著者
丹野 貴行 坂上 貴之
出版者
一般社団法人 日本行動分析学会
雑誌
行動分析学研究 (ISSN:09138013)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.109-126, 2011-02-02 (Released:2017-06-28)
被引用文献数
1

Herrnstein(1961)のマッチング法則の発見からこれまでの半世紀の間、微視と巨視をめぐる論争は行動分析における重要な課題の1つであると認識されてきた。本稿ではこの微視-巨視論争を3つの論点に分類・整理し、そこからこの論争の今後の展望を探ることを目的とした。1つめの論点は"強化の原理"であった。行動を制御しているのは、行動と強化の間の微視的な接近性だろうか、あるいは反応率と強化率の間の巨視的な相関性だろうか。2つめの論点は"分析レベル"であった。反応-強化間の関数関係を適切に記述するには、単一の反応と単一の強化という微視的な関係を用いるべきだろうか、あるいは反応率と強化率という巨視的な関係を用いるべきだろうか。そして3つめ論点は"行動主義"であった。ここ20年の間にpost-Skinner的な行動主義がいくつか提案されてきたが、本稿ではそれらを機械論とプラグマティズム、あるいは動力因的説明と目的因的説明といった対立軸から、微視的行動主義と巨視的行動主義とに分類・整理した。ここでの問題は、どちらの行動主義がより生産性のある行動の科学を導けるかということである。我々はこれら3つの論点をまとめ、そこから微視-巨視論争の今後の方向性を論じた。
著者
難波 祐三郎
出版者
岡山医学会
雑誌
岡山医学会雑誌 (ISSN:00301558)
巻号頁・発行日
vol.126, no.2, pp.109-115, 2014-08-01 (Released:2014-09-01)
参考文献数
7
著者
星 旦二 伊香賀 俊治 海塩 渉 藤野 善久 安藤 真太朗 吉村 健清
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.69, no.4, pp.297-306, 2022-04-15 (Released:2022-04-26)
参考文献数
33

目的 本研究の目的は,我が国の冬期における戸建て住宅各室の室温と外気温の実態と共にその関連性について,国土交通省の定める省エネ地域区分別に明確にすることである。方法 本研究の対象者は,日本全国に居住している3,781人である。調査は2014年度冬季より,国土交通省の支援を得て全国的に実施されている,SWH(Smart Wellness Housing)事業の一環として5年間実施した。 各部屋別(居間・寝室・脱衣所)に測定された冬期二週間の床上1 m室温と床近傍室温,それに気象庁が測定した外気温の実態とともに,その関連について共分散構造分析を用いて解析した。これらの関連は,同時分析により全国の省エネ地域区分別に解析した。分析ソフトは,SPSS22.0とAMOS22.0を用いた。結果 冬季における住居内床近傍室温は床上1 m室温よりも低く,時間帯でみると床近傍ないし室温共に朝が低い温度を示した。部屋別室温較差は,居間と脱衣所間で大きかった。 室温を地域別にみると,省エネ地域2の室温が最も高く,省エネ地域4の室温が最も低いことが示された。冬期の外気温は各室温よりも床近傍室温と強い関連がみられた。結論 我が国の住宅床近傍室温は,床上1 m室温よりも低いことと,居間と脱衣所とでは大きな温度較差がみられた。省エネ地域区分4の住宅床近傍室温と床上1 m室温が最も低いことが示された。室温が外気温から影響される度合いは,省エネ地域7を除き地域番号とともに大きくなることが示された。
著者
矢野 一行
出版者
一般社団法人 日本温泉気候物理医学会
雑誌
日本温泉気候物理医学会雑誌 (ISSN:00290343)
巻号頁・発行日
vol.77, no.2, pp.108-119, 2014-02-28 (Released:2014-06-26)
参考文献数
23

私たちは放射能泉を利用することによって低線量被曝を受けることになるが、この程度の被曝は免疫細胞を活性化するのでからだに良いと宣伝され、広く信じられてきた。しかし福島第一原発事故以降、放射線の健康への影響を、どのような低線量被曝でもからだに害を及ぼすとする「LNT仮説」で説明されるようになり、放射能泉による低線量被曝に関しても再考の必要に迫られている。  放射能泉には不明な点が多く、温泉治療に利用されている低線量被曝がからだにとって益なのか害なのかを示す決定的な証拠は得られていない。この点を明らかにすることは放射能泉の温泉医学的効果を立証するうえで避けて通れない課題の一つである。  本説では、最初に放射能泉を正しく理解するために必要な基礎知識を整理する。次にわが国の代表的ないくつかの放射能温泉地から入手した温泉分析書に基づき、これらの温泉水に含まれている有効成分について比較検討する。  続いて放射能泉の本質的作用成分であるラドンの性質、ラドンによる被曝、ならびにラドン被曝で発生する活性酸素について整理する。また、欧米諸国で広く知られている住居内でのラドン吸入による肺がんのリスクにふれ、これらの国で得られたデータを基にわが国の放射能泉でのラドン吸入による肺がんのリスクについて考察する。  さらに、がんの根本的原因はDNAの損傷にあるので、その損傷の度合いを示す酸化的DNA損傷マーカーである8-ヒドロキシ-2’-デオキシグアノシン(8-OHdG)について説明し、尿中に排泄される8-OHdGが放射能泉の医学的効果を検証するための一つの指標としての可能性を検討する。  最後に、以上を総合して放射能泉の温泉医学的効果を検証するための実験系の構築に関して提案する。
著者
古畑 僚 岡崎 慎治
出版者
障害科学学会
雑誌
障害科学研究 (ISSN:18815812)
巻号頁・発行日
vol.45, no.1, pp.189-198, 2021-03-31 (Released:2021-09-30)
参考文献数
50

