著者
田中 実
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
Journal of the Meteorological Society of Japan. Ser. II (ISSN:00261165)
巻号頁・発行日
vol.75, no.6, pp.1109-1123, 1997-12-25
参考文献数
20
被引用文献数
12

東アジアにおける梅雨降水量及び西太平洋における夏のモンスーン (WNPM) の年々変動及び長期変動を1963年から1992年までの30年間の海面気圧・降水量及び5日平均GMS上層雲量データ (1978年4月から1992年12月) を利用して調査した。これらの現象とENSOとの関係を1963年から1992年までの30年間の東部赤道太平洋海面水温(NINO3 SST)を利用して調査した。7月下旬のWNPMの年々変動は、NINO3 SSTと最近の15年間 (1978-1992) のみ高い負の相関があることがわかった。これはLa Nina (El Nino) 年にWNPMは強く (弱く) なりやすいことを示す。7月の梅雨降水量は、NINO3 SSTと上記15年間において高い正の相関があることがわかった。したがって La Nina (El Nino) 年に梅雨降水量が少なく (多く) なりやすいことを示す。これらの関係は最近の15年間については La Nina 年と比較して El Nino 年は WNPM の開始と梅雨降水量の極大が出現する日が20日ほど遅れることによる。7月の梅雨降水量は1963年から1977年の15年間にも NINO3 SST と高い正の相関があることがわかった。しかし La Nina年と El Nino年の梅雨降水量の極大の出現日の遅れの差は小さくなっていた。NINO3 SSTとのラグ相関を計算し、7月下旬のWNPMは5・6月のNINO3 SSTとの負の相関が高かった。梅雨降水量は最近 (前期) 15年間の1978-1992年 (1963-1977年) の期間において、3ヵ月遅い (2ヵ月早い) 月の NINO3 SSTと高い正の相関があることがわかった。NINO3 SSTの自己相関を調べると、1963-1977年の15年間は、2年周期が、1978-1992年は4年位の長い周期が観測された。この周期の変化は、最近の15年間に SSTと WNPM及び梅雨降水量との相関が高くなったことと関係していると考えられるが、今後の調査が必要である。
著者
中田 康夫 沼本 教子 片山 恵 片山 京子 吉永 喜久恵 中島 美繪子
出版者
日本老年看護学会
雑誌
老年看護学 : 日本老年看護学会誌 : journal of Japan Academy of Gerontological Nursing (ISSN:13469665)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.120-128, 1999-11-01
参考文献数
10
被引用文献数
1

本研究は,仮設住宅入居2年後の住民の健康および生活実態を,青壮年期(20〜54歳),向老期(55〜64歳)および老年期(65歳以上)の3つの年齢層別に比較・検討し,特に老年看護の視点から,向老期の住民にどのような看護上の問題があるのかを明らかにすることを目的とした.神戸市中央区の仮設住宅住民のうち調査の同意を得られた301名を対象に実態調査を実施した.その結果,向老期の人々は老年期および青壮年期の人々より,病気がある人(p<0.001),飲酒をする人(p<0.001),喫煙をする人(p<0.001),食事のバランスが悪い人(p<0.05),経済状態が悪い人(p<0.01),暮らし向きの悪い人(p<0.05)の割合が有意に多かった.このことから,向老期の人々は老年期の人々より身体的な健康問題と生活上の問題を多く抱えていることが明らかとなった.以上のことより,大規模災害後の長期的な支援においては,老年期の人々はもちろん,向老期の人々の健康状態にも注意を払っていくことが必要であることが示唆された.
著者
中野 忠 道重 一郎 菅原 秀二 唐澤 達之 小西 恵美 山本 千映 真保 晶子
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

