著者
長屋 茂喜 宮武 孝文 藤田 武洋 伊藤 渡 上田 博唯
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-2, 情報・システム 2-情報処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.79, no.4, pp.568-576, 1996-04-25
被引用文献数
51

本論文では, シーンの構造や照明条件が大きく変化する環境下で, 映像中から移動物体を検出する新しい方式を提案する. 本方式の特長は, 各フレーム画像の移動物体領域を探索する代わりに, 時間相関の変化パターンを用いて映像中での移動物体が存在する時間区間を判定する点にある. 本方式はリアルタイムで移動物体を検出でき, 天候 (雨・雪など) や照明条件等の環境の変化に対してロバストである. また, カメラ位置や移動物体の進行方向等の制約がほとんどない. 屋外全天候・昼夜間を含む踏切映像 (撮影期間1年) から選択した代表的な六つのシーン (各10分合計60分) に対して評価実験を行い, 1組の固定したしきい値だけで, 大幅な環境変動が生じる映像に対して, 95%の正検出率を得た.
著者
菅原 隆
出版者
八戸工業高等専門学校
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

苛酷環境下におけるコンクリートの耐久性を向上させる事はコンクリートの研究者にとって至上命題となっている。寒冷地における歩車道ブロックは凍結融解の作用や凍結防止剤の散布により表面剥離や崩壊などの被害が急増している。ここでは、コンクリート製品の一つである歩車道ブロックを対象として、コンクリートの耐久性を向上させる要因を明らかにすることを研究目的として、申請計画書に基づいて各種実験・研究を行った。3年間に亘って研究を行った結果をまとめると次のようなことがいえる。(1)コンクリート工場製品に透水型枠工法が適用できるかどうかについて検討した。試作した透水型枠と透水性シートを組み合わせることでコンクリートの表層部を強化でき、品質の良いコンクリートを製作できることがわかった。(2)透水型枠工法によって製作した歩車道ブロックの表面は透水性シートを使用した事により綺麗さが格段に向上した。また、水セメント比の低下や表層部の緻密化によってコンクリート表層部が強化され、凍害に対する劣化が抑制されることを明らかにした。(3)塩化物の浸入によるスケーリング抵抗性も透水型枠工法を用いることで向上し、歩車道ブロックの上面・側面ともにスケーリング量は大きく減少することを明らかにした。(4)コンクリート工場製品にかかわらず、コンクリート構造物の高耐久性、高機能性を考慮した時には透水型枠工法が有効な工法の一つである事を明らかにした。以上のように、凍害や塩害などを受けやすい苛酷な環境下にあるコンクリートはその表層部を強化してやることで劣化を抑え、かつ耐久性を向上させる事ができる事を明らかにした。また、透水型枠工法はコンクリート工場製品やコンクリート構造物などの表層部を強化できる有効な手法の一つであることも明らかにした。
著者
小野 健吉 山梨 絵美子
出版者
奈良国立文化財研究所
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1994

近代京都画壇で活躍した3人の日本画家の作庭について、それぞれ、以下のような成果を得た。(1)山元春挙:(1)春挙は、芦花浅水荘の庭園を機能的にも形態的にも琵琶湖と一体のものとしてデザインした。(2)庭園は建築と平行して施工された。(3)施工は、当初、京都の庭師・本井政五郎、その後、大津の庭師・木村清太郎が引き継ぐ。(2)橋本関雪:(1)関雪は、蟹紅鱸白荘にはじまり、白沙村荘,走井居、冬花庵と、生涯、建築や作庭に情熱を保ち続けた。(2)建築や作庭も、絵画と同様の創作と見なしていた。(3)白沙荘の施工は、青木集、本田安太郎などの庭師がおこなったが、細部にわたり、関雪の指示があった。(4)関雪の庭園には、中国の文人趣味に対する傾倒や歴史的教養主義がうかがえるが、明治大正時代に京都で主流をなした写実的風景式庭園のはんちゅうに入るものといえる。(3)竹内栖鳳:(1)霞中庵庭園の築造は、従来いわれていた大正元年ではなく、大正3年頃の可能性が大きい。(2)庭園のデザインは、建築同様、栖鳳の考案によるものである。施工にたずさわった庭師は本井政五郎である可能性がある。(3)霞中庵庭園は、芸生の広がり、カエデの樹林、流れ外部景観(嵐山)などで構成され、その平明さ、軽快さは、栖鳳の画風と一脈通じるものがある。上記の各画家の作庭を観察すると、関雪・栖鳳については、作庭と画風に共通性が見出せるが、春挙の芦花浅水荘は大和絵風の明るさ・のびやかさがあり、峻厳な画風とはやや趣を異にする。しかし、その春挙にしても、写真に熱中したという写実を重んじる基本的な態度が、その作庭の中に着取できる。
著者
村本 健一郎 椎名 徹 播磨屋 敏生 長野 勇
出版者
金沢大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1997

