著者
海老原 修
出版者
日本スポーツ社会学会
雑誌
スポーツ社会学研究 (ISSN:09192751)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.67-82, 2014-09-30 (Released:2016-07-02)
参考文献数
16

社会科学による質的なデータの数量化は主に同じ土俵上での相対的な重みづけを志向しており、変換されたダミー変数は説明変数であって被説明変数にはなりにくい。量的研究が質的現象を説明するのか、質的研究が量的現象を説明するのか。はたして、両者は対称的な位置づけなのか、もしかすると非対称ではないだろうか。このスタンスに基づき、体育・スポーツ研究領域で長い間、普遍的なデータを提供している内閣府「体力・スポーツに関する世論調査」に質的研究事例を、文部科学省「体力・運動能力調査報告書」に量的研究事例を求めて、それぞれの解釈と課題を提供した。 質的なデータが示す時系列分析は当事者のみならず社会の変容を理解する好材料を呈示する。一方で、量的データはウソをつくかもしれない。平均値の表示は作為的か不作為か判然としないが、体力低下がまやかしである可能性を教えてくれる。2人の得点が50点ならば平均値は50点であるが、2回目に1人が0点となってしまった。したがって平均点50を維持するには残る1人が100点を取らねばならない。3人の平均値が50点であるが、2回目には2人が0点となってしまったので、残る1人は150点を獲得しなければならない。平均点を表示する体力・運動能力の年次推移の背後には、運動やスポーツを行なったりやめたりする子どもたちの運動習慣の変動があり、運動実施状況別にたどると体力・運動能力そのものは不変である可能性が浮かび上がる。このような錯誤を指弾する姿勢は肉感的なフィールドワークによってかたちづくられる、ほんとかしらん、なぜなのかしらん、といった不思議の開陳である。聞き取りや参与観察、インタビューなど質的なアプローチが、研究対象にたいして多元的・多段階的な昆虫の複眼と単眼による量的な分析を刺激し続けている。
著者
長谷川 辰雄 土井 章男 松田 浩一
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告グラフィクスとCAD(CG) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2003, no.15, pp.13-18, 2003-02-14
参考文献数
2

本論文は,格子模様の網タイツや網目状のフィルムシートなどで物体を覆い,それを一般的なデジタルカメラで撮影し,ステレオ画像計測で3Dモデルを簡易的に構築するシステムを提案した.一般向けデジタルカメラは低価格で高解像度という特徴があるため,取り扱いが容易で画像処理精度を向上させることが可能である.格子模様の交差点をステレオ画像計測のマッチング点とし,2値化及び細線化によって交差点を抽出した.このとき,交差の角度が大きい箇所では,細線化によって歪みが生じるため,本論文では,それを修正するアルゴリズムを提案した.これらの処理によって,正確に抽出した交差点を元に,自動的に四角形ポリゴンの3Dモデルの構築が可能となり,また,ハードウェア構成が,デジタルカメラ,三脚,及びPCで構築できるため,システムの構築費が低価格で実現できた.The 3D object was covered with film sheet of grid, or the grid net, and it took pictures of that with the general digital still camera, and the system that the model 3D was built easily with stereophonic image measurement was developed. The digital still camera for the general purpose is high resolution in the low price. And that handling was easy, and it could improve image management precision. The crossing point of the grid pattern was the matching point of the stereophonic image measurement, and the crossing point was extracted by binarization and thinning. At this time, the distortion occurs by thinning in the point that angle big. This research developed the algorithm which corrected the distortion. This research built the model 3D of the quadrangle polygon automatically by the crossing extracted precisely. And, the construction cost of the system was a low price because hardware configuration could be built with the digital still camera and the tripod and the PC.
著者
田口 康大
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2009

