著者
小野 英哲
出版者
東京工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1996

本研究では、塗床,張り床における床下地面および床仕上面凹凸の評価方法に関する研究を行った。始めに直径・深さの異なる2種の凹部を設けたアクリル製床下地に、メタクリル樹脂・エポキシ樹脂・ウレタン樹脂をそれぞれ3種の塗厚で施工し、硬化後に塗床表面に生じた凹凸量を測定し、床下地の凹部直径・深さおよび塗厚との関係を示した。次にエポキシ樹脂について官能検査を行い、塗床表面の凹凸量に関する視覚的観点から気になるか・気にならないかの尺度を構成し、この尺度を用いて床下地凹量の限界値を推定できる可能性を示した。さらに、床凹凸試料上をキャスターが走行した際にキャスターに生じる鉛直方向の加速度による床凹凸試料の序列の相関を、キャスターの仕様(重量,車輪の径,走行速度,車輪のかたさ)間で検討し、加速度により床凹凸に相対的序列をつけることが可能であること、加速度の観点から床凹凸を評価する際には床凹凸の断面形状のみでなく、かたさの要因も含めて評価する必要があることを示した。さらに欠陥に起因する床の不具合を調査し、欠陥のないコンクリート床下地の重要性を確認した。次に、コンクリート床下地表層部分の欠陥を発生させる施工における不適正の現状を把握し、さらに不適正に起因する欠陥を実験的に検証した。以上より、適正な計画,管理下における床下地コンクリート施工の重要性を再確認および指摘した。
著者
神田 学 井上 裕史 鵜野 伊津志
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.47, no.2, pp.83-96, 2000-02-29
被引用文献数
13

東京の環状八号線上空に現れる通称"環八雲"の生成メカニズムに関して数値計算により検討を行った.4次元データ同化手法・4重ネストグリッド手法を用い, また詳細な地理情報と人工排熱分布を考慮することにより, 水平スケール1km未満の局地性の強い環八雲を概ね良好に再現することができた.環八雲は, 東京湾海風の先端部の上昇流域に対応して形成された積雲列が, 環八近傍で停滞することによって形成される.これはちょうど, 東京湾海風と相模湾海風の収束帯に位置する.また, 海風先端部の重力波と熱対流の影響で, 環八雲周辺には複数のロール対流および積雲列が形成されること, が計算結果により裏付けられた.人工排熱量と都市領域を調節した数値実験により, 人工排熱量の増加や都市領域の拡大といった都市化の進行が積雲の雲量を増加させること, 都市領域の変化により水平気圧勾配が変化し, 積雲列の位置が東西方向にシフトすることが示された.
著者
平野 宗夫 森山 聡之 橋本 晴行
出版者
九州大学
雑誌
試験研究(B)
巻号頁・発行日
1994

本研究の目的は、雲仙において、リアルタイムに土石流の予測を行う手法を開発し、予警報システムの確立を計ることである。まず土石流の現地観測を行い、ハイドログラフのデータの蓄積を行う。また建設省九州北部レーダなどのデータを収集し、降水レーダデータベースを構築する。次に、得られたハイドログラフ、水位と雨量などのデータをニューラルネットワークに与えて学習させ、予測システムの開発を行う。本研究で得られた結果は以下のとおりである。(1)普賢岳周辺の中尾川、湯江川において、超音波水位計、電波流速計などからなる計測システムを設置し、流下してくる土石流を観測した。'94年、'95年は例年にくらべて雨が少なく、得られたハイドログラフは小規模であった。(2)雲仙の時間雨量データの累加値と総雨量を入力とし、土石流による堆積土砂量を出力とするニューラルネットワーク・モデルを構築した。そのモデルの検証のために、水無川における雨量-土石流堆砂量の関係を土石流発生毎に、過去の事例を学習-次の事例に対して予測させた。予測結果は、本モデルが水無川における土石流堆砂量の予測に有益であることがわかった。(3)ニューラルネットワークを用いて水無川における土石流の流出解析を行った。土石流の流出に関する土砂水理学的式をもとにしたニューラルネットワーク・流出モデルは1993年6月12-13日の実測ハイドログラフをモデリングすることができた。さらに、その流出モデルは、1991年から1993年に発生した土石流の堆積土砂量を推算し、実測堆積土砂量と比較を行い、有効性を示した。(4)土石流の発生予測は降雨パターンを土石流発生パターンと不発生パターンに判別することと考え、クラス分類を目的としたLVQ・モデルを利用し、土石流の発生予測精度の向上を試みた。発生予測に用いたLVQは従来の階層型ネットワークに比べて、単純なアルゴリズムでありながら、高い精度で発生と不発生の判定が可能であった。また、従来の階層型ネットワークについては、その関数近似の特性を利用した土石流の発生限界降雨の評価手法を提案し、累加雨量と発生限界理論をもとに、その妥当性を示した。
著者
宇津呂 武仁 松本 裕治 長尾 眞
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.34, no.5, pp.913-924, 1993-05-15
被引用文献数
24

