著者
田代 健太郎
出版者
独立行政法人物質・材料研究機構
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

お椀型の非平面パイ共役系を有するコラニュレンの集積化について、種々の周辺置換基を有する誘導体を用いて検討した。金とコラニュレン周辺置換基中の多数のチオエーテル部位との多価の相互作用により、金ナノパーティクル表面をコラニュレンのケージで被覆することが可能であった。ドデカンチオールで表面修飾した同じサイズの金ナノパーティクルと比べ、コラニュレンで覆ったパーティクルのSHGが8倍程度増強されることを見出した。また、周辺置換基の適切な選択により、液晶性を示すコラニュレンを初めて作製し、その電場配向能を明らかにした。
著者
宮澤 伸吾 今本 啓一 今本 啓一 鯉渕 清 大友 健
出版者
足利工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

高炉セメントB種を用いたコンクリートの自己収縮ひずみは,普通ポルトランドセメントを用いた場合と比べて大きく,高温履歴を受けると初期材齢における自己収縮の進行速度が大きくなり,終極値も大きくなることを実験により明らかにした。自己収縮の終極値および進行速度を最高温度の関数として定式化し,温度履歴の影響を考慮した実用的な高炉セメントコンクリートの自己収縮ひずみの予測式を提案した。提案した自己収縮ひずみの予測式は,日本コンクリート工学協会「マスコンクリートのひび割れ制御指針2008」の設計用値として採用された。低発熱・収縮抑制型高炉セメントを用いた場合,温度上昇過程において,自己膨張に起因する圧縮応力が導入されることが認められ,一般の高炉セメントB種および普通ポルトランドセメントを用いた場合と比べて引張応力-強度比が小さくなり,温度ひび割れ低減効果が認められた。これにより,高炉セメントの比表面積,三酸化硫黄(SO_3)量および高炉スラグ混入率を調整することにより,マスコンクリートの温度ひび割れ抵抗性は著しく向上することが明らかとなった。フルサイズ骨材を用いたダムコンクリートについて,自己収縮および断熱温度上昇量を把握するとともに,拡張レヤー工法(ELCM)により施工される重力式ダムについて3次元FEM温度応力解析を行った。その結果,高炉セメントを用いた場合は,外部コンクリートや着岩コンクリートにおいては大きな自己収縮が生じ,これに起因して発生する引張応力がひび割れの発生原因になりうることが明らかとなった。さらに,セメントの種類によりダムコンクリートの自己収縮は著しく異なり,セメントの種類の選定によりダムコンクリートのひび割れ抵抗の向上を図れる可能性があることを指摘した。
著者
永田 知里 清水 弘之 武田 則之 藤田 広志
出版者
岐阜大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

乳がんリスクの指標としての血中・尿中エストロゲン値と生活環境要因の中からサーカディアンリズムに関わる睡眠・夜間照明・夜勤・生活リズム等、サーカディアンリズムの指標である尿中メラトニン値との関連性を成人女性、妊婦、幼児を対象に評価した。成人女性において、夜間照明への暴露あるいはサーカディアンリズムの乱れが内因性エストロゲン値を変化させ、ひいては乳がんリスクに影響を及ばす可能性を示唆した。
著者
佐倉 緑
出版者
北海道大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

コオロギを用い、体表物質によって引き起こされるオス同士の闘争行動の発現に触角からの入力が関与することを明らかとした。また、脳内の一酸化窒素(NO)とオクトパミン(OA)シグナルの阻害により、敗者の攻撃行動の回復がそれぞれ促進、抑制されることがわかった。触角への体表物質の刺激により脳内でNOが増加すること、NOにより脳内のOA量が減少することから、体表物質-NO-OAというシグナル経路が脳内に存在すると結論づけられた。
著者
尾形 幸生 作花 哲夫 深見 一弘
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

電気化学的に生成する多孔質シリコンの構造発現を統一的に把握するために諸条件下で生成する微細構造を詳細に検討し、以下の成果を得た。(1) マクロ孔形成は独立した事象として考えるのではなく、他の構造を含んだ多孔質構造形成として統一的な視点で取り扱わねばならないことを明らかにした。(2)ルゲート型多孔質シリコンのセンサー応用の可能性を示し、電気化学手法による微細構造制御による光学特性の向上の可能性を示した。
著者
岩井 大輔
出版者
日本工業出版
雑誌
画像ラボ (ISSN:09156755)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.8-15, 2011-02
被引用文献数
1
著者
笹本 智弘
出版者
千葉大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010-04-01

界面成長を記述するKardar-Parisi-Zhang(KPZ)方程式や、その離散版モデルの揺らぎについての研究を行った。特にレプリカ法とよばれる手法を用いて定常状態における1次元KPZ方程式の高さ分布と時空2点相関関数に対する明示的な表式を求めることに成功した。これらの量はこれまでいくつかの物理的な手法を用いて調べられていたが、近似無しに表式が得られたのは大きな進展である。また、非対称排他過程やq-TASEPと呼ばれる離散モデルに対して双対性を用いることにより、見通しよく揺らぎの性質を理解出来る事を示した。さらに多点分布や多成分系に対する揺らぎについてもいくつかの成果を得た。
著者
上平 正道 河邉 佳典
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

申請者らが開発したトランスジェニック鳥類作製技術をベースにして、ニワトリなどの家禽鳥類をタンパク性医薬品などのバイオロジクス生産のための生体バイオリアクターとして使用するために、(1)生産物を安定して大量に発現するための卵白特異的発現システムの開発、(2)生産物が糖タンパク質である場合に付加糖鎖の制御、(3)鳥類での生産に適したバイオロジクス生産、について検討を行った。
著者
三輪 眞木子 河西 由美子 松嶋 志津子 中村 百合子 竹内 比呂也
出版者
放送大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010-04-01

