著者
平田 健 加藤 智栄 八木 隆治 林 雅太郎 河野 和明 瀬山 厚司 久我 貴之
出版者
Japan Surgical Association
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.66, no.4, pp.805-809, 2005-04-25 (Released:2009-01-22)
参考文献数
12

目的)手術切開創の創傷処置に閉鎖環境,消毒不要などの概念が導入され創傷処置が変わりつつある.当科ではフィルムドレッシングを導入し,従来のガーゼ処置と比較検討した.方法)胸腹部待機手術症例を対象とし,フィルム群 (F群)とガーゼ群 (G群)へ最小化法により振り分け,前向き研究を行った. F群では縫合直後にフィルムドレッシング材を貼付し抜糸まで交換せず経過観察した.創感染,コストなどについて検討した.結果) F群49症例,G群51症例.手術部位,手術時間,切開創の長さ,抜糸までの日数には差はなかった.切開創感染はF群で3例 (6.1%), G群で2例 (3.9%) で差はなかった (p=0.92). コストはF群 (255円)で, G群 (605円)に比し有意に低かった (p<0.001). 結論)フィルムドレッシングは切開創の管理,観察が容易で,創感染を増加せず,低コストであり,従来のカーゼ処置より有効であった.
著者
鈴木 和歌奈
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 日本文化人類学会第51回研究大会 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
pp.C01, 2017 (Released:2017-05-26)

近年、「Anthropocene(人新世)」というキーワードがグローバルに注目を集めつつある。とりわけ欧米では、アカデミック内外で環境保護や人間の経済活動をめぐる論争など新しいムーブメントが生じつつある。本パネルでは、これらの「人新世」をめぐるポリティクスを紹介するとともに、それが欧米の人類学に及ぼしている影響について批判的に検討する。その上で、日本の人類学からの応答の可能性について示唆したい。
著者
岡田 仁志 甲斐 司 前田 温子 瀬尾 明裕 尾崎 賢 坂上 貴光 横井 宏佳 宮原 茂
出版者
一般社団法人 日本フットケア学会
雑誌
日本フットケア学会雑誌 (ISSN:21877505)
巻号頁・発行日
vol.15, no.3, pp.124-129, 2017-09-30 (Released:2017-09-30)
参考文献数
23

【要旨】血液透析(HD)患者は動脈硬化症のリスクが健常人に比して高いとされている.足関節上腕血圧比 (ankle brachial pressure index:ABI) は動脈硬化症のスクリーニング検査として重要であるが,その 0.9 未満の症例において栄養障害と動脈硬化の関連した病態を有する症例の多いことが報告された.HD 患者 29 名を対象に ABI を測定し,geriatric nutritional risk index (GNRI) を含めた種々のパラメータとの関連について検討した.ABI は栄養指標の GNRI,Alb,body mass index (BMI)(τ=0.39,0.31,0.25)や糖尿病,WBC,CRP,LDL-C(τ=0.27,0.27,0.24,0.21)と相関を認めた.HD 患者において ABI は各種栄養指標との関連性を認め,特に GNRI と密接な関連があることが示唆された.各種栄養指標の中で,GNRI は ABI と最も強い相関を認め,GNRI が動脈硬化症の病態を反映する 1 つの指標となりうると考えられた.
著者
村上 源太郎 名越 利幸
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会研究会研究報告
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, pp.95-98, 2014

本研究室では奥羽山脈,雫石町上空,盛岡市上空に南北に伸びる波状雲を発見した.波状雲は,北西から吹く季節風が奥羽山脈の山越え気流となることで生じる定常状態にある雲である.お天気雨,風花,虹などの盛岡市でしばしば見られる気象現象の原因と考えられる波状雲は,盛岡市の気象を学ぶ上で重要な役割を担っていると考えられる.高橋(2012)は「学校気象台」動画データによる観測によって 2011 年の波状雲月別出現頻度をまとめた.北西の季節風が吹く冬に波状雲は頻繁に出現し,夏にはほとんど見られないことが分かった.本研究では 2012 年から 2014 年までの観測を行い,先行研究と同様の結果を得ることができた.また,今回の観測では南北に伸びる典型的な波状雲の他に岩手山を中心に弧を描くように形成する波状雲を発見した.これより波状雲の形成には奥羽山脈だけでなく岩手山も影響を及ぼしていることが考えられる.今後は気象条件との関係にだけでなく,地形効果との関係についても調べるため,シミュレーションソフトの利用や模型による再現を考えている.
著者
丹治 保典 宮永 一彦
出版者
東京工業大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2009

