著者
山本 泰智 山口 敦子
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第33回全国大会(2019)
巻号頁・発行日
pp.1K2J403, 2019 (Released:2019-06-01)

我々はUmaka-Yummy Dataという生命科学分野のLinked Dataを提供するSPARQLエンドポイントの評価システムを構築し、結果を公開している。その目的は、より良いLinked Data利用基盤を構築することであり、そのためには、Linked Data提供者と利用者の相互理解を促すことが必要と考えているからである。SPARQLエンドポイントの評価は稼働率など6つの観点から行い、100点満点の数値化したUmaka Scoreとしている。これまで3年間の運用を経験し、Linked Data提供者から様々な意見や質問を得ている。本論文ではこれらの意見や質問を議論し、上述のより良いLinked Data利用基盤を構築するために必要な事項をまとめた。その結果、Linked Data提供者と利用者の間の相互理解を促すのに先立ち、信頼できる評価を提供するために、Linked Data提供者と我々の間の信頼関係の構築が重要であることが分かった。
著者
新開 明二 小西 陽一
出版者
社団法人 日本船舶海洋工学会
雑誌
西部造船会々報 91
巻号頁・発行日
pp.211-219, 1996-03-29 (Released:2018-03-01)
参考文献数
22

The authors discuss aesthetic and geometric considerations for the ship design. When reading histories of ships, it is easy to confirm that they have many elegant characteristics in shapes. However, papers discussed the aesthetics of ships are rarely to be seen in bibliographies of the naval architecture. This does not mean the naval architecture don't have the philosophy "a sense of the aesthetics". In fact aesthetic characteritics of new ship are always pointed out when introducing the design profile, and thorefore the authors guess that the design process involves a sense of the aesthetics. In order to prove their guess to be right, practical processes in relation to the aesthetics are extraced from the ship design procedure, and so the meaning of the aesthetics in the procedure is made to be clear by using the Golden Section and the Dynamic Symmetry. Finally, it is geometically examined whether the Dynamic Symmetry is applied to the planning of the profile (type) of ship.
著者
細田 絢 田嶌 誠一
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.57, no.3, pp.309-323, 2009 (Released:2012-02-29)
参考文献数
50
被引用文献数
15 5

本研究の目的は中学生の自己肯定感, 他者肯定感と周囲からのソーシャルサポートとの関連を検討することであった。ソーシャルサポート内容として, 直接的にストレスには焦点を当てないが結果的に援助的な効果をもたらす共行動的サポートに焦点を当て, サポート源は父親, 母親, 友人, 教師の4者とし, 中学生305名を対象に調査を行った。サポート源とサポート内容の2点から検討した結果 (1) 自他への肯定感の高い中学生の方が両親からのサポート得点が高いこと, (2) 友人からのサポートは自己肯定感に関連していること, (3) 教師からの道具的サポートにおいて, 男子と女子では自己肯定感の高さによってサポート量の知覚に差があること, が明らかになった。全体として両親からのサポートの重要性と, サポート関係の性差が確認された。また教師以外のサポート源において自他への肯定感の高い中学生の方が共行動的サポートの得点が高く, 親子間や友人間での共行動的サポートの有効性が示された。加えて新たに, 父親による間接的なサポートの効果が示唆された。
著者
上村 順一
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.69, no.11, pp.516-522, 2019-11-01 (Released:2019-11-01)

国立情報学研究所は,前身である学術情報センター時代から電子図書館事業を行ってきた。冊子体の学術雑誌/研究紀要を裁断し,スキャナで電子化したのち,メタデータを付与して検索に供するものであった。運用当初は電子図書館サービス「NACSIS-ELS」として独立したサービスであったが,後年,検索を受け持つフロントエンドとして,学術コンテンツ・ポータル「GeNii(ジーニイ)」の一つの機能であるCiNii(サイニィ)と,コンテンツを保管しておくバックエンドとに分離する改変を行った。その後,文部科学省の施策として,バックエンド部分をJ-STAGEに移管し,CiNiiはCiNii Articlesに移行して,学術論文を検索するサービスに特化した。
著者
笹生 心太
出版者
一般社団法人 日本体育学会体育社会学専門領域
雑誌
年報 体育社会学 (ISSN:24344990)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.77-88, 2021 (Released:2021-05-14)
参考文献数
23

