著者
冨菜 雄介
出版者
北海道大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2021-04-01

神経回路を構成するニューロンが複数の行動や知覚において機能する場合、これを 多機能性ニューロン(multifunctional neuron)と呼ぶ。本研究では「生理学的知見と解剖学的知見の“直接的”な融合」という視点に立ち、多機能性神経回路の機能 を支えるメカニズムを生物学的に理解を目指す。そのため、これまでに取得した大規模なヒル神経系の機能的コネクトームデータをモデルとして、 多機能性神経回路網が多様な行動を生成するための神経基盤の解明を目指す。具体的には、「多機能性ニュ ーロン群は各行動に対応したシナプス電位統合部位を有する」という仮説を検証する。
著者
南角 吉彦 橋本 佳 徳田 恵一 大浦 圭一郎
出版者
名古屋工業大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2019-04-01

本研究では従来の隠れマルコフモデルに基づく音声合成と近年の深層学習に基づくEnd-to-End音声合成を融合した次世代音声合成技術の開発を目的とする。「統計的生成モデルに基づくニューラルネットワークの構造化」および「音声合成のための中間的特徴を利用した半教師有り学習の枠組み」という2つのアイデアを核として、現状の深層学習に基づくEnd-to-End音声合成における3つの問題点、1.従来手法に比べ学習に大量のデータが必要、2.直感的に理解しやすい音声特徴に基づいた合成音声のコントロールが困難、3.入力と出力を繋ぐ中間的な特徴表現や不完全なデータを利用する枠組みが未確立、の解決を目指す。
著者
白石 典之 鈴木 宏節 篠田 雅人 覚張 隆史 三宅 俊彦
出版者
新潟大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2017-04-01

本研究はモンゴル高原に興亡した歴代遊牧王朝の中で、史料に名を留めても、その実態が不明であった時代(たとえば、鮮卑、柔然、第1突厥、阻卜など)を「空白期」と位置づけ、その時代を実証的かつ学際的に解明することを目的としている。研究組織は考古学を中心とし、文献史学、気候学、遺伝生物学に参画した超域的になっている。令和元(2019)年度は引き続き、モンゴル科学アカデミー考古学研究所と共同で、モンゴル国ヘンティー県ゴルバンドブ遺跡で発掘調査を行った。ここには3基の墳丘が残されているが、そのうち1号墳丘の発掘を行った。1号墳丘では2016年と17年に先行発掘が行われ、6基の「空白期」の墓が見つかっている。今年度は7号墓と8号墓を検出した。7号墓は第1突厥期の火葬墓で、きわめて珍しい発見である。8号墓は初期モンゴル帝国期の幼児墓で、ガラス玉などの副葬品に恵まれていた。試料の一部は日本に将来し、理化学的分析に付した。並行して同じくヘンティー県にて同県博物館とともに、突厥時代の石碑調査も行い、新たな石碑遺跡を発見した。成果は博物館と共同で発表する予定である。金沢大学および淑徳大学にて、メンバーによる研究集会を開催し、研究の現状と問題点を整理した。また、最終成果のまとめ方についても議論した。新型コロナ感染症の影響で、予定していた現地調査1件ができなかったため、研究期間を翌年に延長し、それを補う試料の理化学的分析と論文化の作業を行った。なお、本研究に係る年度内の研究成果としては、研究発表2本、研究ノート1本がある。
著者
林 和俊
出版者
高知医科大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1996