単一個体から採取した卵塊からウジ→蛹→成虫へと変態させ、それぞれの過程に於ける個体の腸内細菌叢を培養法及びPCR-DGGE法により解析した。6種の抗生物質を含むLB寒天培地上に、ウジ、蛹、成虫それぞれ12個体から分離した腸内細菌懸濁液を塗布し、抗生物質を含まないLB培地上と各抗生物質を含む培地上に形成されたコロニー数を比較することで、薬剤耐性化率を求めた。各変態の過程において高い割合で抗生物質耐性能を示した菌体が分離された。特にAmpicillin,Cefpodoxime,Kanamycinに対し耐性を示した菌体の割合が高く、ウジと蛹から分離した菌体叢の耐性化率はほぼ等しかった。一方、成虫から分離した腸内細菌叢は、使用した6種の抗生物質すべてに対し70%以上の高い耐性化率を示した。ウジと蛹から単離した菌体の染色体DNAを分離し、16SrRNAをコードするDNA領域のシーケンスを行ったところ、多くがProteus mirabilisと100%の相同性を示した。P.mirabilisは広く自然界に存在し、ヒトの腸管常在菌であり病院感染としての尿路感染を起因し、腎盂腎炎をもたらすことで知られている。P.mirabilisの各抗生物質に対する最小生育阻止濃度を測定したところ、極めて高い値を示した。また、多剤耐性化も進んでいた。一方、成虫腸内細菌叢からはS.saprobhyticus, S.cohniiなどのバクテリアに加え、C.tropicalisやI.orientalisなどの真菌類が単離された。人間にとって最も身近な存在であるイエバイから高頻度で多剤耐性菌が検出されたことから、これら多剤耐性菌がイエバエを介して広く伝播される可能性が強く示唆された。
著者
中田 理恵子 井上 裕康
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集 63回大会(2011年)
巻号頁・発行日
pp.215, 2011 (Released:2011-09-03)

【目的】生活習慣病の予防において、適度な習慣的運動の重要性が注目されているが、食事摂取とのバランスや相互作用については不明な部分が多く、分子レベルでの作用機構の解明は十分ではない。我々は、赤ワインに含まれるポリフェノール、レスベラトロールが生活習慣病の薬剤標的である核内受容体PPARを活性化すること、レスベラトロールを摂取したマウスで運動持久力が改善することを見出している。本研究では、レスベラトロール摂取によるPPARαを介した運動持久力改善効果の作用機構を検討するとともに、習慣的運動の効果についての検討を行った。【方法】PPARα欠損型(KO)および対照野生型(WT)雄性マウス(129系)に、レスベラトロール(0,0.4%)添加した普通食または高脂肪食を4週間摂取させた。期間中、週5日の運動を負荷する群としない群に分けて飼育を行った。飼育開始時と4週目に、トレッドミルを用いて運動持久力を測定した。飼育終了後には肝臓と筋肉を採取し、各種遺伝子の相対的発現量の変化を解析した。【結果】普通食群のWTでは、レスベラトロール摂取により肝臓でのPPARα依存的な遺伝子の発現誘導が認められた。習慣的な運動負荷を併用したWTでは、筋肉でのPPAR応答遺伝子群や持久力に関わる遺伝子の発現誘導が見られ、運動持久力の向上効果が認められた。しかしながら、KOあるいは高脂肪食を負荷したWTでは、この変化が消失した。以上より、レスベラトロールによる運動持久力改善効果にはPPARα活性化が寄与すること、筋肉におけるPPAR応答遺伝子の発現誘導には、レスベラトロールの摂取に加えて習慣的な運動負荷が必要で、その結果が運動持久力の向上につながること、運動持久力の改善には肝臓と筋肉の相互作用が関与する可能性があることが明らかとなった。
著者
京都帝國大學 [編]
出版者
京都帝國大學
巻号頁・発行日
1898
著者
西村 大志
出版者
国際交通安全学会
雑誌
IATSS review : 国際交通安全学会誌 (ISSN:03861104)
巻号頁・発行日
vol.33, no.3, pp.244-252, 2008-09-30
参考文献数
33
被引用文献数
1
著者
関 朋宏
出版者
日本化学会
雑誌
化学と工業
巻号頁・発行日
vol.68, no.3, pp.254-255, 2015-03

