著者
植木 昭紀 磯 博行 佐藤 典子
出版者
兵庫医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

アルツハイマー型認知症における神経病理学的変化がプレパルスインヒビションを制御する神経回路に影響すると考えられ、プレパルスインヒビションの測定がアルツハイマー型認知症の前駆段階と考えられる健忘型軽度認知障害、軽度アルツハイマー型認知症、正常加齢を判別するための簡便な非侵襲的検査として応用できる可能性がある。
著者
友野 春久
出版者
鹿児島大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2011

一般に弗素化合物の原材料を200~500℃以上に加熱すると,弗化水素ガスが大量に発生する。このガスは金と白金以外の全ての金属を溶かす強い腐食性と,毒性が極めて高いため,溶融精錬を非常に困難にさせている。その結果,現状の弗素化合物では多くの不純物が単結晶中に混入し透明性が大きく損なわれている。そこで本研究では弗素化合物磁性体専用の溶融炉を作製し,溶融精錬手法を確立することで,優れた透明弗素化合物磁性体を作製する事を目的とした。発生するフッ化水素ガスによる発熱体への腐食などの問題により,弗素化合物磁性体専用の溶融炉は市販されていない。そこで常用1300℃の内熱型発熱体,最大電流30A用サイリスタレギュレータ電源,温度コントローラ,温度計としてR型シース熱電対をそれぞれ用意して組み立てた。一方,炉心体はある程度弗化水素ガスに対して耐性を持つ高純度緻密質アルミナパイプを使用した。さらに高真空下(<10^<-3>Pa)における弗素化合物磁性体の溶融が行えるように,フランジには非磁性・耐熱性・耐腐食性・溶接性にすぐれたSUS316を使用し,バイトン製O-リングでシールして,フランジ本体を小型ファンで空冷した。本研究では手はじめに,透明強磁性体として有名なK_2CuF_4の作製を行った。本化合物は僅かな水分や酸素が溶融体と反応すると,単結晶試料が酸化銅の影響によって赤褐色に変色し,透明度が落ちる事がよく知られている。そこで本研究では,溶融体の前駆物質に注目して,化学的・物理的処理を施すことによって,ほぼ完全に透明と呼べるような超高純度な弗化物磁性体の作製に成功した。今後,本装置を利用した様々なフッ素化合物磁石の作製が期待される。
著者
古角 好美 水野 治久
出版者
大阪教育大学
雑誌
大阪教育大学紀要 第4部門 教育科学 (ISSN:03893472)
巻号頁・発行日
vol.57, no.2, pp.157-169, 2009-02

本研究の目的は,小学校5年生を対象にストレスマネジメントプログラムを実施しその効果を検討することであった。プログラムは主に「心理的ストレスのメカニズムに関する理解」と「コーピングとストレス反応の関連を調査し得た結果を参考にした。介入効果の比較検討のために実験群22名と統制群(待機群)22名に分け,20時間のストレスマネジメントプログラムを実施し,6回の調査(介入前・介入中1・介入中2・介入後・追跡1・追跡2)を行った。その結果,コーピングにおいては肯定的認知対処得点の一部で上昇はみられたが,ストレス反応軽減効果は認められなかった。This study investigated the effects of a stress management program on elemental school children. First, questionnaire research was conducted with 99 elementary school children to clarify the relationship between various coping strategies and stress responses. The results indicated that emotional avoidance coping and support seeking coping were positively related to stress responses. Second,20-hour stress management programs were conducted with two groups of students: intervention group (22 students) and waiting list control group (22 students). Participants responded to a coping style scale and a stress response scale for six waves: pre, midpoint 1, mid-point 2, post, follow-up 1, and follow-up 2. The results showed significant favorable intervention effects for the positive cognition coping style, but there were no other significant effects.
著者
岩瀬 真生 石井 良平 高橋 秀俊 武田 雅俊 橋本 亮太 橋本 亮太
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