本研究の目的は、人間と社会との関係についての分析を経ながら、これまでの基礎教育理論を批判的に再構築することにある。その際の分析の中心となるのは、1.人間は欲望や情動といった自己の非理性的側面とどう関わっていけるか、2.人間は他者の感情とどう関われるか、3.道徳と感情との関係、これら三つの問題である。具体的には、公的生活と私的生活との関係、自己と他者との関係において人間がいかに振舞い、振舞ってきたかについての考察である。常に変遷する人間の振舞いと、自己や他者、社会の意味合いについての変化についての考察は、今日の人間観及びそこからよってくる教育観を批判的に相対化することを可能とするとともに、歴史の変化を踏まえたいかなる教育理論の構築に貢献することが可能であると考える。以上のような目的の元、本年度は「折衷主義哲学」の思想史的変遷についての研究を重点的に行った。日本に限らず、世界的にも折衷主義哲学は軽視されてきたが、今日の社会状況下で、プラグマティックな側面をもつ折衷主義哲学は評価しなおされ始めている。目の前にいる他者とのコミュニケーションから始まる思考の重要視、抽象的な概念に自分を適合させるのではなく、実際のコミュニケーションの経験から得られた自己の見解の暫定的な保持の重要視、そのような他者との実践と経験を重んじる理論は、過度の抽象的思考に囚われ、他者なきナルシズム的な人格の増加の一途をたどっている社会状況、およびそれを背景とした教育の営みを再考するうえで示唆を与えうると考えられる。

1 0 0 0 京城彙報

出版者
京城府
巻号頁・発行日
no.232, 1941-03
著者
高橋 純一
出版者
京都産業大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

セイヨウミツバチの帰化による在来種ニホンミツバチの影響を調査した。野外での観察実験と人工授精法による種間交雑実験を行ったところ、交雑女王蜂は繁殖様式を雌性単為生殖へと変化していた。両種が生息している地域では、ニホンミツバチの遺伝的多様度は低かった。これらの結果から、ニホンミツバチは種間交雑により単為生殖を行うようになり、遺伝的多様性の低下の原因となっている可能性が示唆された。
著者
井口 隆
出版者
The Japan Landslide Society
雑誌
日本地すべり学会誌 (ISSN:13483986)
巻号頁・発行日
vol.42, no.5, pp.409-420, 2006-01-25 (Released:2010-06-28)
参考文献数
29
被引用文献数
5 8

火山体では多様な斜面変動が多く発生している。中でも岩屑なだれを伴う山体崩壊は最も悲惨な災害を引き起こす。火山体に発生する山体崩壊・岩屑なだれの特徴を明らかにするため, 日本列島における発生状況について可能な限り多くの事例を収集し検討した。その結果, 日本列島の第四紀火山のうち67火山において128件の発生事例が確認できた。これは日本列島に分布する火山のうち約4割に相当する。火山体における大規模崩壊-岩屑なだれの発生頻度は最近500年間では見ると60年に1回程度である。大部分の山体崩壊の規模は0.2km3より大きい。岩屑なだれは横方向へも広く拡散する特徴を有するため, 被災範囲が極めて広い。火山体において発生する山体崩壊-岩屑なだれの規模は他の地質地域と比べると大きく, しかも流動性があり, 発生頻度が高いなど他の地域で起こる大規模崩壊より危険度が大きい。およそ3分の1の岩屑なだれ堆積物において流れ山が確認できた。また65件の岩屑なだれの崩壊源の位置を推定したところ, 山体崩壊は火山体の山頂付近など山体上部で発生する傾向が見られる。約3分の2の岩屑なだれの崩壊源は確認できなかったことから, 山体崩壊の跡地は容易に開析されるか埋積されて不明瞭となる。岩屑なだれの流動性は他の土砂移動現象と比べて高く, その等価摩擦係数は (H/L) は0.2から0.08と極めて小さい。山体崩壊・岩屑なだれは第四紀火山において必ずしも特異な現象ではなく, 火山体の開析過程の1つである。特に円錐形の山体を持つ活火山では, 山体崩壊-岩屑なだれを多く発生させてきた。多数の火山を有する我国では今後も山体崩壊・岩屑なだれが発生する危険性を考慮しておく必要がある。
著者
山中 隆吉 西村 芳一
出版者
一般社団法人映像情報メディア学会
雑誌
テレビジョン学会技術報告 (ISSN:03864227)
巻号頁・発行日
vol.15, no.53, pp.25-30, 1991-09-27