降雪雪片は雲内で発生した氷晶が成長し,さらにいくつも併合して落下してきたものである。この落下中の氷粒子や雪片の併合には,これらの形状や落下運動が関与している。降雪現象は,雲物理学に関しての考察だけではなく,リモートセンシングや通信,最近の地球気候モニタリング分野などの多様な工学的応用にも重要である。また、電磁波伝搬における減衰には、降雪現象が大きく関係する。降雪の研究で主に使用される観測機器の一つとしてレーダがある。降雪のレーダ観測は、レーダ反射因子Zと降雪強度Rとの間の関係式に基づいている。この降雪のZ-R関係式を決定するためには、ZとRのそれぞれを短い時間間隔でしかも高精度で測定しなければならない。しかしながら、短時間間隔かつ高精度で測定可能な降雪測定システムは、これまで開発されていなかった。そこで、画像処理手法を用いた降雪の物理的パラメータを測定する新しいシステムを開発した。落下中の雪片の映像を画像処理して、粒径、落下速度、密度を計算した。また、降雪強度は、画像データから計算するとともに、電子天秤から直接重量を測定する方法でも求めた。更に、これらの観測と同期して、小型Xバンド・ドップラーレーダを用いて受信電力も測定した。Xバンド波の減衰と降雪強度との間の関係を調べると同時に、雪片の物理的特徴量との比較も行った。これらの実験から、電波減衰には、降雪強度だけでなく雪片の粒径分布や密度も関係することがわかった。
著者
松久 寛 西原 修 本田 善久 柴田 俊忍 佐藤 進
出版者
京都大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1990

スキ-時の人体の上下運動に関してはひざをリンク機構、筋肉を収縮要素、それと直列につながる弾性要素、並列の減衰要素で模擬した。ひざは大きく曲げる程ばねが柔らかくなるリンク機構による幾何学的非線形性を持ち、筋肉はばねと減衰からなる受動的なダンパ-としての役割と収縮による能動的な運動を行う。動特性としてはひざを深く曲げる程緩衝効果は大きくなるが、筋肉にかかる荷重は大きくなる。能動的に立ち上がる場合は立ち上がりの前半に雪面への押し付け力が増加し、後半に減少する。この雪面押し付け力の増加減少をタイミングより利用することによって、雪面の凸凹による体の不安体を安定化することができる。またスキ-板をはりとして、足首で力とモ-メントが働くとして人体とスキ-板の連成振動の解析モデルを作成した。ここで、人体の動きとスキ-板の形状、剛性などとタ-ンの関係が明らかになった。テニスに関してはボ-ルを一つの質点と一つのばね、ラケットを弾性はり、ガット面を一つのばね、腕を回転とねじり方向各3自由度のばね・質点系でモデル化した。ここで、腕のモデル化においては、腕をインパルス加振したときの各部の回転角加速度を計測し、時系列デ-タの最小自乗法によって各係数を同定した。そして数値計算によって、ボ-ルの飛距離、腕にかかる衝撃力の関係を明らかにした。また、ラケットの特性、すなわち曲げ剛さや、ガットのはり具合の影響についても検討し、このモデルがほぼ妥当なものであることがわかった。また、ラケットの構造の変化、すなわち重心位置とボ-ルの飛距離や手にかかる衝撃力の関係についても検討した。これらの研究により、人体の力学モデルの作製法およびスポ-ツ用具の解析法が確立されたので、これらを組み合わせることにより、人体の運動時の動特性、特に関節にかかる応力等を求める手法が得られた。
著者
河島 克久 和泉 薫 卜部 厚志
出版者
新潟大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