統合失調症を初めとする精神疾患に対して経頭蓋磁気刺激治療を行い、近赤外分光法を用いて治療中の血流同時測定を行ったところ、治療中に血流変化がみられることが観察されたが、何人かの被験者では磁気刺激による刺激のアーチファクトが測定に混入することが判明した。近赤外分光法により課題施行中の血流変化により、健常者と疾患群の判別解析が可能なことが明らかになり、磁気刺激治療への反応性予測に応用できる可能性がある。
著者
安部 直重 高崎 宏寿 苗川 博史 佐藤 衆介 菅原 和夫
出版者
Japanese Society of Animal Science
雑誌
日本畜産學會報 = The Japanese journal of zootechnical science (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.73, no.3, pp.449-456, 2002-08-25
参考文献数
24
被引用文献数
2 1

本研究は150日齢でのマネキンに対する模擬闘争行動を発生した個体の特徴を行動学的および生理学的に明らかにすることを目的とした. 交雑種雄子牛10頭を供試し, ヒトの代替として設置したマネキンに対して模擬闘争を発生した6頭 (発生群) と発生がなかった4頭 (非発生群) を通常飼育下, 新奇環境下およびストレス刺激下での行動的・生理的反応に関して比較した. 通常飼育管理下では, 維持行動および常同行動に関して差はなかったが, 発生群の社会行動は多く, とくに闘争行動の6時間あたりの発生回数では発生群の3.3回に対し非発生群は1.6回, 模擬闘争行動では発生群の7.8回に対し非発生群では4.3回と有意に多かった (P<0.05). 新奇環境としてマネキンを設置したオープンフィールド (OF) 内における行動では, 発生群はOF全体を平均的に通過するのに対し非発生群はマネキン設置付近を有意に避けた (P<0.001). また, OFを囲う壁への探査行動は非発生群で200回に対し, 発生群では101回と非発生群が有意に多発し (P<0.05), マネキンに対する探査時間は発生群で109秒に対し非発生群では8秒と発生群が有意に長かった (P<0.05). 驚愕刺激前後の心拍数の変動率は, 発生群では118%に対し非発生群は115%と発生群が高い傾向にあった (P=0.10). 拘束前後の血清コルチゾール値の変動率では発生群の28%に対し非発生群では192%と非発生群が有意に大きかった (P<0.05). 血清テストステロン値は発生群の8.33ng/m<i>l</i> に対し非発生群は4.11ng/m<i>l</i> と発生群が有意に高かった (P<0.05). これらの結果から模擬闘争行動発生個体および非発生個体は, 積極型行動タイプと消極型行動タイプというストレス研究での類型化と一致する可能性が示唆された.
著者
高橋 肇 千田 圭一 中世古 公男
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物學會紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.59, no.2, pp.327-333, 1990-06-05

春播コムギ3品種 (長稈ハルヒカリ, 半矮性ハルユタカおよび長稈・晩生Selpek) の主稈3部位 (穂首節間, 第2節間および下位節間) における構成物質 (細胞壁構成物質, 純細胞内容物質および可溶性糖) の推移を開花期から成熟期まで調査した。開花後, 細胞壁構成物質と純細胞内容物質は穂首節間と第2節間で伸長生長に伴い増加したものの, 開花時に伸長の停止している下位節間ではほとんど増加しなかった (第2図) 。これに対し, 貯蔵物質と考えられている糖は, 各節間とも乳熟期まで増加した後穂への転流とともに減少し, 成熟期にはほぼ0の値を示した。糖は, 下位節間では開花前にかなりの量が蓄積していたのに対し, 穂首節間と第2節間では開花期に蓄積し始め, 下位節間では乳熟期の1週間ほど前に, 第2節間では乳熟期に, 穂首節間では乳熟期の数日後に最大値に達した。乳熟期の糖の含有率は全品種とも第2節間で高く, さらに含有量は下位節間で高いため, 第2節間と下位節間が主要な貯蔵器官であると考えられた。一方, 糖の含有率, 含有量ともに半矮性のハルユタカで長稈のハルヒカリ, Selpekよりも高かった。
著者
二宮 啓子 丸山 浩枝 宮内 環 岡崎 裕子
出版者
神戸市看護大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