抗性腺作用を有するメラトニンと思春期発来との関連が注目されているが未だ明確ではない。我々は、メラトニンのゴナドトロピン分泌抑制作用は、Gn-RHのpulse generatorに作用し、LHpulseの発現を減弱させる機序に基づくことを明らかにしてきた。また、松果体のメラトニン産生能は、初回排卵後、排卵周期の確立過程で減少すること、さらに、このメラトニンの産生能動態に対して卵巣より分泌の増量がみられるエストロゲンが強く関与していることを明らかにしてきた。思春期のメラトニン産生能に及ぼすエストロゲンの作用機序を明らかにするためにラットを用いて卵巣摘除モデル、エストロゲン負荷モデルを作製し、メラトニン産生酵素である松果体内N-acetyltransferase(NAT)とHydroxyindole-O-metyltransferase(HIOMT)に注目し、検討した。NAT活性は、腟開口期の6週には有意に増量し、排卵周期確立過程の8週では減少、以後、同一レベルで推移し、メラトニンと全く同一の変動パターンを示した。一方、HIOMT活性は、4週より6週にむけて著増し、12週まで漸増する変動パターンであった。初回排卵が認められる6週に卵巣摘除を行うと、NAT活性は8週での減少は見られず、逆に有意の増加を示した。一方、HIOMT活性は正常群との差は見られなかった。6週に卵巣摘除し、エストロゲン(E2 benzoate)を連日皮下投与した群では、NAT活性は0.1μg投与群では、卵巣摘除で認められた増量を有意に抑制し、正常群と同一のパターンを示した。一方、HIOMT活性は0.1μg投与では正常群と同一のパターンを示した。1.0μg投与群では両酵素活性ともに正常群より有意に低値であった。以上の結果より、思春期から性成熟期にかけてのメラトニン産生能は、卵巣より分泌されるエストロゲンが主にNAT活性を強く規制することで調節されていることが示唆された。また、エストロゲンのメラトニン産生抑制作用はNAT、HIOMT活性を抑制することに基づくことが示されたが、その感受性には両酵素間で明らかな差があることも示唆された。
著者
糸川 嘉則 田沼 悟 小林 昭夫 森井 浩世 矢野 秀雄 五島 孜郎 KIMURA Mieko YOSHIDA Masahiko
出版者
京都大学
雑誌
総合研究(A)
巻号頁・発行日
1986

マグネシウムの必要性とその作用を解明するため実態調査, 動物実験, 臨床的研究を実施した. 実態調査においては, 種々な階層を対象にして聞き取りによる食事調査を行い, マグネシウム摂取量を算出した. その結果1日のマグネシウム摂取量は155〜300mgで, 出納試験から推定されるマグネシウム必要量を下回る摂取状況であることが判明した. 小動物による実験ではリン摂取量の増加により発生する異常がマグネシウム投与により抑制される事, リン欠乏食にすると高マグネシウム尿が発生するが, 腎不全状態にしてもマグネシウムの尿細管での再吸収抑制が機能している事, 脳卒中易発症ラットにマグネシウムを負荷すると尿中マグネシウムとカルシウムの排泄量が増加し, 血圧の上昇が軽度抑制される事が解明された. めん羊を用いた研究では甲状腺, 副甲状腺摘出めん羊では尿中マグネシウム排泄量が多くなり, 低マグネシウム血症を呈し, 絶食をさせても尿中マグネシウム排泄の増加は続き血中マグネシウム濃度は急激に低下した. 又, マグネシウムの投与による血中のマグネシウムの上昇が大きく, 副甲状腺ホルモンは腎臓でのマグネシウム再吸収を調節し, カルシトニンは血中マグネシウムの上昇を押える作用がある事が示唆された. 臨床的な研究ではリンパ球内マグネシウム濃度を指標とした結果, 超未熟児はマグネシウム欠乏状態にある事が解明され, マグネシウム含有輸液により改善する事が示された. 一般人では初老期からマグネシウム欠乏傾向になる. 小児ネフローゼ症候群では低マグネシウム血症を呈し, ステロイド療法を実施する事により正常化する事が解明された. 腎不全患者では高マグネシウム血症を呈するが, この病態は副甲状腺亢進症を抑制する利点もあり, その対処には検討の要がある事が示された. 更に, 細胞内のイオン化したマグネシウムを測定する方法について検討が加えられた.
著者
沼田 法子
出版者
千葉大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2017