ASDはその主症状の他に、アレキシサイミア傾向の高さ、感情調節の困難さ、および不安傾向の高さなどの感情面に関する問題が指摘されている。本研究では、アレキシサイミア傾向の評価に用いられている各種の質問紙について整理したあと、ASDにおけるアレキシサイミア傾向と不安、感情調整との関連について扱った研究に関する検討を行なった。種々の研究から、ASDの持つアレキシサイミア傾向は認知面における困難さであることや、アレキシサイミアのサブタイプを踏まえた分析の有用性、これらの要素がそれぞれ関連していることが示唆された。一方で、それらが互いに及ぼす影響や因果性については未だ明らかではなく、今後の検討が必要であろうと考えられた。また、臨床上はASDのアレキシサイミア傾向の特性に関する研究知見と介入との結びつきが今後より重要になると思われる。
著者
福田 智子 Tomoko Fukuda
出版者
同志社大学文化情報学会
雑誌
文化情報学 = Journal of culture and information science (ISSN:18808603)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1-2, pp.88-84, 2021-03-31

バイエルン州立図書館所蔵『源氏物語』は、辻英子氏により紹介された写本である。その筆跡から、小野お通筆とされている。従来、徳川秀忠が娘の千姫の輿入れに際し作らせた嫁入り本である可能性が指摘されていた。そこで、改めて検証してみると、写本が収められている箱の表に、清和源氏義光流、小笠原家の家紋「三階菱」が記されていることに気づく。この箱がお通書写本と同時に製作されたものとするならば、お通の活躍時期に、嫁入り本を必要とする可能性のある女子として、慶長五年正月、松平阿波守至鎮に嫁した、小笠原秀政女、萬姫が浮上する。なお、本書とともに「葵紋」が伝来するのは、彼女が徳川家康の養女であったことと関わるか。また、箱表の図柄は宇治の情景か。
著者
松尾 健次郎 宮川 治雄 荒巻 利男 原 誠
出版者
公益社団法人 日本コンクリート工学会
雑誌
コンクリート工学 (ISSN:03871061)
巻号頁・発行日
vol.31, no.6, pp.33-44, 1993-06-01 (Released:2013-04-26)
参考文献数
3

日本初の開閉式ドーム屋根で覆われた, 直径約200 mの大規模スタジアムである福岡ドームは, 1993年3月31日に竣工し, 使用を開始している。切断球殻3枚で構成され1枚の重量約4000 tの屋根をスムーズに開閉するために, 屋根を支持する構造体には, 精度・強度など厳しい性能の確保が求められた。さらに施工期間が, わずか24か月という超短工期であった。このような制約を克服するため, 設計段階から複合化・省人化工法を積極的に採用した。以下, その概要について報告する。
著者
戸堂 康之
出版者
日本国際経済学会
雑誌
国際経済 (ISSN:03873943)
巻号頁・発行日
pp.kk2022.f04, (Released:2022-03-09)
参考文献数
42

本稿は,Covid-19の感染拡大に伴うロックダウンなどの経済的影響がグローバル・サプライチェーンを介して波及する効果に関して,感染拡大期に行われた研究をサーベイした。特に,(1)感染拡大初期にその波及効果が非常に大きなものになると予測した研究,(2)Covid-19が国際貿易に及ぼした影響の実証的な研究,(3)Covid-19の感染拡大にも頑健で強靭なサプライチェーンの要因に関する研究に焦点を当てている。
著者
黒田 藍 村山 洋史 黒谷 佳代 福田 吉治 桑原 恵介
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.69, no.4, pp.284-296, 2022-04-15 (Released:2022-04-26)
参考文献数
35