本研究は、水文気象学、水文地質学および雪氷学的観点から雪泥流の発生過程と始動メカニズムを解明することを自的として、雪泥流多発河川である南魚沼市の水無川を対象として現地調査・観測を行ったものである。その結果得られた主な研究成果は次のとおりである。1.地下構造の特徴と河床積雪の形成扇頂部において岩盤が急激に落ち込むという水無川扇状地の特徴的な地下構造が、扇央・扇端部における渇水時の地下水位面の低下と表面水流の完全伏没をもたらしている。この特徴的な地下構造が河床上に河川外とほぼ同量の積雪の堆積を可能としている。ただし、著しい暖冬少雪の場合には、河床積雪の形成が見られない。2.積雪期の降雨流出南魚沼地域では例年、厳冬期から融雪初期にかけて、河床積雪が存在する条件下で日本海低気圧の東進に伴う急激な気温上昇と短時間強雨が複数回ある。同地域の積雪は融雪等の影響で厳冬期でもざらめ化が進行しているため、低気圧によってもたらされた降雨は速やかに地中へ流出する。この降雨イベント前までに地下水位がある程度回復していれば、10〜20mm程度の短時間降雨によって雨水は扇央部において表面水を形成して流出する。3.雪泥流の始動メカニズム降雨によって形成された表面水は、積雪によって流下が妨げらるため、扇央部において積雪全体を数分〜数十分で飽和させる。飽和後は積雪表面上に水流が形成される。水飽和状態となった積雪はその強度が急激に低下するため、局所的な構造的弱听を起点として雪泥流が始動する。水無川では、雪泥流は河床積雪の形成開始地点(魚野川との合流点から約5km地点)から始動するものと考えられる。
著者
菊地 勝弘 太田 昌秀 遠藤 辰雄 上田 博 谷口 恭
出版者
北海道大学
雑誌
海外学術研究
巻号頁・発行日
1987

今日まで研究代表者によって報告された低温型雪結晶は, ー25℃以下の比較的低温下で成長し, その頻度は, 時には結晶数全体の10%を占めることが明らかにされたが, これらの結晶形は, 複雑多岐で, まだ, 十分分類もされておらず, 「御幣型」や「かもめ型」は便宜上名付けられたもので, 正式の名称はない.一方, 極域のエアロゾルはその季節変化, 化学成分に注意が払われてきてはいるが, 降水粒子の核としての性質, つまり低温型雪結晶の結晶形, 成長との関連については全く注目されていない. この研究では, 低温型雪結晶を極域エアロゾルの性質を加味して総合的に研究し, 低温型雪結晶の成長機構を行らかにしようとするものである.昭和62年12月17日成田を出発した一行は, オスロで機材の通関を行い, ノールウェイ極地研究所で研究計画の打合せを行った後, 12月22日アルタおよびカウトケイノの研究観測予定地に機材と同時に到着した. 両観測地点共, 翌12月23日より観測を開発した. 第1図に観測地の地図を示した.今冬のヨーロッパは, ノールウェイを含め暖冬で, 観測期間中気温がプラスになったり, みぞれが降ることもあり, 必ずしも低温型雪結晶の観測に恵まれた条件とは言えなかったが, 以下に示すような膨大な試料を得ることができ, 必ずしも低温型雪結晶の観測に恵まれた条件とは言えなかったが, 以下に示すような膨大な試料を得ることができ, 成功であった. 得られたデータは次のようなものである. 偏光顕微鏡写真35ミリカラーフィルム65本, 35ミリモノクロームフィルム:2本, レプリカスライドグラス:340枚, 電顕用レプリカフィルム:205枚, ミリポアフィルターによるエアロゾル捕集:110枚, テフロンフィルターによるエアロゾル捕集:40枚, 降雪試料瓶:60本.この内, 低温型雪結晶を110個観測することができた. 特に今回は, 低温型雪結晶の「御幣型」に特徴的な成長がみられた. 即ち, 結晶成長の初期の段階であると考えられている凍結雲粒が1対の双晶構造をもって凍結し, それから両側に御幣成長したと思われる結晶が数多く発見された. 第2図はアルタで, 第3図はカウトケイノで今回新らたに観測された御幣型の雪結晶である. 更に地上気温が高かったためであろうか, それぞれのスクロール(渦巻状)から板状成長しているものも認められた.極域エアロゾルに関するアルタの観測では, 南側の内陸からの風系で直径0.3μm以上の粒子濃度は10個/cm^3であったが, 強風の場合は1個/cm^3まで減少し, カナダ北極圏よりやや少な目であった(第4図). 一方, 北側の海からの風系では, 1μm以上の粒子が増加した. これらの風系に対するエアロゾルと低温型雪結晶の中心核との関係については, 昭和63年度の調査総括により解析され, 明らかにされるであろう.
著者
堀口 薫 水野 悠紀子
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1996