【背景と目的】神経性やせ症(以下AN)は、体重や体型に対する強いこだわりを持ち、進行する低体重の重大な危険性の認識が十分でないことや、体型に人としての価値が直接影響されると感じ、他の価値観を認識したり変換したりすることができないこと等の認知的特性がしばしば観察される。一方で、これらの認知的特性は、自閉症スペクトラム障害(以下ASD)における対人関係、社会性の障害、パターン化した行動や興味といった特徴と類似しており(Zucker etal., 2007)、ANの18%がASDを併存していることが報告されている(Billstedt et al., 2000)。摂食障害(ED)は、神経性やせ症(AN)、神経性過食症(BN)、過食性障害(BED)のサブタイプに大別されているが、各々の症状は多様で重複したり、長期化により同一個体でサブタイプが相互に移行したりする(Fairburn and Harrison., 2003)。従って、上記のような認知的特性の強さが病態理解の上で重要となる。これらを踏まえ、ANにおけるASD傾向の有無およびANの重症度とASD傾向との関連を調査し、重症化に関連する要因としてANにおけるASD傾向を評価・検討することを目的とした。【方法】摂食障害と診断された15-45歳の女性43名における①自己記入式質問紙「自閉症スペクトラム指標(AQ)」と「Eating Disorder Examination Questionnaire(EDE-Q)」における相関関係を数量的に判定した。さらに、②自己誘発嘔吐の有り(n=31)と無しの2群(n=12)に分け、AQスコアの差を検定した。最後に、③それぞれの群におけるAQとEDE-Qの相関関係を判定した。【結果】①全患者におけるAQとEDE-Qスコアに相関関係は認められなかった(r=-.057 ; p=0.716)。②自己誘発嘔吐なし群は、あり群に比べて、AQスコアが有位に高かった(p=0.007)。③自己誘発嘔吐あり群となし群のEDE-Qとの相関はそれぞれ(r=-.051 ; p=0.786)と(r=.58 ; p=0.05)であった。結論として、AN制限型やBEDなどの非排出型の摂食障害は、AQスコアが高い傾向があり、重症度との正の相関があった。BEDの80%が過去AN制限型からの移行型であり、AN制限型は、時間的経過を経ても排出型に移行しづらく、ASD傾向が高いことが示唆された。
著者
牛島 省
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2018-04-01

本研究では,マルチフェイズ・並列計算手法の適用性に関する検討を行い,以下の成果を得た. (1) 礫層上面に衝突する鉛直下方噴流によって生ずる礫粒子運動と水流の連成過程が適切に計算されることが示され,礫粒子の移動経路や間隙水圧,礫粒子間の接触力などが計算で得られた. (2) 礫層下面から流入する鉛直上昇流により,(1)と同様に現象を再現する計算結果が得られることを確認した. (3) 高粘性流体や非ニュートン流体の基本的な挙動,また吸水性粒子間の浸透流などに対して,それらの特性を再現する計算結果が得られることが示された.
著者
福永 浩司 松崎 秀夫 川畑 伊知郎 篠田 康晴
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2019-04-01

自閉症スペクトラム症(ASD)の頻度は約1%で、男性有意に発症する難治性小児疾患である。対症療法以外に根本的治療法はない。病因の一つにミトコンドリア機能異常が知られており、ミトコンドリア関連遺伝子の変異も明らかにされている。本研究では(A)ミトコンドリア機能改善薬5-アミノレブリン酸(5-ALA)のASDマウスにおけるミトコンドリア機能および社会性行動改善の機序を明らかにする。(B) TAAR1受容体アゴニストのASDマウスの社会性行動改善作用とその機序を解明する。(C) 自閉症者リンパ球のミトコンドリア機能がバイオマーカーになるか検証する。
著者
廣瀬 泰彦 郡 健二郎 安井 孝周 戸澤 啓一 岡田 淳志 濱本 周造 田口 和己
出版者
名古屋市立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

尿路結石は、疫学、形成機序、結石と石灰化の構成成分など、動脈硬化と類似点が多い。近年、酸素を直径100nm以下のガス核として、Salting-out現象により安定化させた機能水、酸素ナノバブル(Oxygen nano-bubbles: ONB)水の抗炎症効果が報告された。炎症や組織改変をともなう動脈硬化などの疾病の治療薬となる可能性をもつ。そこで、私たちは、結石形成モデル動物を用いて、酸素ナノバブル水の、尿路結石形成抑制効果を調べた。酸素ナノバブル水は、尿細管細胞障害を低下させ、シュウ酸カルシウム結晶の接着因子であるオステオポンチンとヒアルロン酸の腎での発現を抑制し、腎結石形成を抑制する。
著者
横田 祐美子
出版者
立命館大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2019-08-30

