著者
花田 里欧子
出版者
社会言語科学会
雑誌
社会言語科学 (ISSN:13443909)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.54-69, 2016-09-30 (Released:2017-04-12)
参考文献数
22

本稿は,Gregory Batesonの思索を軸に,メタ・コミュニケーションを生の基準としてたどることで,本来的な原義を論じる.Ruesch & Bateson (1951)はメタ・コミュニケーション概念を「コミュニケーションについてのコミュニケーション(communication about communication)」と定義し,その後,異分野・多領域の研究者がこれを便利な概念として受容した.ところが,概念の定義は研究者によってまちまちとなり,無定義のまま多用されたため,概念の当初の意味や枠組み,その多義性については曖昧になり,概念の変容が生じた(Bavelas, 1995).本稿では,そもそもBatesonがメタ・コミュニケーションをどのように提唱し,展開してきたかについて,1946年3月第1回メイシー会議から1987年『天使のおそれ』までの間の歴史的ならびに理論的な足跡を通じて,明らかにする.
著者
国分 貴徳 金村 尚彦
出版者
公益社団法人 埼玉県理学療法士会
雑誌
理学療法 - 臨床・研究・教育 (ISSN:1880893X)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.9-15, 2015 (Released:2015-01-09)
参考文献数
10

情報が溢れ,各個人が思うままに私見を発信することが容易となっている現代においては,発信された情報を精査し知識として取り入れていく能力が求められている。理学療法領域に目を向けても,講習会や書籍,文献等を通じて種々様々な情報が発信されており,理学療法士各個人にはその情報の中から,科学的で再現性の高い情報を取捨選択し,臨床に応用していく能力が求められている。その上で,Peer Reviewを経て学会誌および科学誌等に掲載された論文については,一定以上の科学性および再現性が担保されており,その応用価値は非常に高い。一方でそういった情報を応用する際には,科学的視点,すなわちある程度までの研究に関する知識が必要となるが,この点が現状の理学療法領域における課題となっていると感じている。理学療法の臨床はApplied Scienceであるという観点に立脚し,種々多様な情報を精査し応用していく必要がある。それが可能となる程度までの科学的視点を理学療法士各個人が持つことで,理学療法実践における科学性が担保されるとともに,臨床能力の向上につながると考えている。
著者
山本 吉則 伊藤 正憲 嘉戸 直樹
出版者
関西理学療法学会
雑誌
関西理学療法 (ISSN:13469606)
巻号頁・発行日
vol.18, pp.25-29, 2018 (Released:2018-12-20)
参考文献数
7

This study examined the influence of posture change of hemiplegic stroke patients in their forward stepping motion. The results suggest that forward stepping motions differ in terms of joint motion, electromyogram pattern, and center of pressure owing to hip joint and tibial external rotation. This study introduces an intervention based on evaluation of the forward stepping motion.
著者
Kensuke Takabayashi Tomoyuki Hamada Toru Kubo Kotaro Iwatsu Tsutomu Ikeda Yohei Okada Tetsuhisa Kitamura Shouji Kitaguchi Takeshi Kimura Hiroaki Kitaoka Ryuji Nohara
出版者
The Japanese Circulation Society
雑誌
Circulation Journal (ISSN:13469843)
巻号頁・発行日
vol.87, no.4, pp.543-550, 2023-03-24 (Released:2023-03-24)
参考文献数
22
被引用文献数
1