消費文化や印刷文化の浸透を背景とする18世紀のイギリスの都市化は、人々の社会関係のあり方に新しい次元をもたらすとともに、古い制度や組織が担ってきた機能を新たな社会関係資本のネットワークのもとに再編する過程として進行した。都市社会はよりオープンになり、貧困や犯罪は中位層以上の市民が対処すべき社会問題となる一方で、社会的な差異を作り出す新たな力が作用し、参加型の地域社会もその性格を変えていった。
著者
中野 寿夫 吉岡 守正
出版者
東京女子医科大学学会
雑誌
東京女子医科大学雑誌 (ISSN:00409022)
巻号頁・発行日
vol.44, no.6, pp.563-564, 1974-06-25

東京女子医科大学学会第189回例会 昭和49年4月26日 東京女子医科大学本部講堂
著者
下鶴 大輔 行田 紀也 鍵山 恒臣 小山 悦郎 萩原 道徳 辻 浩
出版者
東京大学地震研究所
雑誌
東京大学地震研究所彙報 (ISSN:00408972)
巻号頁・発行日
vol.57, no.3, pp.p537-559, 1982
被引用文献数
3

The Asama Volcano in central Honshu, Japan, suddenly erupted from the summit crater on 26 April, 1982. Since the last eruptive activity in 1973, the volcano had been apparently inactive in its surface manifestation. The first outbreak took place at 0225 hours followed by four minor eruptions, the last of which occurred at 0548 hours the same day. The staff members on night duty at the volcano museum at the northern foot of Asama were awakened by the rattling of a window facing the volcano. Immediately upon opening the window they heard the detonation and witnessed an incandescent eruption column and a pyroclastic flow gushing from the summit. The sound of the first detonation was not strong and only heard by a limited number of local residents.
著者
広沢 弘七郎 近藤 瑞香 渋谷 実 沼尾 智代子 中村 久子 村崎 芙蓉子 市川 智恵 奥瀬 登代 滝川 道子
出版者
東京女子医科大学学会
雑誌
東京女子医科大学雑誌 (ISSN:00409022)
巻号頁・発行日
vol.33, no.5, pp.219-219, 1963-05-25

第119回東京女子医科大学学会例会 昭和38年4月26日(金) 東京女子医科大学本部講堂
著者
高尾 篤良
出版者
東京女子医科大学学会
雑誌
東京女子医科大学雑誌 (ISSN:00409022)
巻号頁・発行日
vol.38, no.6, pp.454-454, 1968-06-25

東京女子医科大学学会第149回例会 昭和43年4月26日(金) 東京女子医科大学本部講堂
著者
後藤 千代 渋谷 実 石原 昭 今井 三喜
出版者
東京女子医科大学学会
雑誌
東京女子医科大学雑誌 (ISSN:00409022)
巻号頁・発行日
vol.33, no.8, pp.410-422, 1963-09

司会:三神三和 文責:竹内敏子症例検討会(28) 昭和38年4月26日 東京女子医科大学本部講堂
著者
西村 光博 林 恵介
出版者
九州大学農学部附属農場
雑誌
九州大学農学部農場研究報告 (ISSN:13465643)
巻号頁・発行日
no.11, pp.1-5, 2003-03

