著者
樋口 勇夫
出版者
名古屋学院大学総合研究所
雑誌
名古屋学院大学論集 言語・文化篇 = THE NAGOYA GAKUIN DAIGAKU RONSHU; Journal of Nagoya Gakuin University; LANGUAGE and CULTURE (ISSN:1344364X)
巻号頁・発行日
vol.26, no.2, pp.45-86, 2015-03-31

幾つかのJ-POP広東語カバー曲では,オリジナル曲の楽音の高さを,ある特定の音符だけ個別に変えてあり,それはその音符に対応する歌詞の漢字の声調と関係がありそうである。 拙稿「J-POP広東語カバー曲における声調の楽音への影響」(1)~(5)にて,1984年から2010年のJ-POP広東語カバー曲,計50曲を例にその様相を探った。本稿ではそのまとめを行なう。
著者
湯谷 承将 山本 雄也 中谷 秀洋 寺澤 洋子
雑誌
研究報告音声言語情報処理(SLP) (ISSN:21888663)
巻号頁・発行日
vol.2023-SLP-147, no.8, pp.1-7, 2023-06-16

シンセサイザーは現代の音楽制作や演奏活動において,不可欠な存在である.一方で音色生成に用いられるパラメータは複雑かつ技術的な用語が多く,プレイヤーが望む音色を得るためには習熟が必要とされる.本研究では, ウェーブテーブル合成[2, 14, 32]と呼ばれる音響合成方式において,意味的な表現を用いた,オーディオ・エフェクト/波形生成手法を提案する.これは,ユーザーが使用したいウェーブテーブルを選択し,所望の音色を意味的なラベルによって指定する事で,その特性を付与した一周期の波形を生成する事で実現される.提案手法では,Conditional Variational Autoencoder (CVAE)[18] を利用して, ウェーブテーブルの条件付け生成を行う. 条件付けには,音響特徴に基づいて算出した明るさ (bright),暖かさ (warm),リッチさ (rich)という 3 つの意味的ラベルを用いる.さらに,ウェーブテーブルの特徴を捉えるために,畳み込みとアップサンプリングを用いた CVAE モデルを設計する.また,生成時の処理を時間領域でのみ行うことで処理時間を削減し,リアルタイム性を確保する.実験結果から,提案手法は意味的ラベルを入力として用いてウェーブテーブルの音色をリアルタイムに制御できる事を定性的・定量的に示す.本研究は,データに基づいた意味的なウェーブテーブル制御の実現による直感的な音色探索を目指す.
著者
三宅 晶子
出版者
中世文学会
雑誌
中世文学 (ISSN:05782376)
巻号頁・発行日
vol.64, pp.12-21, 2019 (Released:2020-08-03)
著者
今井 貴夫
出版者
一般社団法人 日本めまい平衡医学会
雑誌
Equilibrium Research (ISSN:03855716)
巻号頁・発行日
vol.82, no.2, pp.105-113, 2023-04-30 (Released:2023-06-14)
参考文献数
13

Electrophysiological measurement of the eye rotation axis using stimulation of a single semicircular canal nerve showed that the eye rotated around the axis perpendicular to the plane of the stimulated semicircular canal. Therefore, the affected semicircular canal can be identified by analyzing the eye rotation axis in cases of abnormal nystagmus. When the main component of the abnormal nystagmus is horizontal, the origin of the nystagmus is the lateral semicircular canal. When the main component of the abnormal nystagmus is torsional, the origin of the nystagmus is the anterior and/or posterior semicircular canal. The eye rotation axis in cases of excitatory nystagmus is quite the same as that in cases of inhibitory nystagmus, although the direction of eye rotation is opposite between cases of excitatory and inhibitory nystagmus. Vestibular neuritis mostly involves the superior vestibular nerve. The superior vestibular nerve transmits sensory information transmitted by from the vestibular hair cells located in the anterior and lateral semicircular canals. Therefore, patients with vestibular neuritis exhibit nystagmus with both horizontal and torsional components caused by inhibition of both the anterior and lateral semicircular canals. In patients with Ménière's disease, during a vertigo attack, excitatory nystagmus of anterior and/or posterior and/or lateral semicircular canal origin can be seen. Because the involving ratio of each contributing ratios of the three semicircular canals to nystagmus can vary, the ratio of the torsional component of the nystagmus to the horizontal component also varies. While nystagmus is purely horizontal in some cases, it is purely torsional in others. In the posterior canal type of BPPV, during the Dix-Hallpike maneuver, transient torsional nystagmus with the torsional component directed toward the affected side can be seen. In the lateral canal type of BPPV (canalolithiasis), geotropic positional nystagmus can be seen when the patient is supine. In the lateral canal type of BPPV (cupulolithiasis), apogeotropic positional nystagmus can be seen when the patient is supine.
著者
櫻井 鼓
出版者
追手門学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2021-04-01

