著者
高波 鐵夫 本谷 義信
出版者
北海道大学
雑誌
特定領域研究(A)
巻号頁・発行日
1998

札幌市の北部一帯で1834年石狩地震(M6.5)による液状化跡が発見されていることから、この地震で震度5以上の地域があったことは確実である.しかし札幌市が大都市になってから直下に地震が発生していない.しかし、札幌市で震源があるか、あると推定される地震で、札幌で有感になった地震は1900年から現在まで34回報告され、札幌市直下にも定常的な地震活動があると言える.しかし1950年以降は地震が少なくなるとともに地震の規模が小さくなる傾向がみられる.このように過去に大地震が発生した可能性のある札幌市で直下型地震を想定した都市災害のシミュレーションを行うことは十分に意義があり、今回は過去に発生した地震の震源分布や震源メカニズムから、地震の断層面および破壊過程を幾つか仮定し、かっての石狩地震相当が起きた場合の札幌市内各地での理論地震波形を計算した.また理論加速度波形から理論震度を推定した.その結果、地震メカニズムによって各地の震度分布に違いがみられた.さらに地盤特性に依存した震度分布の地域性が見い出されているので地盤特性を考慮した詳細な地震被害想定図を作成しておくことが大変重要であることが明らかになった.場所によっては理論震度以上に大きな揺れを生じる地域も想定され、この種の研究の重要性があらためて確認された.さらに現実に近い想定地震を求めるべく研究をすすめている最中である.
著者
行谷 佑一
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2005

地震時に大きな断層すべり量を発生させる領域の位置が地震によらず固有であるかどうかを知るためには、少なくとも2例の地震を解析する必要がある。将来の発生が予測されており社会的にも深く関心が持たれているプレート境界型の南海地震では、観測器による時系列データが1946年昭和南海地震にしか存在しないため、それよりも前に起きた1854年安政南海地震などに対して従来のインヴァージョン解析手法が適用できず、歴代の南海地震のアスペリティ領域が一致するかどうかは不明であった。ところで、1854年安政南海地震に関しては、時系列データは存在しないが、おもに古文書記録といった歴史史料から地震の被害震度、津波の高さ、および地殻変動量の3種類のデータを推定することができる。そこで、本研究では歴史記録から得られた津波の高さデータおよび地殻変動量を入力データとして、アスペリティ領域すなわち断層すべり量分布を推定する同時非線形インヴァージョン手法を提案・確立し、それを安政南海地震に適用した。具体的には、南海地震発生領域を小断層群に分け、その小断層群から発生する津波高の時系列データの時間方向最大値を計算し、それと史料による津波高さとの残差自乗和が最小になるような断層すべり量分布を、Powell(1970)によるHybrid法を用いて求めた。その結果、安政南海地震の断層すべり量分布は、津波時系列データをインヴァージョン解析した1946年昭和南海地震と同様に、高知県須崎市南方沖、徳島県宍喰町南方沖、および和歌山県紀伊半島南方沖に大きなすべり量があったことがわかった。すなわち、両者の地震のアスペリティ領域の位置はおおむね一致するという結果を得た。また、この断層すべり量分布を用いて経験的グリーン関数法により地震動を推定すると、計算震度分布と史料から得られる震度分布がおおむねよい一致をすることがわかった。
著者
板谷 至 宮田 喜次郎
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物学会東海支部研究発表梗概
巻号頁・発行日
no.64, pp.9-12, 1972-07-31

水稲の登熟に関する研究は多く、気温との関係について相見らは酵素活性の面から、長戸らは主として品質の面から検討を行なつている。それらの結果によると、高温条件下では初期の乾物の増加はすみやかであるが、早く停止するために粒型は長さや巾の割に厚みがなく、千粒重も軽くなるといわれている。一般に暖地では登熟期の気温は高すぎるように思われるが、中山によると北陸においても登熟期が高温で、同一品種でも山形や長野で栽培されたものより登熟日数が短かいことを報告している。静岡県においても年々作期が早まり高温条件下で登熟するため、地力の低い秋落田が多いことと相まつて、登熟向上は益々重要な問題になつてきている。一方、高温登熟性の品種間差異に関する研究は、インド型品種と日本型品種の比較研究の中などにみられるが、概して少ないようである。そこで、以上のような観点に立つて、主として品種生態の面から高温適応性について検討を進めていきたい。
著者
北 敏郎 田中 敏子
出版者
産業医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

