著者
谷口 雄太
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2011

本研究の目的は、中世後期の武家社会において足利氏(京都将軍家・関東公方家とその御連枝)に次ぐ「権威」を有したにも関わらず、従来ほとんど検討されることのなかった足利氏御一家(吉良氏・石橋氏・渋川氏の三氏。以下、御一家と表記)について、徹底した調査・分析を行なうことにあった。2012年度はその第二年度目であった。そこで得られた成果は以下の通りである。第一に、御一家研究の「各論」にあたるものとして、吉良氏に関する研究を、複数本、論文としてまとめた。そのうち一つは『静岡県地域史研究』2号(2012年9月)に掲載された。第二に、同じく御一家研究の「各論」にあたるものとして、石橋氏に関する研究を、複数本、論文としてまとめた。そのうち一つは『古文書研究』74号(2012年11月)に、もう一つは『中世政治社会論叢』(2013年3月)にそれぞれ掲載された。また、同じく御一家研究の「各論」にあたるものとして、渋川氏に関する研究に、「比較」にあたるものとして、斯波氏に関する研究にそれぞれ着手し、史料や先行研究の収集・分析をほぼ完了させた。第三に、関東足利氏研究会(2012年6月16日)・千葉歴史学会(7月21日)・静岡県地域史研究会(10月27日)においてそれぞれ「『関東足利氏の御一家』ノート」・「『足利一門』再考」・「足利一門再考」として口頭発表した。そこでは(1)「御一家」という史料用語が「足利御三家」・「足利一門」という二つの異なる意味合いを持っていたことを明らかにした上で、(2)足利一門とは誰のことか、(3)足利一門であるとはどういうことか、(4)足利一門になるとはどういうことか、(5)足利的秩序が崩壊したのはなぜか、などについての検証を行った。また、御一家が准ずるところの足利氏御連枝についても、関東公方家の兄弟たちを中心に検討を行い、それについては黒田基樹編『足利基氏とその時代』(戎光祥出版、2013年3月)に「足利基氏の妻と子女」として収められた。
著者
関 眞佐子
出版者
関西大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2017-04-01

Segre-Silberberg効果は,流路内層流に浮遊する粒子が慣性に起因する揚力を受けることにより,流路下流の断面内で特定の位置に集中して流れる現象である.本研究は,流体力学に基づき,流路内流れに浮遊する粒子の挙動と下流断面における粒子の分布を様々な条件において実験および数値シミュレーションにより解析した.得られた結果から,流路断面内における粒子の集中位置と集中パターンを詳細に調べ,粒子集中現象の決定因子を探索するとともに機序を検討した.
著者
佐川 公矯
出版者
久留米大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

有明海周辺はビブリオ・バルニフィカス感染症の多発地域である。我々は2001年の1年間、有明海のビブリオ・バルニフィカスの生息状態について疫学調査を行い、分離されたビブリオ・バルニフィカスの菌株について、細菌学的、および遺伝子学的解析を行った。2001年の1月より毎月2回、大潮の日に、有明海の3定点で海水と干潟汚泥を採取し、ビブリオ・バルニフィカスを分離同定し、最確数を算定した。さらに、柳川市沖ノ端漁港の特定の鮮魚店より有明海産の魚介類を購入し、その内臓より同様の検索を行った。海水からのビブリオ・バルニフィカスの最確数は、1月から5月までは数は少ないが検出され、6月より徐々に増加し、7月、8月、9月にピークに達した。そして、10月から徐々に減少したが、最確数が0の月はなかった。干潟汚泥からも、年間を通して分離同定された。また、調査したほとんどの魚介類からビブリオ・バルニフィカスが分離同定された。季節的には夏期に分離される数が多かったが、夏期以外でも分離された。分離されたビブリオ・バルニフィカス菌株の溶血活性は、夏期に分離された菌株ではすべて溶血活性が高く、夏期以外の分離株は溶血活性の高い株と低い株とが半々であった。87菌株について薬剤感受性を調べたところ、CAZ, CP, MINO, IPM, OFLXが良好な感受性を示した。パルスフィールド・ゲル電気泳動法による遺伝子解析を行ったが、酵素活性が高いためか、バンドがスメア化し判読不能であった。これに、チオ尿素を50マイクロモル加えると鮮明なバンドパターンが得られた。なお、特有のバンドパターンは認められなかった。有明海には夏期だけではなく、夏期以外にもビブリオ・バルニフィカスは生息していることが確認できた。また、溶血活性の高いものと低いものとの2種類が存在し、溶血活性の高いものは、数の増減はあるものの年間を通して生息していることが確かめられた。この事実は、慢性肝疾患、あるいは免疫不全状態の人は年間を通して、有明海産の生の魚介類の摂食を控えるべきであることを示していると考えられた。
著者
藤村 幹 冨永 悌二 新妻 邦泰 麦倉 俊司 坂田 洋之
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2020-04-01