着氷力の評価としては、半世紀以上もの間、低い温度(例えば-5℃や-10℃)での付着面のセン断凍着力が採用されてきた。そして、水との接触角の大きい物質がセン断着氷力が小さいことから、難着雪氷材料として撥水性材料の開発研究が行われ、現在接触角が150度以上の塗料が存在する。我々は氷が付着するメカニズムを解明するために、セン断着氷力の温度依存性を詳しく調べた。その結果、次のことが明らかになった:(1) 撥水性材料(テフロン)の場合、氷の付着面でのセン断着氷力は、温度が高くなると僅かに減少するが、付着面での破壊の型はbrittle failureであった。(2) 親水性材料(ガラス)の場合、撥水性材料に比べて、セン断着氷力の温度依存性は大きく、破壊の型は低温領域(マイナス数度以下)ではbrittle failureであるが、マイナス数度以上の温度領域では破壊はviscou failureであった。(3) セン断着氷力の値自身は、低温領域ではテフロンの方がガラスよりも小さかった。しかし、高温領域では逆にガラスの方がテフロンよりも小さかった。(4) 界面での破壊に必要なエネルギーは、同じ温度では、viscous failureの方がbrittle failureよりも多い。以上の結果から、着氷力のメカニズムは材料と温度に依って異なることが分かった。したがって、着氷防止対策も状況に合わせて異なる。例えば、融点に近い温度での着雪氷の除去を例に取ると、小さな力で除去したいときには親水性材料を用いた方が経済的であるが、少ないエネルギーで除去したいのであれば撥水性材料を用いた方がより経済的であることが分かった。
著者
森内 基隆 中川 重康
出版者
舞鶴工業高等専門学校
雑誌
舞鶴工業高等専門学校紀要 (ISSN:02863839)
巻号頁・発行日
vol.40, pp.35-39, 2005-03-10

太陽電池モジュールは,建物,積雪等による部分陰の影響を受けて,その発電出力が低下することが問題となっている.特に,積雪による部分影の影響は大きく,外部からの電力供給による融雪装置の検討が進められている.一方,筆者らは120W太陽電池モジュールを用いた実験で,一個のセルが陰に覆われた場合,そのセルの温度が日の当たっているセルの温度より高いことを明らかにしている.本研究では,120W太陽電池モジュールにおいて6個のセルが陰で覆われた場合,それらのセルの温度は日の当たっているセルの温度より低くなることが分かった.さらに,陰になるセルの温度が,そのセルの枚数で異なることを解明した.陰で温度の下がるセルであっても,他のセルからの電力供給で温度を上げることができた.モジュールに雪が積もると,セルは雪で陰になるので,その陰のセルの温度を上げて雪を溶かせることが可能であることを示している.従って,本研究は外部からの電力供給を必要としない,新しい融雪手法を提案している.
著者
若浜 五郎 小林 俊一 成田 英器 和泉 薫 本山 秀明 山田 知充
出版者
北海道大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1987