本報告では環境保全型農業経営を視野に入れ,荒廃した草地を簡易に植生回復する追播技術の確立を図ることを目的として,追播時の覆土が雑草,特にエゾノギシギシ(Rumex obtusifolis L .)の発芽および茎数に及ぼす影響について検討を行った 追播時の雑草発芽に対する生態的抑制を図るため,既報(西村,2001)を基に,草地用条播機による追播を想定した覆土が雑草,特にエゾノギシギシの発芽に及ぼす影響について試験を行った。その結果,追播後における,越冬前12月3日,越冬後3月23日および翌春4月26日各々の発芽・個体数(本/m^2)は,覆土区の場合,それぞれ4,6,10本であり,無覆土区については,12,22,26本となり,それぞれの時期における発芽・個体数については,覆土区のものは無覆土区の33%から40%と有意に低い値(p<0.05)を示した.また,オオイヌノフグリ(Veronica persica)およびハコベ(Stellaria medica)の発芽・茎数(本/m^2)についても,覆土区は無覆土区よりそれぞれ低い値を示す傾向があることが認められた. 本研究の結果,草地用条播機による追播の際生じる雑草の発芽抑制策として覆土を用いることは地表面や土壌中に拡散した好光発芽性の雑草,特に強害雑草であるエゾノギシギシの発芽抑制に対して有効であることが示唆された.This study was designed to examine the germination of weeds, especially Broad Leaf Dock (Ro) in a seed-bed covered with the soil (commercial clay). The objective was to examine a natural control mechanism for the control of geminating Ro on a directly drilled pasture sward with the intent of recovering degrading grassland. In this experiment, the number of germinating Ro plants was measured for 6 months (wintering before: December 3, wintering after: March 23, spring: April 26) after sowing in a seed-bed covered or not covered with commercial clay. The number of stem/m^2 for each time period showed 4,6,10 individually in the case of the covered soil, and in the case of the non-covered seed-bed showed 12,22,26 for each respective time period. The number of stems at each time period of the covered soil showed a 33%, 27% and 38% (p<0.05) lower germination than that of the non-covered seed-bed. As regards Veronica persica and Stellaria medica, these number of stems at each time period of the covered soil showed a tendency to be lower germination than that of the non-covered seed-bed. Result from this study suggested that covering the seed-bed with clay soil controlled the germination of Ro as a weed by intercepting light reaching Ro seeds that are light germinators. The present method would be effective in improving direct drilling technology in terms of weed control and recovery of the vegetation in the degrading grass-land.
著者
程島 奈緒
出版者
東海大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

雑音下で発話の特性が変化することを応用し、駅など残響がある公共空間で高齢者や非母語話者に聞きやすい音声案内の作成を目的とした。若年者と高齢者に対する聴取実験の結果、白色雑音/残響を聞きながら発話した音声は、静かな環境で発話した音声(現在の音声案内)よりも、雑音/残響下(信号対雑音比=-2, 0 dB、残響時間1.4~3.6 s)で明瞭度が有意に上昇した。これらの音声を公共空間に拡声することで明瞭な音声案内を提供し、「音声によるバリアフリー」を実現できる可能性を示した。
著者
田中 好子
出版者
日本中東学会
雑誌
日本中東学会年報 (ISSN:09137858)
巻号頁・発行日
no.20, pp.189-196, 2004-09-30
著者
栢木 まどか 伊藤 裕久
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会計画系論文集 (ISSN:13404210)
巻号頁・発行日
vol.71, no.603, pp.199-204, 2006
被引用文献数
1 1

This paper analyzed the fireproof communal building after Great Kanto earthquake, taking 3 examples planned by Reconstructing Building Assistance Co., ltd. supporting for fireproof architectures in Tokyo and Yokohama. Spatial composition of these buildings showed that the procedures of cooperation were very complex because of adjustment of different rights of land (ownership, leasehold and rented house). But they were achieved without the support of the law for communal building, and clarified that the communal building had various possibilities concerning the city residence of the revival period.
著者
生田 拓也 坂口 満
出版者
西日本整形・災害外科学会
雑誌
整形外科と災害外科 (ISSN:00371033)
巻号頁・発行日
vol.59, no.4, pp.681-683, 2010-09-25 (Released:2010-12-08)
参考文献数
3
被引用文献数
1