異常環境下により発症する熱中症発生メカニズムを検討した。ラットを用いた熱中症モデルで腸内細菌の侵入(BT)の発生が認められた。次に,熱中症における肝臓障害発生に果たすLPSの役割を検討し,熱中症による臓器障害発生にLPSの関与が示唆された。その結果,熱中症の発生因子のPrimary factorとしてLPSが考えられ,Secondary factorとして蓄熱による直接的障害が発生している可能性が考えられた。
著者
佐藤 千穂
出版者
一般社団法人日本色彩学会
雑誌
日本色彩学会誌 (ISSN:03899357)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.74-81, 1997-05-01
参考文献数
8
被引用文献数
2

肌色に関する研究は数多く報告されているが, 実空間での顔色の見えについての研究は少ない。顔色の見えは照明や背景色などの様々な環境要因や, 洋服の色や化粧などに影響される。さらに色の見えは, その面積や形, 配置によっても変化するだろう。本研究では形の議論は今後の課題として, 洋服の色によって影響される顔色の見えに着目した。それは洋服が人の顔を見る視野の中で多くの面積を占めることと, 面積効果を考慮して, まずは顔と同じくらいの面積での色の比較を行いたかったためである。実験では胸にかけられる長方形の色のついた綿の布を洋服のかわりに使用した。布の色にはマンセル表色系で規則的な43色と, 洋服の色や化粧品の色を考慮した22色からなる65色を選定した。モデル(38名の女性)は色のついた布を胸にかけて着席し, 5名の観察者はこの時のモデルの顔色の見えを評価した。この評価を各モデルに対して65回実施した。評価構造の解析と各布の色での顔色の見えの違いを検討したところ, 顔色は明るい色や赤みのある布ではきれいで健康的であり, 一方暗い色や青みのある布ではくすんで不健康に見える結果が得られた。
著者
岡野 文男
出版者
一般社団法人 映像情報メディア学会
雑誌
映像情報メディア学会誌 (ISSN:13426907)
巻号頁・発行日
vol.61, no.5, pp.612-613, 2007-05-01 (Released:2009-10-27)
参考文献数
7
被引用文献数
2 1
著者
太田 雅春
出版者
大阪市立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1998

日本企業の今後の課題として、国内産業の空洞化対応、新情報技術対応、環境問題対応、想像型企業への脱皮等に対処できるように組織および業務の変革を図っていく必要がある。本研究の目的は、これらの背景に基づく要請に応えるため、企業転換もしくは社会共生を目指す企業がその方向に向けて自らをスムースに移行することを支援する情報システムがあるとして、それを構築するための環境整備とシステム構築の指針もしくは理論の検討を行い、次の結果を得た。1.企業転換もしくは社会共生を目指す場合、まずは業務改革・改善が必須事項である。まず、製造業の業務構造をその成立の歴史等を振り返って検討し、特にアジリティーという視点にたった場合、業務構造の変革をどのような方向に向けて行うべきかをプリミティブな立場から検討した。2.インターネット等の情報技術の普及も考慮に入れた近年の実務界で注目されつつある業務改革のコンセプトついて、それらが製造業の業務構造のどのような構造に焦点をあててその変革をはかるものであるかを、プロダクション・プロセスマトリックスという概念を導入して検討を行った。3.近年の業務改革は、情報技術の発展、利用をその念頭においたものであることから、業務改革の成否はそのパフォーマンスに影響されると言っても過言ではない。その視点にたって、組織情報システムの性能評価の方法について検討した。4.社会共生企業への向けての業務改革は重要な業務改革の方向性でもある。それに向けて業務改革を行っていく場合、既存の生産性重視、利益重視の価値観から脱却して、社会との共生、具体的には環境との調和という新たな価値観を組織に根付かせる必要があることから、それを行っている先進企業について事例研究を行い、社会共生企業へ向けての価値観の転換手続き、それを支援する情報システムのあり方等を含むその一つの方向性を提言した。
著者
坂野 潤治 馬場 康雄 佐々木 毅 平石 直昭 近藤 邦康 井出 嘉憲
出版者
東京大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1988