日本テレビは, 世界陸上におけるホストブロードキャスターとして世界中の放送局に国際映像を送り出す責務を負うことになったが.今回ゴール延長線上に新開発のゴール判定カメラを設置し, ゴールした選手を瞬時に映像化し, 世界で初めてテレビ放映した.
著者
赤瀬 智子 嶋田 努 原沢 友紀子 赤瀬 朋秀 池谷 幸信 田代 眞一 油田 正樹
出版者
ライフサイエンス出版
雑誌
薬理と治療 = Basic pharmacology and therapeutics (ISSN:03863603)
巻号頁・発行日
vol.36, no.1, pp.39-48, 2008-01-01

「はじめに」近年先進国において増加しているMetS(内臓脂肪症候群)は動脈硬化性疾患(心筋梗塞や脳梗塞など)の危険性を高めるマルチプルリスクファクター症候群のことである. 動脈硬化性疾患は肥満症, 高血圧症, 高脂血症, 耐糖能異常, 高インスリン血症などの代謝性疾患が重なることによって発症頻度が増加するといわれている1). 日本では, MetSが強く疑われる者と予備群と考えられる者をあわせた割合は男女とも40歳以上でとくに多く, 40~74歳の男性2人に1人, 女性では5人に1人, 約1900万人がMetSおよびその予備軍であると推定され, 深刻な社会問題となっている2). 2005年4月に日本肥満学会, 日本動脈硬化学会, 日本糖尿病学会など8学会により, 日本におけるMetsの診断基準が定義された3). MetSの背景には, 食生活の欧米化により増加した肥満の存在がある. 肥満による内臓脂肪の増加がこの疾患に深く関与していることが明らかになっている4). In recent years the number of patients with metabolic syndrome (MetS) has been increasing in advanced countries, and the condition is now becoming a serious problem in Japan. In Sri Lanka, a perennial liana, Salacia reticulata (Kotala himbutu), has traditionally been used in Ayurveda (Ayurvedic medical care) for the treatment of diabetes (mellitus) and skin diseases. Some reports have recently shown that components of the plant's extracts have an inhibitory action against elevation of blood sugar, antiobesity actions, protective action on the liver, antioxidant actions, etc. In the present study, the effects of a mixture of Kotala himbutu aqueous extract and cyclodextrin (KH) were investigated on the various morbidities of MetS in animal models of MetS, TSOD mice. The animals were given, normal feed (MF) containing the powder of KH at concentrations 1% or 3%, for 8 weeks. Then, the body weight, amount of food intake and the serum insulin levels in the animals were measured. Determination of the serum biochemistry, X-ray computed tomography (CT) to determine the visceral and subcutaneous fat areas, measurement of blood pressure, the pain test and glucose tolerance test were also conducted. Significant inhibitions of weight gain and of visceral and subcutaneous fat accumulation were noted from the early stage of administration of KH. Serum biochemical examination revealed decreases in the blood sugar, T-Cho, LDL-Cho and HDL-Cho levels. The findings confirmed a significant beneficial effect of KH on impaired glucose tolerance, hypertension and peripheral neuropathy.
著者
黄 義浩 大久保 正 星野 良平 神垣 佳幸
出版者
特定非営利活動法人 日本心臓血管外科学会
雑誌
日本心臓血管外科学会雑誌 (ISSN:02851474)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.51-54, 2001