脛骨の変形治癒骨折に対して一期的に矯正骨切り術を施行後,locking plateを用いて内固定を行い良好な結果を得たので報告した.症例は58歳,男性.18歳時に交通事故で右脛腓骨骨折を受傷し,保存的治療を受けた.X線所見にて右膝の内側型変形性関節症を認め,脛骨上中1/3の部位にて約21°の内反変形を認めた.手術はまず腓骨を切骨し脛骨変形中心部にて骨切り,open wedgeにて矯正を行いlocking plateにて内固定を行った.術後6ケ月の現在,骨癒合良好で右膝痛も軽快しておりADLに支障はなく,正座も可能である.変形治癒骨折の矯正骨切術の方法としては従来のプレートによる方法では矯正位の獲得は容易であるがプレートのbendingを細かく行わないとスクリューで骨皮質をプレートに引き寄せる際に矯正位を失う可能性がある.locking plateにて内固定は矯正位の保持が容易であり有用であった.
著者
友定 啓子
出版者
日本幼稚園協会
雑誌
幼児の教育
巻号頁・発行日
vol.98, no.10, pp.8-15, 1999-10-01
著者
岡室 美奈子 三神 弘子 八木 斉子
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究では、サミュエル・ベケットとフランク・マクギネスの作品を中心に現代アイルランド演劇を、サウンドスケープ、モダニズム、オカルティズム、視聴覚テクノロジー、アイルランド史など多角的な視点から研究し、その成果の幾つかは国際的な学術誌や論集に掲載された。また、国内の研究者を組織してアイルランド演劇研究会とベケット・ゼミを運営し、成果を海外に発信するとともに海外の研究者との知的交流を推進し、国際的研究拠点の確立を図った。
著者
土佐 弘之
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

昨年度から今年度にかけて、内戦や抑圧的な権威主義・全体主義体制の下での虐殺など著しい人権侵害行為に対して、和平後または民主化後、どのような対応をすべきかといった、いわゆる「(民主化)移行期における正義(transitional justice)」問題についての研究を進めた。南アフリカの真実和解委員会などの真相究明委員会形式のものや旧ユーコスラビア国際刑事裁判所との国際刑事裁判所形式のものなど、各事例について文献サーヴェイをしながら、復讐/赦し、記憶/忘却といったアポリアを軸に、それぞれの事例の位置づけや移行期をめぐる正義の問題についての理論的整理を試みた。その成果の一部は、「移行期における正義(transitional justice)再考」といった論文として公刊する機会を得た。そこでの結論を繰り返すと、以下の通りである。過去に関する集合的記憶が社会的構築物である以上、過去をどう取り扱うかの選択肢について、私たちは一定程度の選択の幅をもっている。もちろん、それは様々な制約がある中での選択の幅ということであるが、本研究では、移行期における正義という問題、つまり過去の人権侵害という問題を取り扱う際、とられる選択は、どのようなバイアス性をもっているかといったことについて、和平・民主化プロセスのパターンとの関連で検討した。次に、復讐へと傾斜したものについては赦しの方向へ、忘却へと傾斜したものについては記憶の方向へといったようにそれぞれ、いずれも何らかの形で不十分な対応を改めていく必要性がでてくることについて、ジャック・デリダの二つのテクストを手引きにしながら理論的な検討を行った。もちろん、内戦後の社会再建ということを視野に入れた場合、こうした狭義の矯正的正義だけではなく、法的正義(法の支配)、回復的正義、さらには配分的正義など、複数の正義を同時に追求することが必要そうしたことを妨げているマクロ・レベル(特に世界システム・レベル)の構造的制約を取り払っていくことが必要であることも確認した。構造的な制約が少しずつ取り払われ、沈黙を強いる抑圧的な構造的権力を解体していくことができれば、語りによる歴史物語の書き換えの動きも活性化し、記憶再編の可動幅、さらには共有化される記憶の地平も広がっていく。「記憶の政治」の新たな展開は、信頼関係の再構築を促し、結果としては、内戦再発といった形での「絶対的な敵対関係」の暴走を食い止める可能性ももっている。そうした意味でも、「記憶の政治」そして「移行期の正義」の問題に対する的確な対応の模索は、単に過去にどう取り組むかという問題であるだけではなく、未来の社会を、どうデザインしていくかという問題ともなっていることを確認した。以上が、本研究の要旨であるが、以上のような研究を進めていく過程で、それと関連する形で、社会構築主義的アプローチによる国際関係論研究(批判的安全保障研究など)の分野を開拓する研究作業を進め、単行本『安全保障という逆説』などを公刊した。