著者
前林 清和
出版者
神戸学院大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2009

本研究は、地雷被害が続くカンボジアにおける地雷回避教育を推進するための研究である。まず、カンボジア北部地域、特にポイペト市において、地雷被害調査と地雷教育の実情を調査し、その不備も含めて明らかにした。そのうえで、実際の地雷回避教育プログラムおよび教材を開発した。開発した「地雷ノート」をポイペト市にある小学校3校の子どもたちに配布し、地雷回避教育を実施し、その効果を明らかにした。
著者
東田 光裕 多名部 重則 林 春男
出版者
地域安全学会
雑誌
地域安全学会梗概集
巻号頁・発行日
no.22, pp.57-60, 2008-05

The on-site processing of the unexploded bomb discovered in Higashinada, Kobe, which had been done on March 4, 2007 consisted of various measures. Most of them are similar countermeasures for crisis or disaster management. Government of Kobe City regarded a study of the process as a telling blow to work out their disaster response manuals. It made problems clear through the on-site staffs' opinions and analyses of document materials and completed the systematic after-action report "A Report of the On-site Processing of the Unexploded Bomb Discovered in Higashinada, Kobe". The aim of this thesis is to pigeonhole the on-site process and countermeasures.
著者
Nakazawa Nobuko Hanamura Shunkichi Inoue Eiji Nakatsukasa Masato Nakamura Michio
出版者
Elsevier Ltd.
雑誌
Journal of human evolution (ISSN:00472484)
巻号頁・発行日
2013-05-21
被引用文献数
21

東アフリカのチンパンジーが同所的に生息するヒョウに食べられている最初の証拠を発見. 京都大学プレスリリース. 2013-05-21.
著者
立木 茂雄 林 春男 重川 希志依 田村 圭子 木村 玲欧 山崎 栄一 上野谷 加代子 柴内 康文 牧 紀男 田中 聡 吉富 望 高島 正典 井ノ口 宗成
出版者
同志社大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2008

人と環境の相互作用の視点から災害脆弱性をとらえ、地理情報システ ム(GIS)の活用により、平時における災害時要援護者の個別支援計画の策定や、災害時におけ るり災情報と支援策の重ね合わせによる支援方策の最適化等に資する標準業務モデル群を開発 した。開発成果は東日本大震災被災地および被災地外の自治体で実装した。併せて、東日本大震 災の高齢者・障害者被害率と施設収容率との間に負の相関関係があることを見いだした。
著者
平川 守彦
出版者
琉球大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

「亜熱帯における島嶼型アグロフォレストリーシステムに関する研究」の一環として下記の通りの成果を得た。本研究の実験現場は,今なお,大戦時の不発弾が多数存在するため機械による造成はひじょうに危険である。そのため蹄耕法(不耕起造成)により野草地を利用している。しかし,自生する野草は放牧牛にとって嗜好性が悪く,また,栄養価や再生力も劣るため改善する必要がある。その改善策として,短草型牧草であるセントオーガスチングラス(St.Augustine grass)の導入を試みた。方法は,(1)過放牧後(草高約5cm)(2)火入れ後(3)裸地(地際除草)の区画に30×40cmのセントオーガスチングラス張芝を植え,積算優占度,草量の推移を調査した。その結果,セントオーガスチングラスの積算優占度は,火入れ区において常に70%を維持していたのに対して,裸地区・過放牧区においては低く,20%であった。乾物重は火入れ区,裸地区,過放牧区の順に多かった。火入れ区以外は雑草の占める割合が高かった。以上のことから,火入れ後に張芝を植える方法が,雑草の侵入を防ぎ,セントオーガスチングラスの生育に良い効果をもたらすことがわかった。今後はセントオーガスチングラスの生育を長期間調査し,その牧草の導入が野草地の造成を可能にすることができるかどうかを調べる必要がある。また,アヒルと食肉鶏を利用したウコン畑の雑草防除を比較行動学的に調べた結果,両家禽ともウコンより雑草を好んで採食するため除草作業の一役を担うことがわかった。しかし,アヒルでは休息行動が多くみられ,踏み倒し行動による雑草防除,一方,食肉鶏では,探査行動が多く,つつきによる防除が認められた。
著者
里井 洋一
出版者
琉球大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1993

