著者
厚地 淳 田村 要造 鈴木 由紀 安田 公美 相原 義弘 田村 要造 鈴木 由紀 安田 公美 相原 義弘
出版者
慶應義塾大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

ネヴァンリンナ理論は、有理形関数の除外点の個数を評価するなどの有理形関数の値分布の研究に使われる基本的な理論である。古典的なネヴァンリンナ理論が確率論を使って記述できることは研究代表者などの研究により知られている。本研究は、この確率論との関係をより深く研究することにより、一般のケーラー多様体上で定義されている有理形関数に対するネヴァンリンナ型理論を構築する。さらにそれを応用して、ケーラー多様体上の有理形関数の値分布、特に除外点の個数の評価への応用を研究した。
著者
牧平 清超 二川 浩樹 西村 春樹 西村 正宏 村田 比呂司 貞森 紳丞 石田 和寛 山城 啓文 金 辰 江草 宏 福島 整 浜田 泰三
出版者
社団法人 日本補綴歯科学会
雑誌
日本補綴歯科学会雑誌 (ISSN:03895386)
巻号頁・発行日
vol.45, no.3, pp.403-411, 2001-06-10 (Released:2010-08-10)
参考文献数
22
被引用文献数
4 4

目的: 本研究は, 市販義歯安定剤の細胞活性への影響および炎症性サイトカインであるインターロイキン1βの発現誘導に及ぼす影響を検討した.方法: 細胞活性への影響はaqueous soluble tetrazolium/formazan assay (MTS法) を用いて, またインターロイキン1βの発現誘導はEnzyme-linked immunosorbent assay (EUSA法) を用いて評価した.結果: クリームタイプを中心とした義歯安定剤は, 強い細胞活性の減少を示した. 特に新ポリグリップ無添加が最も低い細胞生存率を示した. 一方, ポリデントを除くクッションタイプでは, 細胞活性に対する影響をほとんど認めなかった. 粉末タイプおよびシールタイプでは, これらの中間の作用を示した. これらの細胞に対する作用は, pHの影響ではなくむしろ義歯安定剤の成分に大きく依存していることが示唆された.また, 細胞活性に影響を与えない6製品でインターロイキン1βの発現を検討した結果, すべての製品で誘導を示さなかった. しかしながら, 歯科で使用される材料由来の環境ホルモンによる人体への影響が懸念されているなか, 今後さらに分子レベルにまで踏み込んだ検討が必要と思われる.結論: 義歯安定剤にはこれまで報告されている機能面での為害性や細胞生物学的な為害性も有している製品もあることから, その使用にあたって歯科医師の十分な管理が必要と考えられる.
著者
高橋 英和
出版者
Japan Prosthodontic Society
雑誌
日本補綴歯科學會雜誌 = The journal of the Japan Prosthodontic Society (ISSN:03895386)
巻号頁・発行日
vol.47, no.3, pp.474-483, 2003-06-10
被引用文献数
2 8

義歯安定剤には, 義歯粘着材と呼ぶべき粘着性の強い製品群と, 義歯床と口腔粘膜の間隙を補填して, 適合性を改善することで吸着性を向上させる家庭用裏装材 (ホームリライナー) の製品群に分類できる. 義歯粘着材では, さらに製品形状により粉末タイプ, クリームタイプ, テープタイプに分類できる. 義歯粘着材の主要成分は, 天然ゴムもしくは水溶性高分子であり, 口腔内や義歯の水分を吸収して膨潤し, 粘着性の高い液体となり, 義歯の維持力を増加させる. それに対しホームリライナーの主成分はポリ酢酸ビニル樹脂であり, 義歯と粘膜面の間隙を閉鎖することで維持力を発揮させる. 使用時にゴム弾性を示すのでクッションタイプとも呼ばれる. 義歯安定剤の接合力を測定したところ, 義歯粘着材は被着材の種類にかかわらずある程度の接合力を発揮するが, ホームリライナーはアクリル板でのみで大きな接合力を発揮する. また, 義歯安定剤には厚みがあるため, 咬合関係を誤った位置に導くことが懸念される. 実際にこれらを口腔内で使用したところ, 義歯粘着材は義歯の吸着を改善するが, 粘膜面からの除去が難しく, 不潔になりやすい. ホームリライナーではあまり義歯の吸着を改善しなかった. このように, 義歯安定剤は義歯粘着材とホームリライナーで大きく性質が異なり, 区別して考える必要がある.
著者
束田 和弘 竹内 誠 小嶋 智
出版者
日本地質学会
雑誌
地質學雜誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.110, no.10, pp.640-658, 2004-10-15
被引用文献数
7 23

