著者
米澤 朋子 ブライアンクラークソン 間瀬 健二
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.43, no.8, pp.2810-2820, 2002-08-15
参考文献数
12
被引用文献数
9

本論文では,文脈に応じた音楽表現を用いた,新しいぬいぐるみインタラクションを提案し,その効果を評価するものである.様々なセンサを埋め込んだぬいぐるみとの接触インタラクションにより,あらかじめ与えたぬいぐるみの内部状態を変化させ,その状態に応じた音楽を生成するシステムを実装した.また,人間同士のコミュニケーションにおける,本システムの音楽表現による効果を評価した.We present a sensor-doll capable of music expression as a sympathetic communication device. The doll has a computer and various sensors to recognize its own situation and the activities of the user. It also has the internal ``mind'' states to reflect different situated contexts.The user's multimodal interaction with the passive doll is translated into musical expressions that depend on the state of mind of the doll. Finally we evaluate the effect ofmusic expression to the human communication using the tactile doll.
著者
圓田 浩二
出版者
沖縄大学
雑誌
沖縄大学人文学部紀要 (ISSN:13458523)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.55-64, 2004-03-31

本稿は近年増えつつあるとされる男性の摂食障害に焦点を当て、「なぜ男性が摂食障害になるのか?」、「男性の摂食障害は女性の摂食障害と比較してどう違うのか?」という問いに答えるべく、社会学的見地から男性における摂食障害の原因について考察を深めている。具体的には、文献資料とインタビューデータを用いて、男性摂食障害者の発症モデルを構築する。この作業によって四つのモデルは構築された。(1)ボディ・イメージ型、(2)食事不安型、(3)ジェンダー・アイデンティティ型、(4)環境不適応型である。結論として、ジェンダー・アイデンティティ型を除くと、三つのモデルに男性らしさや男性的価値観が影響していることがうかがえる。それらはさらに二つのタイプに分類できる。一つは見た目に関わるボディ・イメージ型と、もう一つは常に成功者や勝利者でなければならず、失敗を恐れ、それが他人に知られることを極度に恐れる食事不安型と環境不適応型がある。
著者
山内 祐平
出版者
東京大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2001

本年度の研究では、昨年度にひきつづき、日本のメディアリテラシー教育に歴史的に特徴として見られるメディア制作活動と最近になって概念に導入された批評する活動の関係に関するモデル化を行った。特に、日本民間放送協会と東京大学大学院情報学環MELL Projectで行われた実践を中心にモデル化と分析を行った。「民放連プロジェクト」は、送り手と受け手が放送メディアを学び合う、新しい場を地域社会の中に作っていくことを目的としている。今年は、昨年度に引き続き、長野県と愛知県でパイロット研究を進めるとともに、宮城県、福岡県でも実践を行った。長野県は、テレビ信州と同県でメディアリテラシー教育を推進している林直哉・梓川高校教諭を中心とする各地の中学、高校で共同研究を行っている。愛知県は、東海テレビ放送と清水宣隆教諭をはじめとする私立春日丘中学・高校で実践が行われた。宮城県では東日本放送とせんだいメディアテーク、南方町ジュニアリーダーの協力体制の元生中継番組が制作された。福岡県では、RKB毎日放送と子どもとメディア研究会、台湾政治大学附属小学校の間で国際交流学習が行われた。今年の研究では、長野の実践を、メディア・リテラシーに取り組むリーダー(学校教師、子供たちのリーダーなど)を養成するためのプランとして、愛知の実践を地域に根ざした活動を定着させるためのプランとして、宮城の実践を社会教育に開かれたモデルとして、福岡の実践を教育NPOに開かれたモデルとして位置づけて、モデル化を行った。
著者
洪 ゆん伸 (2007) 洪 ユン伸 (2006)
出版者
早稲田大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2006

申請者は、日韓関係における「ナショナリズム」を考察するため、「沖縄」に注目してきた。特に、沖縄と韓国における「女性」の表象と国民国家の関係を、その構造的側面が顕著に現れる戦時や占領状況から、具体的な歴史分析と国際関係理論の接点を通して考えてきた。本研究の意図は、日本と韓国におけるナショナリズムの問題を、世界システムのなかで最もミクロな認識的アプローチを通し考える領域たる、「ナショナリズム」と「占領」との関係を検証することにある。既存の研究において沖縄と韓国の軍政関係の比較研究は行われていないために、両地域における軍政関係の関係性は、特に安全保障のアクターとして国家を設定した研究では十分に検討できなかったのが現状である。申請者は、軍政関係の比較研究における「軍政と住民」を基本スタンスとし、「軍政」(占領)概念を、「行為主体」として「国家が持つ脆弱性」として再定義した。このような「占領」概念を最も顕在的に論じるため申請者が注目したのが、沖縄における女性体験である。特に、「従軍慰安婦」や「辻遊郭(「売春婦」)の事例を用いて分析を行ってきた。本研究の分析方法は、次のような三つの方向性を持って行われた。第一、「慰安を与える女性とナショナリズム」。第二、「売買春の歴史的考察と『聞き取り』の位置-被害者の証言の主体と客体」、第三、「占領の再定義」がそれである。第一の方向性は日本軍と米軍による性サービスの場を歴史的に位置づけるものである。第二は、ジェンダー理論の中で具体化した。さらに、第三では、歴史学とジェンダーの接点を追求した。このような方向性を持った研究を通し最終的に「占領」概念を再定義した。本研究は、占領下の女性体験というものがある土地に住んでいる住民にいかなる影響を与えたのかを捉える点で、今なお続いている戦争に普遍的な価値判断を与えるものである。また、日本軍占領から米軍占領へと変る過程で総力戦における戦闘員から非戦闘員として変貌している住民の姿を、新たな占領概念から位置づけた点においては、沖縄学に新しい視点を提示するものである。
著者
古谷 毅
出版者
独立行政法人国立博物館東京国立博物館
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2000