生活習慣に関連した健康障害をもつ学童と親に自己管理技術を高める1年間の看護介入プログラムを実施し、学童の生活習慣に関する認識・行動・肥満度の改善への効果について検討することを目的に研究を行った。小学1〜6年生37名(男子17名、女子20名)と母親を対象に、子どもにはプログラム前後に自己効力感とソーシャルサポートの質問紙調査、健康状態の認識、日常生活行動に関する面接調査を行った。一方、親にはプログラム前後に健康の定義、健康状態の認識、日常生活行動に関する面接、または質問紙調査を行った。介入方法としては、面接調査時に自作のパンフレットを用いて生活改善の方法を指導した。その後、月1回放課後に2時間の生活改善プログラムを10回実施した。その結果、肥満度は介入1カ月後に有意に減少していた(t=4.09,p<0.001)が、その後上昇し、プログラム終了時には有意差は見られなかった。プログラム前後では、やせ1→0名、標準20→24名、軽度肥満9→5名、中等度肥満5→7名、高度月満2→1名に変化していた。自己効力感は、プログラム後に有意な増加は見られなかった。ソーシャルサポートは、親の得点がプログラム後に有意に増加する傾向が見られた(Z=-1.64,P=0.10)。プログラムの子どもへの効果として、「運動するようになった」「食事・おやつの量が減った」「栄養のバランスがよくなった」等の運動、食事行動の変化、「走ってもしんどくなくなった」「体重が減った」等の身体の変化、「低カロリーのおやつを選択」「体重測定をする」「自分の食べる量が分かる」「運動と食事のカロリー消費との関係を考える」等の健康の自己管理の認識の変化、「前向きになった」「決めた目標に向かって張れた」等の自己効力感の変化に加え、「親子の会話が増えた」が抽出された。本プログラムは肥満度の改善に対する短期・長期効果があると言えよう。
著者
梶原 武久
出版者
小樽商科大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2003

電子機器メーカーのA社を対象とするフィールドスタディを実施した。とりわけ、同社において過去に蓄積されてきた品質コストデータの分析に取り組んだ。現状は暫定的な分析段階であるが、分析結果は概ね以下の通りである。品質の作り込みと継続的学習が重視される日本的品質管理のもとでは、予防コストと評価コストを維持するか、もしくは削減しながら、失敗コストの削減が可能であると考えられてきた。しかし分析結果によれば、品質コストデータの蓄積が開始された1992年から1996年までは、上記の関係がみられるが、それ以降においては、予防コストや評価コストに減少がみられる一方で、失敗コストが横ばい、もしくは上昇傾向にあることが明らかになった。この分析結果は、従来の定説とは大きく異なるものであることから、今後、なぜこうした分析結果が得られたのかについて検討を進めていく必要があると考えられる。また過去の失敗コストが、将来の出荷額に及ぼす影響についても検証を行った。暫定的な分析結果によれば、5期前の内部失敗コストが、現在の出荷額にマイナスの影響を及ぼすことが示された。一方、外部失敗コストが出荷額に及ぼす影響については検出することは出来なかった。これらの分析結果が得られた理由としては、内部失敗コストが増加することによって、手直しや補修が発生するために、通常の生産活動が制約されると考えられる。また外部失敗コストが出荷額に及ぼす影響を検出することが出来なかったのは、同社の主要製品が、産業材であること、また外部クレームについては、手直しや補修が行われないことが主要な原因であると考えられるが、今後さらに検討が必要である。
著者
後川 昭雄 高橋 慶治 河端 征彦 高橋 武 富田 秀穂
出版者
宇宙航空研究開発機構
雑誌
東京大学宇宙航空研究所報告 (ISSN:05638100)
巻号頁・発行日
vol.13, no.3, pp.773-798, 1977-09

