著者
竹内 康
出版者
東京農業大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2008

本研究では,温水パイプの耐久性と電熱シートの簡便性を兼ね備えたハイブリッドタイプのヒーティング装置の開発を行うとともに,ロードヒーティングへの適用性に関する検証実験を行うことを目的としている。平成22年度は,ヒーティングパイプ内に封入するガスの種類およびパイプの形状を変化させた加熱実験を通じたヒーティング装置の開発結果を受け,ガスの種類のうち最も良い効果を示した代替フロンガスHCFCを封入した銅製の多重ループ管(蛇行管)をコンクリート平板に埋設して室内での融雪実験を行った。このときの,温度条件は,妙高市の赤倉温泉郷にて測定した温泉排水温度が30~40℃程度であったことから,融雪実験に際しては水温を15~40℃に設定し,融雪状況の確認を行った。また,加熱部の長さは,ヒーティング装置の加熱実験結果を受け,放熱部の5~10%程度になるようにした。その結果,室内融雪実験では,水温が15℃程度であっても十分に融雪効果が得られることが確認された。さらに,多重ループ管の間隔が融雪特性に及ぼす影響と屋外での融雪効果を確認するため,既往の文献を参考に間隔を10cm,16cmとした蛇行管を埋設した1m×1m程度の舗装用コンクリートと同等の熱的特性を有するモルタル平板を2枚作製し,冬季の長野県飯綱高原にて屋外での融雪実験を行った。その結果,パイプ間隔が10cmで,熱源温度が20℃程度であれば,19~28mm/hr程度の降雪強度に対応できるロードヒーティングシステムが構築できることがわかった。
著者
沼野 充義 野谷 文昭 柴田 元幸 加藤 有子 毛利 公美
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究では、ロシア東欧・広域英語圏・広域スペイン語文学の専門家の共同作業により、国・言語の枠を超えた広い視野から現代世界の文学の複雑なプロセスを総合的に調査し、新しい文学研究のあり方を探った。その結果、グローバル化時代にあっても世界の文学は一方的に均質化することはなく、全体として豊かに多様化していることを明らかにするとともに、欧米中心に組み立てられてきた従来の世界文学像を拡張し、日本も視野に入れた新たな世界文学カノンの可能性を探究することができた。
著者
井上 孝夫 栗林 雅人 曲谷地 咲 栗林 雅人 クリバヤシ マサト Kuribayashi Masato 曲谷地 咲 マガリヤチ サキ Magariyachi Saki 岡本 翔吾 オカモト ショウゴ Okamoto Shogo
出版者
千葉大学教育学部
雑誌
千葉大学教育学部研究紀要 (ISSN:13482084)
巻号頁・発行日
vol.61, pp.337-344, 2013-03

ホテルのコーヒーはなぜ高いのか,という問題は,経済学的には需要と供給の法則によって解くべき一例題とされることがある。しかしそこから導かれる回答は,因果関係の分析にはなっていないため,はぐらかされたような後味の悪さが残る。それに対して,本稿では行為分析の発想に基づいて,相場よりも高いコーヒーを提供する側(店)と享受する側(客)のそれぞれの意図を分析し,「高いコーヒー価格」のからくりを明らかにする。第1部はその分析であり,第2部ではそれに基づいて,中学校公民科を想定した「授業構成案」を提示している。
著者
安彦 一恵
出版者
日本哲学会
雑誌
哲学 (ISSN:03873358)
巻号頁・発行日
vol.1999, no.50, pp.61-73, 1999-05-01 (Released:2010-05-07)

或る〈状況〉にあるとき人は何をなすべきか。この問いに答えて行為するのが「道徳」であるとして、それは、その〈状況〉の《価値》的様相に応じて行為するという現象であるとも、あるいは、その〈状況〉に関する《規範》に従って行為するという現象であるとも敷衍できる。しかし、そこでさらに、「道徳」の現象に反省的に、そうした行為はそのまま妥当なものかと問うなら、一つの方向として、そこに《合理性》があるなら妥当であると次には言うことができる。「道徳哲学」-ないしは「倫理学」-とは、一つの、しかし最も基本的なかたちとして、「道徳」の合理性を問うものであるとも言える。そこには、「道徳」の正当化として、自ら合理性の証示を行なうものに加えて、そうした合理性の証示は不可能だと論証するものも含まれる。こうした作業は、それとして重要だと考えるが、しかしながら我々はここでは、言われるところの「合理性」が果たして一義的な概念であるのかとの疑問のもとで、基本的に異なる二つの「合理性」観念が「道徳哲学」において支配しているということを、その背景をなすものから明らかにしたい。そしてそれは、実はこの〈合理性〉観念の相違こそが、相互対立を含んで様々な「道徳哲学」を展開させているのだと我々はみているからである。
著者
東京割烹研究会 編
出版者
警醒社書店
巻号頁・発行日
1914
著者
福野 光輝
出版者
山形大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

