著者
上村 佳孝 三本 博之
出版者
北海道大学低温科学研究所 = Institute of Low Temperature Science, Hokkaido University
雑誌
低温科学 (ISSN:18807593)
巻号頁・発行日
vol.69, pp.39-50, 2011

動物の交尾器, 特にオス交尾器の形態は, 他の形態形質よりも進化・多様化が速い傾向にあり, その機構について議論が続いている. 本稿では, モデル生物であるキイロショウジョウバエを含むキイロショウジョウバエ種群について, 交尾器形態の機能とその進化に関わる研究についてレビューした. オス交尾器による創傷行動の発見により, 従来の研究では見出されてこなかった, オス交尾器に対応した多様性がメス交尾器の側にも同定されるようになった. しかし, メス交尾器の多様性は, 柔軟な膜質構造の形態変化によるものが多い. 交尾時の雌雄交尾器の対応関係の把握は, そのような旧来の手法では観察の難しい構造の特定を容易にし, 種間比較や操作実験による機能の研究に足がかりを与える. そのため手法の一つとして, 交尾中ペアを透明化する技術を紹介し, 本種群が交尾器研究のモデル系となる可能性を示す.Animal genitalia, especially those of males, generally evolve more rapidly compared to other morphological traits. The driving forces underlying such evolutionary trends are much debated. In the present article, we review evolutionary and functional studies on the genitalia of drosophilid flies (Diptera) belonging to the Drosophila melanogaster species group. Despite that the male genitalia of this group show astonishing diversity, previous studies failed to detect any species-specific differences in female morphology that corresponded to interspecific differences in the male genital morphology. However, recent discovery of copulatory wounding behavior, that is, the phenomenon that male genitalia inflict wounds on the genitalia of the mate,enabled us to identify counter-evolutions in the female genitalia. Such diversification in the female genitalia is mainly represented as modifications in the soft membraneous regions. With description of a newly developed transparentizing technique of mating pairs, we discuss the potential of this species group to be a model research system of genital evolution.生物進化研究のモデル生物群としてのショウジョウバエ. 北海道大学低温科学研究所編
著者
須佐 寅三郎
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.5, no.2, pp.194-221, 1934

本縣苹果在植品種の缺點と栽植上の缺陷から品種改良並に自家,他家交配研究の必要を感じ,昭和三年より繼績的に實驗を重ね.其内昭和四年より同八年迄の成績の概要を述べると次の如くである。<br> 1. 本縣主要苹果の花期は五月中旬より約三週間に亙る。印度が最も早く,國光が最も遲い。其期間は該年の花期好天なる時は短かく各品種の盛花期相接近する。之れに反し花期に低温又は降雨績く時は著しく其花期延長し各品種の盛花期を離す。同花期の良晶種を混植の要がある。<br> 2. 108品種中花粉の不良なるもの25種,中庸なるもの23種,花粉の發芽率60%以上を示すもの60種ある事が分つた。<br> 3. 雌蕋の雄蕋に對する長短と花粉能力又は受精との關係は未だ認めない。<br> 4. 花粉管放長の方向は性的親和力に影響を受くる事著しく強い。<br> 5. 苹果の花粉は攝氏13度内外の低温に於ても良く發芽す。<br> 6. 花粉管が伸長したる時降雨あれば著しき破裂現象を招來す。之れは受精作用に影響甚大なる事を推察す。<br> 7. 苹果の花粉は粉状乾燥状態にて貯藏すれば1ケ年以上發芽するものがある。<br> 8. 自家交配で自家不稔性の品種10種,弱自家結實性のもの9種,自家結實性と認め得るもの9種あつた。就中,主要品種では祝では殆んど自家不稔性で. 22%, 國光は稍自家結實性で3.07%, 紅玉は8.5%, 印度は10.05% なるが,ゴールドンヂリシヤスは16%, イングラムは33.16% の自家結實性ある事が分つた。之に反しデリシヤスは完全に自家不稔性である必す,紅玉,印度又はゴールドンデリシヤス,祝等と混植するを要すう。<br> 9. 他家交配25品種の平均結果率は22.76%で,自家交配28種平均結果率5.08% に比し約4倍半の結果率である。混植の必要が顯著である。<br> 10. 花時天候惡しき年に於ても他家交配試驗は顯著なる好結果を示した。故に花時寒濕なる氣候續く時は出來る丈人土交配を行ふか,又は花粉の媒介者昆蟲の集合を計る爲め果園の乾燥と氣温を高める事が有效であると思ふ。<br> 11. 他家交配に於て兩性器關が完全であ場合は相互嫌忌性は未だ判然と認められない。然し近親間に於ては相互嫌忌性があるかも知れない。<br> 12. 他家不結實は兩性機關が不能性であるか,何れか一方が不能的である場合に起るのが多いと思はれる。
著者
多田陽風 杉野栄二 瀬川典久 澤本潤
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.2013, no.1, pp.187-189, 2013-03-06