衛星が軌道中にあるとき,重要な電源である太陽電池の出力がどれ位かを正確に推定するために地上においてその特性が予め正確にわかっている必要がある.本来,太陽電池の出力較正は大気圏外で行うのが最もよい方法であるが,現在まだ回収が不可能であるため,一般には高々度気球を使用して,大気効果の少ない約36km以上の高空で出力較正を行うのが普通である.そこで昭和49年度から50年度にかけて実験装置の設計,製作,地上試験を行ない,昭和51年5月25日に三陸大気球観測所においてB_5気球により衛星用太陽電池の出力較正実験を実施した.今回は第1回目ということもあり飛翔高度は約27kmであった.しかしこの高度ではまだ散乱光の影響が残っており,また気球の反射も当初予想したように大きかった.今後,上記影響を充分に注意して実験を行えば,太陽電池の出力を正しく較正することが可能であり,標準太陽電池の気球による設定化の目途がついたといえる.
著者
小出 祐一 石垣 博邦 松永 博充 福士 直己 白木 智美
出版者
一般社団法人 日本機械学会
雑誌
日本機械学会論文集C編 (ISSN:18848354)
巻号頁・発行日
vol.77, no.774, pp.319-328, 2011 (Released:2011-02-25)
参考文献数
14
被引用文献数
1 1

In the seismic design of the boiling water reactor, we need to estimate the dynamic insertion behavior of control rods into the core region to secure the safety of the reactor under seismic events. In particular, estimation of the insertion time is one of the most important design tasks affecting the scrammability of the reactor. We developed a numerical analysis model to predict the control rod insertion time under seismic events using multibody dynamics. The effect of the interaction force between the control rod and the fuel assemblies is considered in three-dimensional contact analysis. This interaction force causes resistance force acting on the control rod under insertion. The hydraulic control unit and the control rod drive, which provide the control rod with driving force, were modeled in the concentrated parameter system considering dynamic characteristics, such as the inertance of the working fluid in the scram piping and the capacitance of the working gas in the accumulator. The numerical analysis can simulate the realistic insertion behavior of the control rod by coupling these models together and using an interactive process to calculate how they interact. The validity of the numerical analysis model was confirmed by comparing the analytical results with the experimental ones. The results of our analysis showed that the numerical analysis model provides good agreement with the insertion time of the control rod.
著者
明石 み代
出版者
東京女子医科大学学会
雑誌
東京女子医科大学雑誌 (ISSN:00409022)
巻号頁・発行日
vol.31, no.7, pp.360-360, 1961-07-25

第107回東京女子医科大学学会例会 昭和36年5月25日(木) 東京女子医科大学病院第一臨床講堂
著者
島津 フミヨ
出版者
東京女子医科大学学会
雑誌
東京女子医科大学雑誌 (ISSN:00409022)
巻号頁・発行日
vol.26, no.7, pp.390-390, 1956-07-25

東京女子医科大学々会第79回例会 1956年5月25日(金) 東京女子医大第一臨床講堂
著者
村木 美貴
出版者
東京工業大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1999

バブル経済期に地価の高騰から都心の居住空間は駆逐され、それへの対処方法として住宅付置義務要綱、都心居住推進のための総合設計制度、中高層階住居専用地区などが導入された。これらの方法により都心に住宅確保することは可能となったものの、望ましい住環境の確保、都心居住のあり方は明らかではない。そこで本研究は、都心居住推進のためのミクストユースのあり方、とりわけ義務・商業と住機能の共存方法を明らかにすることを目的として東京とロンドン都心区の都市マスタープランの取り組みと、ミクストユースの実態について明らかにした。イギリスでは、都市計画の基本文書であるデベロップメントプランに住宅供給の必要性と実現方法が明確に位置づけられていた。方法としても、他用途との共存方法が同一ビル内では別アクセス路の確保による、居住アメニティの確保という形で表れ、また、共存しうる業種の指定という方法が採られていた。とりわけ同一建物内での共存方法は、立地場所、階数、業種を明確に提示することで、他用途と住宅との共存を可能とさせていた。現在、サステイナビリティの必要性から、都心部での住宅供給は高く必要性が問われているものの、オフィスビル建設については、住環境の確保という観点からも、飛び地による住宅供給も行われていることが明らかとなった。昨年度の研究との比較を通して、我が国における望ましい複合用途の確保、住宅と他用途との共存のためには、ただ特別用途地区の指定や容積ボーナスによる住宅供給に留まらず、都市計画マスタープランにその必要性を位置づけた上で、居住アメニティを実現させるための詳細なガイドラインの策定とその運用の必要性がある。望ましい住環境を都心部でも確保するためには、用途地域制だけではなく、業種内容をより詳細に分類し、住宅と共存しうる業種、業態を明確化していくことが必要と思われる。