Background: To predict mortality in patients with acute heart failure (AHF), we created and validated an internal clinical risk score, the KICKOFF score, which takes physical and social aspects, in addition to clinical aspects, into account. In this study, we validated the prediction model externally in a different geographic area.Methods and Results: There were 2 prospective multicenter cohorts (1,117 patients in Osaka Prefecture [KICKOFF registry]; 737 patients in Kochi Prefecture [Kochi YOSACOI study]) that had complete datasets for calculation of the KICKOFF score, which was developed by machine learning incorporating physical and social factors. The outcome measure was all-cause death over a 2-year period. Patients were separated into 3 groups: low risk (scores 0–6), moderate risk (scores 7–11), and high risk (scores 12–19). Kaplan-Meier curves clearly showed the score’s propensity to predict all-cause death, which rose independently in higher-risk groups (P<0.001) in both cohorts. After 2 years, the cumulative incidence of all-cause death was similar in the KICKOFF registry and Kochi YOSACOI study for the low-risk (4.4% vs. 5.3%, respectively), moderate-risk (25.3% vs. 22.3%, respectively), and high-risk (68.1% vs. 58.5%, respectively) groups.Conclusions: The unique prediction score may be used in different geographic areas in Japan. The score may help doctors estimate the risk of AHF mortality, and provide information for decisions regarding heart failure treatment.
著者
Shohei Kataoka Daigo Yagishita Kyoichiro Yazaki Miwa Kanai Shun Hasegawa Morio Shoda Junichi Yamaguchi
出版者
The Japanese Circulation Society
雑誌
Circulation Journal (ISSN:13469843)
巻号頁・発行日
pp.CJ-23-0058, (Released:2023-06-21)
参考文献数
26

Background: The association between the T-peak to T-end interval (Tp-e) and ventricular arrhythmia (VA) events in cardiac sarcoidosis (CS) is unknown. The purpose of this study was to investigate whether Tp-e was associated with VA events in CS patients with implantable cardioverter defibrillators (ICDs) or cardiac resynchronization therapy defibrillators (CRT-Ds).Methods and Results: We retrospectively studied 50 patients (16 men; mean [±SD] age 56.3±10.5 years) with CS and ICD/CRT-D. The maximum Tp-e in the precordial leads recorded by a 12-lead electrocardiogram after ICD/CRT-D implantation was evaluated. The clinical endpoint was defined as appropriate ICD therapy. During a median follow-up period of 85.0 months, 22 patients underwent appropriate therapy and 10 patients died. Kaplan-Meier analysis revealed that the probability of the clinical endpoint was 28.3% at 2 years and 35.3% at 4 years. The optimal cut-off value of the Tp-e for the prediction of the clinical endpoint was 91 ms, with a sensitivity of 72.7% and a specificity of 87.0% (area under the curve=0.81). Multivariate Cox regression analysis showed that Tp-e ≥91 ms (hazard ratio [HR] 5.10; 95% confidence interval [CI] 1.99–13.1; P<0.001) and a histological diagnosis of CS (HR 3.84; 95% CI 1.28–11.5; P=0.016) were significantly associated with the clinical endpoint.Conclusions: Tp-e ≥91 ms was a significant predictor of VA events in patients with CS and ICD/CRT-D.
著者
高柳 昌弘
出版者
日本マイクログラビティ応用学会
雑誌
日本マイクログラビティ応用学会誌 (ISSN:09153616)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.18, 2011-01-31 (Released:2021-01-21)
参考文献数
2

Japan Aerospace Exploration Agency (JAXA) has completed the construction of Japanese Experiment Module (JEM) or “KIBO”, i.e. the nickname of JEM, on orbit till 2009 after three times STS flights. The Exposed Facility of JEM (JEM-EF) is one of the most characteristic accommodations on ISS to provide an environment directly exposed to the outer space. JEMEF is expected to be suitable for experimental missions of a wide variety of field such as earth and space sciences and technological development. In this paper, JEM-EF and its payload are outlined, the interface between them and some significant constraints which must be taken into consideration on using JEM-EF are also discussed. Four missions now on JEM-EF and two being prepared for next utilization stage are introduced. I close this paper by the discussion of the strategies to make JEM-EF utilization be wider and more fruitful.
著者
神野 雄
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.26, no.2, pp.140-153, 2017-11-01 (Released:2017-11-04)
参考文献数
22
被引用文献数
1 1