結合組織代謝異常症を伴う慢性A型解離性大動脈瘤3症例に対して, 一期的に Bentall 変法+上行弓部大動脈置換術を施行した. 症例は男性2人, 女性1人で, 年齢は37~48歳, Marfan 症候群が2例, cystic medial necrosis が1例であった. 全例大動脈弁輪拡張症 (AAE) と高度な大動脈弁閉鎖不全症 (AR) を有し, 大動脈基部および弓部の著明な拡大と広範な解離病変を認めた. とくに結合組織代謝異常を伴う解離性大動脈瘤では, 血管病変が広範で進行性であることが多く, 術後に新たな血管病変や弁疾患をきたす可能性も高いため, 早期拡大手術の考慮, 再手術の可能性をふまえた術式選択とともに術後の慎重な経過観察が重要であると思われる.
著者
三木 文雄 生野 善康 INOUE Eiji 村田 哲人 谷澤 伸一 坂元 一夫 田原 旭 斎藤 玲 富沢 磨須美 平賀 洋明 菊地 弘毅 山本 朝子 武部 和夫 中村 光男 宮沢 正 田村 豊一 遠藤 勝美 米田 政志 井戸 康夫 上原 修 岡本 勝博 相楽 衛男 滝島 任 井田 士朗 今野 淳 大泉 耕太郎 青沼 清一 渡辺 彰 佐藤 和男 林 泉 勝 正孝 奥井 津二 河合 美枝子 福井 俊夫 荒川 正昭 和田 光一 森本 隆夫 蒲沢 知子 武田 元 関根 理 薄田 芳丸 青木 信樹 宮原 正 斎藤 篤 嶋田 甚五郎 柴 孝也 池本 秀雄 渡辺 一功 小林 宏行 高村 研二 吉田 雅彦 真下 啓明 山根 至二 富 俊明 可部 順三郎 石橋 弘義 工藤 宏一郎 太田 健 谷本 普一 中谷 龍王 吉村 邦彦 中森 祥隆 蝶名林 直彦 中田 紘一郎 渡辺 健太郎 小山 優 飯島 福生 稲松 孝思 浦山 京子 東 冬彦 船津 雄三 藤森 一平 小林 芳夫 安達 正則 深谷 一太 大久保 隆男 伊藤 章 松本 裕 鈴木 淳一 吉池 保博 綿貫 裕司 小田切 繁樹 千場 純 鈴木 周雄 室橋 光宇 福田 勉 木内 充世 芦刈 靖彦 下方 薫 吉井 才司 高納 修 酒井 秀造 西脇 敬祐 竹浦 茂樹 岸本 広次 佐竹 辰夫 高木 健三 山木 健市 笹本 基秀 佐々木 智康 武内 俊彦 加藤 政仁 加藤 錠一 伊藤 剛 山本 俊幸 鈴木 幹三 山本 和英 足立 暁 大山 馨 鈴木 国功 大谷 信夫 早瀬 満 久世 文幸 辻野 弘之 稲葉 宣雄 池田 宣昭 松原 恒雄 牛田 伸一 網谷 良一 中西 通泰 大久保 滉 上田 良弘 成田 亘啓 澤木 政好 三笠 桂一 安永 幸二郎 米津 精文 飯田 夕 榊原 嘉彦 螺良 英郎 濱田 朝夫 福山 興一 福岡 正博 伊藤 正己 平尾 文男 小松 孝 前川 暢夫 西山 秀樹 鈴木 雄二郎 堀川 禎夫 田村 正和 副島 林造 二木 芳人 安達 倫文 中川 義久 角 優 栗村 統 佐々木 英夫 福原 弘文 森本 忠雄 澤江 義郎 岡田 薫 熊谷 幸雄 重松 信昭 相沢 久道 瀧井 昌英 大堂 孝文 品川 知明 原 耕平 斎藤 厚 広田 正毅 山口 恵三 河野 茂 古賀 宏延 渡辺 講一 藤田 紀代 植田 保子 河野 浩太 松本 慶蔵 永武 毅 力富 直人 那須 勝 後藤 純 後藤 陽一郎 重野 秀昭 田代 隆良
出版者
The Japanese Association for Infectious Diseases
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.61, no.8, pp.914-943, 1987
被引用文献数
2