本研究はフランス現代思想において多くの文学者や哲学者が論じてきた思考の問題と、彼らが批判する主体概念との関係を、ジョルジュ・バタイユの思想を導きの糸として考察することを試みるものである。それによって本研究は、フランス現代思想における主体批判の内実を明らかにし、批判されている主体に代わって思考を担うのは誰/何なのかを考察する。ひいてはフランス現代思想において貶められてきた「主体」という語の地位をあらためて問い直し、この語の危険性を確認したうえでなお、この語が有する積極的な意味や可能性についても検討する。
著者
吉岡 伸也
出版者
東京理科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

フォトニック結晶を利用した構造色を持つチョウやゾウムシを対象に、結晶の配向と光学特性の関係を調べた。特にチョウの一種(マエモンジャコウアゲハ)については、単一鱗粉内の特定の結晶ドメインにおいて詳しい研究を行った。その結果、直交偏光配置では、入射する偏光の方向と結晶方位との関係により反射の強度が大きく変化することを明らかにした。また、表面構造の観察から得られた結晶配向を仮定した理論計算を行い、多結晶に分かれたフォトニック結晶構造が直交偏光配置で観察される鱗片のステンドグラス状の模様を生み出していることを明らかにした。
著者
高橋 純一 大庭 伸也 熊野 了州
出版者
京都産業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

対馬、壱岐、北九州、大分に侵入した特定外来種ツマアカスズメバチについてミトコンドリアDNAの全長解析から国内に侵入した個体間には遺伝的変異は存在しないこと、自然分布地の中国、台湾、ベトナム、中国浙江省の個体と一致することがわかった。食性は樹冠に生息する昆虫類であることをDNAバーコーディング法により明らかにした。捕獲トラップは地上部よりも、樹冠10m付近が最も多く捕獲することができた。繁殖は、主に樹冠で交尾をするキイロスズメバチと交雑をしており、在来種に対して繁殖干渉を行っていることがわかった。
著者
志水 義房 渡辺 真珠
出版者
信州大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1986

高濃度カリウム培養液が培養初期の脊髓神経節細胞の生存率を著しく上昇させることが報告されている. しかし, その他の種類の神経細胞についての報告, ならびに長期培養による発育分化に対する影響についての報告は殆んど見られない. そこで本研究ではニワトリ胚の脊髓神経節と交感神経節, ならびに脊髓の神経細胞を培養し, 高濃度カリウムの効果について検討を加え次のような結果を得た.1.高濃度カリウム培養液は脊髓神経節のみならず, 交感神経節の神経細胞の生存率を著しく上昇させた. しかし, 脊髓の神経細胞の生存率の上昇は見られなかった.2.高濃度カリウム培養液は脊髓神経節細胞の分化を抑制した. 交感神経節細胞ではコリン作動性への転換を抑制し, アドレナリン作動性を保持した.3.上記2.の効果はカルシウム拮抗薬であるマグネシウム, ジルチアゼムで抑制されたので, カルシウムが関与しているものと考えられる.4.対照培養液下で交感神経節細胞を脊髓と併置して培養した場合にも, 交感神経節細胞のアドレナリン作動性が保持されることが判明した.5.高濃度カリウム培養液下では脊髓神経節と交感神経節の神経細胞の生存率が上昇するので, これまで困難であった培養初期の遊離単独神経細胞の動態を微速度映画に撮影して分析することが容易となった.6.分離培養脊髓神経節細胞に細胞内可溶性蛋白を除去後, 急速凍結・ディープエッチング法の適用を試みた結果, 細胞骨格, 細胞小器官の三次元的微細構造を詳細に観察することが可能となった. 高濃度カリウム培養液下では微小管とニューロフィラメントによる束状構造が著明となり, 小胞体から多数の輸送小胞が形成されている像が観察され, 細胞内活動の増加を示唆する所見が得られた.
著者
龍田 真
出版者
国立情報学研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