15歳以上22歳以下を対象としたオンライン調査を実施して、自画撮り被害(児童が脅かされて自分の裸体を撮影させられ、メール等で送らされる形の児童ポルノ被害のこと。)の経験割合と精神的影響、自画撮りの画像を送信するに至った心理・社会的要因を明らかにする。さらに、調査で得たデータに基づき、保護者や教師が被害予防のために早期にとるべき対応の指針を発見し、被害予防教育のための教材を作成する。
著者
中本 敦 佐藤 亜希子 金城 和三 伊澤 雅子
出版者
日本哺乳類学会
雑誌
哺乳類科学 (ISSN:0385437X)
巻号頁・発行日
vol.49, no.1, pp.53-60, 2009 (Released:2009-07-16)
参考文献数
32
被引用文献数
2

沖縄諸島におけるオリイオオコウモリPteropus dasymallus inopinatusの分布と生息数に関する調査を2005年8月から11月と2006年4月から5月に行った.調査した25島のうち,新たに8島[伊是名島,屋我地島,奥武島(名護市),瀬底島,藪地島,奥武島(南城市),瀬長島,阿嘉島]でオオコウモリの生息を確認し,これまで生息が記録された島と合わせて19島となった.沖縄島の周辺各島で見られる個体群は,沖縄島の個体群サイズに対して,数頭から数十頭と非常に小さいものであった.また,その個体数は沖縄島から遠い距離にある島ほど小さくなる傾向が認められ,50 km以上離れた島では生息が確認できなかった.このような分布パターンから沖縄諸島で見られる個体は沖縄島からランダム分散した個体であると思われた.

4 0 0 0 OA 「雀合戦」考

著者
村上 紀夫
出版者
奈良大学
雑誌
奈良大学紀要 = Memoirs of the Nara University
巻号頁・発行日
no.51, pp.184-169, 2023-02-28

本稿は、「雀合戦」と呼ばれる雀が群がって争う現象の情報について論じるものである。雀合戦は、繁殖を終えた雀が秋以降に集団で塒入りするもので、雀の一般的習性である。にもかかわらず、近世以降に江戸周辺でしか文献に見られないのは歴史的・文化的理由がある。この現象を最初に「合戦」という名付けをした遠州からの書状が江戸に到来し、流布したことで、それが鋳型となって天保三年(一八三二)に江戸で発生した雀の集団行動が「合戦」と理解された。「合戦」とする情報の偏在が、報告される雀合戦事例の地域的な偏りにつながったのである。「雀合戦」の噂が江戸周辺に偏在しているのは、情報が江戸に集まりやすいことに加えて、情報をストックしている知識人が多いことが原因であろう。

4 0 0 0 OA 自由原論

著者
トークヴィル 著
出版者
有隣堂
巻号頁・発行日
vol.第1−3巻, 1882
著者
今羽右左 デイヴィッド 甫 清水 智樹
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.73, no.6, pp.225-229, 2023-06-01 (Released:2023-06-01)

研究機関が学術情報を発信する場合,研究者・科学ジャーナリスト・一般市民など,多様な受け手に合わせて,研究ストーリーの語り方と伝達手法を柔軟に選択・実践する必要がある。本稿では,その具体的なアプローチとして,プレプリントサーバーやソーシャルメディアによる情報発信,研究助成金の申請,論文のプレスリリース(国際的な科学ニュース配信サービスの活用,報道を促す文章とイラストの制作)について概説する。こうした多角的な情報発信手法を重層的に実践する,いわば「厚み」のある研究広報を実践することによって,学術情報を効果的に伝えることができるであろう。
著者
工藤 力 西川 正之
出版者
The Japanese Group Dynamics Association
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.99-108, 1983-02-20 (Released:2010-11-26)
参考文献数
36
被引用文献数
45 33