公共事業において社会全体の利益を追求する行政と、それによってさまざまな負担を強いられる地域住民との利害対立をどう調整すべきかは重要な問題のひとつである。こうした利害対立は、地域住民側のマイクロ公正判断と行政側のマクロ公正判断の不一致ととらえられる。ウェブ調査によって、一般市民がこうした利害対立をマイクロ公正とマクロ公正の不一致として認識しているかを検討した結果、この仮説は部分的に支持された。
著者
清水 義彦
出版者
群馬大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

わが国の礫床河川の多くは低水路の極端な河床低下と植物繁茂した砂礫州との比高増大により,河道内樹林化や砂州・みお筋の固定,水衝部の形成が治水上の問題となっている.本研究では,中小洪水を比高の高い砂州の内部に導く砂州掘削路を設けることにより,洪水撹乱を誘発して,①砂州上の樹木生育基盤の撹乱 (樹林化の抑制),②砂州・低水路河床の大きな高低差(横断比高)の解消,③低水路線形の変更(屈曲した低水路流れによる水衝部形成の是正)をねらい,その効果評価を通じて洪水のダイナミズムを利用した新たな河道管理手法の提案を行うものである.
著者
吉野 博 長谷川 房雄 沢田 紘次 石川 善美 赤林 伸一 菊田 道宣
出版者
一般社団法人日本建築学会
雑誌
日本建築学会論文報告集 (ISSN:03871185)
巻号頁・発行日
no.345, pp.92-103, 1984-11-30
被引用文献数
19

The thermal performance and occupant's behavior of about 1000 detached houses in Tohoku city area and also in Sapporo and Tokyo as references were investigated in winter of 1982 by means of questionnaire and liquidcrystal thermometers. The regional characteristics of such thermal performance and occupant's behavior of houses was analysed by a multi-variate analysis method. The results are shown as follows : 1. It was found that the cities of Tohoku area could be divided into three groups from the view point of thermal performance and occupant's behavior. Aomori and Akita were comparatively similar to Sapporo. Miyako, Fukushima and Iwaki were almost equal to Tokyo. 2. Among many factors of thermal performance and occupant's behavior, the room temperature, hours of heating, heating apparatuses, oil consumption, etc. were different between above three groups. In Aomori and Akita, the living room temperature is higher, the hours of heating is longer and oil consumption is greater than the other groups. In Miyako, Fukushima and Iwaki, the opposite characteristics was found. In the other cities, such factors were distributed between each house. On the other hand, there were little difference in performance level of thermal insulation and air-tightness between three groups, except that only in Aomori, windows usually were furnished with double glazings. 3. Average air temperature in living room of all houses during heating time after supper was 17.9℃. Average living room temperature is more than 20℃ in Sapporo, Aomori and Akita, and was less than 18℃ in Miyako, Fukushima and Iwaki. Especially the living room temperature in Fukushima is as low as 14.9℃.
著者
渡嘉敷 崇
出版者
琉球大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

地域在住の超高齢者における血管内皮前駆細胞数、ω-3脂肪酸及び脳画像的特徴と認知機能の相関性を評価する目的で研究を開始した。161名の80歳以上の地域住民を対象に歩行機能評価を含めた身体測定や血液検査、MRIを用いた脳画像評価、生活調査及び認知機能検査を行った。今回の研究では、特に血管機能と認知機能の相関について主眼を置き、血液検査においては血管内皮前駆細胞数をフローサイトメトリーで測定し、身体測定では血管機能の指標となり得る項目を各種機器を用いて測定した。頭部MRI検査では全脳容積評価に加え、機能的磁気共鳴法や拡散テンソル画像法も施行した。今後これらの項目の相関について解析を進める。
著者
堀内 啓次 布田 裕一 境 隆一 金子 昌信 笠原 正雄
出版者
電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. A, 基礎・境界 (ISSN:09135707)
巻号頁・発行日
vol.82, no.8, pp.1269-1277, 1999-08
被引用文献数
7

楕円暗号において, 楕円曲線の群の位数は重要なパラメータである. 特に, その位数が素数であることが望ましい. 楕円曲線の位数を計算する方法としてSchoofのアルゴリズム及びそれを改良したElkies, Atkinのアルゴリズムが知られている. 本論文ではSchoofの改良アルゴリズムを用いた素数位数を有する楕円曲線の効率的な構成法を示す. 更に, 楕円曲線の位数分布及び位数が素数である確率を導出した後, 素数位数を有する楕円曲線の構成に必要な計算量を評価する. また, 法pの条件による計算時間の違いについて考察する.
著者
奈良 一秀 木下 晃彦 田中 恵 村田 政穂
出版者
東京大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

樹木の多くは養分吸収の大部分を外生菌根菌に依存しており、効果的な菌株な選抜・育種ができれば、樹木の成長や定着を促進できる。本研究では、厳しい土壌条件でも効果が期待される菌根菌の選抜や樹木に与える影響の評価を行い、有効な菌群を特定した。また、交配育種に役立つ情報を整備するため、主要な菌群の遺伝子流動や系統進化についても新規知見を得た。
著者
皆川 栄子
出版者
国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

