著者
岡部 弘高
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2021-04-01

カーボンフリー社会を実現するために蓄電池は重要であり、蓄電池の材料としてリチウムを確保することが必要である。陸産リチウム資源は南米に偏っており、日本が将来的にリチウムを確保できるかは不透明である。そこで、海水中に稀薄ながら大量に溶存しているリチウムを回収する新規吸着剤を開発し、リチウム資源の確保手段を確立することが本研究の目標である。
著者
投野 由紀夫 三宅 登之 周 育佳 パルマヒル フロリンダ 川本 渚凡 根岸 雅史 西畑 香里 藤縄 康弘 秋廣 尚恵 ティプティエンポン コシット 王 ウェイトン 山田 洋平 望月 圭子 加藤 晴子 森田 耕司
出版者
東京外国語大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2022-04-01

本研究は、ヨーロッパ言語共通参照枠(CEFR)を我が国の外国語教育に応用するため開発された CEFR-J の開発成果を応用し、多言語教育資源をコーパス言語学や自然言語処理の手法を援用して組織的に整備する手法の考案と、その資源を具体的な教育システムに結びつけるための言語共通の汎用シラバスを開発、実際のコースコンテンツを開発し東京外国語大学の28言語専攻のうち、実験的に実装をいくつかの言語で試みるものである。特に汎用のCan-Do リストと汎用シラバスを組み合わせた教材を開発し、その教授結果を測定評価する Can-Do テストをセットで考案することで、国際的に価値のある言語教育資源の開発を目指す。
著者
小林 祐子
出版者
公益財団法人三井文庫
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

本研究では、これまで不明とされてきた安藤緑山の履歴、すなわち生没年、本名、出自、住居の変遷などについて、遺族からの聞き取り調査により明らかにすることができた。また緑山作品の所在調査を通して、2014年には35件であった作品数が、現時点で国内外に109件現存していることがわかった。さらにX線透過撮影、X線CTスキャナ撮影、蛍光X線分析などの光学的調査を実施し、作品の内部構造や各部の接合に使用されている材料、彩色材料など制作技法の解明に迫った。
著者
箱崎 真隆 坂本 稔 篠崎 鉄哉
出版者
国立歴史民俗博物館
雑誌
学術変革領域研究(A)
巻号頁・発行日
2023-04-01

本研究では、先史時代の日本列島域の古環境変遷を「酸素同位体比年輪年代法」および「炭素14スパイクマッチ法」を用いて高い時空間解像度で復元する。特に①「鬼界アカホヤ噴火」の誤差0年決定、②過去6400年間の降水量と太陽活動の復元、③世界的寒冷化イベント(4.2-4.3kaイベント)の影響評価を目的とする。そのために、埋没木と遺跡出土木材の網羅的な酸素同位体比分析と炭素14分析を実施する。並行して新規の木材資料獲得と年代決定を行ない、より古い時代まで復元できる基盤形成を進める。本研究によって、日本列島域における古環境の形成と先史人類の適応について明らかにする。
著者
三宅 芙沙 堀内 一穂 宮原 ひろ子 早川 尚志 笹 公和 箱崎 真隆 前原 裕之 栗田 直幸 木村 勝彦 門叶 冬樹
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2020-08-31

樹木年輪の14Cや氷床コアの10Be、36Clといった宇宙線生成核種は、観測史上最大とされる1956年のSEP(Solar Energetic Particle)イベントの数十倍という過去の超巨大SEPイベントの優れた代替データである。本研究は、年輪の14Cと氷床コアの10Be、36Cl分析から、完新世(過去1万2千年間)における最大のSEPイベントの同定と、超巨大SEPイベントの発生頻度及びその発生特性の解明を目的とする。我々の太陽における発生特性を、太陽型恒星の恒星フレアと比較することで、太陽型恒星における太陽の普遍性と特殊性を評価する。
著者
井上 博之
出版者
東京大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2020-04-01

本研究では自然主義文学からハードボイルド探偵小説とフィルム・ノワール、多様な人種的マイノリティーの文学、実験的な現代作家までを見渡しながら、さまざまなイメージを投影されてきた20世紀カリフォルニアの文学・映画を分析対象とする。代表的なテクストの精読を通して、多種多様なテクストの重層的な網の目によって形成される特異な物語空間としてのカリフォルニアの姿を提示する。
著者
今村 明 吉浦 孝一郎 黒滝 直弘 小澤 寛樹
出版者
長崎大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究で我々は、統合失調症のrare-risk variantを同定することを目標として、統合失調症の多発大家系を対象として、遺伝学的解析を行った。統合失調症多発大家系に属する10名に全エクソン解析を行った。同定された2つの候補遺伝子に関して、統合失調症288名、健常者419名のtarget sequencingを行った。その結果、候補遺伝子はGene Aだけに絞られた。Crispr-cas9にて作成した遺伝子改変マウス(Gene Aのノックインマウス)の行動解析を行った。行動解析の結果、遺伝子改変マウスは活動性が低いまたは運動機能が減衰している可能性が示された。
著者
栃木 衛 桑原 斉 垣内 千尋 佐々木 司 池淵 恵美 赤羽 晃寿
出版者
帝京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