一部の有機結晶は,温度変化や紫外光の照射により結晶内部の分子配列が変化した際に,「ジャンプ」することがある。この現象は,一般に「Salient効果」と呼ばれ,各種エネルギーを瞬発的な動きに変換するアクチュエータへの応用に期待が持たれている。ごく最近までは,Salient効果を示す分子の報告は散発的であり,それらも現象論的な報告がほとんどを占めていた。このような状況下,2013年ごろからNaumovらの研究グループを中心に精力的な研究が展開されるようになった。その結果,結晶がジャンプする際に結晶内で起こる典型的な分子の配列変化およびそのメカニズムが明らかになってきた。本稿では,Salient効果に関する最近の研究動向を概論する。
著者
阿南 豊正 天野 いね 中川 致之
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品工業学会誌 (ISSN:00290394)
巻号頁・発行日
vol.28, no.2, pp.74-78, 1981-02-15 (Released:2010-01-20)
参考文献数
28
被引用文献数
2 5

緑茶(荒茶)を130℃で30分および160℃で30分加熱し,化学成分の変化を調べた結果,アミノ酸類,ビタミンC,遊離還元糖の減少が著しいのに対し,全窒素やカフェインはほとんど減少しないことが明らかとなった。次に,緑茶加熱中の成分変化に対する各成分の相互作用の影響を調べるため,テアニン,グルコース,(-)-エピカテキン,カフェインを各々組み合わせてセルロース粉末と混合し,130℃で30分および160℃で30分加熱し,各成分含量および熱水浸出液の吸光度を調べた結果,テアニンとグルコースの相互作用の影響が最も大きく,ついで(-)-エピカテキンとテアニンの相互作用の影響が若干認められた。
著者
徳田 功
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. IE, 画像工学
巻号頁・発行日
vol.112, no.189, 2012-08-20

音声生成は、大きく分けて、声帯振動による音源生成と声道による調音フィルタの二つからなっている.声道の音響特性が線形予測フィルタでよく近似できることから、音声生成は線形システムとして捉えられることが多い.ただし、音源を生成する声帯振動は強い非線形性をもち、条件によっては分数調波、準周期振動、カオス、そして分岐現象などがみられる.通常の音声分析では、音源とフィルタは独立と仮定されているが、歌声などの発声条件では、この独立性が失われ、音源と声道の間に非線形干渉が起こることも知られている.本発表では、音声生成の基礎から始めて、線形理論では説明のつかない音声の非線形現象について概観する.応用として、病理発声、歌声における声区の遷移、生物音響(手長サルの発声)における音源-フィルタ干渉について紹介する.
著者
伝宝 一樹
出版者
公益社団法人 日本表面真空学会
雑誌
表面と真空 (ISSN:24335835)
巻号頁・発行日
vol.62, no.6, pp.318-323, 2019-06-10 (Released:2019-06-10)
参考文献数
34
被引用文献数
3

We have successfully created a Direct Simulation Monte Carlo (DSMC) model on a commercial FEM software COMSOL Multiphysics (COMSOL). As far as we know, this is the first DSMC model developed on COMSOL. Since two particles as a colliding pair cannot be sampled simultaneously from the same population in the Particle-tracing module of COMSOL, a new inter-molecular collision scheme named “quasi-Nanbu scheme” has been introduced to the model. The results obtained for benchmark problems using the present DSMC model agree well with those from a theory and other DSMC codes.