内外の有識者インタビュー調査により、図書館情報専門職の学位・資格の国際的同等性と互換性の実情を把握した。専用ウェブサイトを開設し、世界各国の図書館情報専門職養成コアカリキュラムデータを収集・分析した。アジア・太平洋地域の学校図書館の国際研修プログラムを開発しセミナーの形で実施した。世界各国・地域の有識者に当該地域の図書館情報専門職教育の動向と質保障に関する論文の執筆を依頼し、論文集を編纂した。
著者
菅野 望
出版者
名古屋大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

エタノール低温酸化反応の初期段階で重要であるα-ヒドロキシエチルラジカルと酸素分子の反応についてレーザー光分解/近赤外波長変調分光法による実験計測及び量子化学計算とRRKM/支配方程式解析による理論計算を行った.理論計算による反応速度定数の温度依存は実験計測と良く一致し,若干の負の温度依存性を示した.理論計算による主生成物は100気圧以下においてアセトアルデヒドとHO_2ラジカルであり,高圧ではCH_3CH(OH) O_2ラジカルの生成が競合することが示された.
著者
栗木 清典
出版者
愛知県がんセンター(研究所)
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2002

大腸がんの罹患リスクに対する獣肉摂取と、インスリン抵抗性に関連するPPARγ遺伝子Ala12Pro多型、C161T多型およびCD36遺伝子A52C多型の相互作用を明らかにする症例・対照研究を実施した。Pro12Ala多型とC161T多型を組み合わせた解析において、全体の70.0%を占めるPro/Pro + C/Cでは、牛乳、卵の低摂取頻度に対する高摂取頻度のオッズ比(OR)は0.82、0.78と低かったが、Pro/Pro + (C/T+T/T)(25.3%)の飽和脂肪酸、加工肉摂取では1.42、1.63と高かった。CD36遺伝子において、A/A型の牛・豚肉の低頻度摂取、獣肉の低摂取量と比較して、C/C型の高摂取によるORは4.39、3.16と高かった。現在、わが国の40歳以上の10人に1人が糖尿病を患っており、糖尿病は一部のがんのリスク要因と報告されているが、日本人におけるリスク評価は十分ではない。そこで、糖尿病と臓器別がんリスクを大規模症例・対照研究で検討した。糖尿病の現病・既往のある男は7.5%、女は2.6%であった。糖尿病のORは、男/女の全部位(1.4/1.4)、肺(1.5/1.6)と肝臓(2.2/2.3)、男の咽頭(1.8)、喉頭(2.3)、食道(1.7)、膵臓(2.3)と大腸(1.3)、胃(1.7)と子宮頚部(1.9)で有意に高かったことから、糖尿病を引き起こすインスリン抵抗性はがんのリスク要因でもあるという仮説を支持した。近年の生活習慣の急速な欧米化に伴い増加している疾病のリスクを評価し、個人を対象にした一次予防方法を確立するには、食生活習慣調査とともに、脂質・脂肪酸摂取のバイオマーカーを確立することが必要である。そこで、多数の血液検体から、微量で、迅速、簡便、安価、高精度に脂肪酸レベルを分析する独自の方法を開発し、特許出願した。
著者
シヤムマ アワド 高橋 智聡
出版者
金沢大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

がん抑制遺伝子RBは多くのクロマチン修飾因子と結合し、その機能を制御する。このようなRBによるエピジェネティック制御機能を解明するために、我々はRB欠損モデルマウスとヒト原発がん組織を使い、RBとATMの相互作用がDNAメチル化酵素DNMT1の安定性を制御すること、また、DNAマイクロアレイ解析から数百のがん関連遺伝子のDNAメチル化状態が、RB-ATM-DNMT1の相互作用により調節されていることを発見した。
著者
功刀 俊洋
出版者
福島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

革新=社会党推薦の市長・市政について、1950年代から1960年代前半までの東北地方と京阪神地方を比較すると、東北地方の革新市長は、1959年前後から遅れて登場し、1960年代に社会党公認の市長として飛鳥田一雄横浜市長の全国革新市長会にその中心メンバーとして参加していった(たとえば、仙台、秋田、酒田、大館)。それに対し、京阪神地方の社会党系市長は、1950年代の早期から登場しながら、1960年代に退場してしまうか、革新市長会に不参加・消極的という態度をとった(たとえば、大阪、神戸、西宮、舞鶴、宇治)。この相違の原因は、野党や労働組合の党派・組織対立の影響と、地域開発の現実性の違いにあった。第1に、東北地方の社会党は、左派(佐々木更三)中心であり党内最左派出身の飛鳥田をリーダーとすることに親和的だった。それに対し、京阪神地方の社会党は右派(河上丈太郎、江田三郎)中心であり、また民社党と共産党が強力で社会党の市政における指導権は弱かった。それで、京阪神の革新市長は、民社・同盟系労組をも地盤としており、1960年代には自民・民社・社会の相乗り市政に移行していった。第2に、京阪神地方は東海から瀬戸内地方と同様、繊維産業など既成工業の合理化と石油化学・鉄鋼などの新興工業の立地(新産業都市建設)が1960年代前半に現実に進行しており、都市政治への「合理化・開発=保守化・中央依存」圧力が東北地方より強かった。それに対し、東北地方では、新興工業(機械組み立て・アルミ・パルプ)誘致が実現するのは1970年代であり、1960年代までは、社会党市政が生活基盤整備に尽力したため、住民の支持がっづき、保守勢力にも許容される余地があった。これが、東北地方の革新市政が1960年代後半まで生き残り、「革新自治体の時代」を準備できた経済的要因であった。