著者
岩見 憲一
出版者
同志社大学
雑誌
社会科学 (ISSN:04196759)
巻号頁・発行日
vol.91, pp.175-198, 2011-05

1955年,電化と日本の米食文化の接点で生まれた自動式電気釜は,当時,家事の面で最も影響が大きいといわれた「白物御三家」の内,唯一日本独自の発明品である。本稿では「竈と羽釜」に代わり,「生活の前提」を支える「ランドマーク商品」になった自動炊飯器の創造力と破壊力を検証する。誰でも失敗せずにご飯が炊け,釜についた煤や噴きこぼれや竈周りの後始末の手間もなく,特に,寝ている間にご飯が炊ける便利さは,女性のライフスタイルを一変させた。さらに,コンセントさえあればどこでも炊飯できることは,台所の風景を一変させた。反面,伝統的な竈炊きのおいしいご飯の味や炊く技が失われ,子供の手伝から学ぶことや躾を失なわれるという,見えざる負性を持っている。近年,自動炊飯器は,米食文化を有する国々で普及しつつある。自動炊飯器を使用するようになった香港の事例についても触れる。
著者
八木 哲也 小山内 実 下ノ村 和弘
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2007

冷却CCDチップをFPGA(Field Programmable Gate Array)回路と組み合わせた知能バイオイメージングデバイス(IID)を開発した.IIDは,生体画像計測において,画像を取得するのみでなく、画像中の蛍光の部位やパターンなどの特徴を実時間で抽出する.IIDおよび多点電気刺激装置を顕微鏡に組み込むことによって、神経・筋組織の活動を計測かつフィードバック電気刺激し、それら組織の生理学的特性を自動計測することが可能な、新しい自動バイオアッセイシステムのプロトタイプを構築した.
著者
金保 安則 長谷川 潤 船越 祐司
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2008

脂質性シグナル分子産生酵素のPIP5KとPLDの各アイソザイムの生理機能解析を行った。PIP5Kγ661は、海馬神経細胞において、クラスリンアダプター複合体AP-2と相互作用してAMPA受容体のエンドサイトーシスを促進し、長期抑制を誘起すことを明らかにした。さらに、PIP5KαとPIP5Kβは、精子形成に重要であることを明らかにした。また、PLDは、好中球機能に重要であることが報告されているが、それらの研究結果はアーチファクトである可能性を示唆した。
著者
武居 渡 鳥越 隆士 四日市 章
出版者
日本特殊教育学会
雑誌
特殊教育学研究 (ISSN:03873374)
巻号頁・発行日
vol.35, no.3, pp.33-41, 1997-11-30
被引用文献数
1

本研究では、離島に住む就学経験のない聾者が自発的に発展させた身振りについて記述し、その特徴を検討した。調査者と対象の聾者との自由会話をビデオに収録し、すべての身振りを単語を単位として書き起こした。その結果、全体の約3割が指さしによって構成されており、指さしが聾者の身振りの中で重要な機能を担っていた。具体物に対する指さしだけでなく、その場にないものまで指さしを使って表し、指さしが語彙として定着した例も見られた。また、指さし以外の身振りでは、現実世界のものの扱い方や対象物をパントマイム的に再現しているわけではなく、手型自体があるカテゴリーを持ち、聾者は現実世界にあわせて手型を選択的に使用していた。このような特徴は、日本手話やアメリカ手話などの体系的な手話言語にも見られ、体系的な手話言語が、身振りの特徴を基にして発展していることが示唆された。
著者
神藤 正士 木下 治久 畑中 義式
出版者
静岡大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1998

