著者
小野 直達 梅木 利巳
出版者
東京農工大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1989

平成元年及び2年度にて、大規模養蚕複合経営の存在形態を広く把握し、かつ両年度での実態調査を通じて当該経営の経営方式を一般化することを試みた。そのため、調査対象地として東日本地域から四県、西日本から二県を選択し、前述の課題に接近した。1、はじめに大規模養蚕と称しうる経営、なかでも収菌量3トン以上農家は昭和63年 127戸、平成元年 126戸であった。なお、元年度の経営方式を把握することは資料の制約上できなかった。いま昭和63年度での経営方式に関連させた場合、約8割の農家が両年とも3トン以上農家であった。この結果、養蚕大規模といえども他部門との結合が一般的形態であり、特に水稲部門との結合が高い割合を示しており、ついで野菜、畜産などであった。2、さて両年度における調査のうち、福島県安達町は県内でも主要な養蚕地帯を構成しており、経営方式では水稲部門との結合が高く、ついで野菜、畜産、菌茸であった。郡馬県前橋市芳賀地区の場合、多様な結合の展開がみられ、養蚕プラス畜産、野菜、更に水稲などであった。同県吉岡村明治地区は養蚕プラス野菜の結びつき、千葉県八街町は野菜および落花生との結合、西日本地域における鹿児島県姶良地域では生産牛および菌茸、愛媛県大洲市では養蚕プラス野菜、が特徴的であった。つまり各地域における部門結合は、立地条件を強く反映した経営方式の展開であった。要するに、両年度の調査結果から、ひとまず養蚕と水稲をはじめ、野菜、畜産などであった。との四つの経営方式を摘出できた。なお残された課題として当該方式の実現手法の開発に努めたい。
著者
日高 三郎 大石 明子
出版者
福岡医療短期大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

4種類の日常的な食事献立の試験管内石灰化への影響につきpH低落法を用いて研究した。主食のごはんは石灰化を促進させたが、食パン(トースト)は抑制した。献立1~3のじゃがいもなど2~3の料理と食材、さらに洋食的な献立4のバターなど2~3の料理と食材は石灰化を促進した。しかし、促進効果は口腔内では唾液の影響で発揮されないと考えられるので、われわれの日常的食事は歯石形成に抑制的であることが示唆される。
著者
亀井 清華
出版者
広島大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010-04-01

動的無線ネットワークに適した分散アルゴリズムとして,安全に収束する自己安定分散アルゴリズムの研究をおこなった.これは,故障が起こった後の任意の状況から短時間で(解の質を問わない)安全な状況に遷移し,そこからは安全性を崩さずに最適解に収束するという性質を持つ分散アルゴリズムである.様々な最適化問題にモデル化される分散問題について,この性質を持つ分散近似アルゴリズムの設計を行った.
著者
寺原 猛
出版者
東京海洋大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

一般に遺伝子発現系で使用される大腸菌でさえも、産生タンパク質が失活することが多い。そこで、マリンメタゲノム・ライブラリー約2000クローンから組換えタンパク質の活性を補助・促進する新たな因子を探索した。その結果、既知のものとは異なる因子が含まれ、低温での大腸菌の増殖能を向上させる3クローンを発見した。これらのクローンは、大腸菌を用いた低温での組換えタンパク質産生系の構築に役立つ可能性が示唆された。
著者
西本 右子
出版者
神奈川大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

1.木材から発生する揮発性有機化合物(VOC)及び有機酸の迅速測定法の開発これまでに建材メーカーや施工業者が適切な建材を簡易かつ迅速に選定するための測定法を確立しGCとTGにより2時間程度で建材中のVOC評価が行えることを報告してきた。本研究では測定法のさらなる精度向上を目指した。その結果、木材1gを20mLバイアルに密閉し、110℃1時間保持後の気体を直接GC測定することで、木材から発生する揮発性有機化合物の測定が行えることがわかった。ICを用いた有機酸の迅速評価法についても純水に浸漬し超音波処理後遠心分離・ろ過によって可能であることがわかった。さらに現在各種機能水の適用を検討中である。2.木材の種類、産地、部位を考慮し、温度・湿度を中心とした使用環境の影響の検討木材の種類、産地、部位によってVOC成分・発生量及び水抽出分は異なり、輸入木材ではVOC発生量が多く、水抽出分が酸性であることが明らかとなった。一般にセルロース含有量が多い木材はGC測定においてTVOC値が高いこともわかった。木材の前処理として塩の水溶液や各種機能水の蒸気と接触させた場合、揮発性有機化合に対する吸着特性の制御の可能性が得られた。3.木材(廃材)を原料とする木炭等のVOCに対する吸着剤としての利用通常室内の存在する、VOC12種及び木材・木炭・木質系エコマテリアルであるウッドセラミックス(WC)について検討した。吸着後試料のTG測定結果と合わせ、これまでの測定法が木材、木炭等の悪臭物質や香気性物質に対する吸着特性評価として有効であることがわかった。また木炭及びWCでは悪臭物質や香気性物質に対する吸着特性が原料である木材に依存することが明らかとなった。また木材同様木炭、WCにおいても前処理として塩の水溶液や各種機能水の蒸気と接触させた場合、揮発性有機化合に対する吸着特性を制御できる可能性が示唆された。
著者
Aoshima Hitoshi Hamamoto Koutaro
出版者
社団法人日本農芸化学会
雑誌
Bioscience, biotechnology, and biochemistry (ISSN:09168451)
巻号頁・発行日
vol.63, no.4, pp.743-748, 1999-04-23
参考文献数
28
被引用文献数
8 131