高い技術的専門性が要求される形象埴輪を樹立する古墳は、古墳時代前半期に近畿地方から各地方に急速に拡大したが、その背景には埴輪工人(製作技術者)の派遣を伴う埴輪生産を想定することができる。このような古墳は古墳時代中期に関わる前期末(4世紀後半〜末)頃と中期中(5世紀前半〜中)頃、および中期末(5世紀後半〜末)頃に集中している。研究期間の3ヶ年で、各地方で形象埴輪を樹立する当該期の主要古墳出土資料の調査を実施した。調査対象は福岡県沖出古墳・鋤先古墳、熊本県向野田古墳・天水小塚古墳、大分県亀塚古墳・御陵古墳、山口県柳井茶臼山古墳、広島県三ッ城古墳・三玉大塚古墳、岡山県天狗山古墳・金蔵山古墳・西山古墳群、愛媛県鶴ヶ峠古墳群・妙見山古墳、大阪府五手冶古墳、奈良県室宮山古墳・石見遺跡、和歌山県車駕之古址古墳、京都府私市円山古墳、滋賀県野洲大塚山古墳、岐阜県昼飯大塚古墳、三重県宝塚1号墳、長野県倉科将軍塚古墳・天神山1号墳、山形県菅沢2号墳、岩手県角塚古墳出土埴輪などである。調査に際しては、福岡・熊本・大分・山口・広島・岡山・愛媛・大坂・京都・奈良・和歌山・滋賀・岐阜・三重・静岡・長野・群馬・山形・岩手の各府県在住の古墳研究者を研究協力者として依頼し、実測・撮影などの資料調査を行ったほか、関連資料の調査および文献収集も実施した。また、各地方で研究協力者と埴輪生産の技術交流と古墳文化の伝播をテーマとした研究会を実施し、当該期首長層の古墳築造に関する技術交流からみた政治的関係について検討した。このほか、大学院生を研究補助として、写真・図面などの調査資料と文献資料の整理を進め、東京国立博物館蔵の宮崎県西都原古墳群、群馬県赤堀茶臼山古墳・奈良県石見遺跡出土資料などの接合・分類と実測も実施した。
著者
後藤 仁志 関野 秀男 墨 智成 市川 周一
出版者
豊橋技術科学大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

本研究は大きく分けて(1)マルチ分子オブジェクト法のための分子計算プラットフォームの構築、(2)階層化分子シミュレーションのための分子計算技術の開発、(3)不均一計算タスクの負荷分散アルゴリズムの開発、の3つの部分からなる。それぞれに関する研究実績の概要を以下に示す。(1)マルチ分子オブジェクト法による並列化効率と計算精度の向上を目指し,大規模系の結晶シミュレーション技術の開発を行った。その結果,分子間相互作用エネルギー和で14桁までの精度保障を実現すると伴に,およそ4億原子で構成された直径0.1μmもの分子性結晶計算に成功した.また、実用化レベルで結晶多形間の相転移シミュレーションによる熱力学解析法の開発に成功した.(2)マルチウェーブレット基底を用いたTDHF/TDDFT時間依存シュレディンガー方程式の解法や超分極率の算定法などの開発を行なった.これらは,現時点では大規模系への適用は容易ではないが,今後,不均一系に対する密度汎関数理論の開発へ展開することが大いに期待できる結果となった.(3)分子シミュレーションの計算タスクに対して演算性能が不十分なヘテロ分散計算環境では,実践的な負荷分散アルゴリズムは困難であることが分かった.そこで,分子シミュレーションに利用されることが多いマルチコアCPUをクラスター化したヘテロ分散環境を想定し,マルチコア/マルチスレッドシステムの負荷分散アルゴリズムめ開発に着手した.
著者
久光 徹 新田 義彦
雑誌
全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.48, pp.45-46, 1994-03-07

データ構造の工夫や主記憶の大規模化により辞書引きが大幅に高速化された現在, 最尤解抽出部の効率化は形態素解析の効率改善において重要な位置を占めるに至った. 我々はこの問題を, 従来あまり深刻に考察されたことのない動詞の活用処理に焦点を当て, 非サ変動詞活用処理に用いる辞書見出しの側面から考察する. 以下では, 従来方式(音韻論的扱い, 及び学校文法に準ずる扱い2種類)を簡単に示した後, 動詞の音韻的語幹の末尾子音を屈折接辞先頭側に付加した見出しを用いる新手法を提案し, 計算効率を含む種々の観点から従来方式に対する優位性を示す. 提案法は, 最も一般的な活用語尾分割方式の辞書にわずかな変更を加えるだけで実現できる.
著者
長嶋 洋一
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告音楽情報科学(MUS) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2002, no.14, pp.59-64, 2002-02-15
参考文献数
27