今研究において二つの目標を設定した。一つは一つの爆弾の被害状況がわかる教材をつくることであり、二つめは太平洋地域における爆撃被害の質的、量的状況の分布教材をつくることにある。1、爆弾被害典型教材として「不発弾」教材を開発した。「不発弾」教材は次の三つの教材性をもつ。(1)砲弾や爆弾が不発弾となった時点で、加害者(国家等)の政治的な意図と関係なく地域民衆に潜在的な脅威をあたえること。…潜在性(2)不発弾を地上から一掃しても、地中に半永久的に眠っているということ…永続性(3)不発弾は日本国内はもちろんのこと世界いたるところに存在していること…世界性2、米軍爆撃資料および空襲体験から、第二次世界大戦における太平洋地域被爆弾体験教材を開発した。この教材は次のような三つの性質をもつ。(1)米軍が太平洋地域に落とした爆弾の三分の二は、日本国内でなく日本が侵略した地域に落としたこと。(2)日本への爆弾の絶対多数が都市地域に対する焼夷弾であるのにたいして、侵略地域の爆弾は高性能爆弾が圧倒的に多く、その被爆地域は都市部にかぎらず全領域にひろがっていること。(3)(2)の性質は、日本国内唯一地上戦を体験した沖縄と共通すること。
著者
Kawasaki Masahiro Yamada Yohei Ushiku Yosuke Miyauchi Eri Yamaguchi Yoko
出版者
Nature Publishing Group
雑誌
Scientific reports (ISSN:20452322)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.1692, 2013-04
被引用文献数
152 9

Behavioral rhythms synchronize between humans for communication; however, the relationship of brain rhythm synchronization during speech rhythm synchronization between individuals remains unclear. Here, we conducted alternating speech tasks in which two subjects alternately pronounced letters of the alphabet during hyperscanning electroencephalography. Twenty pairs of subjects performed the task before and after each subject individually performed the task with a machine that pronounced letters at almost constant intervals. Speech rhythms were more likely to become synchronized in human–human tasks than human–machine tasks. Moreover, theta/alpha (6–12 Hz) amplitudes synchronized in the same temporal and lateral-parietal regions in each pair. Behavioral and inter-brain synchronizations were enhanced after human–machine tasks. These results indicate that inter-brain synchronizations are tightly linked to speech synchronizations between subjects. Furthermore, theta/alpha inter-brain synchronizations were also found in subjects while they observed human–machine tasks, which suggests that the inter-brain synchronization might reflect empathy for others' speech rhythms.
著者
菅井 清美
出版者
お茶の水女子大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1990

20歳から64歳の年齢の異なる被験者8名を用いて、着用衣服素材の身体局所の皮膚温および衣服気候におよぼす影響を検討した。環境温度34℃、湿度45%、気流0.1m/secに調整した人工気候室内で、環境湿度のみを変化させた安静座位実験を行なった。着用衣服は綿/ポリエステルの二層構造からなるトリコット布で作製したシャツとズボンで肌側への着用の仕方をかえて、環境湿度変化の影響を比較した。実験開始約1時間前に人工気候室に入室した被験者は約10分間安静の後、裸体と下着の重量を測定し、シャツとズボンを着用した。温湿度センサ-と購入した皮膚温測定センサ-を装着後、ベッドスケ-ル上の椅子に安静座位状態をとった。実験時間は120分で、20分後に環境湿度を70%にセット上昇させ、70分に再び45%にセット下降させた。各センサ-を購入したサ-ミスタ温度デ-タ収録装置とさらにパ-ソナルコンピュ-タに接続して1分ごとに皮膚温と衣服気候値を得た。本実験環境は比較的暑く、環境湿度を上昇させることによって非常に蒸し暑くなり、間接的な身体加熱の状態となる。多量の発汗の後、環境湿度を低下させると汗の蒸発はその部位から熱を奪い、冷却する。身体から環境への放熱は、発汗とともに体深部から末梢部への血流の増加によって行われ、いずれも皮膚温に大きな影響を与える。皮膚温測定6部位のうち、躯幹部と末梢部をそれぞれ3部位ずつ測定した。初期安静時の皮膚温を放射状グラフで比較した結果、高齢者は躯幹部より末梢部の方が高く、若年者は躯幹部の方が高かった。高齢者の熱に対する耐性が若年者より小さいという事実は、こうした環境に対する生理的な適応からきている可能性が示唆された。素材の比較では綿側を肌側にしたほうが発汗後の温度低下は大きかった。購入したデ-タ収録装置は多点測定ができるので、測定点をふやして高齢者の生理変化を追うつもりである。
著者
佐藤 俊明
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.213-219, 2005 (Released:2005-04-21)
参考文献数
30

