著者
中田 高 奥村 晃史 今泉 俊文 隈元 崇 堤 浩之 渡辺 満久
出版者
広島工業大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2005

本研究は,従来の活断層研究により積み重ねられてきた断層の分布や構造に関する静的な断層モデルに対して,地震時の活断層の挙動に関する動的モデルを構築することを主たる目的とした.そのために,1)活断層の位置,形状,変位速度の分布を解明,2)断層変位量計測の新たな手法の開発,3)日本列島の活断層の変位量データベースの作成,4)活断層の挙動に関する動的モデルの検討,を具体的に行った.その結果,議論の多い活断層の不連続部や末端部において,大縮尺空中写真判読による見直しを実施し,これまで活断層の存在が確かではなかった岩国断層や西部や北九州地域の活断層をはじめ多くの活断層について,詳細な位置,形状を確定した.横ずれタイプと逆断層タイプのそれぞれの典型である阿寺断層および横手盆地東縁活断層系について,独自に空中レーザープロファイラーによるDEMを取得し,断層変位地形の把握,断層変位量の計測について,手法の利点と問題点を具体的に検討した結果,レーザー計測データを用いた断層変位地形の立体化が活断層認定に有効であり,正確な変位量の把握には変動地形学的手法の併用が不可欠であることが明らかになった.また,GPS地形測量装置や簡易レーザー計測装置(Handy Station)を用いた断層変位量計測を実施し,その有効性を検討した.さらに,既存の文献に記載された断層変位量などをもとに主要98活断層(帯)の活断層変位量データベースを構築した.これをもとに断層変位量分布の特徴を検討し,幾つかの活断層(帯)について地下のアスペリティの位置を推定した.これらの情報と活断層の幾何学形状から推定した断層の破壊開始点をもとに,主要活断層帯から発生する地震の動的モデルの試案を提示した.
著者
安田 二朗 黒﨑 陽平 浦田 秀造 Uche Sonny Unigwe
出版者
長崎大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

ラッサウイルスによって引き起こされるラッサ熱は致死性の高い感染症であり、西アフリカ、特にナイジェリアでは深刻な問題となっている。本研究では、他の地域よりも高い致死率が報告されている南東部で2012年から2016年にかけてラッサ熱疑い患者から血清121検体を採集し、解析した。RT-PCR検査の結果、32検体がラッサウイルス陽性であった。ウイルス遺伝子の分子遺伝学的解析からこの地域においてウイルスは抗体等の選択圧力を受けることなく遺伝学的に高度に保存された状態で長期間維持されていることが明らかになった。また、病態の重篤化に腸管出血性大腸菌O157:H7の感染が関わっている可能性も示唆された。
著者
味元 宏道 冨田 良照 澤 祥幸 吉田 勉 大野 康 豊田 美紀
出版者
日本肺癌学会
雑誌
肺癌 (ISSN:03869628)
巻号頁・発行日
vol.37, no.2, pp.223-229, 1997-04-20
被引用文献数
4

症例は39歳女性で, 平成4年11月9日, 原発性肺癌(pT2N1M0 : Stage II)で左上葉切除術とリンパ節郭清術を施行した.外来で経過観察していたが, 平成6年5月頃左S^6に嚢胞性陰影が出現した.ツベルクリン反応が強陽性であったため, 肺結核と診断し, 抗結核剤の投与を行った.しかし嚢胞性陰影が拡大し, 嚢胞壁の肥厚がみられ, 喀痰細胞診でClass Vであったことから, 転移性肺癌を疑い, 平成7年9月6日結果的に肺全摘術を施行した.病理標本所見は乳頭状腺癌であった.臨床経過及び胸部X線とCTなどの諸検査の結果より, 本症例は腫瘍そのものの性質よりは交通気管支のvalvular obstructionにcheck valve機構が加わって孤立性薄壁空洞が形成されたものと推測された.
著者
Tetsuya KAWAKITA Fuminori KAWABATA Tomoko TSUJI Motoko KAWASHIMA Shigeto SHIMMURA Kazuo TSUBOTA
出版者
バイオメディカルリサーチプレス
雑誌
Biomedical Research (ISSN:03886107)
巻号頁・発行日
vol.34, no.5, pp.215-220, 2013 (Released:2013-11-02)
参考文献数
19
被引用文献数
2 36