表面波プラズマの励起機構に関係する現象が観測された。以下にその要点を列挙する。1.圧力が低下するとともに、軸方向密度分布は平坦になっていく。2.圧力が50mTorr以下になると、石英板から1-2cmの位置のイオン飽和電流の軸方向分布上に明確な凹みが観測された。圧力が低くなるとこの凹みは顕著になるが、100mTorr以上では目立たなくなる。プローブのバイアス電圧をプラズマ電位に対して負に深くして-80V以上にすると、この凹みは解消する。このことから、これはプラズマ密度の凹みではなく、電子が加熱されてエネルギーが増大したことから現れる現象であると考えられ、電子の加熱がこの付近で顕著に生じていることを示唆する。なお、凹みのある位置でのプラズマの密度は丁度遮断密度に近い10^<11>cm^<-3>程度であり、プラズマ共鳴の条件が満たされているものと思われる。3.石英板方向のみまたはその反対方向からのみプラズマ粒子を捕集できる構造をもったプローブを製作し、プローブ特性を測定した結果、石英板から離れる方向に流れる高エネルギーの電子流が見出された。4.石英板から数mm以内の位置に設置されたダイポールアンテナからの信号を周波数分析したところ、マイクロ波の周波数であるf_0=2.45GHzの他に、f_1=10MHzとf_2=f+f_1の2つのスペクトルが観測された。f_1はプラズマ密度とともに上昇すること、ならびに丁度イオンプラズマ振動数に一致することから、観測された現象は、電磁波、ラングミュア波およびイオン波からなるパラメトリック不安定性の特徴と一致していることが判った。
著者
伊藤 久徳
出版者
日本気象学会
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.54, no.1, pp.35-51, 2007
参考文献数
36
被引用文献数
1
著者
下ノ村 和弘
出版者
立命館大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

生体の視覚系は,長年の進化の過程で獲得された独自のアーキテクチャを用いて,複雑な視覚情報を極めて効率的に処理している.本研究課題では,脳視覚野の神経細胞がどのようなメカニズムで奥行きを計算するかを説明するモデルに着目して,これをアナログおよびディジタル集積回路を用いて効率よく実装する方法を提案し,ロボットが環境認識を行うために不可欠な奥行き情報を実時間で計算する集積視覚システムを構築した.
著者
丹羽 隆介
出版者
筑波大学
雑誌
若手研究(スタートアップ)
巻号頁・発行日
2008

多細胞生物が適切に発生して大人になるためには、未成熟なステージから成熟に向けて決まったタイムスケジュールに沿って段階的に成長する必要がある。本研究代表者はモデル動物である線虫Caenorhabditis elegansを用いて、幼虫から成虫へのスイッチングを正に制御するlet-7マイクロRNAに着目し、let-7経路に関わる新規遺伝子を探索した。その結果、進化的に保存された核内受容体遺伝子nhr-25が、幼虫から成虫への発生運命のスイッチングに重要な役割を果たすことを証明した。
著者
船越 祐司
出版者
筑波大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

リン脂質キナーゼPIP5Kは、PIP2の産生を介して多様な生理機能を発揮する。PIP5K にはα、β、γの三つのアイソザイムが存在する。先に研究代表者の属する研究室ではPIP5Kの活性化因子として低分子量Gタンパク質Arf6を同定しているが、本研究では各アイソザイム特異的なArf6による活性化を検討し、PIP5Kγに固有のN 末領域が分子内マスキングによりArf6による活性化を調節するというユニークな制御機構を明らかにした。
著者
木本 好信
出版者
駒澤大学文学部史学会
雑誌
駒沢史学 (ISSN:04506928)
巻号頁・発行日
no.33, pp.p52-60, 1985-03
著者
伊藤 貴啓
出版者
愛知教育大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
2000

本研究は経済の国際化・グローバル化における農業地理学分野からの貢献を念頭に,フードシステムにおける農業生産部門に焦点を当て,その国際的なネットワークの形成と構造について花卉産業を事例に究明しようとした。まず,農業に関連した国際化の推移を考察した。農業の国際化は,「農業生産の国際化」と「食の国際化」の両者が相互に作用して農業に影響している。後者では,食の外部化のなかで,加工・小売といった川下部門が影響力を強めて,農産物や加工原料の輸入を拡大させて国内産地に多大な影響を与えてきた。そこで,そのような状況と今後の日本農業の発展戦略を検討した(愛教大研究報告第50輯)。また,前者では,農業生産に海外からの技術や海外産の原材料が利用されているだけでなく,より積極的に国際的ネットワークを形成しながら経営を発展させ,地域的な農業の活性化・発展をもたらしている事例が存在していることが判明した。このような事例のなかから,本研究では,愛知県と沖縄県のキク栽培地域,およびネットワーク提携先のオランダを対象として研究を進めた。愛知県では渥美半島の農家群がオランダのファン・ザンデン社から種苗を輸入していた。これはリーダーが自ら同社とのネットワークを開拓して,試行錯誤しながら品種の導入をはかり,隣接農家をグループ化して形成したものであった。このネットワーク形成は近接効果によるといえよう。その形成目的は生産コストの低減と経営の大規模化であった。これに対して,沖縄県では花卉専門農協がインドネシアに地元出資者と合弁で種苗生産を行い,組合員に種苗を供給していた。これは農協が台風被害を最小限に食い止め,夏季の暑さで難しい県内での育苗をインドネシアで行ったものであった(『21世紀の地域問題』第V章)。次に,ネットワークの提携先としてのオランダで,日本の花卉生産者の国際的ネットワークの形成の特色を知るため,ネットワーク提携先のある花卉生産地域を対象に土地利用調査や資料等の収集を行った。その結果,花き生産を含む,施設園芸の立地移動が大規模に伝統的温室園芸地域で生じていることが明らかになった(経済地理学会中部支部例会発表,2002年2月)。以上から,(1)国勢的なアグロネットワークは,地域リーダーによる個別の情報収集からの形成と組織的な対応という2類型がみらること,(2)後者は合弁という形態で現地化をはかり,中国等への進出とネットワーク形成の類型となりえること,(3)国際的なアグロネットワークは,地域産業や個別経営の上方的発展をドライビングフォースとして内発的に形成されてきたことが明らかになった。しかしながら,ネットワークの形成と構造に関するフードシステムにおける川下部門からの研究が今後の課題として残されている。
著者
澤登 千恵 村田 直樹
出版者
高松大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