置換簡約やその関連概念を用いて論理体系および型付ラムダ計算を拡張した体系について、それを構築し、その基本性質を明らかにした。特に、共通型の型同形を特徴付け,非可換一階シーケント計算の性質,multiple quantifierをもつ型付ラムダ計算の型推論の性質,型理論Fの内部的decompiler-normalizerの性質,遺伝的置換子の型理論による特徴付けを証明した。
著者
塔村 真一郎 亀田 恒徳 宮本 康太 松原 恵理
出版者
独立行政法人森林総合研究所
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2013-04-01

スズメバチは木くずを唾液で固めて巣を作ることから、スズメバチの唾液が木くずの接着剤として機能することに着目し、唾液中に含まれる有効成分を単離・同定することで、天然系の構造用木材接着剤を開発することを目的とする。入手できたキイロスズメバチ等複数種の巣を解体して内部構造を調べたところ、巣は多層構造となっており、各巣盤をつなぐ支柱は長さがどれもほぼ一定であること、また直下の巣盤の面積や重さに応じた支柱の径や本数で構成されていることがわかった。またキイロスズメバチおよびコガタスズメバチの成虫の唾液腺および巣から抽出した成分の単離・同定を試み、それらの接着性能について検討した。
著者
朝野 維起
出版者
首都大学東京
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2016-04-01

昆虫の外骨格はキチン及びキチン結合性タンパク質を主成分とするマトリクスである。脱皮に伴ってつくられる新しい外骨格が硬化する際、ラッカーゼと呼ばれる酵素が重要であることがこれまでの研究で示されている。ラッカーゼは脱皮前にほとんど活性のない前駆体として新しい外骨格に蓄積し、その後活性化されることで外骨格硬化が開始される。ラッカーゼ前駆体の存在及び発生過程おけるラッカーゼ活性化に関して、代表者が所属する機関からの研究報告が世界で唯一であるものの既に40年以上の歴史がある。ラッカーゼ活性化にタンパク質性の因子が関与する可能性が考えられてきたが、近年、伝統的な生化学的手法によって分離に成功した。組換えタンパク質を利用した解析では、前駆体の活性化が確認されている。新規に合成される外骨格が硬化する過程において、ラッカーゼ活性化のタイミングが時間及び部位特異的にプログラムされている可能性が示唆されている。これは、例えば大顎の先や関節部分など強度が要求され歪みが避けられる場所の硬化が先行することを想像させるものである。そのほか、羽化時に翅の形が決まる過程でも、「伸展した翅が硬化する」といった単純なプロセスではなく、部位特異的な硬化を経て、ハードポイントが逐次形成されることで初めて正常な形状をとれること、などを示唆する観察がある。甲虫類の解析では、ラッカーゼ活性が部位特異的に出現することを示唆する観察ができた。また、ラッカーゼ活性化因子の発現が抑制されることで、現時点では若干であるが翅形態に影響することが観察できた。そもそも、本研究の主たる対象である活性化因子は、代表者が所属する機関以外の研究がない状況などから、生体内で本当に機能していることも正確には示されていない段階である。そのため、生物学的に基礎的な知見の収集も同時に進めている。
著者
福山 佑樹
出版者
東京大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2014-08-29

本研究は,大学におけるキャリア教育の問題を扱う研究である.本研究では,学生が相互に支援を行うことでそれぞれのキャリアストーリーを構築する活動を実現するために,キャリア構築理論基づいたゲーム型協調学習教材「かってにハッピーエンドゲーム」を開発した.ゲームでは,他者の悩みをその人のポジティブなキーワードを用いて解決する活動を行い,ストーリーの出来映えで勝敗を競う.評価のために複数の大学で実践を行った結果,教材には事前から事後にかけて進路に対する不安が減少させ,複数の将来像を思い描かせる効果があることが分かった.