The purpose of this study was to evaluate the efficacy of fish oil supplementation added to usual dry eye treatment in dry eye subjects in a randomized controlled trial. Twenty-seven typical dry eye subjects were selected from 43 candidates by the diagnostic criterion for dry eye in this study. They were assigned to the randomized fish oil group (n = 15) or the placebo group (n = 12). Fish oil group ingested fish oil capsules containing eicosapentaenoic acid (EPA, 1245 mg/day) and docosahexaenoic acid (DHA, 540 mg/day) for 12 weeks. Placebo group ingested placebo capsules without EPA or DHA. A visual analog scale test estimating subjective symptoms, the Schirmer I test, tear film break-up time (BUT) measurement, fluorescein staining, and rose bengal staining were performed every 4 weeks during the 12-week supplementation period and 4-week washout period. The subjective symptom of “eye pain”, BUT, and changes in rose bengal staining score of the fish oil group were significantly improved after 8-12 weeks of supplementation and/or 4 weeks of washout, compared to those of the placebo group. These results suggest that fish oil supplementation added to usual care may be effective in the treatment of dry eye.
著者
高橋 達也 深尾 彰 藤盛 啓成 山下 俊一
出版者
山形大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

マーシャル諸島共和国は、34の環礁と火山島が太平洋中部に点在して構成されている島国である。ここでは、合衆国によって1946-58年の間に66回の核兵器実験が行われた。多くの住民は放射性ヨードやセシウムなどを含んだ放射性降下物を呼吸器あるいは消化器からを体内に取り込んだ。この体内からの放射線被曝(内部被曝)による晩期障害として甲状腺がん罹患増加が予測された。そこで1993年から、現地住民の甲状腺検診を開始し4762名の被曝住民のコホートを確立した。そのコホートのベースライン情報を用いた横断研究では、(1)生年がビキニ水爆実験(1954年)以前の年齢層では甲状腺がん有病率が1.5%と極めて高値である、(2)甲状腺がん有病率は被曝推定線量と関連が認められる可能性があるという結果を得た。しかし、低線量被曝晩期効果としての甲状腺がん有病率と被曝量との関連について統計学的に明確な結論を得ることができなかった。この原因の一つが、放射線被爆量推定の精度の低さと考えられた。そこで、本研究ではこのコホートの個人別甲状腺放射線被曝量を推定した。現在のところ、(1)1954年のブラボー実験で被曝したロンッゲラップ環礁住民の被曝線量を基にした簡易推定、(2)各環礁の残留放射性セシウム量を基にした被曝線量率を考慮しないモデルによる推定、(3)各環礁の残留放射性セシウム量を基にした被曝線量率を考慮したモデルによる推定を行った。(1)の推定を用いた研究結果では約5cGyを超える被曝量の集団では明瞭な線量反応関係が得られた。(2)、(3)の推定を用いたモデルでは統計学手に有意ではないが放射線被曝量と甲状腺がん有病率の間に両反応関係を認めた。今後、追跡で得られた総死亡と甲状腺がん罹患を用いた検討を行う予定である。
著者
久保田 啓一 SUN SHULIN
出版者
広島大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2003

久保田は、これまで収集した成島家関係の資料の整理を行い・東京の内閣文庫や今治市河野美術館などにおいて更なる資料の収集を図った。特に、河野美術館蔵の成島家歴代の筆跡や、成島信遍の周辺の古文辞学者達の書簡の収集は、貴重な成果であった。なお、既発表の論考の電子化などに博士課程の学生の助力を得た。孫は、中島敦と中国思想との関係をより深く究明するために、中島敦家の蔵書(日本大学法学部大宮校舎図書館所蔵)と中島敦の原稿や同家の遺物(神奈川県立近代文学館所蔵)などの全貌を把握した上、その中の儒学・道学関係のものについて調査、資料収集した。また、中島敦家蔵書の『老子・荘子・列子』、『老子翼・荘子翼』、『老子』などの、中島敦の書入れと思われる部分について詳しく調査した。その筆跡鑑定は至難であり、更なる努力が必要と考えているが、これまでの調査により、部分的には明らかになりつつある。この作業は、中島敦と中国思想との真なる関係を究明するためには、かなり意味のあるものと思われる。また、中島敦の研究文献を網羅的に収集することを心がけた。これらの成果を踏まえつつ、博士学位論文の一部に手を加えて、「中島敦「弟子」論-「義」「仁」「中庸」を中心に-」、「中島敦「斗南先生」論-東洋精神の博物館的標本-」、「中島敦《悟浄歎異》中的真・善・美」の3編を発表した。
著者
河野 隆二 春山 真一郎
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. B, 通信 (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.84, no.7, pp.1112-1119, 2001-07-01
参考文献数
26
被引用文献数
24