本研究では,現代の財務報告制度の起源を19世紀イギリス鉄道会計に求め,当時の主要な鉄道会社が株主総会後に作成していた報告書と関連資料をテキストマイニングで分析した。特に,自身がこれまでの研究で想定していた会計変化に対する資金調達不確実性(資金不足)の影響を再検討した。いくつかの鉄道会社で資金調達不確実性を示すキーワードを確認でき,さらにこれらの会社は,複会計システム,減価償却実務,そしてコストマネジメントを積極的に採用する傾向にあったことがわかった。
著者
奥田 栄
出版者
社会・経済システム学会
雑誌
社会・経済システム (ISSN:09135472)
巻号頁・発行日
no.29, pp.85-91, 2008-10-11

In this paper we discuss about the social character of technological system based on the Niklas Luhmann's theory of the social system. According to him, the social system consists of communications, moreover, of all communications, and divided into subsystems by symbolically generalized media. We define here technological system as a set of communications characterized by possible/impossible binary code. When we define technological system as above mentioned way, technological system includes not only science-based technologies but also everything that enables us to accomplish something. For instance, any technique that persuades a person may be a technology in this meaning. To what extent, however, are we allowed to call both of them as 'technology' in the same meaning? This problem can be analyzed by introducing various levels of possible/impossible criteria. Another problem may occur in the case of science-based technology. Are there any media mix of the truth/false code that characterizes the science and the possible/impossible code that characterizes the technology? Recently a concept of "social technology" has attracted the attention of many people. It is said that the social technology is not only planned to exceed science-based technology but also to unify various fields of science. We point out here that the tendency to the media mix worried about in the science-based technology might be strengthen in this case. We also discuss a relation between know-how and technological system. We have know-how that enables us to accomplish a variety of things. So we ourselves are bundles of know-how. However, we should distinguish know-how of this sense from technologies that appear in the technological system.
著者
永島 達也
出版者
独立行政法人国立環境研究所
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

先行研究で用いられている、比較的簡便で使用する数値モデルに適した手法を選定し、炭素性エアロゾルの内部混合過程が考慮できるように気候モデルを改変した。この改変により、炭素性エアロゾルによる放射の吸収・散乱過程が変更されるとともに、これまでの使用していたモデルに比べて、煤粒子の雲粒への取り込みや雨滴としての消失が強化されるようになった。このモデルを用いて、幾つかのテスト実験を行って実験用パラメータの妥当性を評価した後に、産業革命前(1850年付近)を想定した外部境界条件の下で1000年の長期実験を行い、気候ドリフトの無い安定した基本状態を得た。その後、上記1000年実験のデータから100年間隔で4つ取り出された初期値を用いた、4メンバーの20世紀再現アンサンブル実験、及び同初期値を用いたやはり4メンバーの感度実験を行った。感度実験は、エアロゾル(或いはエアロゾル前駆物質)の地表放出量を、(1)全てのエアロゾル種に関して1850年値に固定して20世紀中の増加を考慮しない、(2)炭素性のエアロゾルに関して1850年値に固定して20世紀中の増加を考慮しない、の2ケースについて行った。また、エアロゾルによる放射強制力を評価するための実験も当初の計画に追加して行った。初期的な解析によれば、20世紀全体で評価した場合、全球平均した地表面気温の長期的なトレンドの再現性は、炭素性エアロゾルの内部混合を慮しいな場合と遜色ないが、20世紀中盤の気温寒冷化傾向はより過大に評価された。これは、内部混合を考慮することによって日傘効果が増す一方で、大気を暖める事によって二次的に地表面を温める効果はあまり大きくない事を示唆するが、準直接効果による雲場への影響などは今後の解析課題となった。
著者
秋元 孝之
出版者
芝浦工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