温潤積雪の高速圧密氷化過程は、野外観測と実験室における定荷重圧縮実験によって研究した。野外観測では、温潤な平地積雪と雪渓の帯水層に長期間浸っている積雪とに着目して、その圧密状態や過程を観測した。その結果融雪開始時期から全層濡れ雪になるまでの時期に、積雪は急激に圧密されてその密度を増し、2mを超えない自然積雪では、およそ濡れ密度0.46ー0.5g/cm^3に達した後、消雪までの間この密度に保たれることが分かった。雪渓下部帯水層の水に浸った積雪は、そのすぐ上部の濡れ雪に比べると圧密速度が約3倍も大きいこと、帯水層に長期にわたって大きな上載荷重がかかっているため、最終的には乾き密度の0.75g/cm^3濡れ密度にして、0.83g/cm^3以上にまで圧密され、これが初冬の寒気により凍結し氷化することが明かとなった。定荷重圧縮実験は、水に浸った積雪について集中的に実施した。圧力は温暖氷河や雪渓の帯水層内の積雪に、実際に作用している0.1ー2kg/cm^2の範囲を用いた。実験の結果、歪速度は積雪の粒径にほとんど依存しないこと、圧力の増加と共に増加し、圧力が1kgf/cm^2を越えると急激に圧密され易くなることなどが定量的に明かとなった。歪速度の対数と密度の間には直線関係が成り立ち、かつ、直線には乾き雪の定荷重圧縮実験と同様、ある密度に達した時点で折れ曲がりが認められた。氷化密度0.83g/cm^3に達するまでに用する時間は、簡単な理論的考察から、上載荷重を与えることにより推定可能となった。実験結果をいくつかの経験式にまとめると共に、実験結果から、氷河や雪渓の帯水層における圧密氷化機構を説明出来るようになった。圧密機構のより詳細な理解のために、圧密過程を圧密に進行に伴う積雪内部構造の変化と関連付ける計画である。また相対的に実験の困難な濡れ雪の圧密特性の研究は今後に残されている。
著者
柳野 健 北野 芳仁 成井 昭夫
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. NC, ニューロコンピューティング
巻号頁・発行日
vol.96, no.583, pp.263-270, 1997-03-17

日本の北海道,東北,北陸は世界有数の多雪地帯である。多量の降雪は,交通や社会生活を著しく妨げる。大雪日を特定できれば重要な情報となる。大雪になるには,ある気象条件を必要とするはずである。階層LSL型ニューラルネットによって,大雪条件を特定できるかどうか試みた。さらに,忘却法による構造学習によって主要な因子を探索した。
著者
永井 和
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

平成16年度から倉富日記の一部翻刻を進めてきたが、1919年〜21年までの日記についてはすでに翻刻が終わっており、一部を下記Webサイトにて限定公開した。本報告書には、その一部(1920年の1月1日から7月9日まで)を印刷掲載した。翻刻した倉富日記は図書として2009年から公刊する予定であり、すでに国書刊行会との間で出版契約が成立している。倉富家の御遺族からも刊行について内諾を得た。印刷刊行が決まったので、Webサイトでの翻刻日記の限定公開は中途で停止した。研究成果としては、まず第一に、東京控訴院検事長時代の倉富日記を材料に、日比谷焼打事件裁判における検察当局と司法省の動向を明らかにしたことがあげられる。これは、日比谷焼打事件の研究において従来まったく不明とされてきた問題であり、一次資料を用いてはじめて解明したものである。また、倉富の伝記的研究としては、韓国政府顧問として渡韓するにいたった事情のうち、Push要因というべきものを、ほぼ完壁に明らかにすることができた。これについては、先行学説がすでに存在している(平沼・三谷説)が、それを一次資料を用いて裏づけるとともに、その経緯をさらに詳細に明らかにした点で意義がある。第二の成果は、田中義一内閣時代の朝鮮総督府官制改定問題を分析することで、天皇・内閣総理大臣・朝鮮総督三者の権力関係について厳密な考察をおこない。朝鮮総督は各省大臣と同格の存在として内閣の外部に位置づけられていたが、同時に内閣総理大臣のもつ機務奏宣権によって、その行政統制権のもとにおかれていたことを明らかにした。なお研究計画では、日記の翻刻とあわせて、1920年代の宮中問題の研究を主とする予定であったが、同時並行させていた倉富勇三郎と植民地朝鮮の研究(国際日本文化研究センター松田利彦准教授主宰の共同研究「日本の朝鮮・台湾支配と植民地官僚」での分担テーマ)に時間をとられ、宮中問題については具体的な成果を発表するまでにいたらなかった、しかし、すでに研究は進んでいるので、しかるべき時に追加発表する予定である。
著者
小助川 元太
出版者
呉工業高等専門学校
雑誌
呉工業高等専門学校研究報告 (ISSN:02864037)
巻号頁・発行日
vol.70, pp.90-64, 2008-08

