著者
石川 敬史
出版者
北海道大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2002

平成15年度科学研究費補助金(特別研究員奨励費)によって行った研究活動は以下である。1.本年度の研究を経て、以下の知見を得た。(1)18世紀の政府理論形成は、この時期英国で発達していたモラル・フィロソフィーを知的背景としていた。すなわち、教会秩序にたいする、世俗秩序を確立するという観点から、政府理論が発達し、アメリカ諸邦政府および連邦政府もこの流れの中に属していた。(2)アメリカの単独主義外交の起源は、第二代大統領ジョン・アダムズ政権期になされた、米仏同盟解消交渉にあった。この時期に、ヨーロッパ諸国の政治情勢に関与しながら、相互の国益を調整するアレクザンダー・ハミルトンの路線が、アダムズの単独主義外交の方針に破れたことが後のモンロー・ドクトリンにつながるアメリカ外交の基礎となった。(3)アメリカ政党制は、米仏同盟解消交渉の過程で明らかになった、外交方針の違いがきっかけとなって、構成されるようになった。すなわち、内政上の争点は政党分裂の根本要因ではなかった。2.調査旅行(1)神戸大学国際文化学部の図書館にて資料収集を行った。(平成15年5月29日〜平成15年6月2日)(2)東京大学大学院総合文化研究科附属アメリカ太平洋地域研究センターにて、資料の収集および、資料批判作業に従事した。(平成16年2月8日〜平成16年2月11日)3.関係資料の購入(1)18世紀英国における、財政軍事国家への変容過程を知るために、英国史関連の書籍を購入した。(2)アダムズ政権が対応したフランス総裁政府の政治史を理解するため、同時代のフランス政治史に関する文献をそろえた。4.博士論文の執筆平成15年度の研究活動は、博士論文の執筆を中心に進められた。公刊論文が無いのはこのためである。博士論文は、ほぼ完成に至り、教官の許可を得しだい提出予定である。
著者
坂本 佳鶴恵
出版者
数理社会学会
雑誌
理論と方法 (ISSN:09131442)
巻号頁・発行日
vol.15, no.1, pp.89-100, 2000

本稿は、ポストモダン・フェミニズムの理論枠組みの特徴とその展開の可能性を具体的に論じたものである。ポストモダン・フェミニズムは、デリダなどのポストモダニズムの思想の影響を受けながら、反本質主義と差異の重視を特徴として、独自に展開した90 年代の新しいフェミニズムの流れである。具体的には、意味カテゴリーや表象の問題に、新しい観点の分析をおこなっている。日本もふくめて、先進諸国では、自由主義の立場からフェミニズムに対する疑問や、フェミニズムがうまく取り組めていないさまざまなマイノリティの問題が提起されているが、ポストモダン・フェミニズムは、そうした問題に対処するための枠組みを提供しようとしている。ポストモダン・フェミニズムは、日本では、たとえば、近年のミスコンテスト、売買春をめぐる論争に対して、新しい観点を提供しうる。まだ多くの課題を抱えているが、これからの展開が期待される。
著者
三上 晴久 須村 みどり 川村 眞次
出版者
神戸芸術工科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

「住まい方を継承する」という視点から、建築計画学的に重要なキーワードを挙げ、それらが如何なるものか記述した。そして、それらを次代に伝え継承してゆくことが、集合住宅の保存たりうるとした。また、建築専門誌である新建築誌に掲載された戦後の集合住宅に注目し、そこで試行された住まい方に言及するとともにそれらの現況に言及した。
著者
板木 拓也
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2004