In this study, we analyze nationalism in the sense of its vague attachment to members of the same nation, also called “cognitive nationalism”. As pointed out in previous studies, the national stereotypes found in sports coverage play important roles in the construction of “cognitive nationalism”. Therefore, in this research, we look at the stereotype that “Japanese players are inferior in “physical ability”” in soccer magazines and analyze it quantitatively and qualitatively.The first of the findings of this study is that the popular statement that “Japanese players are inferior in “physical ability”” was rarely seen until the early 1990s. These discourses were for the most part limited to the mid-1990s and early 2000s.The second finding is that since the mid-2000s, Japanese players’ evaluation of “physical ability” has been highly consistent. In other words, discourses with the meaning “although Japanese players are inferior in the strength and size of the body, they compensate with superiority in momentum, quickness, and speed” continued to be produced over a long period of time.Finally, the third finding of this study is that the consistent evaluation of the “physical ability” of Japanese players was possibly built by the slogan “Japanization of Japanese football” advocated by Ivica Osim, who was assigned to coach the Japanese national team in 2006.
著者
G. Leonardos D. Kendall N. Barnard 辻 妙子 西田 耕之助
出版者
Society of Environmental Conservation Engineering
雑誌
環境技術 (ISSN:03889459)
巻号頁・発行日
vol.3, no.8, pp.579-585, 1974-08-18 (Released:2010-03-18)
参考文献数
4
被引用文献数
5 20

化学工業から発生している臭気を評価するために, 標準化した手順で主要な物質53種を用いて, それぞれのニオイ閾値を測定した.これまでから得られている閾値の値は, 測定法の多様性を反映して著しいバラツキを示しており, これには臭気物質の純度, 測定値の取り扱い, 嗅知覚の定義, 被験者, 他物質の影響, 判定の表現様式などの要因が大きな影響をもつと見られるが, 本実験では, これらの原因にもとつくバラツキを最小にした.バックグランド空気で希釈した臭気物質を満した室内に, よく訓練したオーダーパネルを入れて判定させ, すべてこの観測者がその臭いを認知できた最初の濃度を閾値と定義した.ガスクロマトグラフ法による分取や, 異なった製造過程のものを用いた閾値の測定から各物質の化学的純度の影響をも調べた.各成分の閾値の濃度値は六桁の範囲に及んでおり, トリメチルアミンは最も低く (0.0002/ppm v/v) , 塩化メチレンは214ppm以上となっている.53種のうち, イオウ化合物はppbのオーダーと概して低い閾値を示し, イオウ化合物以外のものについては化学構造や化学作用から, そのニオイ閾値の予測は可能性がきわめて低い.
著者
原田 瞬 立山 清美 日垣 一男 田中 啓規 宮嶋 愛弓
出版者
一般社団法人 日本摂食嚥下リハビリテーション学会
雑誌
日本摂食嚥下リハビリテーション学会雑誌 (ISSN:13438441)
巻号頁・発行日
vol.21, no.3, pp.165-172, 2017-12-31 (Released:2020-04-20)
参考文献数
16

自閉スペクトラム症(ASD)は,社会的コミュニケーションの障害を主症状とし,近年増加傾向にある.ASD 児は,定型発達児よりも高い割合で偏食等の食事に関する問題をもつことが知られている.著者は,臨床で口を開けたまま咀嚼しているケースを多く目にした経験から,ASD 児には口腔機能の未熟さがあり,食べにくいという経験を積み重ねやすいのではないかと考えた.ASD 児の口腔機能については,食事場面の観察評価から,捕食,咀嚼,前歯咬断や嚥下の問題が指摘されている.しかし,定量的な指標を用いた評価や定型発達児と比較検討した報告はなされておらず,ASD 児の口腔機能の実態は十分には明らかになっていない.そこで,本研究の目的は,定型発達児との比較によりASD 児の口腔機能の特徴を明らかにすることとした.ASD 群27 名,定型発達群25 名を対象に,捕食機能,咀嚼機能の定量的な評価を試みた.捕食機能については,定型のスプーンからヨーグルトを捕食した際にスプーンに残ったヨーグルトの量から評価した.咀嚼機能については,定型定量のせんべいを摂取した際の咀嚼回数と,咀嚼中にどの程度口唇閉鎖ができているかを評価した.両群の口腔機能を統計的に比較した結果,ASD群においては,口唇を使ってスプーンから食物を取り込む捕食機能が未熟であった.また,定型定量の食物を食べた際の咀嚼回数が定型発達群よりも有意に多く,咀嚼中の口唇閉鎖が明らかに未熟である児が多かった.ASD 児の食事に関する問題については,ASD 児の感覚の偏りや,行動の特性によるものと考えられてきたが,口腔機能の未熟さという視点を加え,総合的な支援が必要であることが示唆された.
著者
鈴木 雅康 平田 光男
出版者
公益社団法人 計測自動制御学会
雑誌
計測自動制御学会論文集 (ISSN:04534654)
巻号頁・発行日
vol.52, no.4, pp.205-212, 2016 (Released:2016-04-15)
参考文献数
14
被引用文献数
1 2