本研究の目的は恋愛関係での葛藤時に予測される行動を測定する架空の浮気場面への予測行動尺度Anticipated Behavior Scale for Imaginary Infidelity (ABSII)の作成とその信頼性・妥当性の検討であった。ABSIIの浮気場面として恋人と第三者のデート場面を設定し,現在恋愛関係にある大学生112名に質問紙調査を行った。探索的・確認的因子分析の結果,想定通りABSIIは「攻撃志向」「沈黙志向」「別れ志向」「対話志向」「ライバル志向」の5因子構造を示した。ストレッサーへの認知的評価,ストレス反応,嫉妬深さ,投資モデルとの関連から妥当性を検討すると葛藤状況を重要視する傾向と「攻撃志向」「対話志向」の正の関連,「沈黙志向」の負の関連,ストレス反応と「攻撃志向」「別れ志向」の正の関連,全般的な嫉妬深さと「攻撃志向」「ライバル志向」の正の関連,関係満足感と「対話志向」の正の関連,「別れ志向」との負の関連などが示され,尺度の構成概念的妥当性がおおむね確認された。
著者
三谷 はるよ
出版者
日本家族社会学会
雑誌
家族社会学研究 (ISSN:0916328X)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.7-19, 2020-04-30 (Released:2021-05-11)
参考文献数
31
被引用文献数
1 1

本稿は,育児期の孤独感を軽減するサポート・ネットワークを検討する.育児期のサポート・ネットワークとwell-beingの関係を捉える先行研究の多くは,クロスセクションデータに依拠し,女性のみを研究対象とし,公的サポートよりも私的サポートに注目するものだった.そこで本稿ではパネルデータを用いて,私的・公的サポートの両方を含むどのようなサポート・ネットワークが育児期の男女の孤独感を軽減するのかを検討した.その結果,精神的・手段的に頼りになる夫や精神的に支えてくれる友人から成るサポート・ネットワークが,母親の孤独感を軽減する傾向が示された.また,精神的に支えてくれる妻やつどいの広場・育児サークルから成るサポート・ネットワークが,父親の孤独感を軽減する傾向も示された.本稿は,父親が父親同士の関係や父子関係を深められる場が父親のwell-beingを良好にすることを示唆する.
著者
稲留 陽尉 山本 智子
出版者
一般社団法人 日本生態学会
雑誌
保全生態学研究 (ISSN:13424327)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.63-71, 2012-05-30 (Released:2018-01-01)
参考文献数
27
被引用文献数
2

タナゴ類は、コイ科タナゴ亜科に属する魚類で、繁殖を行う際に二枚貝を産卵床として利用することが最大の特徴である。鹿児島県には、アブラボテTanakia limbata、ヤリタナゴT. lanceolata、タイリクバラタナゴRhodeus ocellatus ocellatus 3種のタナゴ類が生息し、北薩地域は、アブラボテの国内分布の南限となっている。アブラボテなど在来タナゴ類は、外来タナゴ類との競合や種間交雑が危惧されているが、鹿児島県内ではこれらのタナゴ類の詳細な分布の記録が残っておらず、在来種と外来種が同所的に生息する状況についても調べられていない。そこで本研究では、北薩地域を中心にタナゴ類とその産卵床であるイシガイ類の分布を調べ、同時にタナゴ類各種によるイシガイ類の利用状況を明らかにすることを目的とした。調査は、2007年4月から2008年10月まで、鹿児島県薩摩半島北部の16河川で行った。タナゴ類はモンドリワナを用いて採集し、イシガイ類は目視や鋤簾による採集で分布を確認した。採集したイシガイ類の鯉を開口器やスパチュラを使って観察し、タナゴ類の産卵の有無を確認した。アブラボテとタイリクバラタナゴが各5河川で確認され、ヤリタナゴは1河川でのみ採集された。このうち2河川ではアブラボテが初めて確認され、アブラボテとタイリクバラタナゴの2種が生息していた江内川では、両種の交雑種と見られる個体が採集された。イシガイ類については、マッカサガイPronodularia japanensis、ニセマツカサガイInversiunio reinianus yanagawensis、ドブガイAnodonta woodianaの3種の分布が確認された。それぞれのタナゴ類は、産卵床として特定のイシガイを選択する傾向が見られたが、交雑種と思われる個体も採集された。このことから、それぞれの好む二枚貝の種類や個体数が限られた場合、この選択性は弱くなるものと考えられる。
著者
佐々木 修
出版者
日本保険学会
雑誌
保険学雑誌 (ISSN:03872939)
巻号頁・発行日
vol.2012, no.618, pp.618_149-618_168, 2012-09-30 (Released:2014-05-08)
参考文献数
21