本年度は,学振特別研究員の採用最終年度として,これまでの成果をまとめつつある.論文発表としては,第一著者,共著ふくめて7編の原稿を学会誌に投稿し,そのうち4編が受理された(3編については現在審査中).6月に島根で行われた古生物学会では,シンポジウム「日本海の生物相の変遷と環境変動〜過去,現在そして未来へ向けて」を共同企画し,その成果を特集号として学会の邦文誌「化石」に掲載予定である.このシンポジウムでは,これまでに十分に整理されていなかった鮮新世から更新世における日本海の生物相変化を総括し,新たな研究の発展性が期待された.また,まだ不足している試料およびデータの収集を行った.5月に秋田の男鹿半島で行った野外調査では,これまでデータが得られていなかった中新世および鮮新世の微化石(放散中・珪藻)試料を採取した.10月下旬〜11月上旬には,日本海と東シナ海の間にある対馬海峡からプランクトン(放散中・有孔虫)の試料を採取した.これらの調査で採取された試料の処理はほぼ終了し,現在データの解析を行っている.近い将来,これらの成果について論文を執筆する予定である.この他,6月には熊本大学で共同研究者との研究の打ち合わせを行い,また,熊本大学所有の最新の顕微鏡画像解析システムを用いて,微化石標本の写真撮影を行った.この顕微鏡写真は,学会発表などで既に用いられ,また現在執筆中の論文にも掲載される予定である.
著者
大久保 英子 岩谷 和子
出版者
島根県立大学短期大学部
雑誌
紀要 (ISSN:02889226)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.40-49, 1965-01-30

1.体重,身長を昭和35年の厚生省値に基づいて,斉藤,船川の分類をすると,一般に「上」が多く,「下」が少なく,平均値でも上位にあり,殊に体重が著しかった.しかし,地域別に比べると,新市内が男児,女児ともに低位であった.2.生下時体重では未熟児9.2%,成熟児74.7%,過熟児1.4%であった.3.K. I.は船川値より新市内の4カ月以内に低位を示し,更に新市内の女児に低位の月令が多かった.栄養法別では優良児は人工栄養に,やせ,栄養失調症は母乳栄養に多い傾向があった.地域別にみると優良児は旧市内に,やせ,栄養失調症は新市内に多い傾向があり,そのうち,母乳栄養法での差は僅かであるが,混合栄養,人工栄養法においての優劣は著しかった.4.栄養法の割合いは,母乳栄養33.3%,混合栄養27.5%,人工栄養39.0%であって,地域別ではそれぞれ,旧市内が,33.1%,24.5%,42.45%であり,新市内では34.0%,36.1%,29.9%であった.5.離乳の開始は6カ月までに63.3%が開始しており,最も多いのは5カ月で,平均5カ月21日であった.栄養法別では混合栄養が最も早く次いで母乳栄養で,人工栄養が僅かに遅い傾向がみられた.なお10カ月以後に開始したものには旧市内1.3%,新市内2.6%あった.6.離乳の完了は12カ月〜16カ月のもので51.8%であり,人工栄養,旧市内に多く,8〜9カ月で完了しているものも旧市内に9例あった.7.歯牙の発生の最高月令は7カ月で,6カ月までに38%の乳児に生歯が認められた.なお,一年以後に萠出をしたものが母乳栄養児に1名あった.8.栄養法別の歯牙発生では6カ月までに萠出した乳児は母乳栄養32.1%,混合栄養33.4%,人工栄養45.7%であり,月令別の最高はそれぞれ母乳栄養と混合栄養7カ月,人工栄養6カ月で,人工栄養児に早く萠出する傾向があった.赤ちゃんコンテストには,比較的めぐまれた保育を受け,発育のよい乳児が参加することが多く,島根でも保育環境のよいと思われる集団において,旧市内と新市内の発育と栄養についての実態を把握することができた.その結果は前述の如く身体発育では身長よりも体重の優れた乳児が多く,栄養も良好で,前報における幼児の場合と反対の傾向を示し,乳児の保育栄養方法等にはかなりの努力が伺われ,殊に人工栄養児がよくなっているものの,地域的にはなお差が著しく,改善の強化が望まれる.この調査にあたり御指導頂きました烏大医学部小児科教室,木村隆夫博士,また資料の作成に御協力頂いた松江市公衆衛生課,岡坂あさの,加村〓子の両保健婦長並びに本学生活専攻尾添和子,黒崎悦子,山崎佑子の諸嬢に対し感謝いたします.
著者
田淵 隆一 藤本 潔 持田 幸良 平出 政和 小野 賢二 平田 泰雅 菊池 多賀夫 倉本 恵生
出版者
独立行政法人森林総合研究所
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2002