This paper is concerned with the behavior of second-order continuous-time LTI systems with the pulse-width-modulation (PWM) input on sampling instants. The input term of the difference equation describing the state transition is a nonlinear map of the control parameter of the rectangular wave, i.e., duty ratio. It is shown that the nonlinearity can be exactly compensated by varying the center of each rectangular wave as well as its duty ratio.
著者
新井 彬子 浅田 瑛
出版者
日本スポーツマネジメント学会
雑誌
スポーツマネジメント研究 (ISSN:18840094)
巻号頁・発行日
vol.10, no.1, pp.7-18, 2018 (Released:2019-01-19)
参考文献数
60
被引用文献数
1 1

This article presents an overview of athlete branding research. Managing athletes as brands has become an important managerial and academic topic in sport management. However, the number of studies specialized in athlete branding is still limited. By reviewing the paradigm shifts of branding research in the mother field of marketing, the article attempts to identify the research gap in athlete branding research. Other recommendations to stimulate future research in athlete branding are provided.
著者
伊藤 汰地 安井 重哉
出版者
一般社団法人 日本デザイン学会
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集 日本デザイン学会 第65回春季研究発表大会
巻号頁・発行日
pp.8-9, 2018 (Released:2018-06-21)

本研究では、ボタン押下時に指先で知覚する触覚要素の感性評価を行なった成果を述べる。押下は様々な触感で構成されていると考えられる。その押下を構成する要素の中から「押下力」「ストローク」「面積」「温度」の4つの要素とそこからユーザが抱く印象の関係を感性評価にて調べた。まずはじめに4つの触覚的要素を提示するための実験装置の制作を行った。実験装置は、”触覚的要素の定量的変更”、”重りによる釣り合い状態の生成”、”押下面を垂直に保ったままの押下操作”といった点から、ロバーバル機構を取り入れた装置を制作した。次に、実験にて被験者に質問する感性評価用語を選定した。選定では、「操作の出力結果」「操作の対象」「押し心地」に関連があり、その形容詞との関係が見つかることで、押しボタンの設計指標とできるような形容詞対を10個選定した。制作した実験装置を用いて、SD法に基づく感性評価を30名の被験者に対して行った。得られた結果を因子分析したところ触覚的要素ごとに印象に偏りが見られた。これらの結果を元にスイッチへの応用などが考えられた。
著者
福嶋 政期 橋本 悠希 野澤 孝司 梶本 裕之
出版者
ヒューマンインタフェース学会
雑誌
ヒューマンインタフェース学会論文誌 (ISSN:13447262)
巻号頁・発行日
vol.12, no.3, pp.199-207, 2010-08-25 (Released:2019-09-04)
参考文献数
29
被引用文献数
1

"Laughter is the best medicine" and "The good medicine none superior to laughter", as these proverbs have been existed, it has long been believed that laughter has health-promoting effect. Recently, it is confirmed that laughter has various effects of disease treatment. For example, it normalize NK-cell (natural killer cell) activity, relieve pain of rheumatoid arthritis, inhibit rise in blood sugar level and inhibit allergen reaction. Therefore, laughter is widely demanded from daily situation (cartoon, comedy and TV program) to medical situation of the hospital clown etc. In such background, we want to arbitrarily enhance person's laughter, and convert every situation into laughter. To attain this goal, we assumed that laughter can be enhanced by piling up various laugh induced stimuli (titillation, laughter, cartoon, comedy). Based on this assumption, we proposed noble concept of "Laugh enhancer system". According to this concept, we prototyped a system that produces laugh track (laughter) synchronized with the user's laugh motion. We named the system "Flatters". In this paper, after introducing our system overview, we examined laugh enhancement effect of Flatters.
著者
藤井 聡 中野 剛志
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集F4(建設マネジメント) (ISSN:21856605)
巻号頁・発行日
vol.67, no.4, pp.I_213-I_222, 2011 (Released:2012-03-30)
参考文献数
21

