有率の変動幅は12~23%(高温区~低温区)であり,登熟気温変動1 °C当たりのアミロース含有率の変動幅(Δ AM/ °C)は0.8~1.1%であった.これに対し「ミルキークイーン」由来の系統,ならびに「山形84号」のアミロース含有率の変動は「つがるロマン」より小さかった.一方,「スノーパール」の母本で「ミルキークイーン」や「山形84号」とは異なる Wx座の突然変異による「74wx2N-1」に由来する系統のアミロース含有率の変動は「つがるロマン」より大きく, Δ AM/°Cは「つがるロマン」の1.4~1.9倍であった.「探系2031」のアミロース含有率は,「つがるロマン」と他の低アミロース系統の中間であり, Δ AM/°Cは「つがるロマン」とほぼ等しかった.「ミルキークイーン」由来の系統あるいは「山形84号」と,「74wx2N-1」に由来する系統間に見られるアミロース含有率の温度による変動幅の差は,その保有する低アミロース性遺伝子の違いによる可能性が示唆された.
著者
中永 士師明
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.60, no.1, pp.81-85, 2009 (Released:2009-06-17)
参考文献数
9
被引用文献数
4 6

[目的]トリカブトの塊根を湿熱処理したブシ末は四肢・体幹の冷えや痛みに用いられる。疼痛性疾患に対して漢方エキス剤に加えてブシ末を処方し,治療効果と安全性について検討した。[対象と方法]修治ブシ末を247例(男性94例,女性153例)に処方(1.5‐8.0g/日)し,4週間後の効果を判定した。効果判定にはVisual Analog Scale(VAS)を用いた。投与前に比べて4週間後のVASが50%以下であれば著効,51‐75%であれば有効,76%以上もしくは4週間以内に処方を変更した場合は無効と判定した。[結果]ブシ末に関して著効102例,有効84例,無効61例で,著効と有効を合わせると75.3%であった。副作用は3例(舌のしびれ,膀胱絞扼感,全身浮腫)に認められた(1.2%)。[結語]今回の検討では重篤な副作用は認められず,疼痛疾患に対して高齢者に対するブシ末の有効性と安全性を確認しえた。
著者
福元 和真 川崎 洋 小野 晋太郎 子安 大士 池内 克史
出版者
東京大学生産技術研究所
雑誌
生産研究 (ISSN:0037105X)
巻号頁・発行日
vol.67, no.2, pp.105-111, 2015-03-01 (Released:2015-03-30)
参考文献数
10

近年,ドライブレコーダーなどの車載カメラの増加とWeb による画像や動画の共有サービスの一般化により,世界中の都市の風景画像や映像をインターネットから取得することが出来るようになってきた.これらの情報は,都市の三次元モデル生成への応用や,地図の頻繁な更新,あるいは景観シミュレーションへの応用が期待出来るが,そのためには撮影された位置の情報が必要となる.しかし,必ずしもこのような情報が付加されているとは限らない.そこで,このようなシーンの情報から撮影位置を同定する研究が盛んに行われているが,複数の都市の画像や映像の同定に成功した事例はほとんど知られていない.そこで,本論文では世界中の画像を対象として,大域的な位置推定を行うことを目標とし,その国ごとの識別をすることを目標にする.提案手法では,ストリートビュー画像から各都市の情報をランダムフォレストを用いて学習させ,撮影位置の不明な画像の撮影場所の推定を行う.実験では15 都市の画像を用いて検証を行った.
著者
奈良部 均
出版者
Japan Oil Chemists' Society
雑誌
油化学 (ISSN:18842003)
巻号頁・発行日
vol.41, no.9, pp.897-902, 1992-09-20 (Released:2009-10-16)
参考文献数
33
被引用文献数
1 3
著者
瀬川 昌也
出版者
一般社団法人 日本小児神経学会
雑誌
脳と発達 (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.170-180, 1989-03-01 (Released:2011-08-10)
参考文献数
76
被引用文献数
1

自閉症の睡眠・覚醒リズム障害の特徴から, 縫線核群の早期の障害が自閉症の主病因と考え神経回路を検索した.縫線核 (Rph) 群は脳幹, 橋の背側正中部に位置し, やや外側に位置する青斑核 (LC) 群とともに, 上位中枢に広汎かつ並列的に軸索を送り, おのおのの機能の制御に重要な役割をもつ.また, 黒質線条体および背側被蓋ドーパミン (DA) 神経系に抑制性支配をなし, また下行枝は脊髄運動系, 感覚系の調整に重要な役割を有している.Rph, LCとも乳児期早期に発達の臨界齢をもち, また, Rphは男性に易障害性が高い.Rphの早期障害は, LCの障害を伴い, 社会性の欠如, 同一性の保持, 優れた機械的記憶, 睡眠・覚醒リズム障害を, DA系の障害は幼児期初期より出現する多動, 常同運動をもたらし, パニックには, RphとLCに加えDA系神経系の異常が加わった状態として説明できる.反響言語は右半球優位の表現であり, これも早期のRph, LCの障害に起因する左右大脳半球の機能分化障害によると考えられる.利き手決定の遅れ, 人称の逆転も同様の機序による.乳児期の筋緊張低下, 這行障害はRphとLC下行枝の異常によるlocomotionの障害, 幼児期の上下肢協調運動障害は前頭葉徴候の存在とともにこれら神経核障害による前頭葉の機能障害が関与すると考えられる.この考えはこれらの症状に, 5-hydroxytryptophanおよび微量のL-dopaがそれぞれ奏効することから支持される.前者は幼児期早期でより有効, 後者は0.5mg/kg/dayの少量投与が有効であったことは, Rphの障害は早期に治療する必要性が, DA系障害は後シナプス過敏症による可能性が示唆された.