コンプライアンスは,損害保険業界において,非常に重要な経営課題となっている。このため,相当の経営資源を投入し,創意工夫をしながら真摯に取り組み,今日では様々な活動を通じ,質の高い対応が行われている。また,コンプライアンスについては,継続的な取組みが重要であり,業界および各社における取組みを発展的に持続させ,業界全体として高いレベルのコンプライアンス態勢を維持していく必要がある。今後さらに必要となる業界のコンプライアンスへの取組みおよび課題としては,多様化したビジネスモデルや最新の法制度を踏まえた活動等の強化,共通化・標準化の推進,保険に関する教育の充実,新たな課題への対応が挙げられる。
著者
原 久仁子 小林 正敏 秋山 康博
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.118, no.3, pp.231-240, 2001 (Released:2002-09-27)
参考文献数
28
被引用文献数
2 2

骨粗鬆症治療薬は一般に単剤での処方だけでなく, 数種類の薬剤が併用されることが多いが, その根拠となるデータは非常に少ない. ビタミンK2(メナテトレノン, K2)と1α(OH)ビタミンD3(D3)はいずれも臨床で骨粗鬆症治療薬として広く用いられている. そこで卵巣摘除ラットを用いて両薬剤の併用の意義を検討した. フィッシャー系20週齢雌性ラットを偽手術あるいは卵巣摘除し, 卵巣摘除ラットをさらに対照, K2, D3, K2+D3の4群(n=10)に分けた. 全てのラットを個別ケージで制限給餌により飼育し, K2はメナテトレノン(MK-4)約37mg/kgを混餌投与, D3は1α(OH)D3を0.3μg/kg週3回, 8週間経口投与した. 8週後の血漿中カルシウム(Ca), 無機リン, アルカリホスファターゼ活性, オステオカルシン, 1,25(OH)2D3, 副甲状腺ホルモン(PTH), MG-4濃度および大腿骨の骨密度と3点曲げ骨強度を測定した. 卵巣摘除による血漿中各パラメータへの影響は認められなかった. D3群は単独, 併用ともに血漿中Caは高値を, PTHは低値を示した. 全骨領域および海綿骨領域の骨密度は卵巣摘除により骨端部ではそれぞれ偽手術群の81%, 41%に, 骨幹部ではそれぞれ96%, 86%に減少した. K2, D3の各単独群は骨端部全骨領域の骨密度, 骨幹部海綿骨領域の骨密度, 骨塩量の低下を抑制した. K2+D3群では単独群で作用を示したパラメータの他に骨端部での全骨領域および海綿骨領域の骨塩量の低下を抑制した. またK2+D3群は骨端部海綿骨領域の骨密度, 骨塩量, 骨幹部の皮質骨厚でD3群に比して有意に高値を示した. 骨強度はK2+D3群でのみ対照群に比して最大荷重は有意に高値を, 剛性は高値傾向を示した. すなわちK2+D3群が骨端部, 骨幹部のいずれのパラメータにおいても一番高い値を示した. 以上, K2とD3との併用投与はそれぞれの単剤投与に比してより大きな薬効が期待できることが示唆された.
著者
山梨 利顕 中田 裕久 児玉 和也 山田 勤 松尾 武文
出版者
社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析療法学会雑誌 (ISSN:09115889)
巻号頁・発行日
vol.23, no.9, pp.981-985, 1990-09-28 (Released:2010-03-16)
参考文献数
17