もやもや病は小児や若年成人に多い原因不明の脳血管障害であり、基礎病態として病的異常血管網発達あるいは代償的な側副血行路を含めた血管新生能を内在する特有の疾患である。本研究は、もやもや病における内因性多能性幹細胞に着目し、血行再建術後の血管新生における多能性幹細胞の役割について検証する。さらに、もやもや病に対して日常診療で汎用されている抗血小板剤シロスタゾールを用いて内因性幹細胞由来の血管新生を誘導することにより血行再建術の効果を促進するという新しい試みである。細胞移植という手段によらず間接血行再建術からの血管新生を誘導する手法の開発により、もやもや病の治療成績の飛躍的な向上が期待できる。
著者
佐藤 匡 瀬山 邦明 田島 健
出版者
順天堂大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2020-04-01

慢性閉塞性肺疾患(COPD)は、タバコ煙を主とする有害物質を長期に吸入曝露することで生じる呼吸器疾患である。一方、近年本邦において急速に普及している加熱式タバコの毒性に関する評価は定まっておらず科学的実証の社会的ニーズが高まっている。本研究では、従来のタバコ煙に対する肺傷害の解析システムを用いて、加熱式タバコと従来のタバコ煙曝露との比較検討を行い、長期的な加熱式タバコ使用の呼吸器系に与える影響についての新しいエビデンスを創生することを目的とする。
著者
西林 仁昭
出版者
東京大学
雑誌
挑戦的研究(萌芽)
巻号頁・発行日
2018-06-29

窒素ガスと水からの触媒的アンモニア生成反応が極めて効率的に進行することを明らかにした。この反応ではSmI2を還元剤として利用する必要があった。電気化学反応を適用し、反応に使用したSmI2の使用量を低減することができれば、実用化が可能になる。SmI3からSmI2への還元反応を検討したところ、イオン性液体を電解質として存在させた電気化学的還元手法を用いることで、SmI2が82%収率および81%ファラデー効率で得られることを明らかにした。本手法でSmI3から得られたSmI2を還元剤として利用した触媒的アンモニア生成反応を検討したところ、触媒当たり最高48当量のアンモニアが生成することが確認できた。
著者
島 正子
出版者
国立科学博物館
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1987

昨年度本研究費で改良した本館既設の質量分析計を用いて、E3に属する頑火輝石球粒隕石、やまと6901隕石と清鎮隕石中に存在する長寿命放射性核種、^<87>Rb,^<87>Srを測定した。隕石をその構成鉱物成分に分けて各成分中の主成分元素を定量すると共に、上記^<87>Srを質量分析したところ、両隕石とも、幾種類か存在する珪酸塩鉱物から抽出した上記核種はすべて2×10^9年という年代を示す直接上にくるのに対して、硫化鉱物から抽出したものは親核種である^<87>Rbが娘核種である^<87>Srに対して極端に少ない方向に直接から大きく外れること、これら各点のデ-タすべてを足し合わせたもの、隕石全体を分離することなく測定したものは、共に普通の球粒隕石の年代である4.5×10^9年を示す線上にくることを示した。現在、他の長寿命放射性核種対である^<147>Sm-^<143>Ndの測定を行い、両結果を合わせてこの隕石の成因に関する結論を出したいと考えている。1984年青森県に落下した青森隕石中の宇宙線生成放射性核種の測定は、当時まだ本館に低バックグラウンド放射能測定装置が設置されていなかったので、試料を理化学研究所に持ち込んで測定してもらった。その結果の一部は宇宙線生成ヘリウムやネオンなどの安定希ガスのデ-タと大きな不一致を示し、どうにも納得できなかった。そこで一昨年度本研究費で整備した微量放射能測定装置を用いて測定し直した。その結果上記不一致は解消されたので、現在研究報告をまとめているところである。これまで続けていた、1986年に香川県落下した国分寺市隕石中の宇宙線生成放射性核種の測定、及び山形大学の高岡宣雄教授と西ドイツマックスプランク研究所のL.Shultz教授に測定を依頼していた宇宙線生成希ガスの測定はすべて完了したので、青森隕石の報告書に引続き、報告書をまとめるために準備をしている。
著者
土畑 さやか
出版者
京都大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2015-04-01