心筋細胞のミトコンドリア内膜に存在するATP感受性K+ (mitoKATP) チャネルやCa2+活性化K+ (mitoKCa) チャネルは, プレコンディショニングの成立に重要な役割を担っている. MitoKATPチャネルの活性化によりK+が細胞質からマトリックスへ流入すると, ミトコンドリア内膜が脱分極し, Ca2+のdriving forceが減少するのでミトコンドリアCa2+過負荷が抑制される. MitoKCaチャネルも同様のメカニズムでミトコンドリアCa2+過負荷を抑制する. ミトコンドリアCa2+過負荷の軽減は膜透過性遷移孔の開口を遅らせるためアポトーシスも抑制するので, 強力な心筋保護作用を発揮すると考えられる.
著者
大西 紀夫
出版者
富山短期大学
雑誌
富山短期大学紀要 (ISSN:13462261)
巻号頁・発行日
vol.46, pp.A11-A25, 2011-03-08
著者
形本 静夫 青木 純一郎 内藤 久士
出版者
順天堂大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1989

ソフトボ-ル部活動が児童の体格および体力、特に健康に関連した体力要素に及ぼす影響を1年間にわたり追跡研究した。また、同時に練習時の運動強度およびエネルギ-消費量ならびに練習による尿中成分の変化についても検討を加えた。被験者にはソフトボ-ル部活動に定期的に参加している小学校4年生男子7名と5年生男子6名の計13名と日頃規則的に身体活動を行なっていない5年生男子6名を用いた。なお、5年生部員は翌年の8月の時点でトレ-ニングを中止した。練習時間は冬季が約2時間、夏季は4〜5時間であった。部員が冬季および夏季にそれぞれ平均1時間53分および4時間31分練習に参加したときの運動強度は、被験者のVo_2maxの46±11および39±13%に相当し、冬季の方が高い傾向にあった。また、1時間当たりのエネルギ-消費量も冬季(235±62kcal)が夏季(200±59kcal)よりも高い傾向にあった。しかし、部員が夏季に1日5時間の練習に参加したときのエネルギ-消費量は彼らの1日のエネルギ-所要量の約1/2の1000kcalに達し、栄養学的な配慮が不可欠であることが示唆された。また、練習による蛋白尿の出現は冬季に17例中8例(±〜+)、夏季に18例中11例(±〜++)に認められたが、++の反応(3例)は夏季のみにしか観察されなかった。1年後、トレ-ニングを継続した4年生部員の身長、体重、除脂肪体重、握力、背筋力、垂直跳び、反復横跳びおよび最大換気量ならびにVo_2maxの絶対値には有意な改善が認められた。しかし、体脂肪率や体重1kg当たりの最大換気量およびVo_2maxに有意な変化は見られなかった。このような傾向は夏以降トレ-ニングを中止した5年生部員や対照群の児童にも観察され、定期的なソフトボ-ルへの練習参加が児童の体格や健康に関連した体力要素に及ぼす影響は必ずしも明らかではなかった。
著者
齊藤 愼一
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1997