To study the effects of perfume and phytoncid on GABA_A receptors, ionotropic GABA_A receptors were expressed in Xenopus oocytes by injecting mRNAs that had been prepared from rat whole brain. Essential oil, perfume and such phytoncid as leaf alcohol, hinokitiol, pinene, eugenol, citronellol and citronellal potentiated the response in the presence of GABA at low concentrations (10 and 30 μM), possibly because they bound to the potentiation-site in GABA_A receptors and increased the affinity of GABA to the receptors. Since it is known that the potentiation of GABA_A receptors by benzodiazepine, barbiturate, steroids and anesthetics induces the anxiolytic, anticonvulsant and sedative activity or anesthetic effect, these results suggest the possibility that the intake of perfume or phytoncid through the lungs, the skin or the intestines modulates the neural transmission in the brain through ionotropic GABA_A receptors and changes the frame of the human mind, as alcohol or tobacco does.
著者
内藤 勝
出版者
嘉悦大学
雑誌
嘉悦大学研究論集 (ISSN:02883376)
巻号頁・発行日
vol.46, no.1, pp.85-107, 2003-10-01

最近の中国経済は、農工において発展が著しい。DGPは1兆2000億ドル(2000年)で世界第6位、しかし、12億7513万人の人口を抱えているので1人当たりの所得は847ドル(約9.3万円前後。1元は15円で計算した。)にすぎない。農林業のGDPに占める割合は17.4%である。1999年の食糧生産(米、小麦、トウモロコシ、コウリヤン、粟、その他の雑穀、いも類)の総計は5億839万tを記録している。(但し、2000年は減反政策により4億6212万tに減じた。)その内小麦は1億1440万t、米(籾)は2億0499万tを生産し米麦とも世界第1位である。その他、トウモロコシ1億262万tで世界2位、大豆1370万tで世界第4位である。かつて大躍進運動(1958〜60)の失敗と自然災害(華北の旱害、華南の水害)によって多数の餓死者を出した中国農業とは根本的に異なる。特に1978年以降、改革開放政策により農家生産請負責任制(以下個別経営と呼ぶ)が盛んになり最近(2000年)は、野菜、果物生産の増加も著しい。野菜は約4.2億tで世界1位、果物も約6.2億tで世界1位である。野菜の生産額は2500億元(3.7兆円)を上回り食糧についで2番目の額に急成長している。しかも、90年以降世界へ野菜が輸出され始め2000年のわが国への野菜輸出量は、139万tで15.8億ドルに昇る。1991年以降、我が国の農産物輸入はアメリカを抜いて中国が第1位となった。特に、華北平原(黄河がつくった中国東部の平原を指す。)からの野菜の輸入が急増している。そこで、この生産増加の要因が何処にあるのか?それを水と農法の面から考察した。特に、低エントロピー源としての水は、農業及び工業いや人類の生存にとって欠くことができない。中国農業は80年代に入るや灌漑設備が充実してきた。華北平原では黄河流域の地下水を電気ポンプで揚水する方法が90年代より急激に広まった。乾緑地帯に水が導入された事は、画期的なことであった。華北における成長要因は自由化政策による野菜、果物の需要の増加、その生産を可能にした地下水による灌漑の整備と言えよう。他方、地下水消費の増加は黄河の断流をもたらし塩害をまねいている。ここに農産物貿易の問題点がある。尚、本稿は2001〜2年にわたる山東省青州市近辺の農業調査をまとめたものである。(筆者は1980年遼寧大学の王將方氏、瀋陽大學の翁麗霞氏と瀋陽近辺の調査をしたことがある。それは個人農場制初期の調査である。あれから10年の中国農業の変化も視点に入れ考察した。)
著者
中澤 克昭
出版者
長野工業高等専門学校
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2003

