著者
加藤 昌子
出版者
日本結晶学会
雑誌
日本結晶学会誌 (ISSN:03694585)
巻号頁・発行日
vol.63, no.1, pp.2-7, 2021-02-28 (Released:2021-03-04)
参考文献数
19

Soft crystals, which are defined as flexible response systems with high structural order, respond to gentle stimuli such as vapor exposure and rubbing but maintain their ordered structures and exhibit remarkable visual changes in their shape, color, and luminescence. This article focuses on the soft crystals composed of platinum(Ⅱ) complexes bearing aromatic ligands that exhibit characteristic luminescence by assembly. When the complex units are stacked with short Pt…Pt contacts, a new emission state called 3MMLCT (i.e. metal-metal-to-ligand charge transfer) are generated on the basis of the Pt…Pt electronic interaction, and the 3MMLCT energy can change by the slight deformation of the stacking structure in response to gentle stimuli. These properties make platinum(Ⅱ) complexes soft crystals, and the precise control of the Pt…Pt interaction and other intermolecular interactions enables the precise control of photofunctions beyond the existing limitation.
著者
田中 康雄
出版者
日本小児耳鼻咽喉科学会
雑誌
小児耳鼻咽喉科 (ISSN:09195858)
巻号頁・発行日
vol.38, no.3, pp.253-259, 2017 (Released:2018-03-31)
参考文献数
4

発達障害に対する小児耳鼻咽喉科臨床と発達障害臨床を対比した。さらに発達障害という存在について考察し,治療対象とすべき障害は生活障害であると主張した。そのうえで,親・家族が抱える思いを想像し,親・家族への応援のあり方,説明方法,さらに本人への応援や生活支援者への応援について検討した。発達障害臨床とは相手の思いに思いを馳せつつも,決して完全には重ならないという,当たり前のことを述べ,それでも相手が主体的に生きていくよう応援するため,相手のためにこちらが悩み,いろいろと心配し,そしてなによりも苦しさに耐えて投げ出さないという覚悟が大切であると説いた。見返りの少ない活動であり孤軍奮闘と寂しさのなか,応援する者もまた,応援を必要としていることを強調した。生活障害を応援することは畢竟,気負うことなく,奢ることなく,恥じることなく,「素人の相談者と評される」ことであろう。
著者
小野 佐和子
出版者
公益社団法人 日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究 (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.60, no.5, pp.395-398, 1996-03-28 (Released:2011-07-19)
参考文献数
23

駿河原宿植松家の帯笑園の訪問者の内, 高家大名等身分ある人々の訪問の具体的な有り様を, 植松家に残された日記と立ち寄り記録により明らかにした。彼らにとり帯笑園は, 園内の植物と共に, 富士の眺めや書画のコレクションが魅力であり, 植木好きの訪問者には, 植物や栽培法の知識を得情報を交換し, 珍しい植物を手に入れる場であったこと, さらに, 植松家は訪問者を通じて書画の収集を行っており, 身分ある人々の訪問は, 植松家にとって, 書画を集める有効な機会であったとする知見を得た。
著者
田島 靖崇 後藤 春彦 山村 崇
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.51, no.3, pp.960-965, 2016-10-25 (Released:2016-10-25)
参考文献数
15
被引用文献数
2

初期に開発された日本のニュータウンは現在、人口減少や施設の老朽化などの問題を抱えている。とりわけ、これらのニュータウンの商業施設として計画された「近隣センター」は苦境に立たされている。そこで、周辺エリアを含めて、商業環境の変化を丁寧に読み解き、生活拠点としての近隣センターの役割を再定位することは重要であると考えられる。 本研究では、以下の3点を明らかにした。1)ニュータウン内部に加えて、隣接地域を含めた商業施設立地から、当初近隣センターが担っていた商業機能の一部が外部に移っていること。2)近隣センターの機能変化として、小売店舗数が減少し、新たにNPOや福祉が新規参入している傾向があり、近隣センターによって、機能変化の程度に差があること。3)住民は距離的近接性を重視して近隣センターやコンビニを選んでおり、こうした実態は近距離施設の重要性を指摘していること。
著者
高森 茂
出版者
美味技術学会
雑誌
美味技術研究会誌 (ISSN:13481282)
巻号頁・発行日
vol.2003, no.3-4, pp.45-49, 2003-10-31 (Released:2010-06-28)
参考文献数
2
著者
山口 正雄
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.105, no.8, pp.1451-1454, 2016-08-10 (Released:2017-08-10)
参考文献数
13

