著者
武井 悠人 佐伯 孝尚
出版者
一般社団法人 日本航空宇宙学会
雑誌
日本航空宇宙学会誌 (ISSN:00214663)
巻号頁・発行日
vol.69, no.11, pp.316-322, 2021-11-05 (Released:2021-11-05)
参考文献数
4

小惑星探査機はやぶさ2は,2018年6月27日にリュウグウへ到着し,小惑星近傍フェーズへと入った.リュウグウの特性を調べるため,約1年半に渡り多様な科学観測が遂行された.また,ローバー/ランダーの展開,二度のタッチダウンによる表面/地下サンプル採取,人工クレーター生成実験など,多くの降下運用に成功した.本稿では,はやぶさ2ミッションにおける小惑星近傍フェーズの概要を,事前準備と実績に分けて紹介する.はやぶさ2の多様で複雑な小惑星近傍運用を成功させるため,往路巡航フェーズ期間を活用して事前に詳細な運用計画を検討し,多くの訓練を実施した.到着後は,明らかになるリュウグウの素性や運用の成否,探査機特性の変化へと柔軟に対応しつつ成果の最大化を図った.本稿では,小惑星近傍フェーズにおける降下運用の全体像に加え,各期間のハイライトや重要な判断の流れを報告する.
著者
満田 年宏
出版者
東京女子医科大学学会
雑誌
東京女子医科大学雑誌 (ISSN:00409022)
巻号頁・発行日
vol.91, no.1, pp.52-58, 2021-02-25 (Released:2021-03-16)
参考文献数
25

Based on the findings obtained so far, this article explains the infection prevention and control for COVID-19, an infectious disease caused by the novel coronavirus (SARS-CoV-2) that originated in Wuhan City, Hubei Province, central China at the end of 2019. To prevent COVID-19 infection, it is important to thoroughly implement droplet- and contact prevention measures. COVID-19 patients are infectious even before the onset of illness, and it is difficult to completely prevent transmission by symptom-based infection prevention measures. In addition to hand hygiene, universal masking and constant eye protection during work are required to prevent occupational infection in healthcare workers. While performing medical procedures that generate aerosols such as tracheal intubation and upper gastrointestinal endoscopy, we need to pay attention to indoor ventilation and respiratory protection using either N95 respirators or powered air-purifying respirators (PAPRs). In the COVID-19 molecular diagnosis by polymerase chain reaction (PCR), the number of days after exposure should be taken into consideration. During the seasonal influenza epidemic, it is necessary to recognize the timing difference between onset and fever. We also need to provide medical care to cases, including cases of combined influenza and COVID-19 infections.
著者
藤方 博之
出版者
比較家族史学会
雑誌
比較家族史研究 (ISSN:09135812)
巻号頁・発行日
vol.29, pp.22-41, 2015-03-31 (Released:2016-03-31)
参考文献数
7
著者
阿部 裕美子 青柳 順 安倍 徳寿 荒川 香 有馬 秀英 石田 千晶 渋谷 まさと
出版者
昭和大学学士会
雑誌
昭和医学会雑誌 (ISSN:00374342)
巻号頁・発行日
vol.64, no.4, pp.354-359, 2004-08-28 (Released:2010-09-09)
参考文献数
12

息こらえの学習効果の持続時間を8名の健康成人で測定した.連続して5回息こらえを施行した.毎回の息こらえ前, 5分以上安静状態を保ち, 一定の終末呼気CO2濃度から息こらえを施行した.また, 数日後, 1ヵ月後に同じプロトコールをくり返した.初日, 息こらえ時間は初回, 33.0±10.7秒, 5回目, 51.5±14.4秒であった.数日後, この学習効果は持続し, 初回の息こらえ時間39.1±14.4秒は初日の初回より有意に延長していた.2回目以降の息こらえ時間は初日と同等であった.1ヵ月後, どの回の息こらえ時間も初日と同等であった.息こらえに影響をおよぼしそうな因子 (健康状態, 食事量, 飲酒量, 睡眠時間, 喫煙, 服薬, 運動) はほぼ一定であった.息こらえ自体, および/または, その後の換気亢進が呼吸筋に作用して, その後の息こらえを延長させ, その作用は数日は持続するが1ヵ月は持続しないとの仮説が, 文献的検討からも, 可能と思われた.
著者
Miao-Miao Liu Da Wang Yang Zhao Yu-Qin Liu Mei-Meng Huang Yang Liu Jing Sun Wan-Hui Ren Ya-Dong Zhao Qin-Cheng He Guang-Hui Dong
出版者
Japan Epidemiological Association
雑誌
Journal of Epidemiology (ISSN:09175040)
巻号頁・発行日
vol.23, no.4, pp.280-287, 2013-07-05 (Released:2013-07-05)
参考文献数
36
被引用文献数
30 45