一回繁殖型とされてきたヤマジノギク種群(含ツツザキヤマジノギク)・近縁種カワラノギクにおいて、開花株の花茎基部に形成されたロゼット葉(開花株ロゼット)を見出した。これを介した多回繁殖および撹乱環境への適応の可能性を明らかにするために、開花株ロゼットの頻度調査・集団間比較、多回繁殖の有無の検証を行った。結果、撹乱環境に生育する集団で開花株ロゼットを介した多回繁殖が実際に生じていることが判明した。また、ヤマジノギク種群・近縁種の遺伝的関係を明らかにするために、ddRAD-seq法によって得られたSNPsを用いて集団遺伝学的解析を行った。結果、従来の形態分類と遺伝的近縁さは一致しないことが示された。
著者
谷川 亘 山本 裕二 廣瀬 丈洋 山崎 新太郎 井尻 暁 佐々木 蘭貞 木村 淳
出版者
国立研究開発法人海洋研究開発機構
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2022-04-01

1888年磐梯山噴火により磐梯山の北側に湖(桧原湖)が形成し、それに伴い桧原集落(桧原宿跡)が被災し水没した。桧原宿跡は旧宿場町のため近世・近代の文化を記録する『水中文化遺産』であり、また火山災害の痕跡を記録する『災害遺跡』としての価値を持つ。そこで、桧原宿跡の水中遺跡調査を通じて、江戸・明治の産業・文化・物流の理解、山体崩壊に伴い約500名もの住民が亡くなった災害のメカニズム、せき止め湖の形成過程、および水没により高台移転を余儀なくされた避難の過程という自然災害の総合的な理解につなげる。
著者
松岡 美里
出版者
帝京大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2021-04-01

This project reveals the role of think tanks and other involving actors in forming policy recommendations that may exert their political influences informally on foreign and security policymaking. It closely examines think tanks' discursive contribution for shaping foreign and security policymaking.
著者
後藤 知子
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

うつ病患者では、血清亜鉛濃度の低下、脳内セロトニン分泌の低下などが臨床報告されてきた。そこで、成長期からの潜在的亜鉛欠乏が精神発達・気分障害に及ぼす影響を明らかにするためラットを用いて検討した。睡眠時(明期)に対する活動時(暗期)自発行動量は、亜鉛欠乏食給餌12日目で有意に低下し、以降は低値を維持し、うつ様行動の可能性が考えらえれた。実験食給餌0~4日目のラットで、視床下部外側野におけるセロトニン・ノルエピネフリン放出量をマイクロダイアリシス法にて追跡した。その結果、亜鉛欠乏食給餌4日目の高カリウム刺激時におけるセロトニン・ノルエピネフリン放出量が低下傾向を示した。
著者
矢野 博之
出版者
大分大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2018-04-01