本研究の目的は、持久性運動後に低下した筋グリコーゲンの回復について、炭水化物摂取タイミングの栄養効果をヒトで明らかにすることに加えて、もっと簡便にその効果を知ることのできる方法の開発にある。平成9年度には、夕方の練習で低下した筋グリコーゲンを翌朝の早朝練習の前までに充分回復させるために、夕食のタイミング(練習終了後から夕食まで)のあり方に目標を絞って、以下の様に検討した。すなわち、健康な成人男子を用いて、1週間の間隔をとって2回、2日間づつの実験日を設けた。いずれの実験でも第一日の夕方に10キロメートルを負荷し、その直後にウエイトトレーニングを負荷した後に、調製した夕食を運動負荷終了後1時間以内と、3時間後の場合の2つに分けて実験を行った。いずれの実験でも一夜安静に休養させた後の翌朝の朝食前に大腿筋より筋サンプルを採取した。また、前日の運動直後にも大腿筋より筋サンプルを採取した。これらのサンプルの筋グリコーゲンを分析した。その結果、運動直後に夕食をとると翌朝の筋グリコーゲン量は高くなり有意に回復したが、運動3時間後に夕食をとると回復が不完全なものが認められた。したがって、夕方の練習で低下した筋グリコーゲンを、翌朝の朝練習前までに回復させるには確実性が高いことがわかった.平成10年度は、平成9年度とほぼ同じ実験をおこなった.第一日の夕方のトレーニング後に、調製した夕食を運動負荷終了2時間後にとる条件で、1つは運動直後に高糖質食のコーンフロステをとる場合ととらない場合の2つに分けて実験を行った。いずれの実験でも一夜安静に休養させた後の翌朝の朝食前に血液を採取し、その後に調整食をとらせ、その後15,30,60,90分に採血した。その結果、運動直後に高糖質の補食をとっても翌朝の朝食後の血糖反応に差はなかった。
著者
永田 旭 平塚 昌文 吉田 康浩 柳澤 純 濱武 大輔 蒔本 好史 白石 武史 岩﨑 昭憲
出版者
特定非営利活動法人 日本呼吸器外科学会
雑誌
日本呼吸器外科学会雑誌 (ISSN:09190945)
巻号頁・発行日
vol.27, no.2, pp.136-140, 2013-03-15 (Released:2013-04-01)
参考文献数
9

食物誤嚥は気道異物の原因の中でも高い割合を占める.他の気道異物と比較して,①X線検査での確定診断が困難,②構造が脆弱で細片化しやすく,摘出が困難,といった点に特徴がある.気道内食物異物の診断・治療について我々の症例をまとめ考察した.2000年1月~2011年10月までに経験した気道異物9例のうち,食物異物6例.内訳は小児4例,成人2例で,原因となる食物は豆類が5例,肉片が1例であった.あらかじめ標準化された手順のもと,全例が全身麻酔下に異物摘出処置を受けた.3例が軟性気管支鏡下,3例が硬性気管支鏡下で施行され,摘出処置に起因する重篤な合併症の発生はみられなかった.気道インターベンションは複雑で多様性に富み,かつ危険を伴う外科処置であるが,他科の協力を含む手順の標準化(プロトコール化)により安全な施行が可能となると考えられた.
著者
岩崎 竹彦
出版者
熊本大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

現在、各地の地域博物館で行われている回想法について、博物館の関与の在り方から3タイプに分類し、それぞれの長所、短所を明らかにした上で望ましい実践方法を提言した。民具がなぜ高齢者の豊かな回想を引き出しうるのかを展覧会を開催することで広く社会に周知すると共に、民具の文化財価値の啓蒙普及に努めた。また、そうした活動を通して回想法は博物館振興につながることを明らかにした。さらに現代人の記憶から時々の社会・時代を象徴するモノが見えてくることを提言し、歴史博物館の現代史展示及び近現代の生活文化にかかる資料収集に有効な事例を収集した。
著者
久保 達也 木原 武士 平林 利郎
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.71, no.3, pp.305-310, 2002-05-15
参考文献数
23
被引用文献数
11

ヒ酸鉛処理がナツダイダイ(Citrus natsudaidai Hayata)砂じょうのクエン酸シンターゼ(CS), NAD依存性イソクエン酸デヒドロゲナーゼ(NAD-IDH)およびホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼ(PEPC)活性に及ぼす影響について調査した.6月4日および7月2日の2回, 樹全体にヒ酸鉛処理を行うことによって, 9月上旬から1月にかけて明らかに砂じょうにおけるクエン酸蓄積が抑制された.ヒ酸鉛処理によって, CS活性は7月下旬から11月にかけて増大し, またNAD-IDH活性は8月上旬以降増大した.しかしヒ酸鉛はPEPC活性には影響しなかった.これらのことから, ヒ酸鉛処理によってTCAサイクルの回転は促進されるが, TCAサイクルへの基質補充量は変化しないために.結果としてミトコンドリアから液胞へのクエン酸輸送量が低下し, クエン酸蓄積が抑制されると考えられた.
著者
篠田 傳
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. EID, 電子ディスプレイ
巻号頁・発行日
vol.106, no.179, pp.1-2, 2006-07-14