Background: Concentrations of ambient air pollution and pollutants in China have changed considerably during the last decade. However, few studies have evaluated the effects of current ambient air pollution on the health of kindergarten children.Methods: We studied 6730 Chinese children (age, 3–7 years) from 50 kindergartens in 7 cities of Northeast China in 2009. Parents or guardians completed questionnaires that asked about the children’s histories of respiratory symptoms and risk factors. Three-year concentrations of particles with an aerodynamic diameter ≤10 µm (PM10), sulfur dioxide (SO2), and nitrogen dioxides (NO2) were calculated at monitoring stations in 25 study districts. A 2-stage regression approach was used in data analyses.Results: The prevalence of respiratory symptoms was higher among children living near a busy road, those living near chimneys or a factory, those having a coal-burning device, those living with smokers, and those living in a home that had been recently renovated. Among girls, PM10 was associated with persistent cough (odds ratio [OR]PM10 = 1.44; 95% CI, 1.18–1.77), persistent phlegm (ORPM10 = 1.36; 95% CI, 1.02–1.81), and wheezing (ORPM10 = 1.31; 95% CI, 1.04–1.65). NO2 concentration was associated with increased prevalence of allergic rhinitis (OR = 1.96; 95% CI, 1.27–3.02) among girls. In contrast, associations of respiratory symptoms with concentrations of PM10, SO2, and NO2 were not statistically significant among boys.Conclusions: Air pollution is particularly important in the development of respiratory morbidity among children. Girls may be more susceptible than boys to air pollution.
著者
尾崎 一隆 鰐川 彰
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.103, no.3, pp.150-162, 2008-03-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
34

近年, 分析形の官能評価方法と機器分析データを組み合わせることで, 様々な食品の「おいしさ」や「劣化」に寄与する成分が明らかになっている。本稿では, 定量的記述分析法による官能評価と化学分析を組み合わせてビールの「おいしさ」を解析する研究について, 詳細に解説いただいた。様々な分析手法とともに, ケモメトリックス手法等も大変参考になると思われる。
著者
瀬良 良子 小池 豊 桑野 玲子 桑野 二郎
出版者
公益社団法人 地盤工学会
雑誌
地盤工学ジャーナル (ISSN:18806341)
巻号頁・発行日
vol.9, no.3, pp.323-339, 2014 (Released:2014-09-30)
参考文献数
14
被引用文献数
6 6

2011年3月の東日本大震災では,関東地方から東北地方にわたり大規模な地盤災害が発生したが,特に広域な液状化被害が,関東地方の東京湾岸部埋立地や利根川下流の軟弱地盤分布地で発生した。液状化被害の多くは地盤変状など目に見えるものであったが,あまり知られていない被害として道路下に発生した空洞があり,東京湾岸部の液状化地域で186kmの道路に平常時の7倍以上になる709箇所もの空洞が確認された。液状化による空洞は,噴砂に伴う空洞化と破損した下水管等への土砂流出現象等が複合的に関わって発生すると考えられるが,詳細な過程については不明な部分が多い。本研究は,液状化空洞の発生について自治体へのヒアリング,空洞調査結果の詳細な分析および現地検証を行うとともに,土槽実験を用いた液状化再現による空洞発生および拡大メカニズムの検討を行い,「液状化空洞は広がりが大きく薄い形状で,特に噴砂箇所周辺で空洞下部に緩みを有し,埋設管の位置により地盤の乱れが異なる。いずれも空洞補修の際には緩み部まで対処が必要。」という結論を得た。また,検討結果と震災後緊急対応として多数の空洞を補修した自治体の実態を踏まえ,大規模な地震発生で再発が懸念されている再液状化への対応について考察し,今後の路面陥没未然防止対策に資する道路保全技術について,現在の知見を取りまとめた。
著者
瀬口 典子
出版者
日本人類学会
雑誌
Anthropological Science (Japanese Series) (ISSN:13443992)
巻号頁・発行日
vol.116, no.1, pp.57-66, 2008 (Released:2008-06-30)
参考文献数
61
被引用文献数
1 1 1