本研究は昭和62年度の総合研究「政治過程における議会の機能」の成果を前提にしつつ対象を限定し、議会政の成立・発展の歴史過程を社会経済的・思想的背景との関連でより詳細に検討することを目的とした。研究目的の性格から研究対象が各人の得意とする分野に細分化されるおそれがあったが、その欠を補うために、比較の観点を意識的に打ち出し、そのために異なった分野を対象とする研究者から成る研究会を頻繁に行って意見交換をすることに留意した。主たる研究発表の場である「比較政治研究会」は東京大学社会科学研究所において月一回のペースで行われた。そのさいメンバー以外の研究者も招いて発表をお願いした(福沢研究の高橋眞司氏他)。この研究のメンバーはほぼ一巡して報告を終えたが、主な研究は次のようなものである。まず日本については、坂野が明治憲法体制の成立史という永年の研究視角を深め、植木や兆民との対比において福沢を経済的保守主義の源流として批判的に位置づけた。一方平石はイギリス的議院内閣制の導入における画期的意義を福沢に認め、福沢が用いたバジョット・トクヴィルら西欧政治思想との関連において日本啓蒙思想を読解する視角を示した。西欧に関しては、馬場がイタリアにおける普通選挙法成立の政策過程と権力過程の分析を通じて第一次大戦前のイタリア議会政の構造を明らかにした。また佐々木はシヴィック・ヒューマニズムやスコットランド啓蒙との関連からフェデラリストのアメリカ憲法論を精読し、理念が時代状況のなかでいかに制度に結晶するかを跡づけた。森はヘーゲル学派を材料にドイツ自由主義の特色とその挫折とを検討した。以上の研究成果はその一部がすでに公刊され、他も発表誌未定ながら公刊を想定している。研究の性格上統一的な結論めいたものはあり得ないが、今後ともこの方向で研究を深めてゆきたいと考える。
著者
クラインシュミット ハラルド 竹沢 泰子 山田 直志 波多野 澄雄 岩崎 美紀子 秋野 豊 岡本 美穂
出版者
筑波大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1991

本研究グループは、地域統合の問題を理論的側面と現実的側面の二つのレベルにおいて共同研究を進めてきた。従来の地域統合理論では、ヨーロッパ以外に地域における統合の動きを分析しえず、アフリカやアジア・太平洋地域における統合の動きや、さらに1989年以降のヨーロッパにおける統合をめぐる激しい変化に対応できなくなり、新たな地域統合理論が必要であった。平成4年度は、研究最終年度であることから、平成3年度に行った従来の理論研究の再検討、およびそれを踏まえて構築した基本的フレームワークをもとに、各研究者が個別研究を行い、共同研究の総括をした。個別研究は下記の内容についてそれぞれ論文にまとめた。ハラルド・クラインシュミット 東アフリカにおける国家建設と地域統合岩崎美紀子 アンチ・ダンビング領域における統合の形態早坂(高橋)和 チェコスロバキアの連邦制竹沢泰子 アメリカ合衆国における民族集団の統合化波多野澄雄 近現代日本における地域統合論とアジア・太平洋秋野豊 東欧における地域協力ーカルパチア協力をめぐってー大島美穂 北欧会議とEC統合山田直志 EC統合と日本企業の海外進出これら個別研究の成果は、平成3年度に行った理論研究の成果とともに、同文館から『地域統合論のフロンティア』として出版される。
著者
竹中 興慈 落合 明子 小原 豊志 井川 眞砂
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