我々は、放射線誘発線維症(RIF)に関する遺伝子発現メカニズムを解析するために、細胞外マトリックスの主成分であるI型コラーゲンの転写レベルでの発現調整を調べてきた。また、非コードRNAの一種であるmiRNAについて、miR-29及びmiR-26がRIFにおける転写後の遺伝子発現調節に関与することを報告した。転写後のRIF発現メカニズムについてさらに調べるために、本研究は、miRNAと競合して転写後の遺伝子発現調節に関与するlncRNAに着目し、昨年度までにRIFに関与するlncRNAとして、lncRNA-Xを見出した。今年度は、lncRNA-Xと相互作用しうるmiRNAを見出し、RIFにおけるmiRNA及びlncRNA-Xの機能的役割について調べ、以下の結論を得た。in silico解析により、lncRNAと結合が予測されるmiRNAとしてmiR-Aを見出した。また、lncRNA-X及びmiR-Aが標的としうる遺伝子を調べた結果、抑制型smadであるSmad7を見出し、ルシフェラーゼアッセイの結果、Smad7の3'UTR配列において、miR-A及びlncRNA-Xが結合することが分かった。さらに、miR-Aを過剰発現させた場合、lncRNA-X及びSmad7の発現が抑制された一方、I型コラーゲンの発現が上昇した。これらの結果により、lncRNA-XがmiR-Aと相互作用してSmad7の発現を調整し、放射線によるI型コラーゲン発現増加に関与することが示唆される。
著者
三浦 浩治 佐々木 成朗
出版者
愛知教育大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

これまで知られていなかった超潤滑(超低摩擦)状態が、特徴的な条件・環境のもとで、観測されつつある。これらの摩擦、潤滑の素過程には、原子間結合の破断・生成が寄与するナノニュートンのオーダーから水素結合等が寄与するピコニュートンオーダーの力が関わっている。特に我々によって発見されたフラーレン分子をグラファイトに内包する炭素系超潤滑物質においては、従来の摩擦力測定装置の測定限界をこえるピコニュートンの力が働いている。まさに、これはブラウン運動の領域の熱揺らぎ力に匹敵する。したがって、超潤滑機構の詳細は、ピコニュートンの測定精度をもつ摩擦実験によって明らかになることが期待される。本研究では炭素系超潤滑物質の超潤滑機構を高精度の摩擦力測定により次に示す2点から系統的に調べた。(1) 荷重に対する摩擦力の測定と解析。(2) 速度に対する摩擦力の測定と解析。まず、荷重が100nN以下のとき、摩擦力は実験誤差内でほぼゼロを示す。荷重が100nNまで増加すると、摩擦力像に明確なC_<60>の稠密構造を反映した周期像が現れると同時に有限な摩擦力が出現する。この結果は、荷重の増加によって、グラファイト表面による圧縮で内在するC_<60>分子の動作が凍結されるかC_<60>分子とグラフェン間の化学結合の形成が起こることを示唆している。すなわち、このことは、C_<60>分子の回転や揺らぎの流動性が固体潤滑における超低摩擦発現に極めて重要であることを意味している。さらに、摩擦力が走査方向依存性を示さなかったことより、C_<60>単分子層の多層効果が現れている。走査速度が数10μm/secまでは、摩擦力においては変化がなかったため、この速度内では、超低摩擦が維持されていることを示唆している。
著者
横井 功
出版者
岡山大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1993

頭部外傷後に発症するけいれん発作やてんかんの成因には活性酸素種が関与していることが示唆されている。すなわち、頭部外傷の際に脳内に出血した赤血球より遊離したヘモグロビン及び鉄イオンを会して発生した活性酸素種が神経細胞膜の脂質を過酸化させるために神経細胞は機能障害を起し、外傷性てんかん発症の重要なリスクファクターとされる早期けいれんが発現し、外傷性てんかん焦点が形成されるものと考えられている。このために、発生した活性酸素を抗酸化剤により消去することにより早期けいれん発現を抑えると、外傷性てんかん発症は予防され得ることが示唆される。本研究においてはラット大脳皮質感覚運動領のに塩化第二鉄を投与して作成した外傷性てんかんの実験モデルを使用して下記の成果をあげた。(1)エピガロカテキン類やEPCなどの抗酸化剤を鉄イオン投与後に投与すると、鉄イオンにより誘発される発作脳波や尾状核内でのドーパミン放出量の増加、あるいはメチルグアニジンなどの内因性けいれん誘発物質量の増加、などの変化を予防できる。(2)活性酸素を消去するアデノシンやその構造類似物質は鉄イオンの誘発する発作脳波の発現を予防する。(3)一酸化窒素(NO)及びその合成酵素(NOS)活性の測定法を開発し、ラット脳に鉄イオンを注入するとNOS活性が低下することを明らかにした。けいれん発現にNOは抑制性に働くことにより、NOS活性低下が外傷性てんかん発症に関与している可能性が示唆された。以上のごとく、頭部外傷部位で発生する活性酸素種を抗酸化剤により消去すれば、外傷性てんかん発症は抑えうることを明らかにした。活性酸素種は頭部外傷のみならず、脳内血腫や脳梗塞時などにも脳内で生成され、脳浮腫やてんかん焦点などの形成に関与している。このため、本研究は外傷性てんかん発症予防の道を明らかにしたばかりでなく、脳内血腫や脳梗塞時などの脳浮腫の予防や治療を考える一助ともなる。
著者
浅香 卓哉
出版者
北海道大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2017-04-01