統合失調症、双極性障害、パニック障害などを含む精神疾患、および自閉症、トゥレット障害などを含む発達障害などの精神科領域の疾患について、多発家系、孤発例家系や一卵性双生児不一致例についてDNAサンプルの蓄積を図った。また、これらのサンプルについて、次世代シークエンサーを利用したエクソーム解析や、マイクロアレイを利用した解析を行うことにより、統合失調症およびトゥレット障害の有力な候補遺伝子の同定に至った。
著者
王寺 賢太
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2021-04-01

本研究では、フランス啓蒙期の政治思想史を、モンテスキュー、ルソー、ディドロにおける「立法者」問題に焦点を当てて描き出す。「立法者」問題とは、理想的な政治体の「(再)創設」という政治的行為の問題であり、三人の思想家において、その政治的行為の理想は、社会のあり方や政治体構成員の意志に基づく、自律的=再帰的な統治の回路を創出することに置かれた。まただからこそ、「立法者」は、成功の暁には自ら消滅すべき逆説的存在とされる。この逆説が示唆するのは、政治的自律の理想の実現の困難であり、その困難こそが、ルソーの「公民宗教」問題や、ディドロの「革命の連続」としての「歴史」の概念には見てとれるのである。
著者
山根 裕美
出版者
京都大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2021-04-01

本研究の目的は、保全生態学と社会学の異分野融合的な手法を用いて、野生動物であるヒョウと人との関係を解明し、共生の方策を追求していく。そのためには、ケニアのバリンゴ県において、1)GPS首輪を野生のヒョウに装着を試み、センサーカメラを設置。個体識別し、生息域の推定を行う。2)ヒョウの複数個体間の生息密度や家畜のいる集落との距離から、ヒョウの社会性や環境適応性を明らかにする。3)地域住民に対する参与観察や半構造的インタビューを通じて住民感情を把握し、その関係性からヒョウの生態調査結果との整合性を検証する。調査地は人々の生活が密集しておらず、野生動物の生息についてもデータが乏しい地域である。
著者
川本 弘一 江口 英利 西田 尚弘 今野 雅允 小関 準 石井 秀始 森 正樹 広津 崇亮 杉本 昌弘
出版者
大阪大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2016-04-01

膵癌の予後は極めて不良であり、新規診断・治療法の開発が急務となっている。本研究では野生型線虫の嗅覚を応用したN-NOSE法を用いることで癌の匂いを科学的に検討し線虫が膵腫瘍発生を組織学的に確認された膵腫瘍自然発生モデルマウスの尿に対してもヒト同様の誘引行動を呈することを示した。線虫の行動をげっ歯類で再現できたことの重要性は、これまではヒトの臨床検体を用いていたため、サンプルの多様性も影響し、原因物質の同定までは至らなかった可能性も示唆されるが、このマウスモデルを利用することで、走行性を惹起する物質の同定が可能となることが期待され、N-NOSE法が膵癌の早期診断の一助になる可能性も示唆された。
著者
栗栖 薫子 三浦 聡 小川 裕子 政所 大輔 赤星 聖 宇治 梓紗
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2023-04-01

近年、グロ―バル・ガバナンス(GG)構造の複雑性が増している。国連気候変動枠組み条約の下で排出権取引に関わる様々な実施枠組みが普及し、企業のサステナビリティやESG投資に関わる取組が林立し、持続可能な開発目標(SDGs)の実施に関わる取組は全体像の把握が難しいほどである。この構造の複雑性は、①問題領域の複雑化、②ガバナンスの手段の多様化、③アクターの多様化(権威の多元化)という3次元での「密度」の増加によって特色づけられる。本研究はSDGsにかかわる主要な問題領域(気候変動、人道、難民、保健等)を事例として「GGの複雑化とアクターとの間にどのような相互作用が見られるか」という問いに取り組む。
著者
鈴木 俊貴
出版者
京都大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

本研究では,鳥類を対象とし,社会要因がコミュニケーションを複雑に進化させる要因となるかどうか検証にした。シジュウカラ科鳥類(以下,カラ類)は冬季に同種・他種とともに群れ(混群)を形成する。各個体の餌台への訪問の時系列データの記録や音声の録音を通して,複雑な群れ社会を形成する種や多くの鳥類種とともに群れをつくる種ほど,個体の発する音声が複雑になることが明らかになった。また,新たな展開として,他種との社会的結束が強い種においては,他種の音声とその意味の関連学習など,高度な認知能力も確認された。これらの結果は,社会性が認知能力の進化要因になるという社会脳仮説を支持している。
著者
久岡 加枝
出版者
国立民族学博物館
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2021-11-01