研究期間最終年度となる今年度も、尊経閣文庫をはじめ、国立公文書館、宮内庁書陵部、蓬左文庫、静嘉堂文庫などに所蔵されている故実書類を閲覧・調査した。また、慶應義塾図書館(魚菜文庫)、金沢市立玉川図書館近世資料館(加越能文庫)の所蔵史料は複写を入手。松本市文書館では小笠原流故実書の写真を閲覧した。さらに、石川文化事業団お茶の水図書館(成簣堂文庫)所蔵の小笠原家文書に「矢開文書」と題された故実書類があることを確認。閲覧・調査により、室町殿や細川氏の矢開に関する貴重な史料群であることが判明し、公家文化との差異が明瞭な武家の狩猟と狩猟儀礼「矢開(矢口開)」の変化についても考察することができた。摂家将軍も親王将軍も狩猟を行なった形跡は無いが、北条泰時・経時は鹿を獲物とする矢口祭を行なっており、北条氏にとっても狩猟は重要な政治文化だった。ところが、室町期には鳥を獲物とする矢開の故実が流布し、室町殿も雀を獲物として矢開を行なっている。そうした鳥の故実は室町期に形成されたのではなく、北条得宗家において創始されていたと考えられ、近世の故実書が引用する徳治二年(1307)の矢開の日記によれば、得宗家で雀の矢開が行なわれていた。武家首長の矢開は中世に一貫してみられたが、その獲物は十三世紀後半以降、鹿から鳥へと変化していたのである。武家首長の公家化という面だけでなく、武家文化の変容についても考えてみることが重要であろう。この研究成果の一部は、2005年11月、「武家の狩猟と矢開の変化」と題して、史学会(東京大学)第103回大会日本史部会(中世)において発表した。
著者
井上 美津子 浅里 仁 池田 訓子 小林 聡美 佐々 龍二 高木 裕三 朝田 芳信 大嶋 隆 小口 春久 田中 光郎 前田 隆秀 宮沢 裕夫 藥師寺 仁 渡部 茂 真柳 秀昭 鈴木 康生 下岡 正八 野田 忠 渋井 尚武 進士 久明 田村 康夫 土屋 友幸 大東 道治 香西 克之 西野 瑞穂 木村 光孝 本川 渉 藤原 卓 山崎 要一 吉田 昊哲 丸山 進一郎 嘉ノ海 龍三 品川 光春
出版者
一般社団法人 日本小児歯科学会
雑誌
小児歯科学雑誌 (ISSN:05831199)
巻号頁・発行日
vol.43, no.5, pp.561-570, 2005-12-25
参考文献数
11
被引用文献数
5

小児に対する歯科用局所麻酔剤の安全性を明らかにするため日本小児歯科学会の委嘱により,臨床における使用実態と不快事項の発現に関する調査を行った.大学病院小児歯科および個人小児歯科診療所より4,145名分のデータが収集され,以下の結果を得た.<BR>1.局所麻酔を用いた治療は0歳から20歳以上の幅広い年齢層に行われていたが,12歳以下の者が約90%を占めていた.<BR>2.全身疾患やアレルギー体質を有する小児は調査対象児の2割以上を占め,また局所麻酔が初めての小児が16.2%であった.3<BR>.小児の治療において,局所麻酔はコンポジットレジン修復などの修復処置にも多用されていた.<BR>4.局所麻酔薬剤としてはリドカイン製剤が多く用いられており,投与量は1.0ml以下が多かったが,1.8mlを超えた例も3%程度みられ,追加投与により総量が増える傾向がみられた.<BR>5.術中,術後の不快事項は,それぞれ108名(2.6%),109名(2.6%)にみられた.不快事項の内容は,麻酔の奏効不良による疼痛や麻痺による違和感・不快感の訴えや,麻痺の残存による咬傷などが多くを占めていた.<BR>6.局所麻酔薬剤の副作用を疑わせる熟睡や軽い呼吸困難,悪心などの症状は,術中に3例,術後に6例ほどみられたが,いずれも重篤なものではなかった.
著者
大澤 聡
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2008