自然言語処理のための大規模な意味辞書を構築するためには、人間のための辞書や大規模コーパスに含まれる自然言語の文を解析して、そこから意昧辞書を構築する技術を確立することが重要となる。計算機で知識獲得を行う場合、全自動で知識が獲得されることが望ましいが、現在利用可能な情報が貧弱であるため、有用な知識を獲得するためには何らかの人間の介入が必要である。しかし、最終的に得られる結果が人間の主観的な判断の影響を受けないように、人間の介入は最小限に抑えたい。我々は、英語と日本語のように統語構造および語彙が異なる二言語間の翻訳例を構文解析して、その結果を二言語間で比較するというアプローチによって語彙的知識の獲樗を行っている。そこでは、両言語の解析結果を比較することによって統語的および意味的曖昧性の両方が解消するため、単言語だけのアプローチに比ぺると人間の介入を大幅に抑えて語彙的知識を獲得できる。本論文では、二言語対訳コーパスから日本語の動詞の表層格フレームを獲得する手法について述べる。我々の手法では、システムと人間との相互作用は、動詞の複数の意昧を類別する部分だけに許される。そこでは、システムが動詞の複数の意昧を類別する手がかりをヒューリスティックスによって発見し、その妥当性を人間が判定するという形で相互作用が行われる。その際には、対訳例の英語の情報が有カな手がかりとなる。
著者
師岡 友紀 谷浦 葉子 三木 佐登美
出版者
大阪大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

看護基礎教育の臨地実習で「身体侵襲を伴う看護技術」を実施することは、新卒看護師にとってどのような意義があるか検討した。対象者175名のうち103名の同意を得、3ヵ月後・6ヵ月後・1年後に調査を行った。結果、身体侵襲を伴う看護技術を実施した場合、実施した技術に対する自己評価が高まるが、その傾向は全ての技術に当てはまらないこと、身体侵襲看護技術の経験のない場合はある場合と比較し就職1年後の離職願望が強いことが示された。実施の意義として「技術向上のための学習意欲が増す」と評価する割合が大きかった。
著者
南野 森
出版者
九州大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

研究期間の全般にわたり、最新のフランス憲法学・原理論に関する文献を多数収集するとともに、現代フランスにおけるもっとも重要な法理論家であるミシェル・トロペールの論攷を5本翻訳し発表した。また、研究テーマに関連する雑誌論文を邦語・仏語で7本、図書も邦語・仏語で7冊刊行することができた。さらに、日仏の研究者交流にもつとめ、数回の共同研究会を日仏両国(うち一回は研究代表者の勤務校)において開催することもできた。
著者
高橋 浩二郎 柳原 延章 豊平 由美子
出版者
産業医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

交感神経系のモデル実験である培養ウシ副腎髄質細胞を用いて植物由来化合物のカテコールアミン(CA)動態について検討した。その結果、蜜柑の果皮成分のノビレチン、タバコの葉の成分ニコチン及び大豆成分のゲニステインは、それぞれCA生合成-分泌や再取り込みに影響を及ぼすことが明らかとなった。これらの化合物は、日常生活において食物や嗜好品として摂取しており、その薬理学的な影響については今後注意深く見守らなければならない。
著者
名倉 仁
出版者
京都大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2008

バクテリア由来のNaチャネルであるNaChBacの変異体解析によって、電位センサーに位置するT110にシステインを導入した際に自発的なチャネルの失活が観察されており、この事実はT110C同士の結合が強く示唆されていた。これについて、4つのサブユニットを結合させた変異体の解析によって、T110間の近接は一つのチャネル内部で起こりうる事を示すことが出来た。また、今までの様々な変異体の解析から得られた知見を統合し、これをNaChBac以外のチャネルで見られる現象とも比較しながら実験結果を解釈して、電位依存性イオンチャネルに対する議論を深めることが出来た。まず、4量体型のNaChBac変異体に導入したシステインの影響を解析した結果から、24回膜貫通型のイオンチャネルのサプユニット配置を議論し、これらのチャネルのサブユニットが周回状の配置を取らない可能性を示唆した。また、T110C変異体の電流減衰の挙動を解析した結果から、電位センサーの側方への可動性は、脂質膜の性質変化などの膜電位とは別の機構によって制御されているのではないかという仮説を提起した。電位依存性イオンチャネルの開閉と脂質2重膜の性質との関係は、電位依存性のKチャネルでも報告されており、本研究で見出された電位センサーの側方への動きはこういった性質の基礎となっている可能性を示唆した。本研究の結果は、Biochemical and Biophysical Research Communications (399巻341-346頁)に投稿して発表した。
著者
寺井 隆幸 鈴木 晶大 田中 照也 星野 毅 久保 俊晴 志村 憲一郎
出版者
東京大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2007