本稿では、SNSを用いて人物の日々の服装の記録を取りながら、所有する洋服アイテムの管理を支援する研究について述べる。ユーザは自分の所有する洋服アイテムの登録を行い、SNS上に仮想のクローゼットを作る。そして、SNSに毎日のコーディネートを日記のように記録し、いつどの服を着ていたかという情報を蓄積させる。SNSは、蓄積された洋服アイテムとコーディネートの情報から、何色の洋服アイテムを多く持っているか、どの洋服アイテムを一定期間着用していないかをユーザに通知する。また、ユーザの所有する洋服アイテムと日々のコーディネートを他ユーザに公開することにより、他ユーザから新たなコーディネートを提案してもらうこともできる。
著者
荒木 英彦 西山 里枝 古宮 照雄
出版者
木更津工業高等専門学校
雑誌
木更津工業高等専門学校紀要 (ISSN:2188921X)
巻号頁・発行日
vol.39, pp.87-96, 2006-01-31

エリザベスからリチャードー世までの資本主義の発展について、独占事業を中心に述べている。重商主義の産業保護により独占企業が国家的規模で成長するが、その背景には王室の窮乏による特許の下付、宮廷人事業家の出現、資本主義事業家の誕生がある。著名な独占企業家であるイングラムやブルマーなどの活躍について述べ、土地所有者である旧貴族や行政家である新貴族とも異なって、経済力で登場した「新しい人間」を描いている。
著者
伊藤 壽啓 大槻 公一
出版者
鳥取大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1998

鶏の強毒インフルエンザ、いわゆる家禽ペストは急性で致死的な伝染病であり、一度流行するとその国の養鶏産業は壊滅的な打撃を被る。しかし、野鳥が保有する弱毒のトリインフルエンザウイルスがどのようなメカニズムで鶏に対する病原性を獲得するのかは詳らかではない。そこで本研究では弱毒トリインフルエンザウイルス病原性獲得機構の分子レベルでの解明を試みた。我々はまず、国内に飛来する渡り烏から分離された弱毒トリインフルエンザウイルスを鶏ヒナの気嚢で24代、さらに脳で5代継代した。最終的に得られた24a5b株は鶏に対する致死率が100%の強毒株に変異していた。そこでこの弱毒ウイルス親株と一連の継代株のHA開裂部位のアミノ酸配列を調べた。その結果、親株の開裂部位には、塩基性アミノ酸R(アルギニン)が-1位と-5位にそれぞれ離れて単独で存在する典型的な弱毒型HAのアミノ酸配列であったが、継代を繰り返す間に2度の点変異と3塩基の挿入が起こり塩基性のアミノ酸(Rまたはリジン(K))への置換あるいは挿入が起こり、結果としてR-R-K-K-Rという合計5個の塩基性アミノ酸が連続した強毒ウイルスに変異していたことが明らかとなった。一方、継代株のニワトリ体内での増殖試験では継代を重ねるごとに、最初は鶏でほとんど増殖できなかった親株が徐々に他臓器増殖性を獲得し、最終的に脳を含む全身で増殖可能な強毒ウイルスに変異していたことが明かとなった。即ち、自然界においても渡り鳥が保有する弱毒トリインフルエンザウイルスが鶏に伝播し、鶏から鶏へと次々に新たな感染が操り返される間に、HAの開裂部位のアミノ酸が段階的に置換し、徐々に多臓器増殖性を獲得して強毒ウイルスに変異するものと考えられた。
著者
諸山 正則 今井 陽子 唐澤 昌宏 木田 拓也 北村 仁美 横溝 曠子 三上 美和 金子 賢治 内藤 裕子 服部 文隆
出版者
独立行政法人国立美術館東京国立近代美術館
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