本研究は, Russellら (1980) の開発した改訂版UCLA孤独感尺度の邦訳版を作成し, その信頼性と妥当性を検討することを目的とした。被調査者は, 学生, 一般社会人, 入院治療中のアルコール依存症患者, 合計975名である。孤独感尺度のほかに, 社会的行動, および身体的徴候に関する自己評定尺度, 家族との愛情関係測定用のSDスケール, 自尊心尺度, CPI 10が用いられた。主要な結果は, 以下の通りである。(1) 孤独感はアルコール依存症患者で最も強く, 次いで, 男子の大学新入生, 30代~40代の一般社会人の順であった。しかし, 平均的にみると, 大学生に比べて一般社会人の方が有意に強い孤独感を示していた。(2) 孤独感の性差に関しては, 大学新入生においてのみ見出された。(3) 孤独感尺度の信頼性は, 上位・下位分析, α係数, 折半法, 再検査信頼性係数により吟味されたが, いずれの場合も本尺度の信頼性が充分であることを示している。(4) 孤独感尺度の妥当性は, 孤独感の行動的対件, 社会的関係の認知, 家族との愛情関係, 身体的徴候の現出, 自尊心尺度とCPI 10尺度との対応, 一般社会人とアルコール依存症患者の比較などにより検討されたが, いずれの場合も併存的妥当性が充分であることを示した。(5) 補足的な結果として, 母親との愛情関係 (経験) は, 孤独感の強さを規定するものであることが示唆された。今後は, 本尺度を使用して, 孤独感に陥る原因の解明や, 孤独感の永続化に寄与する要因の分析, 孤独感解消のための対処行動の様態, さらには孤独感の因果帰属が感情反応や対処行動, さらには自尊心に及ぼす影響などを明らかにする必要があるように思われる。
著者
道津 喜衛 冨山 一郎
出版者
長崎大学水産学部
雑誌
長崎大学水産学部研究報告 = Bulletin of the Faculty of Fisheries, Nagasaki University (ISSN:05471427)
巻号頁・発行日
vol.23, pp.1-42, 1967-08

During 1947 to 1967, marine fishes were collected by the authors from Saikai National Park, Nagasaki Prefecture, Western Kyushu. During this period, two main trips were made to this area to investigate the fish-fauna and many other trips to investigate fisheries biolgy as well as the fish-fauna. In this paper, 426 species and 11 sub-species of 143 families of marine fishes collected from the park are described in scientific name as well as in Japanese common name and local name together with the collection-localities. The fish-fauna of the area, facing to the Tsushima Warm Current, a branch of the Kuroshio Current, is similar to that of Wakayama, Kochi and Kagoshima Prefectures on the Pacific coast of Japan facing directly to the Kuroshio Current, and it indicats the characteristics of sub-tropical fish-fauna of South-Eastern Asia.
著者
有馬 善一
雑誌
摂大人文科学 = The Setsudai Review of Humanities and Social Sciences (ISSN:13419315)
巻号頁・発行日
no.23, pp.81-104, 2016-01

ハイデガー哲学において、ニヒリズムは極めて大きな問題であるとともに、その問題性は多面的な様相を示している。それを明らかにするために、本論文は、①ハイデガーのニーチェ哲学との対決とその解釈において現れるニヒリズムの問題、②ハイデガーの存在史的な思想の中で現れるニヒリズムの問題の2 つを課題として取り上げる。また、①の問題と関連して、③ニーチェのニヒリズムとはいかなるものであったのか、も明らかにされなければならない。本論文における分析・考察の結果は次の通りである。①ニーチェ思想におけるニヒリズムがパースペクティヴィズムとの連関において肯定的性格を示していること、②ハイデガーの存在史的な解釈において、ニーチェのニヒリズムのこの性格が正当に評価されていないこと、③ハイデガーにおいては、ニヒリズムの現象は、形而上学の歴史の全体において〈存在〉が逃れてしまうということとして捉えられており、形而上学の本質そのものがニヒリズムであると考えられていること、④ハイデガーによれば、ニヒリズムの今日的な現象は科学技術の世界支配であり、ハイデガーはニヒリズムを耐え抜くことの必要性を説くが、反面、技術支配の〈危険〉についてのハイデガーの認識には少なからぬ問題があるということ、以上4 つの点が明らかとなった。
著者
西山 孝樹 藤田 龍之 天野 光一
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.6, pp.22-00280, 2023 (Released:2023-06-20)
参考文献数
30

本研究では,江戸幕府の公式記録である『徳川実紀』をすべて読み,「山川掟」の初出とされる1666(寛文6)年以前の治水をするために治山も同時に行わなければならないと言及した法制度に関する事項を抜き出した.その結果,既往研究で「山川掟」の初出とされてきた20年ほど前の1645(正保元)年には,同様の内容に言及した法制度が存在していることを明らかにした.さらに,1666(寛文6)年から1742(寛保2)年の「山川掟」に関する事項も抜き出した.それらを整理したところ,「山川掟」に関するものは6事項が掲載され,約20〜30年ごとに発布されていた.現在においても,「山川掟」のように,治山と治水を同時に考えていくべきであり,江戸時代の政策は現在を生きる我々も,参考にすべき点は大いにあることを示した.