In what follows, I show one Japanese translation of "TEIKANZUSETU". "TEIKANZUSETU" was originally written by a Chinese famous officer, Kyosei Chou, in 1572.This biographical collection consists of 81 episodes about wise emperors, 36 episodes about "bad" emperors and their relevant illustrations. In Japan, it was first published in 1606 by Hideyori Toyotomi's order. The text I show here was translated and published in 1627 and is now possessed in Nara Prefectural Library.
著者
小助川 元太 新美 哲彦
出版者
呉工業高等専門学校
雑誌
呉工業高等専門学校研究報告 (ISSN:02864037)
巻号頁・発行日
vol.70, pp.1-13, 2008-08

This publication is an annotated edition of Inu Hyakunin Isshu. The Inu Hyakunin Isshu is a parody of the famous Hyakunin Isshu, and was published in 1669. The prologue was written by an unknown man named Yusoan. In the title Inu Hyakunin Isshu, the word inu means parody. The work is one of a number of parodies of classics that were produced in the early Tokugawa periods, such as Inu Tsurezure (a parody of Tsurezuregusa) and Inu Makura, a parody of makura no Soshi. Many other parodies of the Hyakunin Isshu were made in the Tokugawa period, but the Inu Hyakunin Isshu is of particular interest because of its early date.
著者
新美 哲彦
出版者
呉工業高等専門学校
雑誌
呉工業高等専門学校研究報告 (ISSN:02864037)
巻号頁・発行日
vol.69, pp.9-18, 2007-08

This publication is an annotated edition of Inu Hyakunin Isshu. The Inu Hyakunin Isshu is a parody of the famous Hyakunin Isshu, and was published in 1669. The prologue was written by an unknown man named Yusoan. In the title Inu Hyakunin Isshu, the word inu means parody. The work is one of a number of parodies of classics that were produced in the early Tokugawa periods, such as Inu Tsurezure (a parody of Tsurezuregusa) and Inu Makura, a parody of Makura no Soshi. Many other parodies of the Hyakunin Isshu were made in the Tokugawa period, but the Inu Hyakunin Isshu is of particular interest because of its early date.
著者
多賀谷 光男 福井 俊郎
出版者
大阪大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1992

神経伝達物質はV型ATPaseによって形成されたpH差によって分泌顆粒内に蓄積されることはわかっているが、蓄積された化合物の開口分泌の機構はよくわかっていない。NSF(N-ethylmaleimide-sensitire factor)は最初ゴルジ体内小胞輸送に関与するタンパク質として発見され、さらに小胞体からゴルジ体へのタンパク質輸送、エンドリーム融合にも必要なことが明らかにされたタンパク質である。NSFの開口分泌への関与を調べるためにNSFが分泌顆粒の一種であるシナプス小胞に存在するかどうかを調べた。シナプス小胞を精製後、抗NSF抗体を用いてウエスタンブロッティングを行ったところ抗体と反応しNSFと分子量の同じタンパク質の存在を確認した。さらに、ケイ光抗体法と免疫電顕を用いてこのタンパク質が確かにシナプス小胞に結合していることを確かめた。NSFはMg・ATPによってゴルジ膜から遊離するが、このタンパク質は同様な処理でシナプス小胞から遊離せず、なんらかの機構でシナプス小胞膜に強く結合していると考えられた。NSFがシナプス小胞に存在することから、現在ヒト脳のNSFのクローニングを進めている。CHO細胞のNSFのCDNAの断片を用いてヒト脳のCDNAライブラリィをスクリーニングし、いくつかのポジティブクローンを得た。クローンをサブクローニングし、末端の構造解析を行った結果、おそらく全領域をカバーするクローンが得られたものと思われる。現在全塩基配列の決定を行っている。
著者
長友 和彦 森山 新 史 傑 藤井 久美子
出版者
宮崎大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2004