ポンペイ島マングローブ林はI.Rhizophora stylosa群落、II.sonneratia alba群落、III.rhizophora apiculata・Bruguiera gymnorrhiza群落の3タイプに大別され、I、II群落は高密度の支柱根や呼吸根で特徴づけられる。泥炭層厚と^<14>C年代値とから主要群落の泥炭層厚と形成に要する期間を推定した。海側前縁部に成立するI、II型群落が深さ0〜0.5mで400年以内、最も分布面積が広いIII型では1〜2mで850〜1700年、ほとんどで1700年前後の時間が経過している。地上部現存量は、サンゴ礁原上の成熟林は2004年時点で566ton/ha、エスチュアリ域の発達した林で2005年に704ton/haと推定されなお旺盛に成長中であり、成熟林での炭素蓄積はポンペイ島で160〜300ton/ha程度、炭素蓄積速度は年当りおよそ0〜3ton/ha/yr程度と非常に高い。炭素貯留はほとんど泥炭によるものであり、年間15ton/ha程度供給される小型リターの貢献度は低い。また年平均で3〜4ton/ha程度の大型リターが枯死個体として供給される。泥炭としての炭素量は高く、2000ton/ha程度にも達する林がある。森林の更新は成熟林分下では大型ギャップができない限り暗く困難である。材分解特性を明らかにし、分離された木材腐朽担子菌Fomitopsisi pinicolaからいくつかの機能性遺伝子を単離し、厳しい環境条件を許容する能力をみとめた。高分解能衛星データを同島におけるマングローブ林域を抽出、種組成によるゾーニングと個体サイズからの林分タイプのマッピングを行ない炭素蓄積量の面的評価を行なった。
著者
丸山 喜久
出版者
千葉大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2005

アンケート調査に基づき実地震下での高速道路運転者の地震時の行動特性を評価すると,震度5以上の強震域を走行中であっても地震発生に気付かない運転者が見られるなど,震動の影響で路面の段差や陥没が発生すると衝突事故が発生する可能性が否定できないことが分かった.新潟県中越地震における盛土の段差などの被害と地震動強さの関係を精査したところ計測震度が5.1〜5.2に達すると通行に支障のある被害が発生することが分かった.これらのことから,交通量の多い都市部では地震直後に多数の事故が発生することが懸念される.橋梁などの道路構造物の地震応答特性が,走行車両の地震応答量に与える影響を検討した.地表面地震動を入力地震動とした場合と構造物の応答加速度を入力地震動とした場合の車両の応答を比較すると,車体のロール運動のための荷重移動量やヨー角が構造物応答を入力したときに大きくなり,その結果車両の横変位量も地表面地震動の場合と比べて大きくなることが明らかとなった.さらに,緊急地震速報が高速道路運転者に与える影響を,サーバーで連動された2台のドライビングシミュレータを用いた地震時走行実験で検討した.自動車交通に緊急地震速報を導入するためには,速報を受け取った場合のハザードランプを点灯させるなどの対応方法を共通化することが必要であるという課題が得られた.また,速報を受信した際や前方車がハザードランプを点灯したことを視認した際の行動の統一化を急ぐ必要があることが結論づけられた.
著者
中園 薫
雑誌
全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.49, pp.375-376, 1994-09-20