明治期に万国博覧会が開催された地域の主要美術館のコレクションの調査を平成22年度はヨーロッパ、同23年度はアメリカにおいて、工芸作品の所在及び実地の調査を実施した。イギリスのアシュモリアン美術館と大英博物館(担当:唐澤昌宏、服部文孝)、フランスのチェルヌスキ美術館とギメ美術館、装飾美術館、エルリー美術館(担当:北村仁美、三上美和)、ドイツ、チェコ、オーストリアではハンブルグ工芸美術館、マインフランケン美術館、ナープルステク・アジア・アフリカ・文化博物館、プラハ国立美術館、オーストリア国立応用美術館、ウィーン民族学博物館、ゲルマン博物館(担当:今井陽子)、アメリカではフィラデルフィア美術館とウォルターズ美術館、フリーア美術館、国立自然史博物館(担当:諸山正則)、フィールド・ミュージアムとミシガン大学美術館、サン・アントニオ美術館(担当:横溝廣子)、ポートランド美術館とロサンゼルス・カウンティ・ミュージアム、サンフランシスコとシアトルのアジア美術館(担当:木田拓也)で各種の明治期工芸の収蔵作品調査を実施した。追加調査として、横溝が、ロンドンのヴィクトリア・アンド・アルバート美術館で漆工や金工作品等の調査を行った。そうした明治期に各地で開催された万国博覧会に出品された工芸作品や海外の有力なコレクションとして流出した近代工芸の優れた作品資料の実地調査が達成され、データの収集及び撮影に基づく記録が作成された。各担当で整理しその特質を研究して調査成果を論考にまとめ、報告書『明治期に流出した近代工芸作品の調査』を編集発行、統一されたデータとして整理し、データベース化を検討した成果を掲載した。
著者
長谷川 正午
出版者
筑波大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2013-08-30

本研究では,転移性・非転移性口腔癌細胞株を用いてmicro RNAマイクロアレイによる発現プロファイルを作成し,転移に関連するmRNA発現プロファイルを組み合わせて解析(ペアリング解析)を行った。転移性細胞株においてmiR-205の有意な発現低下が認められた。転移に関与するmRNAとmiR-205のペアリング解析を行ったところ,interferon regulatory factor 1 (IRF-1)がターゲット遺伝子として検出され,転移性口腔癌細胞株においてもIRF-1発現亢進を示した。miR-205を口腔癌細胞株に導入し,IRF-1の変化についても検討したが,有意な差は認められなかった。
著者
髙 秀成
出版者
慶應義塾大学大学院法務研究科
雑誌
慶應法学 (ISSN:18800750)
巻号頁・発行日
no.23, pp.85-164, 2012-05

論説はじめに (一) 本稿の問題意識 (二) 財産管理を論じる意義 (三) フランス法を比較対象とする理由一 フランス法における状況 (一) 一般的状況 1 検討の起点 2 背景 3 「財産管理」という用語法に関して (二) 職分としての権利(droits-fonctions)と権限(pouvoir)の理論 1 ダバン 2 ルヴィエ 3 ガイヤール (三) 個別領域における研究 1 ストルクの代理理論 2 ディディエの代理理論 3 キュイフの管理契約論二 財産管理制度に共通する規律の模索 (一) 近年の立法と一般理論の可能性 1 財産管理の目的および共通して適用される法技術 2 財産管理人の行動可能領域 3 財産管理における諸義務 (二) 補論: ケベック民法典における「他人の財産の管理」 1 フランス法とケベック法の相互影響 2 「他人の財産の管理」制度の特徴 3 制度把握のための視角 (三) 小括 1 フランス法における展開の略述 2 財産管理制度に共通する規律のまとめ 3 共通枠組みの評価三 若干の考察 (一) 権限概念の自律性について 1 権限と人格化の理論 2 固有の権限と機関権限 3 権限と対第三者関係 (二) 行為類型 1 管理行為 2 有用な行為 3 活用行為 (三) 財産管理人の諸義務 1 注意義務 2 忠実義務 3 報告義務おわりに (一) 一応の帰結 (二) 日本法に関する若干の言及 (三) 展望
著者
小澤 徹 小池 茂昭 田中 和永
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2009-04-01

物理現象を記述するモデル方程式として、場の古典論、流体力学、プラズマ物理をはじめ様々な分野に現れる重要な非線型楕円型偏微分方程式について、今まで個別に用いられることの多かった変分解析、非線型常微分方程式、粘性解理論の手法を総合的に駆使することにより、定在波の安定性や爆発現象を深く説明する方法論を確立し、さまざまな応用を見出した。

1 0 0 0 OA 日本音楽講話

著者
田辺尚雄 著
出版者
岩波書店
巻号頁・発行日
1926
著者
武田 好央 中込 恵一 新村 恵一
出版者
一般社団法人日本機械学会
雑誌
日本機械学會論文集. B編 (ISSN:03875016)
巻号頁・発行日
vol.62, no.599, pp.2887-2894, 1996-07-25
被引用文献数
48