マムシ咬傷により横紋筋融解症から, 急性腎不全を来し, 血液透析にて救命し得た症例を経験したので報告する. 患老は71歳の女性で, 昭和63年8月13日自宅にてマムシに左足蹠を噛まれ, 本院救急外来を受診し局所処置を受け帰宅した. その後左下肢の腫脹, 黒褐色尿を見るようになり, 次第に呼吸困難, 無尿を呈し8月16日内科入院となる. 意識は傾眠状態で, 左鼠径部以下の下肢の著明な腫脹, 左足蹠に血性水疱を伴う咬傷が認められた. 入院時検査では. BUN・Crの上昇と共に, GOT, GPT, LDH, CPK, ミオグロビンなどの筋由来と考えられる酵素群の上昇がみられ, マムシ咬傷による横紋筋融解症による急性腎不全と考えられた. 第1病日より血液透析を開始し, 計13回施行, 第18病日より尿量の増加と共に, 臨床症状の軽快を見た. 同時にミオグロビンや骨格筋由来の酵素値は急速に減少し, マムシ毒による横紋筋融解症は一過性のものと思われた. また経過中一過性の血液凝固異常がみられ, 蛇毒によるものと考えられた. 以上のことより, マムシ咬傷による横紋筋融解症から生じた急性腎不全は, 発症早期からの血液透析にて急性腎不全の状態を乗り切れば予後は良好であり, また一過性の血液凝固異常に対し, 体外循環時の抗凝固剤の使用には注意が必要なことが伺われた.
著者
池口 明子 横山 貴史 橋爪 孝介
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集 2019年度日本地理学会春季学術大会
巻号頁・発行日
pp.188, 2019 (Released:2019-03-30)

磯焼けへの対応には藻場造成と漁業のシフトがあり,漁家は後者を迫られることが多い.日本では各種補助金による漁場整備,資源増殖のほか,代替魚種の資源化,観光化など多岐にわたる事業が実施されている.気候変動への順応をテーマとするコモンズ論では共時的制度の記述から,通時的な制度変化の分析を重視するようになっている.分析概念として,漁業者の生態知を核とした生態-社会関係が用いられる点で,生態地理学と接合しうる.ガバナンス論はより広い政治的文脈や行政の再編に制度変化を位置付けることを可能にすると考える.本報告では,磯焼けによる資源の減少や魚種交替に対応した資源管理制度の変化をガバナンスの視点から明らかにし,地理学的課題を考察する.2017年7月,10月に長崎県小値賀町,2018年9月に北海道積丹町,寿都町において漁協・自治体水産課に聞き取り,および事業報告書等の資料収集をおこなった.また小値賀町では漁業者12名に漁法選択を中心に聞き取りをおこなった.2.磯焼けへの順応と漁村・漁場磯焼け,およびその認知の時期は地域によって異なる.積丹町では1930年頃,小値賀町では1990年頃に漁業者が認識している.したがって漁法選択や生業選択のあり方は,その時期の地域社会が置かれた状況に依存する.磯焼けで起こる資源変動も海域によって異なる.積丹町ではウニとコンブは共同漁業権漁場の水揚げの主力である.磯根資源の減少に対し,資源増殖のほか観光との結びつきを強めるなど多次元化が図られている.一方,温暖海域に位置する小値賀町では180種以上の魚種が利用されてきた.資源シフトとブランド化が磯焼けで減少した磯根資源に代わって漁家経営を支えている.3.漁法選択とガバナンスの変化:小値賀島の事例 小値賀島におけるアワビ資源管理は古くは1899年に記録があり,以来多くの取り組みがなされてきた.1966年のウェットスーツの導入で乱獲が危惧されるようになると,1976年に総量規制によるアワビの資源管理が開始された.しかし,1987年の台風被害からの復興資金として過剰な漁獲が起こった上,磯焼けで餌料不足,成熟不良となり資源減少が加速した(戸澤・渡邉2012).1996年には漁業集団・漁協・町役場・県水産センターからなる「小値賀町資源管理委員会」が発足した. アワビに代わって漁家経営を支えるようになった魚種がイサキである.1977年に夜間の疑似餌釣りが導入され,1999年にブランド化された.漁業者集団によって「アジロ」(縄張り)ルールが形成され,漁協-漁業者集団によって選別ルールが形成された.4.資源ネットワークと地域的条件 小値賀島では沖合のヒラマサ・ブリといった回遊魚が生計に重要な位置を占めるなど資源の選択肢が多い.漁協は市場との取引経験が長く,これらの資源ネットワークが柔軟性を支え,漁場と市場の学習を可能にしてきた.この背景として,共同出荷への切り替え,小値賀町の単独自治など,流通と行政の再編経験が考えられる.市場との関係を軸としたガバナンス形成は一方で,よりローカルなスケールの調整,すなわち村落組織を基盤とする紐帯や仲間関係を必要とし,新規参入という点で工夫が必要と考えられる.