人間が音声知覚するとき、耳から聞こえる音だけでなく、視覚の影響も受けていることが知られている。たとえば、「ぱ」という音声と「が」と言っている口の動きの画像とを合わせて提示すると、他の音一一たとえば「だ」ーーに知覚される(McGurk効果)。本稿では、音声知覚に影響を与えるのは動画像情報の中のどんな要素なのか、画像のフレームレートなどを変化させ、聴取実験をおこなうことによって議論する。文献において、フレームレートが変わると、McGurk効果によって異聴が生じる度合が変わることを示した。しかし、フレームレートの変動によって生じるどのような視覚的刺激の変化要因が音声知覚に影響を与えたのか、真の原因を特定するまでには至らなかった。ここでは、その要因として、(1)画像の動きがとびとびに不自然になることによって聴覚に与える影響を阻害する、(2)動画像のコマを間引くことによって音韻の決定をする上で重要な特定の視覚的刺激を持った画像(コマ)が落ちる、の2つを考える。この特定のコマとは、唇音と非唇音の間で異聴が顕著に見られることから、「唇を閉じた瞬間」の画像であると予想できる。そこで、今回は、口を閉じた状態から「ば」と1回だけの発声したデータと、その前に「あ」の音をつけた発声したデータの2種類を用意した。(前者を"ba-type"、後者を"aba-type"と呼ぶ)そして、音声波形を見ながら、「ぱ」の音の立上りの瞬間からちょうど1秒前を開始点とし、そこから2秒間を刺激データの素材として切り出すことによって、刺激ごとの時間軸を正規化した。[figre1]この素材をもとに、30fps,15fps,10fps,5fps,3fpsの刺激データをダウンサンプルした。これによって、どの刺激データも音の立上りの瞬間の画像を含むことなる。さらに、aba-typeの刺激については、フレームレートが十分低いときに[figre1]に示したようにサンプルするフレームを半分ずらすと、口を閉じる瞬間がまったく入っていない刺激が作れる。(こうして作った刺激データを"15fps-Shift"と呼ぶ)これらの刺激データを使って、提示、聞き取りの実験を行った。
著者
幸山 正 滝澤 始 出崎 真志
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

気管支喘息基底膜の肥厚が喘息の病態に関わることが報告され、肺線維芽細胞の過剰反応の関与が示唆されている。老化がリモデリングにはたす役割の変化を明らかにするために、若年細胞としてはWI-38細胞のPDL (population doubling level) 23-27を、老化細胞としてPDL39-45を使用した。気管支喘息におけるエフェクター細胞の一つである肥満細胞から産生され、喘息の病態形成に重要とされるヒスタミンやPGD2の老化細胞に対する効果の変化を検討した。前年度はBoyden blind well chamberやGel Contraction法で老化細胞の遊走能、収縮能を検討したが、今年度は蛋白産生能について検討した。組織の細胞自身が産生するサイトカインに引き寄せられる、好中球、好酸球などの炎症細胞による末梢組織に対する効果はリモデリングを検討するうえで重要であることから、今回は老化線維芽細胞からのIL-8の産生能の違いについて若および老化細胞で比較検討した。老化細胞は若年細胞よりIL-8の産生能は低かった。しかしアレルギー炎症に関与するヒスタミンやPGD_2に対する反応には大きな差を認めなかった。これらのことから老化肺では線維化過程自体が減弱していることが示された。この研究から気管支喘息を含めリモデリングが病態形成に関わる疾患は老化に伴いその病勢は低下する可能性が示唆された。
著者
浅川 毅 金本 直之 出崎 善久 岩崎 一彦
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. FTS, フォールトトレラントシステム
巻号頁・発行日
vol.98, no.584, pp.1-8, 1999-02-04