近年、骨吸収抑制薬関連顎骨壊死(ARONJ)に対する治療方針について、様々な検討が実施されている。多血小板フィブリンを用いたARONJの外科的治療を検討したが、再生医療等の法律の影響にて達成困難となった。当科でのARONJ発症率は従来の報告よりも高い傾向にあった。抜歯に伴う休薬は減少傾向にあり、休薬によるARONJ予防効果は認められなかった。ARONJに対する治療法に関しては、悪性腫瘍由来よりも骨粗鬆症由来のARONJの治癒率が高く、保存療法と比較して外科療法の治癒率が高い傾向にあった。FDG―PETによる比較では、ARONJは他の骨髄炎と比較して高い集積を認め、炎症の活動性亢進が示された。
著者
澤田 惠介
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

複雑形状を有する境界層埋没型ボルテックスジェネレーター(SVG)周りの圧縮性粘性流れ場解析のために,不連続ガレルキン法に基づく非構造格子法を構築した。既存の風洞試験結果の再現によって解析手法の検証を行ったのちに,ベーン型や2段直列のダブレット型とウィッシュボーン型SVGの解析を行ない,SVGで生成される縦渦の融合や渦核位置について検討した。2段直列型のSVGでは,初段で形成された縦渦が後段で生成された渦と融合することによって渦度を保つとともに,後段のSVGを乗り越える際に渦核位置が壁面からリフトアップすることによって壁面近くの強い散逸領域を逃れ,縦渦の効果が下流側に及ぶことを見出した。
著者
光石 鳴巳
出版者
奈良県立橿原考古学研究所
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2002

今年度は、本州西部における縄文時代草創期遺跡の地名表の作成と、前年度までにおこなった愛媛県上黒岩岩陰遺跡出土遺物の資料化作業をとりまとめた。また、北海道における草創期資料の実査をおこない、長野県神子柴遺跡出土資料を検討する機会を得た。縄文時代草創期遺跡ならびに遺物出土地点のデータベース作成については、最終的に本州西半部の21府県を対象とし、978ヵ所を収録した。対象府県は北陸地方(富山県26ヵ所、石川県14ヵ所、福井県12ヵ所)、東海地方西部(岐阜県170ヵ所、愛知県79ヵ所、三重県114ヵ所)、近畿地方(滋賀県36ヵ所、京都府35ヵ所、大阪府110ヵ所、兵庫県100ヵ所、奈良県39ヵ所、和歌山県27ヵ所)、中国地方(鳥取県37ヵ所、島根県17ヵ所、岡山県26ヵ所、広島県44ヵ所、山口県8ヵ所)、四国地方(徳島県13ヵ所、香川県20ヵ所、愛媛県31ヵ所、高知県20ヵ所)である。この一覧表については、『本州西半部における縄文時代草創期の様相』と題する冊子として編集し、本研究の経費の一部によって印刷、刊行した。愛媛県上黒岩岩陰遺跡出土遺物については、実測図の製図をおこない、所見を加えて「上黒岩岩陰遺跡とその出土遺物についての覚書-国立歴史民俗博物館所蔵資料の紹介を中心に-」と題した小文にとりまとめ、『古代文化』誌に投稿した。現時点で掲載時期は未定だが、すでに採用されることが内定している。
著者
木村 洋太
出版者
京都大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2007