本研究では、アメリカ合衆国における「白人性」whiteness意識の構築とその展開過程を社会史的、文化的、思想史的側面から学際的、総合的に検討した。全年度を通じて、毎週1回、2〜3時間程度の研究会を開催した。研究会では、主としてD.Roediger, The Wages of the Whiteness(白人性の代償)をテキストにして、その内容理解とともに、諸問題に関するディスカッションを行った。そのなかで浮上した様々な問題点の解決、および各研究分担者の関連諸テーマを深めるための資料収集、およびアメリカ合衆国の研究者との意見交換のために、平成13年度に竹中興慈がイリノイ州シカゴ、平成14年度に井川眞砂がニューヨーク州エルマイラ、平成15年度に小原豊志がノースカロライナ州チャペルヒルへ出張した。研究補助金による研究の締めくくりとして、『アメリカ社会における「白人性」成立の学際的総合研究』を公刊した。各研究分担者が執筆した内容は、1.竹中が「日本における『白人性』研究の現状と展望」というテーマで、日本における「白人性」研究の持つ問題点と展望を考察した。2.井川は「『ハックルベリー・フィンの冒険』をめぐる人種主義論争-19世紀アメリカの白人作家が描写した黒人像」というテーマで、今日のアメリカ合衆国で展開されている本作品の人種主義論争に関わる黒人描写を検討した。3.小原は「アメリカ合衆国における黒人選挙権問題の19世紀的展開-選挙権における『白さ』の研究-」というテーマで、南北戦争を画期にした選挙権のおける「白さ」の構築・解消・再構築の過程を追究した。4.落合は「人種と記憶-『記憶の場』としての映画『グローリー』-」というテーマで、南北戦争をめぐる記憶の形成と、黒人の排除によって成立した白人性の構築との関係を検討した。
著者
中村 睦男 大石 眞 辻村 みよ子 高橋 和之 山元 一 岡田 信弘
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1999

本共同研究は、欧州統合の下におかれたフランス現代憲法の総合的研究を、日本や他のヨーロッパ諸国との比較憲法的視野で行うものである。各参加者は、人・モノ・資本・情報のボーダーレス化の進展によって、従来の国民国家の枠組み、そして、人権保障と民主的な統治機構を目指して構築されてきた近現代の憲法学にもたらされた変容を考察した。具体的には、(1)フェデラシオンと主権という枠組みにおけるEUの内部構造、(2)欧州統合と憲法改正、(3)欧州統合下の意思形成と「国民主権」、(4)憲法54条手続きによる事例を中心としての、EC諸条約と憲法院、(5)EC法の優位と憲法の対応についてのフランス型とドイツ型の比較、(6)フランスの安全保障とEU、(7)フランス自治体憲法学における国際的影響、(8)D.Schnapperの所説におけるNationとCitoyennete、(9)「公的自由」から「基本権」へという、フランス憲法学における人権論の変容、(10)ジョスパン政権下の外国人法制、(11)フランスにおける男女平等、とりわけパリテを正当化する理論、(12)欧州統合の下でのフランスの言語政策、とりわけ『地域・少数言語に関するヨーロッパ憲章』批准問題、(13)多元的ライシテとヨーロッパ人権法の関係、(14)フランスにおけるコミュニケーションの自由の憲法上の位置、(15)フランス憲法における社会権の保障、(16)EUとフランスの社会保障、(17)EUによる規制(公衆衛生政策・営利広告規制)と人権、について考察し、グローバリゼーションの下でのあるべき憲法ないし立憲主義の構造について一定の見通しを得た。本研究成果報告書に掲載している研究報告の多くは、まだ中間報告の段階にある。研究論文としては、研究会での討論の結果を踏まえ、平成13年9月に完成する。その後、平成14年度科学研究費補助金(研究成果公開促進費)を申請し、1冊の著書として出版する(出版社の内諾を得ている)。
著者
沢谷 豊
出版者
流通経済大学
雑誌
流通経済大学社会学部論叢 (ISSN:0917222X)
巻号頁・発行日
vol.19, no.2, pp.53-66, 2009-03