ATPGツールにより得られたテストベクトルの一部をシフトして得られるベクトルの集合を被テスト回路への入力とするテストパターン生成器(TPG)の提案を行う. 提案する(TPG)はシフトレジスタと少量のROMで構成される. ISCASベンチマーク回路に対して提案したTPGを適用した場合の100%の故障検出率を得るためのテスト長, 及びハードウェア量の評価を行った。また, 提案したTPGを使用した場合の100%の故障検出率を得るためのテスト長の式を導出し, 故障シミュレータにより得られたテスト長との比較を行った.
著者
出崎 克也 矢田 俊彦 加計 正文
出版者
自治医科大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2009

本研究では、膵β細胞におけるグルコース代謝情報およびホルモン情報変換装置としてのKvチャネルとTRPチャネルを介した新たなインスリン分泌制御機構を解明し、そのセンサー情報統合メカニズムを明らかにすることを目的とする。ラット膵島におけるKvチャネルの発現を検討した結果、Kv2.1チャネルのmRNA発現を検出し、二重免疫染色の結果、Kv2.1チャネルは膵β細胞に局在していた。Kvチャネル電流はグルコース濃度依存性を示し、Kv2.1チャネルブロッカーはラット分離膵島からのグルコース誘発インスリン分泌を促進し、β細胞のKv電流を抑制しグルコース刺激による[Ca^<2+>]_i上昇を増加させた。自然発症2型糖尿病GKラットは正常Wistarラットと比較して、β細胞Kv2.1の発現が増大していた。K_<ATP>チャネルサブユニットKir6.2および2型糖尿病との相関が報告されている電位依存性K^+チャネルKCNQ1の膵島発現レベルは、GKラットとWistarラットで同程度であった。単離膵β細胞のKvチャネル活性を電気生理学的に比較すると、GKラットではβ細胞Kvチャネル電流が増強していた。Kv2.1チャネルブロッカー存在下ではGKラットβ細胞におけるKvチャネル電流の増強が観察されなかった。TRPM2ノックアウトマウスは、グルコースやGLP-1刺激によるβ細胞[Ca^<2+>]_i上昇とインスリン分泌が低下していた。以上より、膵β細胞ではKv2.1チャネルやTRPM2チャネルがβ細胞インスリン分泌およびそのホルモン制御機構のセンサー分子として機能していると考えられる。また、2型糖尿病ラットβ細胞では、Kv2.1分子の発現増大によりKvチャネル電流が亢進しており、Kv2.1の発現機能亢進が糖尿病態におけるβ細胞インスリン分泌不全に関与することが示唆される。
著者
佐藤 裕哉
出版者
広島大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2009

平成22年度は,以下の3点について取り組んだ。1)地図のラスター/ベクター変換と修正,2)データベース構築と修正,3)デジタル地図と被爆者データのGIS上での結合と修正である。1)については,爆心地から2~2.5kmの範囲のデジタイジングと属性入力を行った。結果として,約15,000軒分の家屋ポリゴンを作成し,1,000軒の地番コードと500軒分の世帯主名を家屋ポリゴンの属性として入力した。そのほか,道路線(ラインデータ)を作成した。また,平成21年度に作成した家屋ポリゴンと鉄道線,市内電車線,河岸線について,他の地図資料を参考に修正した。2)については,原爆放射線医科学研究所が保有する「原爆被爆者データベース」の被爆住所(地番)をコード化した。データベース内の地番まで住所が確認できる約20,000人分について,10桁の数字を附しデータベースに格納した。3)については,家屋ポリゴンとデータベースに附した地番コードにより,GIS上で自動的にマッチングできるように作業を行った。長屋など複数の建物に同一の地番が割り当てられている場合は,うまくマッチング出来ないことが明らかとなった。そのほか,昭和初期の広島市中心部のデジタル地図が成果として得られ(平成21年度と22年度の合計で約62,000軒分),貴重な地図資料を劣化しない形で保存することができた。また,このデジタル地図を作成したことにより,今後,他の空間データと重ねあわせて分析することが容易となり,原爆被害の実相解明につながる新たな知見へと結びつく可能性を持つ。一方で,家屋の高さや材質など入力する属性を増やすなど改善の余地も残されている。