睡眠-覚醒リズムの異常は多くの神経変性疾患に共通してしばしば出現する症状であり、従来、睡眠-覚醒の制御部位に神経変性が波及して出現すると考えられてきた。一方、近年の疫学研究からは睡眠障害が神経変性を増悪させる可能性が示唆されているが、患者特有の睡眠障害が神経変性疾患の脳病理に与える影響は未知である。本研究では神経変性疾患モデルマウスに患者特有の睡眠障害を誘発することに成功し、中途覚醒の回数とマウスの脳病理の重症度との間に有意な正の相関が見られることを明らかにした。
著者
Joel HANSSON Masayuki TAKANO Tadao TAKIGAMI Takahiro TOMIOKA Yasufumi SUZUKI
出版者
社団法人 日本機械学会
雑誌
JSME International Journal Series C Mechanical Systems, Machine Elements and Manufacturing (ISSN:13447653)
巻号頁・発行日
vol.47, no.2, pp.451-456, 2004 (Released:2005-01-25)
参考文献数
9
被引用文献数
3 18

A new method for improving riding comfort by reducing vertical flexural vibrations in railway car bodies using piezoelectric elements is studied in this paper. Piezoelectric elements are attached on the car body in order to convert vibration energy to electrical energy, which can be dissipated in a shunt circuit. Assuming the car body as an elastically supported Bernoulli-Euler beam, theoretical analysis and numerical simulations are carried out. The numerical results are supplemented by experiments on a 1:5 scale model of a Shinkansen vehicle. Both numerical and experimental results indicate that the method yields significant vibration suppression with only a small amount of added weight. Two types of shunt circuits; a single-mode circuit and a multi-mode circuit are studied.
著者
池田 大介
出版者
北里大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

ミオシン重鎖(MYH)は筋運動に必須のタンパク質であるが、四足類や真骨魚類だけでなく、無顎類のヤツメウナギもMYH遺伝子(MYH)がクラスターを形成し、その起源は同一であることが示唆された。また、真骨魚類と四足動物間、および真骨魚類と無顎類間では共通した筋発生の転写調節機構を保持しているが、四足動物と無顎類間ではこの機構が保持されていないことが示唆された。
出版者
立沢剛随筆集刊行会
巻号頁・発行日
1957
著者
加藤 誠
出版者
京都大学
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2014-04-01

平成29年度の研究計画ではWebにおける意見の誘出を主な課題としていた.特に,あるユーザの行動や特定の事象への反応から,そのユーザが持っている意見を推定することを課題としていた.平成29年度は下記の3テーマについて研究成果を得た:1.ソーシャルメディアからの意見誘出: ソーシャルメディア上において,特定の属性(e.g. 学生や高齢者等)を持ち,ある話題に関して意見を発信しているユーザから意見を誘出する方法について研究を行った.ソーシャルメディアにおいて,ある話題に関する意見は発信者の属性と合わせて記述されることは少なく,単純な文字列マッチングによる検索では先述の問題設定に沿うような結果を得ることは困難であった.そこで我々はソーシャルメディアかが構成するグラフへ適合フィードバックを伝播させることによって,特定の属性を持つユーザを効果的に発見する方法を提案した.2. レビューからの意見誘出: レビューからある商品に関する意見を抽出することで,商品を任意の性能順に並び替える方法について研究を行った.我々は相対的な評価(e.g. カメラAはカメラBより夜景が綺麗に撮れる)が絶対的な評価(e.g. カメラAは夜景が綺麗に撮れる)より正確に意見を誘出できる情報であると仮定し,これに基づいて商品を並び替える方法を提案した.実験の結果,相対的な評価による順位付けは絶対的な評価による順位付けよりも正確であることを示した.3. 質問投稿サイトの検索ユーザからの意見誘出: 質問投稿サイトの検索において,複数のランキングを混合することによって,どのランキングが検索ユーザに好まれるかを効率的に推定する方法を提案した.特に,ヤフー知恵袋において3ヶ月間の評価実験を実施し,どの程度のフィードバックを得れば統計的有意にランキング間の差を得られるかを明らかにした.
著者
内山 勝 飯村 憲一 多羅尾 進 ピエロ フランソワ 外山 修
出版者
The Robotics Society of Japan
雑誌
日本ロボット学会誌 (ISSN:02891824)
巻号頁・発行日
vol.12, no.3, pp.117-124, 1994-04-15
被引用文献数
16 14

The HEXA robot is a very fast 6-DOF parallel robot. It uses a parallel mechanism, called HEXA mechanism, which consists of a kinematic chain with five closed loops and is driven only by actuators at its base. This robot consists of six very simple elementary kinematic chains, each of which has only one active joint driven by a powerful DD motor. The moving parts of this robot is made very light at no expense of its stiffness. Therefore, this robot can move very fast and precisely. In this paper, we present development of a prototype of this robot. We choose a so-called Adept motion as a benchmark to measure its capability of fast motion. Experimental results show that the prototype robot can achieve the Adept motion in 0.465 [s/cycle] and prove that the HEXA robot is suited for very fast motion.