近年のロシアでは、アディゲ人をはじめとするコーカサス系諸民族の歌謡や舞踊が、若い世代の間で大衆的な人気を持つが、アディゲ人の歌謡や舞踊の担い手の活動を考察する本研究からは、ロシアにおけるマイノリティのアイデンティティと結びついた表演活動のあり方だけでなく、現代ロシアの若者文化の動向を明らかにすることが可能である。
著者
菊地 一樹
出版者
明治大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2019-04-01

法益侵害の発生が被害者(法益主体)の同意に基づく場合に、犯罪の成立は否定されるのが原則である。その根拠は、自ら法益処分を決意した被害者の「自律」の尊重に求められているが、その根拠と限界は十分明らかにされていない。本研究は、被害者の「自律」が犯罪の成否に与える影響を、具体的な問題領域の横断的な検討を通じて、理論的・統合的に解明し、法益主体の「自律」的な活動を過不足なく実現するための刑法理論を打ち立てようとするものである。
著者
川西 秀明
出版者
岡山大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2016

【研究の目的】バシリキシマブは腎移植における急性拒絶反応の抑制に対し適応を持つ薬剤であり、免疫抑制剤であるカルシニューリンインヒビターを減量しながら急性拒絶反応の予防が可能であるといわれている。しかしながら、肺移植におけるバシリキシマブの使用はその症例が少ないことから有効性や有害事象に関する報告はほとんどない。カルシニューリニンヒビターの有害事象として腎機能障害が知られているが、バシリキシマブ投与によりカルシニューリンインヒビターの血中濃度を低く維持することができれば肺移植後の腎機能障害を軽減できる可能性がある。本研究では、バシリキシマブ投与により急性拒絶反応や感染症のリスクを上げることなくカルシニューリンインヒビターの血中濃度を低く保ち、さらに腎機能障害を軽減することができるか検討を行った。【研究方法】平成21年1月から平成27年12月に当院にて肺移植手術を受け、カルシニューリンインヒビターとしてタクロリムスを投与された患者を対象とした。対象をバシリキシマブ投与群と非投与群に分け、バシリキシマブ投与前後の腎機能、タクロリムスの血中濃度、急性拒絶反応の発症リスクおよび感染症のリスクについてレトロスペクティブに検討を行った。【研究結果】肺移植後8週までのタクロリムスの平均血中濃度はバシリキシマブ投与群で有意に低い結果となった。術後8週のクレアチニン値はバシリキシマブ非投与群において有意な上昇が認められた。急性拒絶反応、サイトメガロウイルス感染およびアスペルギルス感染は両群に有意差は認められなかった。これらの結果より、肺移植において、バシリキシマブ投与は感染症および急性拒絶反応のリスクを上げることなくタクロリムスの血中濃度を低く保つことができることが明らかとなった。そして、タクロリムスの血中濃度を低く維持できることが腎機能障害のリスク軽減につながると考えられた。
著者
祐野 恵
出版者
京都大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2022-04-01

本研究の目的は、日本の地方政治における議会内過程に焦点をあて、議会による地方官僚の統制において一般質問が果たす機能的な役割を明らかにすることである。そのために、中核市にある12議会を対象とし、一般質問議事録のコーディングにより構築したデータセットを用いて、先行研究から導出した理論枠組みによる仮説を検証する。本研究は、大統領制における議会の官僚統制を視角に置く研究の系譜に位置付けられるとともに、実証研究の枠組みから実務的に関心の高い地方議会の議会改革を捉える内容である。
著者
小松澤 均 松尾 美樹 柴 秀樹 岩野 英知 比地岡 浩志
出版者
広島大学
雑誌
挑戦的研究(萌芽)
巻号頁・発行日
2020-07-30

本研究の目的は、う蝕原因菌特異的に抗菌効果を発揮するバクテリオファージ(ファージ)を同定し、ファージセラピーによる新規う蝕予防法を提唱することである。自然界には多くのファージが存在しており、ファージは菌種特異性が高く、ファージが感染した細菌は死滅する。そこで、本研究では、う蝕原因菌を特異的に殺菌できるファージを唾液やデンタルプラークから同定・分離し、性状解析を行う。口腔感染症の予防・治療に新たな治療法を提案することで、これまでの感染症治療への新規治療法の開発という大きなパラダイム・シフトをもたらすのみならず、全身疾患への予防も視野に入れており、挑戦的かつ発展の可能性のある研究である。