薬剤アレルギー(drug allergy)は,今まで国内にも国際的にも確立されたガイドラインがなく,眼前で起きてほしくない不運,あるいは予知・予測とはほど遠い偶発的事象と捉えられがちである.確かに,薬剤アレルギーは他の疾患と比べて扱いづらいところがあり,医原性(iatrogenic),そして正確な診断と有症率調査が難しいという特徴を持っている.薬剤アレルギーの患者数を「現時点で症状を有する数」として把握するのは不可能であり,薬剤アレルギーの既往歴を把握する必要があるが,患者の記憶および自己判断に頼らざるを得ない.そして,臨床現場で当該薬剤を投与される患者数を,短期投与から長期投与までを正確に全数把握するのも困難であり,投与患者総数に対して薬剤アレルギーを発症した患者の比率の算出が極めて難しい.薬剤アレルギーの診断基準が確立していないことも問題である.症状,機序が多様であるだけでなく,アレルギー機序で生じたのではない反応(例:X線造影剤によるアナフィラキシー)や,機序不明の反応も薬剤アレルギーに含めることも多く,検査についても万能なものがない.さらには,医師により薬剤アレルギーの解釈が異なっており,IgE依存性のI型反応だけを薬剤アレルギーと称する医師・研究者も少なくない. 2015年にJ Allergy Clin Immunol誌に掲載された米国の報告(平成25年3月19日に開催された,薬剤アレルギーに関するワークショップの概要)1)によると,drug allergyという用語自体が検討対象となっており,代案としてdrug hypersensitivity(薬剤過敏症)も検討されたが,後者については機序が免疫機序に限らない(例えば,代謝酵素欠損による副作用も含むことになる)という懸念が示されている.薬剤アレルギーのうちでも,内科医にとって重症度や緊急度の観点から特に注意を要するのは,即時型反応(アナフィラキシーや蕁麻疹)と重症薬疹である.筆者は,薬疹は専門外ではあるが,本稿では,即時型反応の最近の知見に加えて,重症薬疹に関して欧米の記載を読む際に注意しておくべきポイントについて触れておきたい.
著者
橋本 新助
出版者
一般社団法人 日本機械学会
雑誌
機械學會誌 (ISSN:24331546)
巻号頁・発行日
vol.39, no.235, pp.623-627, 1936-11-01 (Released:2017-08-01)

鉄道省流線形車輌一般に就て略述し特に新製大阪神戸間急行用流線形電車の構造及び性能に就き詳述し、最近の実驗数値に基き同電車の消費電力量の節約及び走行抵抗の減少を示し、最後に流線形鉄道車輌の將来を述べたものである。
著者
小林 正佳
出版者
社団法人 におい・かおり環境協会
雑誌
におい・かおり環境学会誌 (ISSN:13482904)
巻号頁・発行日
vol.45, no.4, pp.246-251, 2014-07-25 (Released:2018-02-13)
参考文献数
26
被引用文献数
4 3

嗅覚はにおいを感じる化学感覚で,これに異常が生じた状態を嗅覚障害という.嗅覚障害は量的障害と質的障害に分類され,量的障害には低下と脱失があり,質的障害には異嗅症,嗅盲,嗅覚過敏,その他(悪臭症,自己臭症,幻臭,鉤回発作)がある.嗅覚障害は障害発生部位に基づいて呼吸性,嗅粘膜性,混合性,末梢神経性,中枢性の5つに分類される.嗅覚障害の原因疾患は慢性副鼻腔炎,感冒,頭部外傷の順に多く,これらを嗅覚障害の三大原因という.嗅覚障害の有病率は米国で人口の1〜3%であるが,日本ではまだ調査報告がなく,不明なので今後の疫学調査が望まれる.
著者
小山 清男
出版者
日本図学会
雑誌
図学研究 (ISSN:03875512)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.37-42, 2000 (Released:2010-08-25)
参考文献数
6
著者
松森 晶子
出版者
日本言語学会
雑誌
言語研究 (ISSN:00243914)
巻号頁・発行日
vol.150, pp.59-85, 2016 (Released:2016-11-17)
参考文献数
17
被引用文献数
3