本稿では,国(政府)の公共事業の財源についての政治的判断を支援することを企図して,マクロ経済動向に及ぼす影響を加味しつつ,公共事業関係費の「水準」と「調達方法」を毎年どのように「調整」していくべきかの基本的な考え方を整理することを試みた.そして,市場における需要が供給を上回っているインフレ状況にある時には,インフレ緩和のために緊縮財政を基本とすることが得策であり,公共事業においては,公債ではなく,必要に応じた増税の可能性も視野に収めながら税収によって財源を調達することが得策であることを指摘した.一方で,逆にデフレ状況にある時には,デフレを緩和するための積極財政を基本とすることが必要であり,そのための財源については,定常的な税収に加えて公債を自国通貨建ての内債として発行することが得策であることを指摘した.
著者
吉岡 佑二 南角 学 伊藤 太祐 中村 孝志
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.37 Suppl. No.2 (第45回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.A4P2081, 2010 (Released:2010-05-25)

【目的】股関節外転筋群は骨盤の安定性に関して重要な役割を果たし、歩行能力を左右する。股関節外転筋力が低下する代表疾患として変形性股関節症が挙げられるが、臨床現場においてはこういった股関節疾患の患者に対して背臥位での股関節外転運動により筋力トレーニングを行うことがある。同時に変形性股関節症患者で骨盤アライメント異常を呈している場合では、背臥位での股関節外転運動をスムーズに行えない症例を経験する。しかし股関節外転運動についての過去の研究では、股関節外転角度や屈曲角度の違いが股関節周囲筋の筋活動に及ぼす影響を検討したものが中心であり、骨盤肢位が股関節周囲筋の筋活動にどのような影響を及ぼすかは不明な点が多い。本研究の目的は、背臥位での骨盤肢位の違いが、股関節外転運動における発揮筋力および下肢と体幹の筋活動に与える影響を明らかにすることである。【方法】対象は健常成人男性14名(平均年齢24.0±2.8歳)とした。測定肢位は安静背臥位を骨盤中間位とし、その肢位からの骨盤最大前傾位、最大後傾位の3条件とした。骨盤前傾には硬性スポンジを腰仙椎部に、後傾には仙尾椎部に挿入することで傾斜角度を調節した。それぞれの骨盤肢位において、一側下肢を股関節0度外転位から股関節外転の最大等尺性収縮を5秒間行わせ、そのときの発揮筋力および下肢と体幹筋の筋活動を測定した。股関節外転の最大等尺性収縮時の発揮筋力は、徒手筋力計(日本メディックス社製)を用いて測定し、抵抗位置は足関節の外果とした。大転子から外果までの距離を測定し、筋力値はトルク体重比(Nm/kg)にて算出した。筋電図の測定に関しては、測定筋を大腿直筋(RF)、大腿筋膜張筋(TFL)、中殿筋(Gm)の中部線維、腰部脊柱起立筋(LES)とし、表面筋電図計Data LINK(Biometric社製)を使用した。筋電図の波形処理は、測定した生波形から安定した3秒間を二乗平均平方根により平滑化し、各筋の最大等尺性収縮(MVC)時の筋活動を100%として各測定値を正規化し、%MVCを算出した。統計学的分析には反復測定一元配置分散分析と多重比較法を用い、有意水準は5%未満とした。【説明と同意】各対象者には、本研究の趣旨ならびに目的を詳細に説明し、参加の同意を得た。【結果】股関節外転運動時の筋力値は骨盤中間位で2.42±0.33Nm/kg、前傾位で2.13±0.27Nm/kg、後傾位で2.02±0.20Nm/kgであり、多重比較の結果、骨盤前傾位、後傾位のいずれも中間位に比べ有意に小さい値を示した。各筋の筋活動については、RFの%MVCは骨盤中間位で76.4±42.1%、前傾位で54.7±29.4%、後傾位で70.0±37.5%であり、骨盤前傾位では他の2条件に比べ有意に小さい値を示した。TFLの%MVCは骨盤中間位で99.2±36.8%、前傾位で84.6±36.0%、後傾位で96.7±44.2%であり、骨盤前傾位では中間位に比べ小さい傾向を示した(p=0.08)。Gmの%MVCは骨盤中間位で64.2±15.8%、前傾位で66.7±15.2%、後傾位で53.9±19.4%であり、骨盤後傾位では他の2条件に比べ有意に小さい値を示した。LESの%MVCは骨盤中間位で34.3±18.0%、前傾位で37.8±23.9%、後傾位で24.1±16.6%であり、骨盤後傾位では他の2条件に比べ有意に小さい値を示した。【考察】骨盤前傾位ではTFLが短縮位となることで股関節外転運動時のTFLによる筋出力が低下し、骨盤後傾位ではGmの中部線維が短縮位となることで股関節外転運動時のGmによる筋出力が低下すると考えられる。これらのことが要因となり、骨盤前傾、後傾位での股関節外転運動における発揮筋力は、骨盤中間位と比較して有意に低い値を示したと考えられた。以上から、背臥位での骨盤肢位により股関節外転に作用する筋群の走行が変化し、これが股関節外転筋の筋活動に影響を及ぼすことで発揮できる筋力にも関与することが明らかとなった。【理学療法学研究としての意義】本研究の結果から、骨盤のアライメント異常がある股関節疾患患者に対してより効率的な股関節外転筋の筋力トレーニングを行うには、骨盤肢位を考慮することが重要であることが示唆され、本研究は理学療法学研究として意義のあるものと考えられた。
著者
征矢 茉莉子 征矢 英昭
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
化学と生物 (ISSN:0453073X)
巻号頁・発行日
vol.57, no.11, pp.672-678, 2019-11-01 (Released:2020-11-01)
参考文献数
13