従来,飛騨外縁帯の分布・区分などには多くの混乱と問題があったため,その発達史を議論する上で大きな障害となっていた,従来飛騨外縁帯として扱われてきた地層・岩体は,岩相とその占める空間的位置により,(1)中〜上部古生界浅海成層を主体とする地層群(宇奈月帯構成岩類を含む),(2)300Ma以前の変成岩を含み,苦鉄質〜超苦鉄質岩を主体とするもの,(3)後期古生代の石灰岩・チャート・砕屑岩主体層,(4)苦鉄質岩とペルム系砕屑岩,の4つに大別される.後三者は,それぞれ三郡-蓮華帯,秋吉帯および舞鶴帯に帰属を求めることができ,本論では(1)の分布域を飛騨外縁帯として再定義することを提案し,その模式地は福地・本郷・古川地域とする.本論の飛騨外縁帯構成岩類は,宇奈月,白馬岳,福地・本郷・古川,楢谷,石徹白,朝日,伊勢・大野の各地域に分布し,それらは各地域内で断層もしくは剪断帯で寸断されてブロック化している.
著者
河村 篤男 藤本 博志 藤本 康孝 下野 誠通
出版者
横浜国立大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2010

本研究の成果の特徴は次の2点に集約される。(1)SAZZチョッパのトポロジーで、50kW出力、電力密度100kw/〓を実現した。(2)可変速駆動系システムに直列チョッパを導入する時の省エネ効果は、そのシステム構成によって幅がある。特に、電気自動車に限れば、25kw試験装置において直列チョッパの高電力密度化、軽量化により、JC08モード走行において3%以上の省エネ効果が確認された。さらに、チョッパの軽量化と直流電圧の選択によっては、10%程度の省エネの可能性が示された。
著者
仲谷 満寿美
出版者
京都大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2006

本年度はレオン・バッティスタ・アルベルティ(1404-1472年)の恋愛小品群を中心に研究を進めた。『デイーフィラ』においては、失恋した若い男性がかつての恋人に病的なまでの執着を見せる。このような精神状態は西洋中世の医学では正真正銘の精神病と看做されていたことが、本年度の研究で明らかになった。当時の権威ある医学書のかずかずにおいて、仕事の精励や旅行などが恋の病の正式な療法として推奨されていた。この病気については、文学的トポスと医学的処方が交錯していたのである。『エカトンフィレ』では、女性の愚かさが再三話題にのぼる。『デイーフィラ』では女性の性悪さが、『エカトンフィレ』では女性の愚昧さが強調されており、両作品には強いミソジニー(女性に対する反感・蔑視)の傾向が認められる。ただし、アルベルティの作品におけるミソジニーは、一般的な男尊女卑とは異なっているように見受けられる。両作品を鑑みるに、作者自身の強い自意識、誰よりも優れているのを認めてほしい自尊心、自分の優秀さは女性(たち)からも称賛されるのが当然とする自負心、にもかかわらず認めてくれない女性(たち)にたいする不満、それでもなお女性(たち)から認めてもらえなければぐらついてしまう自信、といったものが言外に表明されている。『レオノーラとイッポーリトの愛の物語』は、ロミオとジュリエットの物語の原型の一つであるとされるが、この物語には、恋人を危機から救うために居並ぶ政府要人の前で滔々と演説する若い女性が登場する。この小品がアルベルティの真作かどうかは不明であるが、アルベルティと同時代に、このように主体的に行動する女性の物語が流行していたことは注目に値するだろう。建築家・思想家として有名なアルベルティが、表向きのミソジニーの下に複雑な人間心理を巧みに表現するこれらの文学作品を書いていたという事実は、きわめて興味深い。
著者
合崎 英男 中嶋 康博 氏家 清和 竹下 広宣 田原 健吾
出版者
農業情報学会
雑誌
農業情報研究 (ISSN:09169482)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.32-40, 2009 (Released:2009-04-01)
参考文献数
18
被引用文献数
1

携帯電話を通じてアクセスする食品リスク・コミュニケーション・システムを開発し,質問紙調査によってその有効性と改善方向を検討した.回答者は当該システムを通じて農薬に関する情報を得て,その評価結果を質問紙に回答するよう求められた.提供情報に対する閲覧者の理解度はおおむね高く,本システムの有効性を支持する結果が得られた.しかし,調査結果からはWeb情報の閲覧には金銭的なコスト意識も含めた心理的障壁の存在が明らかにされた.心理的障壁を乗り越えるためのインセンティブの程度についてはさらなる検討が必要である.
著者
小島 剛
出版者
京都大学
雑誌
京都社会学年報 : KJS
巻号頁・発行日
vol.9, pp.149-164, 2001-12-25