戦前期、とりわけ1920-30年代日本の文学・思想をめぐるメディア環境を精査する分析作業を進めた。具体的には、主に以下の論文群を執筆・発表した。1.論文「雑誌『経済往来』の履歴-誌面構成と編集体制」では、戦前期の四大総合雑誌のうち最後発誌である『経済往来』(『日本評論』の前身)に焦点を当てることで、<総合雑誌>概念を析出した。誌面構成と編集体制の変容過程を資料的に明らかにし、雑誌間の影響関係を梃子として言論モードの変遷を辿るための足がかりを獲得した。2.論文「私批評と人物評論-一九三〇年前後の文芸批評にみる人称消費の構造」では、「私批評」と「人物評論」という、異なる文脈から1930年代前半に同時に隆盛した二つの批評スタイルをつきあわせることで、当時の批評環境を総合的に捉え返した。とくに、本研究が着目する「有名性」がより直接的に商品として表現される「人物評論」についての分析を行なう過程で、書誌解題「『中央公論』「街の人物評論」欄一覧-付・解題」を整理・発表した。3.共著『一九三〇年代のアジア社会論-「東亜協同体」論を中心とする言説空間の諸相』に収録した論文では、メディア分析を思想史研究に接続することで、当時の言説空間のより立体的な構造把握を試みた。とりわけ複数の固有名間の連鎖関係の解析に力点を置き、従来の思想史叙述の相対化を図つた。なお、関連書誌として「舩山信一書誌-日中-太平洋戦争期(1937-45年)編」を作成・発表した。4.論文「[研究展望]「雑誌」という研究領域」では、雑誌分析の方法論を概略的にまとめ、個々の記事コンテンツではなく「雑誌」というメディアそのものをテクストして分析対象に設定する意義を提起した。
著者
山本 淳一
出版者
日本行動分析学会
雑誌
行動分析学研究 (ISSN:09138013)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.2-21, 1987-03-31
被引用文献数
3

本実験の結果, 一対構成課題による忽意的見本合わせを訓練することで, 自閉児においても, 視覚刺激間の対称性および等価性が成立し, それは5つのメンバーを持つ刺激クラスにまで拡張しうることが明らかになった。Sidman et al(1982)が定義した, 対称性を含む推移性も, 3名中2名の自閉児において, 訓練後即座に成立した。等価性テストの成績が低下した場合でも, テスト試行そのものは操作しなくとも, その成立の必要条件を構成する訓練手続きを操作するだけで, 成績が上昇することがわかった。特に, 等価性の成立を促進するには, (1)同一のテスト・ブロックをくり返し施行する, (2)各刺激セットについて, 設置刺激または移動刺激のいずれか一方に固定した訓練だけでなく, 双方の役割を持たせるよう訓練すること, などが有効であることが示唆された。すべての被験児について, テスト施行中においても, 終了後においても, 成立した各刺激クラスに共通の名づけ反応はなされなかった。このことから, 外的な音声反応は, 等価性成立のための必要条件ではないことが示唆された。特定刺激セットの3種の刺激のうち2種のみが, 各試行においてランダムな組み合わせで, 設置刺激として呈示された場合でも, 3種のメンバーを持つ刺激クラスが成立することが示された。
著者
高杉 紳一郎
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

医療介護現場での移乗動作には,複雑で3次元的な身体操作が必要なため,患者や高齢者の転倒リスクと,介護者側の身体負担が問題となっている.我々は安全かつ容易な移乗法を創案するとともに,専用の移乗・移動支援装置を設計し,さらに日常生活活動をも支援できる電動車いすロボットとして開発を進めた.最終年度までに試作機を製作して試乗テストや動作解析を行い,従来製品と比較しつつ,製品化へ向けて改良を行った.
著者
中埜 良昭 高橋 典之 崔 琥
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

本研究の主目的は,無補強組積造壁を有するRC造建物の被災度判定手法の実用化に供するデータをその縮小モデルを用いた破壊実験を通じて収集・分析することで,ここではその第1段階として被災度判定手法の確立に不可欠であるRC造架構に内蔵された壁体のせん断力および破壊メカニズムを詳細に評価するため,面内方向への静的載荷実験を実施した。その結果,本実験の特徴の1つである各組積ユニットに貼り付けた3軸歪ゲージのデータから壁体に作用する対角圧縮ストラットの形成角度や等価幅などを詳細に評価することができた。また,これらの検討結果および別途に実施した組積ユニットの材料試験結果に基づき壁体の負担せん断力を算定し,架構全体の荷重-変形関係を精度良く再現することができた。
著者
鈴木 剛
出版者
東京電機大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