執務空間温熱環境評価のため、床吹出空調方式が採用されている環境配慮オフィスと既存のオフィスの比較検討のために、執務空間の温熱環境、空気質環境、光環境や、音環境の室内環境の調査を行った。滞在する執務者に対して温熱環境調査や行動調査を実施し、この環境配慮オフィスの各環境が、建築基準法等で定められた基準値を満たしているか、また、滞在する執務者の快適性や生産性への影響があるかを執務者にアンケート調査を行った。温熱環境評価として行ったSET^*の算出では、既存オフィスで最大で26.5℃まで上昇し快適域を0.9℃上回っていたが、新オフィスでは、24.1℃〜25.6℃であった。光環壌評価として行った照度分布測定では、既存オフィスでは、JISZ9110の基準値を下回り期間中の変動範囲は259lx〜1225lxと約1000lxもの差があり、室中央は基準の下限値である750lxを満たすことはなかった。新オフィスでは、期間中を通して基準値の範囲内に収まっていた。音環境評価として行った等価騒音測定では、室内騒音の設計推奨値は43dB_A〜55dB_A程度とされており、既存オフィスは53.3dB_A〜65.2dB_Aと10:30の測定では推奨値を満たしていたが、その後の測定では13dB_A以上増加し推奨値を大幅に超えていた。空気質環境評価として行ったCO_2濃度測定では、既存オフィスで基準値である1000ppmを下回っていたものの最大で733ppmとなり、新オフィスは勤務時間中に平均で483ppm程度であった。知的生産性に関しては、自覚症状しらべで訴え率は新オフィスで若干増えたもののその絶対数は少なく、眼精疲労しらべにおいては既存オフィスでは出勤後から退勤前にかけて訴え率は増加し、新オフィスでは減少傾向にあることから、新オフィス環境において作業性が向上したものと推察される。
著者
冨田 美香
出版者
立命館大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2001

本研究は、芸術・メディア・産業としての性格を持つ映画文化が20世紀の日本社会の形成にいかに作用したかという問題を明らかにすることを目的とし、その具体的な様相を日本のハリウッドと称される京都洛西地域社会の形成と日本映画史との関係に絞り、検証したものである。平成14年度は、京都洛西地域社会形成の過程と、そこから産み出された独自の映画文化との関係性を、京都を舞台に京都で作られた映画作品の中で現存する最古の作品『祇園小唄 絵日傘第一話 舞ひの袖』の分析から考察し、映画産業と京都社会との相互関係とともに、「京都」都市イメージが映画内的/外的作用によっていかに形成されていったかを実証的に研究した。そこで明らかになった点は、パノラマなどシネマトグラフ前史に遡る映画の始原的な視覚性が利用され、擬似観光体験から真の観光体験へと観客の経験の変容を促す都市への集客効果とともに、近代化された東京が失った鑑賞都市としての江戸の姿を、古都・京都の表象するメディアとして、映画が積極的に用いられていた、という点である。なお、これらの調査結果を資料画像も含めてデジタル化し,インターネット上で研究成果として公開する点についても、以下のURLで試行中である。URL:http://www.arc.ritsumei.ac.jp/cinema/index.html
著者
城島 栄一郎 末木 妙子 馬場 奈保子
出版者
実践女子大学
雑誌
実践女子大学生活科学部紀要 (ISSN:13413244)
巻号頁・発行日
vol.44, pp.126-131, 2007-03-29

According to a questionnaire survey, around 2% of female students use parasols. They use parasols not only for sunshades but also for the psychological effects of fashion and coolness. The parasols reduce the strength of ultraviolet rays by 75-95%, and lower the head temperature by more than 10℃. In addition, they reduce the dazzle by 83-97% , except for white and yellow parasols. In this investigation, the white and light colors are preferred rather than dark colors as parasols, but it was clarified experimentally that the effects of the sunshade were higher in the dark color parasols.