16チャンネル筋電センサMiniBioMuse-IIIによるリアルタイムMIDI情報を受けて、新しいMax4/MSP2により実時間楽音合成を行った新作BioCosmicStorm-IIの、フランス/ドイツでの世界初演に関して、ドイツ・カッセルで開催された音楽と工学に関する国際ワークショップでの講演と合わせて報告を行う。多チャンネルセンサフュージョン情報のトラフィック、グラフィクスのミラーリング同時表示、多チャンネル・ソフトウェアシンセシス、という情報処理量の評価、その適切なチューニングによる作品実現のノウハウとともに、マルチメディアアートのパフォーマンスプラットフォームとしてのMax4/MSP2の性能と課題について検討した。This paper reports the application and performances with new electromyogram sensor called "MiniBioMuse-III". This sensor detects 16 channels (both arms) of EMG and converts the information to MIDI signal. I will discuss the artistic and technical points with Max4/MSP2 environment, and I will report my workshop at CCMIX and my lecture in the international workshop on "Human Supervision and Control in Engineering and Music" in Kasssel.
著者
和泉 潔 池田 翔 石田 智也 中嶋 啓浩 松井 藤五郎 吉田 稔 中川 裕志 本多 隆虎
出版者
人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 (ISSN:13479881)
巻号頁・発行日
vol.25, 2011

本研究では,新聞記事データを用いた業種別株価指数の分析の新たな手法を提案した.本手法を用いて,2009年の1 年間を対象に外挿予測精度を評価した結果,予測精度の目標とした52%を超えた業種は,19 業種中11業種(57.8%) であった.また,予測正答率は時期・業種によって予測正答率の季節性が見られた.これにより,期間毎のテキストマイニングによる予測の信頼度を測る指標になることが期待できる.
著者
三浦 要
出版者
金沢大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

哲学のあり方という根本的な部分で対比されるプラトン(ソクラテス)とソクラテス以前は、その思索のあらゆる点において対立するわけではないし、むしろ、プラトン独自の哲学観の枠内で積極的に受容されることにより、その哲学の形成において非常に大きな影響を与えており、また、たとえ対立するとしても、その対立自体が今度はプラトンの新たな思索の形成の契機となっている。例えば、継承という点で言えば、何よりもまずエレアのパルメニデスを挙げなければならないだろう。プラトンは彼を父親と呼び、真理と思わくの二分法や、真実在についての概念など、彼に多くのものを負っているし、後期対話篇では彼との対話を試みている。そこでは「父親殺し」と称される有論が展開されているが、それは決して「父親」の教説を全否定するものではなく、むしろプラトンの有論の揺るぐことのない基盤となっているのである。また、プラトンの認識論における知性と感覚(そして真理と思わく)は、言うまでもなくプラトンにおいて初めて明確に表明された対立概念ではない。むしろ、クセノパネス以後の認識論の展開の中で、慣習的通念や経験の曖昧さ(その対局には神的知識が想定されている)が徐々に自覚され、ピロラオス、そして原子論者のデモクリトスにおいてようやく明確な形で価値的に峻別されることになったのであり、プラトンの感覚と知性に対する見解はその延長線上にあるのである。さらにまた、アナクサゴラスの自然学がプラトンの魂や分有概念に与えた影響も見逃せない。このように、プラトン哲学の基底においてソクラテス以前哲学者は、肯定的な形であれ、否定的な形であれ、きわめて重大な要素をなしているのである。
著者
高山 太輔 中谷 朋昭
出版者
農業情報学会
雑誌
農業情報研究 (ISSN:09169482)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.19-25, 2011 (Released:2011-04-01)
参考文献数
12
被引用文献数
6 4

耕作放棄地の増加等により多面的機能の低下が特に懸念されている中山間地域等において,農業生産の維持を図りつつ,多面的機能を確保するという観点から,2000年度より「中山間地域等直接支払制度」(以下,直払い制度)が導入された.直払い制度の効果については,耕作放棄の防止,集落・地域活動の維持活性化,多面的機能の確保等があげられている.本稿の目的は,北海道の農業集落を対象として,政策効果が発揮されると予想される項目の中から,耕作放棄地率に着目して,直払い制度によって耕作放棄地率の増加がどの程度抑制されたのかを計測することである.この目的を達成するためには,地域農業の現状を記録した農業情報を必要とするが,本稿では2000年と2005年の農林業センサスの農業集落カードを利用した.また計測にあたっては,政策効果をより偏りなく推定する方法として利用される「差分の差」推定法を用いた.処置群の直払い制度前後の変化を対照群と比較した「差分の差」推定の結果,直払い制度は,北海道の全集落,上川空知の水田集落ともに耕作放棄地率の悪化を緩和する効果があることが認められた.