アメリカ自然人類学会(AAPA)の現状と動向を紹介し,その歴史に触れながら自然人類学のあり方の検討を行った。19世紀から20世紀前半のアメリカ自然人類学の研究テーマは「人種タイポロジー」的な理論と方法論が主であった。しかし,1951年のシャーウッド・ウオッシュバーンの「新しい自然人類学」の提唱後に,アメリカ生物人類学は,新しい方法論,理論,仮説検定に焦点をおく科学に変化を遂げた。形質人類学も生物文化的なアプローチを取り,生物考古学の視点やフェミニズムの視点をもって,ゆっくりではあるが,発展してきた。そして,自然人類学の枠だけに留まらず,考古学,文化人類学,言語人類学との融合性を目指した研究テーマを切り開こうと努力している。しかし,近年の司法人類学の人気に伴って,アメリカ自然人類学はウオッシュバーン以前の人種タイポロジー的なアプローチを取る古い形質人類学に引き戻されてしまう危機にも直面している。現在,アメリカ自然人類学会と研究者達は,これまで起こってきた矛盾,批判,反省,議論をアリーナとして,21世紀の社会に貢献するための新しい研究テーマと活動を模索している。
著者
松永 信智 坂本 将一 田中 友樹 岡島 寛
出版者
一般社団法人 日本機械学会
雑誌
日本機械学会論文集 (ISSN:21879761)
巻号頁・発行日
vol.84, no.858, pp.17-00349, 2018 (Released:2018-02-25)
参考文献数
19
被引用文献数
1 1

Recently, electrical welfare vehicles driven by two motors employing free casters are widely used by patients and elders. However, as the user is not able to drive the vehicle well on the uneven rough roads, it is necessary to apply a new mechanism to drive on the rough road in order to expand driving area. The skid steer vehicle (SSV) has been used because of its high traveling ability on the rough road. However, the SSV has disadvantage that is, the driving assistance is required because its steering is highly affected by the road condition. The aim of this study is to design a driving assistance system of SSV for patients and elders by using Model Error Compensator (MEC) that suppresses the modeling error. The proposed controller consists of MEC, Extended Kalman Filter (EKF) that reduces sensor noise and system noise, and estimator of on-line cornering power of SSV. The effectiveness of the proposed system using on-line cornering power estimator is confirmed by the outdoor driving experiments. And the improvement of the driving assistance is evaluated by the correlation of the joystick manipulation comparing the paved and the dirt roads.
著者
川島 眞
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.123, no.8, pp.1527-1536, 2013-07-20 (Released:2014-10-30)

近年,癌治療における分子標的薬の使用頻度の増加に伴い,その副作用としての皮膚障害への対応が課題となってきている.そこで,分子標的薬による癌治療に随伴する皮膚障害に対する皮膚科医の診療実態や意識についての現状を把握し,今後の課題について考察することを目的として,全国の皮膚科医を対象とした調査を行った.対象と方法:2011年12月~2012年1月に医療従事者向けポータルサイト「CareNet」会員である皮膚科医を対象とし,二度にわたるインターネット調査を行った.結果:分子標的薬に起因する皮膚障害の診療経験の確認を目的とした一次調査で,その診療経験は,勤務医で88.5%(154/174名),開業医で61.0%(61/100名)であった.より広く診療経験者を対象とし,改めて診療の実態や意識を確認することを目的とした二次調査において,診療頻度は開業医では年間5例以下が85%を占めたが,病院勤務医では年間10例前後が多かった.また,病院勤務医では患者の9割近くが他科からの紹介で受診していたが,開業医では自発的受診が7割近くを占めた.治療においては,ステロイド外用剤,テトラサイクリン系抗生物質内服,保湿外用剤を主に使用する医師が大半である一方,抗菌外用剤を主に使用する医師も一定数いることが明らかとなった.皮膚科医のほとんどが,癌診療科・施設との早期からの連携が必要であると認識し,分子標的薬による皮膚障害に対し,主体的に取り組むべきと考えていることが示された.考察:分子標的薬による皮膚障害に対し,多くの皮膚科医が既に取り組んでいる実態が明らかとなった.一方その診療において,癌薬物治療専門科・施設との連携は手探りともいえる.癌患者の治療を支援する観点から,分子標的薬による癌治療に随伴する皮膚障害の有効な治療方法の確立,また,それを実施するため,皮膚科医はその重要な役割を認識し,研鑽を重ねるとともに,癌薬物治療専門科・施設との密な連携に取り組む必要があると考えた.
著者
山田 美智子 笠置 文善 三森 康世 宮地 隆史 大下 智彦 佐々木 英夫
出版者
一般社団法人 日本放射線影響学会
雑誌
日本放射線影響学会大会講演要旨集 日本放射線影響学会第51回大会
巻号頁・発行日
pp.267, 2008 (Released:2008-10-15)