私たちは,円滑なコミュニケーションを行うために,他者の感情を適切に理解し,それに適した表出を相手に返すという行為をすることができる.これは,私たちの感情システムが知覚・認知という側面と,身体を利用した表出という運動的な側面を共に扱っているからである.しかしながら,従来の表情研究は知覚・認知の側面,表出の側面をそれぞれ単独に検討することが多く,両者の相互機能については見過ごされることが多かった.そこで本研究では,自己の感情表出という行為の側面と,他者の感情認知という側面がどのように結びつき,相互作用しているのかについて検討した.本年度は具体的に,自己の表情と他者の表情が一致するかしないかという要因,またその表出間の「間」(タイミング)という要因が,他者の表情を知覚する際の注意の配分にどのように影響をするかを検討した。このことについて調べるため,擬似的なコミュニケーション要素によってタイミングや表情の一致性を変化させた場合に,同じ表情でも注意の停留の仕方が異なるかどうか検討した。先行研究によれば,ある種の表情(e.g.脅威表情;怒り・恐怖)にさらされると私たちの注意はその表情に長く焦点があてられる.しかしながら,表情に対する注意の解放は,注意の解放が物理的な表情の性質だけでなく,表情のやり取りといった要素によっても変容することがわかった。たとえば,同じ怒り表情であっても,自分が笑顔をした応答として怒り表情を見る場合は,遅いタイミングの時に注意の解放が遅れ,自分の怒りに対する応答の場合には,早いタイミングでの応答で注意の解放が遅れた。この研究により,我々の視覚的注意は,刺激の物理的特性によって変わるだけでなく,コミュニケーションといった動的な情報をもとに変化することがわかった。
著者
枇榔 貞利 宮田 昌明 鄭 忠和
出版者
鹿児島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

我々は、サウナ浴を用いた温熱療法が臨床的に生活習慣病(高血圧症、糖尿病、高脂血症等)の患者の低下した血管内皮機能を改善させること、また、ハムスターを用いた動物実験において内皮型一酸化窒素合成酵素(eNOS)を遺伝子・蛋白レベルで増加させることを明らかにした。そこで本研究の目的は、温熱療法の血管内皮機能改善効果が動脈硬化病変の発生・進展を抑制しうるかを検討することである。動脈硬化発症モデル動物としてapoproteinEのノックアウトマウスを用いた。まず、小動物用乾式サウナ装置を用いて、深部体温が約1度上昇する温度を設定するための予備実験を行い、41度15分間、その後34度で20分間のサウナ浴が至適条件であることを確認した。apoproteinEノックアウトマウスでは、12週令においては大動脈基部において動脈硬化巣が確認できるので6週令のapoproteinEノックアウトマウスに対してサウナ浴の効果を検討した。6週令のapoproteinEノックアウトマウス20匹を2群に分け、1群に対し上記の条件で1日1回、1週間に5回のサウナ浴を施行した。コントロール群に対しては、サウナ群と同じ時間だけスイッチを切った室温のサウナ装置に同様の期間入れることを行った。10週間のサウナ浴後に、麻酔下にsacrificeし、大動脈を摘出し、その標本に対し脂肪染色を行い、顕微鏡下に大動脈基部の動脈硬化巣の面積を計測し、両群間での比較を行ったところ、サウナ群では0.07±0.03mm^2であり、コントロール群では0.22±0.14mm^2と減少傾向が認められた。すなわち、アポEノックアウトマウスにおいて10週間の温熱療法が、大動脈の動脈硬化形成を抑制したことは、ヒトにおいても温熱療法が動脈硬化性疾患の発生・進展を抑制する可能性を示唆している。
著者
石黒 直隆 柳井 徳磨
出版者
岐阜大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2012-04-01

産卵系の鶏でのアミロイド症の発生は、細菌の不活化ワクチン接種により誘発される炎症刺激が原因であることが知られている。今回、多種類のワクチンが接種さえた発育鶏の大規模養鶏場で鶏アミロイド症を確認した。発症した鶏を病理解剖した処、アミロイドの沈着が観察された。特に、サルモネラの不活化ワクチンを接種した鶏でアミロイド症の潜在的病変が存在することを確認した。鶏群間でのアミロイド症の伝播を知る目的で、皮下および経口的に鶏由来のAAアミロイドを投与したところ、効率にアミロイド症が鶏群間で伝播することを確認した。鶏アミロイド症はワクチン接種により誘発され、鶏群間で伝播することが明らかとなった。