著者
堅田 香緒里
出版者
福祉社会学会
雑誌
福祉社会学研究 (ISSN:13493337)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.117-134, 2019

<p> 1980 年代以降,現代福祉国家の多くでは「新自由主義的な」再編が進めら</p><p>れてきた.規制緩和と分権化を通して,様々な公的福祉サービスが民営化・市</p><p>場化されていったが,福祉の論理は一般に市場の論理とは相容れないため,福</p><p>祉サービスを市場経済のみにおいて十分に供給することは難しい.このため,</p><p>次第に福祉サービス供給の場として「準市場」が形成され,その受け皿として</p><p>NPO 等の市民福祉が積極的に活用されるようになった.また近年では,市民</p><p>福祉が,さらに「地域」の役割と利用者の「参加」を強調するような新たな政</p><p>策的動向と結びつけられながら「制度化」されつつある.</p><p> 生活困窮者支援の領域においても同様の傾向がみられる.その際,頻繁に用</p><p>いられるキーワードが「自立支援」であり,そうした支援の担い手として市民</p><p>福祉への期待がますます高まっているのである.本稿は,このことの含意に光</p><p>を当てるものである.そこでは,「市民福祉」の活用が公的責任の縮減と表裏</p><p>一体で進行していること,そして貧者への「再分配」(経済的給付)が切り縮</p><p>められる一方で,「自立支援」の拡充とともに経済給付を伴わない「承認」が</p><p>前景化しつつあり,両者が取引関係に置かれていることが論じられる.</p>
著者
笹川 恵美
出版者
日本国際保健医療学会
雑誌
国際保健医療 (ISSN:09176543)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.113-115, 2017-06-20 (Released:2017-07-14)
参考文献数
3
著者
沓掛 沙弥香
出版者
独立行政法人 日本貿易振興機構アジア経済研究所
雑誌
アフリカレポート (ISSN:09115552)
巻号頁・発行日
vol.59, pp.133-146, 2021-10-29 (Released:2021-10-29)
参考文献数
48

タンザニアでは、独立後のナショナリズムのなかで「国語」としてのスワヒリ語振興政策が取られたが、1970年代後半以降の深刻な経済危機を背景に言語政策議論は明確な指針を失い、以降影を潜めていた。しかし、2014年頃から再びスワヒリ語振興政策が打ち出されるようになり、その傾向は2015年11月に就任したマグフリ大統領率いる政権でいっそう顕著となる。ただし、独立後ナショナリズム期の言語政策の要であった教授用言語のスワヒリ語化は、マグフリ政権下のスワヒリ語振興政策には含まれなかった。本稿は、マグフリ大統領のスワヒリ語振興政策に関連するディスコースを分析することでその理由を考察し、同政策が、エリートと人々を分ける境界としての英語の特権性を維持し、「虐げられた人々」への庇護という文脈を包含して興っているものであることを明らかにする。
著者
佐々木 陽子 ササキ ヨウコ Yoko Sasaki
出版者
鹿児島国際大学福祉社会学部
雑誌
福祉社会学部論集 (ISSN:13466321)
巻号頁・発行日
vol.34, no.3, pp.1-14, 2015-12-01

本稿は、「棄老研究」を民俗学・法理学・文学・映像作品の4種のアプローチに分けて考察する。上記のアプローチのうち、文学的アプローチを中心に扱うが、文学に対時するものとして民俗学が位置づけられる。というのは文学作品では「棄老」を実在の習俗であるとの前提でストーリーを展開させているが、民俗学では「棄老」習俗は実在しないという解釈が定説となっている。たとえば、「埋め墓」と「詣り墓」を別々につくる「両墓制」などによって、「埋め墓」である洞窟や海辺付近から白骨化した遺体が見つかることがあり、あたかも「棄老」習俗が実在していたかのごとくに捉えられるが、それは過ちであるとしている。文学では戦後、深沢七郎・村田喜代子・佐藤友哉などにより「棄老」をテーマに作品が生み出され、老いそして死に至る人間存在の深淵が問いかけられている。本稿は「『棄老研究』の系譜」の前半部に位置づけられる。
著者
堂囿 俊彦
出版者
日本生命倫理学会
雑誌
生命倫理 (ISSN:13434063)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.55-63, 2018-08-01