The purpose of this paper is to consider how the public who are not engaged in special scientific work understand and interact with science. Recently we are surrounded by various risks caused by science, so the public needs to know and participate in increasing more scientific related affairs. To deal with this issue of "Public Understanding of Science", first, we sum up the scientific enlightenment action and policy during the twentieth century in the United Kingdom. We refer in particular to the Royal Society's report The Public Understanding of Science. In this report an evidence is found of aims to increase the publics understanding of science for national prosperity, and a "deficit model" is given which regard the public as scientifically vacant, ignorant people. On the contrary, there are studies that aim to make it clear that the public understanding of science has its own actuality and positive significance. We take Misunderstanding Science? as the representative study of this kind. Two examples in this book are introduced in this paper, one explains how the patients of Familial Hypercholesterolaemia get on with scientific and medical knowledge, and the other explains how sheep farmers around the Sellafield Nuclear Plant get on with the scientists sent from the United Kingdom. From these examples, we can find that there are rationalities in the lay public's scientific judgment. However, these examples are local and specific, so in order to make it clear that the lay public's scientific judgment has the great power to make scientific policies more democratic, we introduce global consumers' action against Royal Dutch Shell concerning the Brent Spar, an old oil rig that was dumped in the Atlantic ocean. This affair happened as global consumers ignored the authorized scientists' opinions, displaying the power of the public's own judgment. The main theme of this paper, that the public understanding of science has the critical power for scientific governance, is arranged in the last section.
著者
金谷 繁明
出版者
慶應義塾大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

大脳皮質抑制性神経細胞は主に腹側終脳の基底核原基にて誕生し、接線方向移動(tangential migration)をして大脳皮質に到達する。基底核原基のうち、内側基底核原基(MGE)、尾側基底核原基(CGE)が大脳皮質抑制性神経細胞の主なソースであり、主にMGE細胞はLhx6、CGE細胞はCOUP-TFIIを発現する。近年、マウスモデルを用いた研究により、間脳の一部である視索前野(POa)からも抑制性神経細胞が由来することが報告されている(Gelman et al., 2009)。POaは遺伝子発現様式により背側POaと腹側POaに分けられるが、腹側POaに発現するDbx1転写因子に由来する抑制性神経細胞が、5層に由来する多くの抑制性神経細胞がDbx1由来であることが示され、それらは胎生11日目付近で産生されることが示された(Gelman et al., 2011)。しかしPOaに由来する大脳皮質抑制性神経細胞が移動中にどのような分子を発現し、どのような移動様式や移動メカニズムを取るかはほとんど知られていない。我々はMGEとCGEの両方のマーカーである(Lhx6、COUP-TFII)を発現する細胞群(M-CGE細胞)がPOaに由来していることを突き止めたことから、POa内でのM-CGE細胞の由来を詳細に解析した。局所遺伝子導入法にて腹側POaにのみ遺伝子導入をして腹側POa由来細胞を解析したところ、この領域から由来する細胞のほとんどがLhx6/COUP-TFII二重陽性であることを突き止めた。さらに背側POa由来の細胞ではLhx6/COUP-TFII二重陽性の割合が少ないことから、腹側POaがM-CGE細胞の主なソースと考えられた。
著者
山岡 哲二 斯波 真理子 馬原 淳
出版者
独立行政法人国立循環器病研究センター
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2009

本プロジェクトでは、代謝のアンバランスからもたらされる様々な疾患を治療する"DNCS, Drug Navigated Clearance System"という新たな治療概念の実証に挑戦している。その基本的原理は、これまでのDDS研究には類を見ない「生体内病因物質を、生体が備えている別の分解・排泄機構へと誘導する」ことによる疾患の治療法である。まず、高脂血症治療を目指して、血中LDL分子を肝細胞アシアロオロソムコイドレセプターに誘導するシステムの構築を進め、モデルマウスを用いたin vivoでの効果の検証に成功してきた。昨年度は、拡張型心筋症の治療を目指した自己抗体の除去について同様の検討を実施した。その結果in vitroにおいては有効な幹細胞による体ゲット抗体の取り込みを確認したために、この治療効果を実証するための動物モデルの作成を進めてきた。すなわち、血中抗体価が低下することで、その症状の軽減をモニターできるシステムである。また、抗体を直接肝細胞へ誘導するシステムに加えて、体内のLDL分子をメディエータ分子として利用することで、単純な分子で目的抗体を肝細胞へ誘導することが可能となっており有望なシステムと考えている。現在、有効な動物モデルの作成には至っておらず、そのin vivo検証ができない状況である。しかしながら、特異的な抗体の幹細胞への誘導効率は飛躍的に向上しており、今後、他施設の動物モデルも検索した上で、in vivoにおける治療実験を進める。
著者
佐藤 知己
出版者
北海道大学大学院文学研究科北方研究教育センター
雑誌
北方人文研究 (ISSN:1882773X)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.55-68, 2008-03-31