ルーマンの著作もしだいに翻訳され,日本でもかれの仕事が明らかになってきている。本稿もルーマン理論の紹介を目指すものである。本稿ではとくに心理システムに焦点を当て,知覚との比較でかれのコミュニケーション概念にせまろうとする。そして,かれが心理システムの限界をこえるものとしてコミュニケーションをとらえていたということを明らかにしたい。
著者
山田 雅之 諏訪 正樹
出版者
人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 (ISSN:13479881)
巻号頁・発行日
vol.24, 2010

コーチングは非常に複雑なスキルである.本発表は大学アイスホッケー部コーチである筆者が,プレーヤーの夏休みを利用し,ミーティングを実施した実践報告である.具体的には,プレーヤーが映像を集めることにより,テーマへの理解や関心が高まるようなミーティングをデザインした.また,その過程でのコーチおよびプレーヤーのメタ認知をもとに,ミーティングという学習環境をデザインする「コーチング方法論」について検討した.
著者
三浦 定俊 石崎 武志 肥塚 隆保 川野邊 渉 佐野 千絵
出版者
独立行政法人文化財研究所東京文化財研究所
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2005

はじめに高松塚古墳、キトラ古墳におけるこれまでの環境測定データを整理してまとめた。特に高松塚古墳については、発掘後、約30年間の温度データを下に、石室内の温度が80年代以降の外気温上昇の影響を受けて上がってきたことを明らかにした。また高松塚古墳の墳丘部の土質や水分分布を調査し、墳丘部の土の間隙の約半分は空気で占められる不飽和状態になっていることがわかった。あわせて墳丘土の水分特性を調べたところ、これと平衡となる相対湿度は100%となることがわかり、これまでの石室内での相対湿度の測定結果が裏付けられた。古墳石室内の生物的環境については、高松塚古墳・キトラ古墳の壁面を覆っているゲル状の汚れはカビ、バクテリア、酵母からなるいわゆるバイオフィルムであることを明らかにした。また石室内外から試料を採取し、菌類や酵母、バクテリアについて遺伝子配列解析による分子レベルの系統解析を行った。その結果、両古墳で類似のものもあるが、特にバクテリアについては優占種が異なっていることがわかった。古墳保存施設をどのように管理すべきか検討するために、キトラ古墳の施設を例に施設管理の手法とその効果についての検証を進めた。その結果、施設内大気中浮遊菌の量の推移と種類の相同性から、室内大気の動きを把握する手法を確立した。
著者
平山 東子
出版者
独立行政法人国立美術館
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

本研究は、紀元前6世紀前半の初期アッティカ黒像式陶器の展開を様式、図像、技法、器形、出土分布などから多角的に跡づけ、その形成過程と古代地中海世界における社会的機能をさぐることを目的としている。そのケーススタディーとして、初期アッティカ黒像式陶器を代表的する陶画家の一人である逸名の画家「KXの画家(KX Painter)」を採り上げ、関連資料の収集と調査を実施、「KXの画家」とその周辺作品の図像と技法、装飾方法、器種、出土状況などに関する多くの知見を得ることができた。採取したデータを分析し、当該作家の個々の作品の比較や、同時代および後代のアッティカ陶器および周辺地域の陶器との比較、影響関係の考察などを行った。これらの作業と考察を通じて、「KXの画家」とその工房の作品を明確化し、「KXの画家」の特徴とその背景、周辺作家との影響関係、アッティカ陶器の形成期における当該作家の意義が明らかとなる。
著者
早川 芳宏 塚本 眞幸 太田 美智男 山田 景子
出版者
愛知工業大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

環状ジグアニル酸(c-di-GMP)および人工修修飾体の(1)生理活性探索と(2)生理活性発現機構の解明研究を行い、(1)については、c-di-GMP類は、肺炎双球菌、Ehrlichia chaffeensis菌、Anaplasma phagocytophilum菌、Borrelia brugdoferi菌、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)などの感染力を、主に免疫活性化作用によって低下させることを発見、(2)については、c-di-GMP類が示すいくつかの生理活性の中でも最も重要な免疫活性化の機能発現機構解明の鍵となる、「免疫は、c-di-GMPが哺乳動物に存在する免疫タンパク"stimulator of interferon genes(STING)"と結合する事によって発現される」という証拠を発見した。