There is a gradient of fuel concentration in the spray of conventional direct-injection diesel engines. Therefore, a region of stoichiometric mixture ratio exists in the injected spray and a high concentration of NO_χ is produced. In this study, fuel injection timing was widely advanced to promote the mixing of fuel and air. Using this injection method, the engine could be driven with premixed lean diesel combustion (PREDIC), and NO_χ emissions were greatly reduced. To avoid the fuel spray contacting the cylinder liner, the fuel was injected by two side injectors simultaneously. The two sprays from the side injectors collided with each other and remained in the center region of the cylinder. Thus mixing of fuel and air was promoted by a long ignition delay period. In the case of conventional injection methods, NO_χ could not be reduced to under 400ppm (λ=2.7). In contrast, in the case of PREDIC, NO_χ emissions were reduced to as low as 20ppm (λ=2.7).
著者
土屋正光
雑誌
日本整形外科スポーツ医学会誌
巻号頁・発行日
vol.8, pp.305-311, 1989
被引用文献数
10
著者
川野 佐江子
出版者
大阪樟蔭女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

研究期間全体を通じて,研究目的①~③は,次のような成果を得ることができた.①力士たちは「相撲美」という様式美に自己を依拠させることで,アイデンティティを確立していたことが分かった.②現代の力士の「稽古」はトレーニングの意図を中心に展開されており,体脂肪率や栄養管理など筋肉を中心とした西欧的身体へとまなざしが移行していることが分かった.③主に横綱柏戸を例に考察した結果,「アイデンティティ確立への要請」や「剛健であること」が近代的男性性と結びつくことが議論できた.本研究では,相撲研究が現代社会の諸問題,とりわけ現代の男性が抱える問題にまで展開できることを示したことが,新たな成果としてあげられる.
著者
豊蔵 勇 岡田 篤正
出版者
一般社団法人日本応用地質学会
雑誌
応用地質 (ISSN:02867737)
巻号頁・発行日
vol.37, no.2, pp.130-138, 1996-06-10
被引用文献数
3

兵庫県南部地震と命名されたマグニチュード(以降Mと表す)7.2の都市直下型地震が、1995年1月17日未明の午前5時46分、阪神および淡路島地区を襲い、関東大震災以来の大震災をもたらした(表-1)。兵庫県南部地震は、淡路島北部に分布する野島断層およびその北東延長の活断層が再活動することによって発生したものである。このように、既存の活断層を震源とした直下型地震は、死者5,500名を上回る人的被害をもたらし、復興に要する費用は10兆円を越えると言われている。今回の地震が起きた時刻は、市民の生活がほとんど始まっていない早朝であった。このことは、もう少し遅い時刻で通勤電車、新幹線、高速道路をはじめとする大量輸送機能がフル稼働中であったならば、被害は別の形で大きくなっていた可能性が高く、社会に与えた影響は大きい。今回、活断層に関する解説を担当することとなった岡田は活断層の実態解明に長年携わった研究者として、また豊蔵は活断層調査を耐震設計のコンサルタント業務として携わってきた技術者として、まず活断層についてこれまで蓄積されてきた基本的な知識を整理し、活断層調査の持つ応用地質学的な意味や意義について述べ、さらに今後取り組むべき課題についても若干ふれる。
著者
片山 由美
出版者
立正大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2013-04-26

本年度は申請にあたって目標に掲げた課題に取り組むにあたり、インド仏教における『法華経』の受容と展開に注目し、昨年度の研究成果を整理しなおして国際学会で発表を行った。『維摩経』と『法華経』の両経典には共通した構造を持つ物語(「法供養」)が見られる。『法華経』「普門品」と『維摩経』「菩薩品」の梵文写本、蔵訳、漢訳に着目し、そこに見られる「法施」の概念が両経典で異なることを指摘した。また神変表現に着目し、両経典が共通のソースを基盤としている可能性を指摘した。『法華経』第14章「安楽行品」の冒頭散文部分、ya khalv esu dharmesv avicarana avikalpanaの解釈について取り上げ、梵文諸写本、蔵訳、漢文と比較しながら検討をした。梵語写本の解釈可能性は一通りではなく、様々な解釈可能性があるが、文脈を考慮すると「avicaraとavikalapana」と解釈するのが適切であると考えられる。また中国の注釈書の解釈も二通りに分かれる。「不分別を行ぜず」と「行ぜず分別せず」という解釈である。前者は慧思の『法華経安楽行義』や天台大師の『妙法蓮華経文句』に見られる。天台大師は慧思の解釈を踏襲し、中道を中心とした理論に当てはめ、「不分別」を「無相」「中道」と置き換え、それにさえも執着しないと解する。後者は吉蔵の『法華義疏』、法雲の『法華経義記』、基の『妙法蓮華経玄賛』にみられる。吉蔵は、「分別せず」の対象として「亦行」と「不行」と分けて解釈する。基は、「行ぜず」「分別せず」に分けて解釈し、その根拠を『般若経』の「無所住に住する=無諸行を行ずる」に求めている。「行ぜしところなし、分別せずところなし」というように、その目的語がないことを、「真際」であらわす。法雲は、両者を2つにわけ、その根拠を「空」に求め、法空を得た時、無分別であるが故に、行ぜざると解釈する。