It is known that Ainu has two types of compound noun constructions: the “modifying construction” and the “pseudo-modifying construction”. However, the term “modifying construction” from the outset contradicts the so-called “syntactic atomicity”of words, one of the most basic principles of word formation in general linguistic terms. Here, I suggest that among the compound nouns with the modifying construction, some are compound nouns exceptional in their construction, formed, as it were, directly from phrases (i.e. “phrase-word” by Bloomfield), while others are words containing a kind of verbal noun converted from the corresponding intransitive verb, formed, in turn, through “object-incorporation”. This assumption is supported by the fact that the number of compound nouns with the modifying construction is not so large in the lexicon as a whole (so, exceptional and marginal)and also supported by the fact that examples of the compound nouns with the modifying constituent “subject+transitive verb” are extremely few: the pattern “subject+transitive verb”is usually not possible as an intransitive verb with noun incorporation in Ainu, and therefore cannot be used as a verbal noun of the first member of a compound noun.
著者
岩下 武史 美舩健 島崎 眞昭
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌コンピューティングシステム(ACS) (ISSN:18827829)
巻号頁・発行日
vol.48, no.8, pp.1-10, 2007-05-15
被引用文献数
5

マルチグリッド法において,スムージング,補間・制約演算を陽的に行わない新しい方法:陰的マルチグリッド法を提案する.同手法では,マルチグリッド法における各レベルの方程式を統合化し,1つの大きな連立一次方程式として主に前処理付きクリロフ部分空間反復法により解く.その結果,従来のマルチグリッド解法の応用範囲を広げ,様々な前処理手法との併用が可能となる.同手法の基礎概念,実装法を記述し,その有効性について電磁界解析における反復法の性質との類似性から説明する.さらに,差分解析による数値解析において,同手法がコースグリッドコレクションの効果を有し,グリッドサイズによらない収束性を実現していることを示す.This paper proposes a new multigrid method, which is called "Implicit correction multigrid method". In this method, linear systems of equations on all levels in a multigrid method are integrated into one large linear system of equations. When this integrated linear system is solved by using preconditioned iterative solvers, an effect of coarse grid correction is expected to be implicitly involved. Since any preconditioning techniques are used for the integrated linear system, the proposed method can extend application areas of conventional multigrid solvers. This paper describes the basic concept and the implementation way of the implicit correction multigrid method. Furthermore, we explain the effect of the proposed method by introducing a special characteristic of an iterative method observed in an electromagnetic field analysis. Finally, numerical tests based on a finite difference analysis confirm that the proposed method involves an effect of coarse grid correction and attains a convergence rate independent from the grid-size.
著者
富山 明男 平野 雅司 松田 隆男 坂口 忠司
出版者
一般社団法人日本機械学会
雑誌
日本機械学會論文集. B編 (ISSN:03875016)
巻号頁・発行日
vol.58, no.551, pp.2177-2183, 1992-07-25
被引用文献数
1

Computational time for numerical simulation of transient incompressible viscous flow is governed by numerical methods to solve the Poisson equation of the pressure. In order to improve the computational efficiency of the SOR method, a mathematical analysis was conducted in the present study to derive the spectral radius, i. e., the maximum modulus of the eigenvalues of the iteration matrix for a discrete Poisson equation in staggered mesh system. The derived spectral radii for the point, line and area Jacobi iteration matrices are applicable to the Dirichlet, the mixed boundaryvalue and the Neumann problems in an n-dimensional rectangular region. The validity of the optimum relaxation parameter of the SOR method, which was calculated by the derived spectral radii, was confirmed by numerical experiments. Furthermore, a simple estimation method of the optimum relaxation parameter for the non-rectangular region was presented for transient flow analyses.
著者
岡本 太郎 柿沢 弘治
出版者
新自由クラブ
雑誌
月刊新自由クラブ (ISSN:03862437)
巻号頁・発行日
vol.3, no.22, pp.p66-73, 1979-01