核融合炉ブランケットでの使用が検討されている各種トリチウム増殖材料候補中でのトリチウム挙動及びブランケット配管におけるトリチウム漏洩防止についての研究を実施し、液体リチウム及び流動下液体リチウム鉛中水素同位体の配管を通しての漏洩速度及び移行メカニズム、さまざまな酸化還元状態の溶融塩候補材料中のトリチウム化学形変化、固体酸化物候補材からの蒸発挙動を明らかにするとともに、トリチウム透過防止コーティング中のトリチウム移行メカニズム解明とコーティング作成手法の最適化を行った。
著者
山口 茂弘
出版者
名古屋大学
雑誌
若手研究(S)
巻号頁・発行日
2007

有機エレクトロニクス分野の発展を担う鍵材料の創出を目指し,優れた光・電子物性をもつ新奇π電子系分子の開発に取り組んだ.典型元素に特徴を生かした分子設計,新反応の開発,分子配向制御を機軸に取り組み,新奇な骨格をもつ一連のπ電子系分子の合成を達成した.高効率固体発光,白色発光,高電荷移動度などの標的物性を実現するとともに,安定ホウ素材料や反芳香族性π電子系の設計指針などの新たな分子設計指針を確立した.
著者
岡 美智代 恩幣 宏美 川村 佐和子 村上 みち子 山名 栄子 上星 浩子 高橋 さつき 越井 英美子
出版者
群馬大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

患者、看護職、医療費削減という3方向に効果のある患者教育プログラムを学ぶための、看護職向けの学習システムの開発と評価を目的とした研究を行った。その結果、6ステップからなるEASE(イーズ)プログラムの学習システムを開発した。またその学習システムの効果として、患者のセルフマネジメント行動の向上、看護職の適切な発話内容が明らかになった。医療費の試算では、676億6144万円の削減効果が見いだされた。
著者
佐藤 和夫
出版者
日本保険医学会
雑誌
日本保険医学会誌 (ISSN:0301262X)
巻号頁・発行日
vol.105, no.4, pp.226-237, 2007-12-17
被引用文献数
1

生命保険の告知書では生理不順,無月経,不妊症に関するものがしばしばみられる。これらの中にはプロラクチン(PRL)産生下垂体腺腫(プロラクチノーマ)が隠れている。プロラクチノーマは下垂体ホルモン産生腫瘍のなかでは最も多く,PRL分泌過剰症(高PRL血症)の主な原因の一つでもある。下垂体腫瘍の中で,プロラクチノーマだけが薬物療法(ドパミン作動薬)が有効かつ治療の第一とされることが注目に値する。一方,経蝶形骨洞手術は,通常,薬物を受け付けない,あるいは薬物効果が不十分な患者の場合に実施される。本稿では平成17年改訂プロラクチン分泌過剰症の治療の手引きをはじめ,その関連文献を参考にし,告知書にみるプロラクチノーマの危険選択について検討を加えた。プロラクチノーマの危険選択では,腺腫の大きさ-すなわち,ミクロ腺腫かマクロ腺腫か-を確認することがきわめて重要であり,手術死亡リスクや下垂体卒中などの生命リスク関連事項に十分注意する必要がある。
著者
田渕 祥恵 小板橋 喜久代 柳 奈津子 小林 しのぶ
出版者
群馬大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

リラクセーション法(呼吸法)による睡眠改善効果を検証することを目的に基礎研究を実施した。健常成人を対象に腹式呼吸法を実施する対象者(実験群)と実施しない対象者(対照群)を無作為に振り分け、腹式呼吸法の有用性について検討した。その結果、5日間の腹式呼吸法の練習を実施した後、就寝直前に腹式呼吸法を実施した場合には入眠潜時(就床から入眠までの時間)が短縮されることが示唆された。