<p> 「福祉」 (welfare) の概念は、生命をめぐる問いに対して一定の方向を指し示す、生命倫理学の基礎概念で ある。しかし福祉概念に関しては、①誰の福祉を保障するべきなのか、②どのようにすれば保障したことになるのか、いずれの問いについても充分に論じられてきたとは言えない。そこで本論文では、これら二つの問いを、福祉の根底にある「人間の尊厳」との関わりにもとづき検討した。具体的にとりあげたのは、マーサ・ヌスバウムと、その批判者であるエヴァ・フェダー・キテイの尊厳論である。考察の結果われわれは、二人の尊厳論を相補的にとらえる必要があるという結論に至った。尊厳を内在的価値と見なす点において、ヌスバウムの立場は支持される。しかし尊厳に関しては、ケイパビリティだけで捉えられるのではなく、ケアという関わりを通じて、個別的に判断される必要がある。その意味で、ケアと尊厳のつながりを重視するキテイの立場も、重要な洞察を含んでいる。</p>
著者
中塚 幹也
出版者
日本医事新報社
雑誌
日本医事新報 (ISSN:03859215)
巻号頁・発行日
no.4521, pp.60-64, 2010-12-18
被引用文献数
4
著者
石原 理
出版者
金原出版
雑誌
産婦人科の実際 (ISSN:05584728)
巻号頁・発行日
vol.54, no.7, pp.1067-1075, 2005-07
著者
須川 亜紀子 清水 知子 田中 東子 岩下 朋世 川村 覚文 筒井 晴香
出版者
横浜国立大学
雑誌
挑戦的研究(萌芽)
巻号頁・発行日
2017-06-30

本研究では「2.5次元文化」(マンガ、アニメ、ゲームなどの2次元の虚構世界を、人間の身体を通じて3次元の現実に顕在化する文化実践―2.5次元舞台、声優/キャラクターコンサート、コスプレ等)とファンの共同体構築に関する調査を行った。これまで①現実・虚構・情報世界を経験することによりファンは「生産消費者」としてコンテンツに参加し、大きな影響を与えていること、②ファンは、「推す、好き」という「嗜好」によって接続され、「親密な他者」として共同体間の自由移動をしながら「弱い紐帯」を生成していること、③キャラクターと演じ手の重なりやズレを楽しむ「ごっこ遊び」の快楽が生まれることが析出された。
著者
星 博幸
出版者
名古屋地学会
雑誌
名古屋地学 (ISSN:13450514)
巻号頁・発行日
vol.80, pp.31-34, 2018 (Released:2019-03-05)
参考文献数
15

6 0 0 0 OA TSL「飛翔」

著者
木原 和之
出版者
公益社団法人 計測自動制御学会
雑誌
計測と制御 (ISSN:04534662)
巻号頁・発行日
vol.37, no.11, pp.768-770, 1998-11-10 (Released:2009-11-26)
参考文献数
3
著者
加藤 慶
出版者
日本性教育協会
雑誌
日本=性研究会議会報
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.22-29, 2008-11
著者
高田 直樹
出版者
日本経営学会
雑誌
日本経営学会誌 (ISSN:18820271)
巻号頁・発行日
vol.45, pp.54-66, 2020 (Released:2021-09-01)
参考文献数
40

This paper aims to investigate the effect of deviant inventors on producing novel invention. So far, many studies have suggested the existence and merits of research and development activities without formal organizational support. However, with a few exceptions, the antecedent factors and effects of deviant behavior have not been sufficiently distinguished. Using data of patents applied by Nippon Telegraph and Telephone Corporation (NTT) we investigated the relationship between inventors “degree of deviation” and “novelty of invention”. As a result, we showed the inverted U-shape relation between inventors “degree of deviation” and “novelty of invention”. That is, outputs of inventors with moderate deviation are likely to be more novel than those of inventors with low/high deviations. On the other hand, inventors with a high degree of deviation are prone to produce rather incremental invention. This result can be interpreted as the problem of resource availability, which means that deviant inventors cannot enjoy the advantage which is able to gain in official projects. This finding contributes to the research stream on inventor’s deviance from two perspectives. The first is that this research indicates the importance of focusing on “the degree of deviation”. As suggested by previous studies, we should grasp various types of deviance behavior. Second is that this study may update our knowledge about the impact of inventor’s deviance. Although previous studies expect deviant inventors to be the source of technological breakthroughs, this study suggests the limitation on such arguments.