異なる技術標準や多様な応用の無線システムが混在する状況が今後も続くものと予想され, この状況の問題点を解決し, 究極の無線通信へ近づくブレイクスルーとして, ソフトウェア無線(Software Defined Radio, Software Reconfigurable Radio)が期待されている。本論文では, 環境や応用目的に応じてソフトウェアの変更により通信システム機能を適応できるソフトウェア無線の必要性, 有効性を明確にし, 最近の国内外における研究開発動向を取りまとめるとともに, 実現において克服すべき問題とそのための要素技術を紹介する。 無線通信工学, ソフトウェア工学などの広範な学術領域にまたがる技術の粋を結集して達成できる新たな融合領域であり, 学術的な意義とともに産業界における新システム, サービスの創出へ寄与することが期待される。
著者
播磨 有希子
出版者
京都大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2013-08-30

プロニューラル遺伝子Mash1は、細胞周期を活性化して細胞増殖を亢進させるとともに、細胞周期を止めてニューロン分化を促進するが、このような同一因子が相反する機能を発揮する分子機構に関して未だ不明の点が多い。現在、我々の研究室ではオプトジェネティクス(光遺伝学)の技術を応用して遺伝子の振動発現を光刺激により自在にコントロールする系を樹立した。これは外部から光刺激を与えることによって目的遺伝子のプロモーター活性のON/OFFをコントロールするという新規の方法である。この技術を用いて培養神経幹細胞や脳スライスサンプルにMash1遺伝子の振動発現を誘導させたところ神経幹細胞が増殖し、持続発現を誘導させたところ神経分化が亢進した。以上の実験から、Mash1の発現が振動するか、非振動状態になるかという発現動態の違いでその機能も異なることが明らかになった。現在は、Mash1の発現を可視化するために作製したレポーターマウスを用い、胎児脳や成体脳のスライス培養におけるMash1タンパク質の発現動態解析を独自のリアルタイムイメージング技術に基づき行っている。さらに、神経幹細胞の特定の周期を蛍光タンパク質で標識できる遺伝子改変マウス、Fucciマウスを用いて胎児脳と成体脳の神経幹細胞の発現遺伝子の違いをG1期に注目して解析する予定である。特に、Mash1の標的遺伝子に着目して解析を行う。これらの解析により得られた結果を基にして、最終的にはオプトジェネティクス技術を用いて休眠状態の成体脳神経幹細胞に、振動発現を人為的に誘導したときに変化が起こるかどうかを解析する。これらの研究を基に、遺伝子発現のダイナミックな変動に着目した神経幹細胞の制御機構の基盤原理の解明と再生医療への応用を目指す。
著者
出口 康夫
出版者
京都大學大學院文學研究科・文學部
雑誌
京都大學文學部研究紀要 (ISSN:04529774)
巻号頁・発行日
vol.44, pp.41-84, 2005-03-31

この論文は国立情報学研究所の学術雑誌公開支援事業により電子化されました。
著者
弘報館編輯部 編
出版者
弘報館
巻号頁・発行日
1913

1 0 0 0 OA 独逸語学初歩

著者
平塚定二郎 編
出版者
丸善
巻号頁・発行日
1885
出版者
日経BP社
雑誌
日経アーキテクチュア (ISSN:03850870)
巻号頁・発行日
no.956, pp.46-53, 2011-07-25

柱や梁を建物の外周に出したアウトフレーム構造の超高層ビル。外観を特徴付けるほか、耐震性や機械設備だけに頼らない環境性能も確保する。アウトフレームは100%のプレキャスト化を実現した。 東京都港区の赤坂見附交差点。白い格子を外装にまとった超高層ビルが全貌を現した。鹿島が自社の旧本社跡地で設計・施工するAKASAKAK-TOWERだ(写真1)。
著者
下村健一 著
出版者
東洋経済新報社
巻号頁・発行日
1937
著者
宮島 昌克 池本 敏和 アシュール ネビル
出版者
一般社団法人日本建築学会
雑誌
日本建築学会北陸支部研究報告集 (ISSN:03859622)
巻号頁・発行日
no.48, pp.5-8, 2005-07-10

本研究では、災害時に重要拠点となる医療機関に注目し2004年新潟県中越地震による被害状況を明らかにするとともに、主として、医療機関におけるライフラインの機能被害が医療機能に与えた影響について考察した。その結果、医療施設の場合、建物の被災度判定を行うだけでは十分ではなく、ライフラインの機能被害など、医療機能に影響を及ぼす各要因の被災度を検討し、総合的に医療機能の被災度を判定する必要があることが示唆された。