貯蔵糖質であるグリコーゲンは筋などの末梢組織だけでなく,脳のアストロサイトにも貯蔵され,ニューロンのエネルギー需要増大時の重要なエネルギー源となる.この時,グリコーゲン分解により生成された乳酸はアストロサイトからニューロンへと輸送され(アストロサイト–ニューロン乳酸シャトル),これが学習・記憶を司る海馬において長期記憶を形成する重要なメカニズムの一つと考えられている.長期的な運動トレーニングは海馬のグリコーゲン代謝に影響を及ぼし認知機能を高めることが明らかとなり,脳とりわけ海馬のグリコーゲン代謝を標的とした運動トレーニングが認知機能向上に有効なスポーツコンディショニングとなり得ることや,低下した認知機能への対抗策として臨床応用の可能性が示唆された.
著者
河角 龍典
出版者
人文地理学会
雑誌
人文地理学会大会 研究発表要旨 2003年 人文地理学会大会 研究発表要旨
巻号頁・発行日
pp.12, 2003 (Released:2003-12-24)

本研究の目的は、平城京の地形環境を復原し、その復原成果と平城京内部の土地利用との関係から、平城京の土地利用規定要因を解明することにある。本研究では、ジオアーケオロジー(geoarchaeology)の方法を適用し、考古学や歴史学の研究成果に対応する精度の地形環境復原を行い、平城京の土地利用との対比を行った。平城京を流下する佐保川流域の地形環境は、奈良時代以降も著しく変化しており、奈良時代の地形環境は現在と異なる地形環境であることが判明した。佐保川流域平野における歴史時代の地形環境変化は、奈良時代以降4つの地形環境ステージに区分できた。表層地質調査からみた奈良時代の平城京は、洪水氾濫の少ない地形環境であった。また、史料からみても奈良時代の水害は、728(神亀5)年の1回にとどまっている。平城京の地形環境復原図と土地利用復原図とを対比した結果、平城京内部の土地利用は、地形環境と密接に関係することが明らかになった。平城京内部の土地利用は、地形の配列に対して決して無秩序ではなく、土地条件を考慮した上で配置されていたと推測できる。平城京の土地利用規定要因の中には、社会環境に加えて、地形環境も含まれていたのである。平城京における市街地や貴族の邸宅は、地下水位が高く、かつ洪水の危険性もある、現在の土地条件評価基準では宅地として不適当な地形に立地する傾向が認められた。これは水を得やすい土地を選択した結果であり、井戸による地下水の取水が容易である土地を選択した結果であると考えられる。こうした土地利用パターンの背景には、集水域面積が狭小で、洪水に対しての安全性は高いが、その一方で水資源に乏しいという平城京固有の立地特性がある。こうしたなかで、平城京内部の土地利用は洪水発生区域には左右されず、生活用水の取水条件あるいは地盤条件が、土地利用を規定する要因となったと考えられる。