背景と目的:胎児期に被爆した被爆者では小頭症や知的障害等の神経系への影響が認められる。今回、広島成人健康調査集団の被爆時年齢13歳以上の原爆被爆者とその対照において、原爆被爆が認知機能や認知症の発症に影響したか否かについて調査した。 方法:対象者は1992年の調査開始時に年齢60歳以上で認知症を認めない2286人である。認知機能は認知機能スクリーニング検査(CASI)を用いて評価した。認知症の診断は認知機能スクリーニング検査と神経内科医による神経学的検査の2段階法を用い、人年法により線量階級別の粗発症率を求めた。原爆被曝の認知症発症への影響の評価には他のリスク要因を考慮してポワソン回帰分析を用いた。放射線治療による被曝情報は病院調査と問診調査から得られた。 結果:認知機能は加齢と共に低下し、低学歴で低かったが、被爆時年齢13歳以上の原爆被爆者では認知機能に被爆の影響は認められなかった。約6年の追跡期間中に206人が新規に認知症を発症した。60歳以上の1000人年あたりの粗認知症発症率は15.3(男性12.0、女性16.6)であった。被爆線量別の1000人年あたりの発症率は被爆線量5mGy以下、5-499mGy,500mGy以上で各々16.3、17.0、15.2であった。いずれの被爆線量群でもアルツハイマー病が優位な認知症のタイプであった。ポワソン回帰分析の結果、全認知症ならびにタイプ別認知症において、他のリスク要因を調整後に被爆の影響は認められなかった。対象者の内、68人がこの調査以前に放射線治療を受けていたが、認知症を発症したのは2人にすぎなかった。 結論:原爆被爆者の縦断的調査において認知機能ならびに認知症発症と放射線被曝の関連は認められなかった。
著者
野口 康彦
出版者
山梨英和学院 山梨英和大学
雑誌
山梨英和大学紀要 (ISSN:1348575X)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.105-113, 2009 (Released:2020-07-20)

本稿の目的は、大学生におけるデートDVと共依存の関係性について検討するものである。デートDVにおいては、共依存傾向の高い人ほど、その中でも特に女性は、DV被害に遭う可能性が高いのではないのだろうかと考えた。ある私立大学の福祉系学科の大学生に対して質問紙による調査を行い、61名の有効回答を得た。結果として、共依存傾向の高い人ほど、デートのときにパートナーからDVを受けている傾向があることがわかった。さらに、男女別で分けた場合、女性の方がパートナーから暴力的な言動や行為を受けやすいことが明らかになった。
著者
井川 和宣 友岡 克彦
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.56, no.5, pp.411-415, 2020 (Released:2020-05-13)
参考文献数
13

ケイ素は地球上に潤沢に存在し,かつ,炭素と同様に四面体構造を形成する.しかしながら,科学が進歩,多様化した現代においてもなお,ケイ素を含む医薬品(以下,ケイ素医薬品と称する)の開発研究はごく限られている.本稿では,これまでケイ素医薬品の開発が困難であった理由について論じるとともに,その問題の一つの解として我々が着目している「キラルケイ素分子の利用」を提唱し,また,不斉合成の実際と生物活性について紹介する.