Clavulanic acid (以下CVAと略す) とticarcillin (以下TIPCと略す) の1: 15の配合剤, BRL28500 (以下BRLと略す) の呼吸器感染症に対する有効性と安全性をpiperacillin (以下PIPCと略す) を対照薬剤として, welI-controlled studyひこより比較検討した.<BR>感染症状明確な15歳以上の慢性呼吸器感染症 (慢性気管支炎, びまん性汎細気管支炎, 感染を伴った気管支拡張症・肺気腫・肺線維症・気管支喘息など) およびその急性増悪, 細菌性肺炎, 肺化膿症を対象とし, BRLは1回1.6g (TIPC1.5g+CVA0.1g) 宛, PIPCは1回2.0g宛, いずれも1日2回, 原則として14日間点滴静注により投与し, 臨床効果, 症状改善度, 細菌学的効果, 副作用・臨床検査値異常化の有無, 有用性について両薬剤投与群間で比較を行い, 以下の成績を得た.<BR>1. 薬剤投与314例 (BRL投与161例, PIPC投与153例) 中, 45例を除外した269例 (BRL投与138例, PIPC投与131例) について有効性の解析を行い, 副作用は293例 (BRL投与148例, PIPC投与145例) について, 臨床検査値異常化は286例 (BRL投与141例, PIPC投与145例) について解析を実施した.<BR>2. 小委員会判定による臨床効果は, 全症例ではBRL投与群78.8%, PIPC投与群79.4%, 肺炎・肺化膿症症例ではBRL投与群 (79例) 82.1%, PIPC投与群 (73例) 79.5%, 慢性気道感染症症例ではBRL投与群 (59例) 74.6%, PIPC投与群 (58例) 79.3%の有効率で, いずれも両薬剤投与群間に有意差を認めなかった.<BR>3. 症状改善度は, 肺炎・肺化膿症症例では赤沈値の14日後の改善度に関してPIPC投与群よりBRL投与群がすぐれ, 慢性気道感染症症例では胸部ラ音, 白血球数, CRPの3日後の改善度に関してBRL投与群よりPIPC投与群がすぐれ, それぞれ両薬剤投与群間に有意差が認められた.<BR>4. 細菌学的効果はBRL投与群68例, PIPC投与群57例について検討を実施し, 全体の除菌率はBRL投与群75.0%, PIPC投与群71.9%と両薬剤投与群間に有意差は認められないが, Klebsiella spp. 感染症においては, BRL投与群の除菌率87.5%, PIPC投与群の除菌率16.7%と両薬剤群間に有意差が認められた. また, 起炎菌のPIPCに対する感受性をMIC50μg/ml以上と50μg/ml未満に層別すると, MIC50μg/ml未満の感性菌感染例ではBRL投与群の除菌率69.6%に対してPIPC投与群の除菌率94.7%とPIPCがすぐれる傾向がみられ, 一方, MIC50μg/ml以上の耐性菌感染例ではPIPC投与群の除菌率12.5%に対して, BRL投与群の除菌率は66.7%と高く, 両薬剤間に有意差が認められた.<BR>5. 副作用解析対象293例中, 何らかの自他覚的副作用の出現例はBRL投与群5例, PIPC投与群11例で, 両薬剤投与群間に有意差は認められなかった.<BR>6. 臨床検査値異常化解析対象286例中, 何らかの異常化が認められた症例は, BRL投与141例中45例 (31.9%), PIPC投与145例中28例 (19.3%) で, 両薬剤投与群間に有意差が認められた. 臨床検査項目別にみると, GPT上昇がBRL投与140例中26例 (18.6%), PIPC投与140例中14例 (10.0%), BUN上昇がBRL投与128例中0, PIPC投与127例中4例 (3.1%) と, それぞれ両薬剤投与群間での異常化率の差に有意傾向が認められた.<BR>7. 有効性と安全性を勘案して判定した有用性は, 全症例ではBRL投与群の有用率 (極めて有用+有用) 76.3%, PIPC投与群の有用率の74.8%, 肺炎・肺化膿症症例における有用率はBRL投与群81.0%, PIPC投与群75.3%, 慢性気道感染症症例における有用率はBRL投与群70.0%, PIPC投与群74.1%と, いずれも両薬剤投与群間に有意差は認められなかった.<BR>以上の成績より, BRL1日3.2gの投与はPIPC1日4gの投与と略同等の呼吸器感染症に対する有効性と安全性を示し, とくにβ-lactamase産生菌感染症に対しても有効性を示すことが確認され, BRLが呼吸器感染症の治療上有用性の高い薬剤であると考えられた.