目的 孤立や孤独を防ぎ,かつ食事を確保する方策として食支援活動が行われてきたが,その実践に関する学術的知見は乏しい。本稿では,住民がボランティアで食支援活動を行う地域食堂のコロナ下での活動プロセスを記述し,地域食堂の活動継続が利用者や住民ボランティアにもたらした効果について予備的に検証することを目的とした。方法 本研究は東京都内の独居高齢者が多く居住する大規模団地にて,飲食店と同水準の食品衛生管理体制のもと運営されている地域食堂「たてキッチン“さくら”」で筆頭著者が実施するアクションリサーチの一部である。2020年2月から同年5月までの地域食堂の活動を報告対象とした。活動プロセスは運営の活動記録,運営メンバーと住民との対話記録,活動時の画像記録を用いて記述した。地域食堂の利用住民10人と住民ボランティア6人との対話記録をKJ法に基づき分類し,彼らが認識する地域食堂の活動継続がもたらした効果を評価した。活動内容 対象期間中に地域食堂の役員や住民ボランティアは定期的に会議等を行い,市民向け新型コロナウイルス感染症対策ガイドや保健医療専門職の助言,利用者の意見等を参考にしながら,運営形態の検討と修正を続けた。結果として,地域食堂は高齢住民ボランティアが中心となって住民の食と健康を守るために週5日の営業を継続した。店頭の販売個数は形態変更に伴い5月に半減した一方(2020年2月4,670個,同5月2,149個),各戸への配食数は需要の増加に伴い3月以降増加した(2020年2月301個,同5月492個)。事後評価の結果,地域食堂の新型コロナウイルス感染症対策は外食業の事業継続のためのガイドラインを遵守していた。活動継続の効果として,地域食堂利用者では〈食の確保〉,〈人とのつながり〉,〈健康維持増進〉の3つのカテゴリー,住民ボランティアでは〈社会とのつながり〉,〈健康維持増進〉の2つのカテゴリーが抽出された。結論 住民ボランティアが,住民の食と健康を守るとの活動理念を確認しながら,新型コロナウイルス感染症の対策情報等を参照し,ステークホルダーを巻き込み,一般に求められる水準の感染症対策を取り入れて食支援活動を継続していた。この取組継続は,住民の食確保や健康支援に加え,住民同士のつながり維持に役立ったことが示唆された。
著者
高木 隆司
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
大学の物理教育 (ISSN:1340993X)
巻号頁・発行日
vol.94, no.1, pp.8-11, 1994-12-05 (Released:2018-04-14)
被引用文献数
1
著者
宮尾 俊輔
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.103, no.10, pp.742-749, 2008-10-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
5
被引用文献数
1 2

吟醸酒の製造にカプロン酸エチル高生産酵母は不可欠な存在になっている。カプロン酸エチル高生産酵母は醒後半のキレが鈍る傾向にあり, そのため発酵能が高い酵母との混合仕込が普及している。最近, 日本醸造協会が開発し, 頒布しはじめたカプロン酸エチル高生産酵母のきょうかいm1号は, 発酵能が高い酵母として注目されている。筆者らはかねてからカプロン酸エチル高生産酵母の混合仕込について詳しく調べており, 今般きょうかい1801号の混合仕込を行い, 発酵能や香気成分の生成量などを検討した。混合仕込全般を含めきょうかい田1号について得られた最新の知見を詳しく解説していただいた。
著者
仏書刊行会 編
出版者
仏書刊行会
巻号頁・発行日
vol.第49巻 覚禅抄 第5, 1922
著者
安倍 弘
出版者
日本ダニ学会
雑誌
日本ダニ学会誌 (ISSN:09181067)
巻号頁・発行日
vol.15, no.1, pp.1-16, 2006 (Released:2006-06-01)
参考文献数
35
被引用文献数
3 1

これまで日本から記録されているミズダニ類7上科,29科,42亜科,62属,223種,41亜種(22名義タイプ亜種を含む)について,学名,和名,国内における記録地を記載した.
著者
伊藤 伸介 石田 賢示 藤原 翔 三輪 哲
出版者
数理社会学会
雑誌
理論と方法 (ISSN:09131442)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.321-336, 2017 (Released:2018-03-27)
参考文献数
37
被引用文献数
1

本稿では,公的統計の個票データ(調査票情報)の申請と活用の方法について解説した.統計法改正により,現在では,公益性のある学術研究ならば,公的統計の個票データにもアクセスできるようになっている.利用申請が承認されたのちには,テキスト形式の個票データ,データのレイアウト表と符号表が収録されたCDRが届くことになる.個票データを自由に扱うことで,様々な変数の加工・作成やそれら変数間関連の分析をおこなうことができる.公的統計の個票データの分析で基礎的な変数の関連パターンを精確に明らかにできるため,そこから導かれた発展的な問題に対しては個別具体的な社会調査でアプローチする研究プロセスが考えられる.そのように,公的統計の個票データと社会調査データを組み合わせることで,優れた計量社会学的研究が蓄積していく可能性が拓かれる.