震災などの災害発生後に,被災状況の把握に必要な情報を収集する無線センサネットワークを移動ロボットにより展開するための,センサノードの運搬・配置機構の開発を行った.特に本課題では,障害物等により進入不可能な隔離空間に,遠隔操作型レスキュー移動ロボットにより無線センサノードを投擲配置するための投擲機構,および,有線のセンサノードを用いた投擲距離調整機構を開発し,実験により評価した.
著者
関場 亜利果
出版者
筑波学院大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究は美術運動が産業デザインの発展と多様性に寄与した一つの様相を明らかにする事を目的とし,1960年代にイタリアで発祥した美術運動アルテ・プログランマータ(Arte Programmata)を研究対象とした。この美術運動は当時先進的な情報科学技術であった「プログラミング」を芸術へ応用することを試み,ブルーノ・ムナーリ(Bruno Munari)とウンベルト・エーコ(Umberto Eco)が企画した展覧会がヨーロッパとアメリカ各地を巡回,美術史においてキネティック・アートと位置づけられている。2008年度にイタリアとドイツで現地調査を行い,イタリア人作家ブルーノ・ムナーリ,エンツォ-マーリ(Enzo Mari),ジェトゥリオ・アルヴィアー二(Getulio Alviani),グルッポT(Gruppo T),グルッポN(Gruppo N)について資料収集した。2009年度はこれら作家がグラフィック・デザインやプロダクト・デザイン的な作品も制作していく点に注目しその背景と要因について考察した。具体的には,この運動がデザイン文化に力を入れるオリヴェッティ社の支援で始まった事,制作過程で工業生産という手段に関わる事,多くの作家が当時急速に産業都市として発展したミラノに関わりがあった事,作品のコンセプトとして「オブジェ」「マルチプル」というキーワードを掲げ,思想的背景として旧来の芸術への批判精神から「共同研究」「共同制作」を行い,従来の芸術と異なる観客との関係を模索していた事,一人の享受者ではなく大衆へ開かれた作品を目指していたこと等である。また,こうした立場を国際舞台で他芸術家や研究者らと交流・議論し再確認した「新しい傾向」への参加が後の制作姿勢に影響を与える過程を調査した。本研究は,他国のキネティック・アートに見られない特徴,デザインへの展開の過程を考察し,美術史的視点のみにとどまらない文化的側面から再考察した点に意義が有る。
著者
細谷 和海
出版者
近畿大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2008

1. 海外博物館での標本調査初年度は、シーボルト標本調査のため、直接ライデン博物館へ赴き、一部標本の再検査および同定による種名とタイプ標本の地位について確認した。しかし、分類学的な課題は依然残されており、いくつかの種については、海外の著名な博物館において絶滅危惧種など優先度の高い種について調査を行なう必要がある。そこで平成21年度は米国スミソニアン博物館へ、次いで、平成22年度は3月12日から18日までChicagoフィールド博物館ならびSan Francisco,カリフォルニア・アカデミー博物館(CAS)へ赴き、タイプ標本と照合を行なった。その結果、サケ科、およびタナゴ類など小型コイ科魚類の学名の整理(シノニム関係)ができた。このことにより、保全対象種の実態が明確となり、具体的な保全目標の設定が可能となった。2. 絶滅種の分類学的精査シーボルトコレクションは西日本に集中している。魚類標本の多くが、長崎周辺と江戸参府の際に収集されたことが原因である。そのため、日本産淡水魚相の過去の態様を探るには、東日本に分布する種について精査する必要がある。近年、絶滅したと考えられていたクニマスが、京大の研究グループにより再発見された。クニマスのタイプロカリティは秋田・田沢湖で、今回、移殖地の山梨県・西湖で生息が確認された。しかし、同定にはかなりの問題があり、模式標本との照合が強く求められていた。フィールド博物館とCASにおいてクニマスの模式標本と比較した結果、西湖の現存標本の特徴はおおむね摸式標本に一致するものの、斑紋・からだの大きさ等が異なることが明らかになった。今後、現存個体群の保全を進めると同時に、遺伝的特性も含め、個体変異と交雑の可能性について検証することが必要と思われた。
著者
八木 裕
出版者
一般社団法人 表面技術協会
雑誌
表面技術 (ISSN:09151869)
巻号頁・発行日
vol.55, no.7, pp.447, 2004 (Released:2005-09-01)
参考文献数
9
著者
甲斐 教行
出版者
茨城大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

中部イタリアのシエナを中心に活躍した画家アレッサンドロ・フランキ(1838-1914年)と委嘱主の諸修道会との関連を検討し、画家の一連の宗教画に貧者への扶助等の慈善活動を促す意味内容を読み取った。またジェノヴァのサンティッシマ・アヌンツィアータ教区聖堂の壁画《無原罪受胎の教義》、シエナのサンタ・テレーサ女子寄宿学校礼拝堂装飾、そしてオルヴィエート、ボローニャ、プラートの各聖堂に所蔵される三点の《聖家族》の銘文と図像の典拠を特定し、各作品の意味内容を読解した。