サンフランシスコSID2006ではシンポジウムと展示会を中心に,セミナー,ショートコース,アプリケーションチュートリアル,およびビジネスカンファレンスと,多数の会議・イベントが6月4日から9日の6日間に渡り開催された.期間中は展示会を含めて約7500名の参加があり,昨年ボストンで開催されたSID2005同様,大規模で活気ある会議となった.シンポジウムでは4日間に渡り,300件のオーラル発表と230件のポスター発表が行われ,活発な討議が行われた.
著者
松本 卓也
出版者
大阪大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2002

走査トンネル顕微鏡で分子や表面の励起過程を観察しようとするとき、試料基板に電気伝導性が必要であるため、基板への脱励起が深刻な影響を及ぼす。これに対して、原子間力顕微鏡は、絶縁体上での測定が可能であるので、素電荷を容易に検出できる。しかし、原子間力顕微鏡は力学応答を基礎とするため、時間分解能は極めて低く、動的な過程の検出には不向きであると考えられてきた。本研究では、近年、急速に発展した非接触原子間力顕微鏡をベースに、カンチレバーの振動とパルスレーザーを同期させることにより、ミリ秒以下、サブマイクロ秒に及ぶ時間分解能で試料-探針間に働く力を検出することに成功した。非接触原子間力顕微鏡では、局所的な力は、試料が探針に最近接したおよそ1マイクロ秒程度の時間しか働かない。この事実を応用して、パルスレーザー照射による電荷生成の後、ある遅延時間で探針が試料に対して最近接するように制御すれば、時間分解力検出が可能になる。実験では、シリコン基板上に形成した銅フタロシアニン薄摸を試料とし、励起光源として半導体励起YAGレーザーを試料-探針間に浅い角度で照射した。高い感度と空間分解能が得られる非接触原子間力顕微鏡では、探針の振動は自励発振で、その周波数は変動する。従って、外部のトリガーでカンチレバーの振動とパルスレーザー照射のタイミングを制御することはできない。そこで、制御回路を自作し、カンチレバーの振動を一周期ごとに検出し、これをもとに次の周期の運動とのタイミングをとることで、一定の遅延時間制御を実現した。この方法により、実際に遅延時間に対して、半値幅約2マイクロ秒の力学応答を検出することに成功した。
著者
寺川 進 阿部 勝行 櫻井 孝司
出版者
浜松医科大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1998

取り扱いが容易でかつ最も高性能の、超高開口数対物レンズ使用のエバネッセンス顕微鏡を目指して、その照明用光束の導入法について調べた。レーザー光直接方式、円錐ミラー方式、単一モードファイバー方式を比較したところ、単一モードファイバー式が安全性、視野の広さ、簡便性において優れていた。この方式はメーカーの採用するところとなった。しかし、装置は高価で、やや不安定性があり、直接方式にも利点があった。エバネッセンス法を用いて、クロマフィン細胞やβ細胞の開口放出の動態を調べた。両細胞で顆粒内の蛍光物質がフラッシュ反応を伴って放出され、その大きさは顆粒によって大きく異なることが明らかとなった。このフラッシュは、顆粒内から細胞外へ向かう水の噴出を示していた。レーザートラップ法で細胞近傍に微小ビーズを把持すると、分泌に伴いビーズがパルス状に動くことが確認できた。従って、顆粒の内容物は単に拡散で外に出るのでなく、穎粒から同時に噴出する水に乗って外に出ることが分かった。この水流の強さは顆粒膜に在るClチャネルの密度で決まり、抗体法によって観察したチャネル密度は顆粒によって大きくばらついていた。Clチャネル阻害剤は開口放出を抑えずにフラッシュ反応を抑えた。これらのことより、顆粒ごとにその放出の強さが大きく異なっていることが明らかになった。さらに、β細胞においては、顆粒からの放出直後にも、顆粒は細胞膜に結合したまま横方向に移動することが明らかになった。顆粒内物質は完全に放出されずに残留し、リサイクル後に再充填される可能性が示唆された。以上の結果を、すでに観察した共焦点顕微鏡による顆粒蛍光の段階的な減少の観察結果と合わせると、内分泌系の細胞では、開口放出に際しての信号物質の放出は量子的には起こっていないことが結論され、いわゆるquantal仮説は成り立たず、より複雑な調節作用が存在することが結論された。