本年度の計画に基づき研究を進め、マルチリンガリズム研究会(http://jsl-server.li.ocha.ac.jp/multilinualism/index.html)(本科研のメンバーで設立)で、研究成果の一部を公表するとともに、主な研究成果をスイス・フリブールで開催の「The Fourth International Conference on Third Language Acquisition and Multilingualism」(http://www.irdp.ch/13/linkse.htm)で発表した。この国際学会では、本科研グループで、個別発表とともに「Multilingualism in Japan」というコロッキアを主宰し、日本社会における多言語習得の実態およびそこにおける課題に関する議論を展開した。研究の主なテーマは以下の通りである。1.中国語・韓国語・日本語話者によるコードスイッチングとターンテイキング2.中国語・韓国語話者による第三言語としての日本語の習得3.One Person-One Language and One environment-One Language仮説検証4.韓国語・日本語・英語話者における言語転移5.マルチリンガル児童のアイデンティティの発達6.多言語話者による言語管理7.環境の違いが多言語能力へ与える影響このような多角的な観点からの研究によって、日本社会における多言語習得の実態の解明に迫った。本研究の成果は報告書にまとめられる予定である。
著者
長舩 哲齊 長谷 榮二 角田 修次
出版者
東京医科大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1989

Euglena細胞は前培養条件を適切に選べば、葉緑体形成の初期暗過程が観察できることを見いだし暗所で起こる現象と、光照射によって初めて誘導される現象とを区別して追究することを可能にした。本報告はこの実験系を用いて、葉緑体形成の初期にみられる光合成酵素RuBisCOおよび光化学系IIのLHCP IIの細胞内局在性を連続切片疫電顕法で経時的に追跡したものである。暗所で継代培養したEuglenaを有機栄養培地中で静置培養すると細胞質内にパラミロンと共に脂質の蓄積がみられる。このような細胞を暗所で無機培地に移しCO_2を通気する。144時間後の細胞に、照度3ftーcの弱光又は強光150ftーcを照射した。弱光条件下で形成されたチラコイド膜は方向性を欠いたカ-リ-型になる。一方、強光条件下では48時間後にピレノイドが葉緑体の中央部に移動し、正常な葉緑体構造が完成された。免疫電顕法により、RuBisCOの細胞局在性を追跡するとRuBisCOは細胞核およびCOS構造、次いでプロピレノイド及びストロ-マに見られた。次に、弱光3ftーcを照射すると、従来の実験系においては弱光条件下では合成されないとされてきたLHCP IIの合成、照度3ftーcでも起こることが免疫電顕法により初めて確かめられた。すなわちLHCP IIは弱光照射2時間後、核およびCOS構造、その後ゴルジ体、次にプラスチドに観察された。その結果、細胞質で合成されたLHCP IIがゴルジ体を経由し、葉緑体に運ばれることを最初に見いだした。
著者
波潟 剛
出版者
九州大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

1920年代から1930年代に刊行された辞書類や文芸雑誌等での「エロ」「グロ」「ナンセンス」といった語彙のあらわれ方を分析した。その結果、東アジアにおいてモダニズムが生成する際の相互関係の重要性が明らかになり、欧米からの文化翻訳に加えて、東アジア間の文化翻訳について研究する必要性があることを指摘した。また、日本のモダニズム文学とスポーツとの関わりについても今後検討課題となりうる資料を見つけ分析を加えた。