本稿は,琉球八重山諸島の黒島方言に焦点を当てて,この方言のアクセントの仕組みを明らかにする試みを行う。まず本稿では,黒島方言には(一見したところ)原因不明なアクセントの型の交替が見られる,という事実の指摘から始め,このような交替の原因を明らかにするためには,これまで多良間島や池間島などのいくつかの宮古諸島の体系において,そのアクセント位置の算出に機能していることが分かっている「韻律語(音韻語)(PWd)」という韻律範疇を想定することが必要になることを論じる。あわせて本稿では,これまで二型アクセント体系として記述されてきた黒島方言は,実は3種類の型の対立を持つ三型アクセント体系であることも報告する。そして,どのような条件のもとでその3種類の型の区別が明瞭に出現するのかを予測・説明するためにも,やはり上述のPWdという韻律範疇の想定が不可欠であることを論じる。
著者
水鳥川 和夫
出版者
社会経済史学会
雑誌
社会経済史学 (ISSN:00380113)
巻号頁・発行日
vol.78, no.1, pp.99-118, 2012-05-25 (Released:2017-06-10)

本稿は前稿で明らかにした畿内・西日本に引き続き,中世東日本で標準的に使われた升の成立と変遷及び使用升の容積を明らかにしようとするものである。15世紀に西日本で標準升であった讃岐斗は,さらに東北日本でも標準升として見出され,畿内でもこれとほとんど同じ畿内本斗が標準升であったから,日本列島の過半をカバーする広域的な標準升が存在したと考えられる。一方,15〜16世紀に畿内から山陽道にかけて売升が市場升として普及していたが,東日本では15世紀に南関東,東海,伊勢にかけて市場京升と等量の下方升を使用する市場圏が存在した。この下方升市場圏は16世紀初頭には近江国を,天文年間には京都を組み込み,京都において市場京升を成立させたと考えられる。この京升は,後に公定升となり,全国に普及した。しかし,民間市場取引では,天下統一が進むにつれて讃岐斗またはこれとほぼ等量の畿内本斗が標準升となり,近世初頭には全国をカバーする標準升となった。讃岐斗と畿内本斗は1%程度の違いがあったが,寛文頃に畿内本斗へと統一されていったと考えられる。
著者
小西 彬仁 安田 誠
出版者
公益社団法人 有機合成化学協会
雑誌
有機合成化学協会誌 (ISSN:00379980)
巻号頁・発行日
vol.79, no.3, pp.224-233, 2021-03-01 (Released:2021-03-10)
参考文献数
46

Nonalternant hydrocarbons, which involve odd-membered rings, are an intriguing family for investigations of the structure-property relationship of π-conjugated carbocycles. Bicyclic nonalternant hydrocarbons, azulene, pentalene and heptalene, are the most fundamental molecules in a series of nonalternant hydrocarbons. Over the last 15 years, the chemistry of nonalternant hydrocarbons has experienced a remarkable renaissance mainly thanks to advances in synthetic methodologies. Ring-annulated nonalternant π-systems, in which some benzenoid rings are attached into the nonalternant frameworks, are the key players in their resurgence. The ring annulation impacts the electronic structures of nonalternant subunits, which modulates the HOMO-LUMO gap and creates perturbations in their inherent (anti)aromatic nature. The tunable, narrow HOMO-LUMO gap has offered rich studies into the electronic properties of open-shell characters and into their potential applications as functional organic optoelectronic materials. This article describes our recent studies on the synthesis and characterization of π-extended nonalternant hydrocarbons, containing azulene, pentalene and heptalene frameworks.
著者
富岡 紘
出版者
公益社団法人 日本コンクリート工学会
雑誌
コンクリート工学 (ISSN:03871061)
巻号頁・発行日
vol.23, no.8, pp.50-57, 1985-08-01 (Released:2013-04-26)

本四連絡橋亀浦高架橋は, 神戸・鳴門ルート大鳴門橋に接続する四国側の長大PC道路橋である。 本橋は暫定4車線で施工されているため, 全幅が18.25mと比較的広く, 2径間連続箱げた橋および3径問連続箱げた橋2連からなる。2径間部はフレシネー工法, 3径間部はディビダーク工法によりそれぞれ施工され, そのうち道路および漁港施設と交差する部分の側径間部の施工にあたっては, 仮支柱を構築してワーゲン施工を行った。 本稿は, 3径間部の上部工の施工について述べる。