著者
上田 哲司
出版者
国文学研究資料館
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2020-04-24

本研究は、江戸幕府による蝦夷地直轄に関する史料や、東北諸藩による蝦夷地警備に関する史料、場所請負商人に関する史料などを収集し、そこよりアイヌ社会に関する情報を抜粋し、その実態を細かく追及しようとするものである。検討時期としては、特に蝦夷地一次幕領期(1799~1821)を中心にする。この調査を通して明らかになったアイヌ社会のあり様が、アイヌ側の主体性によって構成されたのか、場所請負商人などの介在や幕藩制国家の支配が及び始めてきたことが関係するのかを考察する。それによって、アイヌ社会の歴史像を描くとともに、国家がアイヌ社会へと支配を及ぼしていった過程を精緻に考察する。
著者
稲城 玲子
出版者
大阪大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1995

ヒトヘルペスウイルス6(HHV-6)は、突発性発疹の原因ウイルスで、発熱、発疹に加え、時に肝機能障害をも引き起こすことが知られている。しかし、その機序はいまだ不明な点が多い。そこで、今回我々はHHV-6感染によって生じる肝障害の機序を明らかにする目的で 1)HHV-6がヒト肝細胞を感染しうるか否か、2)HHV-6感染によって局所免疫を担う肝細胞の機能に変化が生じるか否かを検討した。まず、ヒト肝細胞株(HepG2)にHHV-6(HST株)を感染させ、それら細胞を経時的に採取し、抗HHV-6抗体を用いた間接蛍光抗体法にてウイルス感染細胞の検出を行ったところHHV-6は、HepG2に感染しうることが明らかとなった。次にHHV-6感染がHepG2の担う炎症系サイトカイン産生能にいかなる影響を及ぼすかを検討するため、HHV-6感染HepG2におけるIL-Iβ、IL-RNA発現量を半定量RT-PCRにて解析した。結果IL-IβmRNAの、発現はHHV-6感染によって変動しないのに対し、IL-8mRNA量はHHV-6感染にて有意に上昇した。またこの現象は熱処理やUV処理したHHV-6では認められないことも明らかとなった。以上のことからHHV-6は直接肝臓に感染し、局所での炎症系サイトカイン産生に影響を及ぼし、肝臓での炎症反応を誘導する可能性が示唆された。
著者
安積 典子 秋吉 博之 吉本 直弘 生田 享介 川上 雅弘 深澤 優子 萩原 憲二 種田 将嗣
出版者
大阪教育大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2020-04-01

小学校教員を志望する学生の大半はいわゆる文系型に属し,理科や科学の非専門家であるにも関わらず,教師就職後は理科の授業・実験を行わなければならない。そのために教員養成課程の理科教員は,理科に関する知識や関心が低い学生に対して,限られた時間で理科授業のための職能教育を行わねばならない。本研究では教員養成系大学に特有のこの課題を,科学の専門家と非専門家の間のコミュニケーションの視点から分析する。その結果を踏まえ,課題解決の手段として,小学校理科教員を目指す理科専攻以外の学生の文脈に沿った教科書コンテンツを作成する。
著者
中澤 光平
出版者
大学共同利用機関法人人間文化研究機構国立国語研究所
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2018-08-24

本研究の目的は、日本語の方言のうち、淡路方言が歴史的にどの方言と近い関係にあるかを明らかにすることと、西日本方言に分類される近畿方言、中国方言、四国方言それぞれの範囲を確定することである。淡路方言はこれまで近畿方言に分類されてきたが、兵庫県や和歌山県の諸方言とともに、京都や大阪などの近畿中央部の方言よりも、むしろ中国地方や四国地方の諸方言と歴史的に近い可能性が高くなった。そのため本研究では、歴史的な観点から方言の範囲を整理し直し、淡路方言と他の方言の歴史的な関係を明らかにするのに必要なデータを収集するため、近畿、中国、四国各地で、伝統的な方言の特徴を保持する高齢者へ調査を実施する。
著者
河本 昌志 大澤 恭浩 藤井 宏融 弓削 孟文 向田 圭子
出版者
広島大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1994

日本国内での悪性高熱症(MH)を発症した患者やその血縁者およびMHと関連性が疑われる疾患の患者を対象とし,骨格筋小胞体のCa-induced Ca release(CICR)機構の以上亢進と,CICRチャネルであるリアノジン受容体(RYR1)の遺伝子の異常との関連性について研究した.方法は,対象者の同意を得て末梢血からDNAを抽出し,RYRl遺伝子領域のPCRプライマー7組を用いて増幅し,制限酵素断片長多型(RFLP)による解析と同近傍領域のマイクロサテライトプローブを用いた解析を行った.また,骨格筋を生検してサポニン処理して化学的にスキンドファイバーを作製し,遠藤らの方法でCICR速度を測定した.これまでの2年間に26家系72名よりDNAを抽出した.また筋生検によるCICR速度の測定は26名で行った.このうち臨床的に劇症MHを発症した4名とその家系の3名でCICR速度の異常亢進が認められたが,C1840Tの変異はいずれの対象者にも認められなかった.しかし,1家系でRFLPとマイクロサテライト法により,RYRl遺伝子領域の異常とMH素因(CICR速度異常亢進および劇症MH)との関連性がより明らかになった.従ってこの家系では末梢血採血という最低限の侵襲で,より広範囲の遺伝子検索ができる可能性が高くなった.さらに従来報告された遺伝子変異を検出するためのPCRプライマーを作製中で,これを用いて広範囲のDNA異常を検討する予定である.MHは希な疾患であり,しかも筋生検は侵襲的であるために,承諾を得てCICR速度測定を実施できる症例数は限られる.今後はこのプライマーを用いて最低限の侵襲で広範囲のDNA異常を検討する必要があると考えている.
著者
渡邉 知佳子
出版者
防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

Celiac病は麦蛋白グルテンに対する異常な免疫応答により、絨毛が萎縮し吸収不良をきたす疾患で、欧米では罹患率約1%とされる。昨今、炎症性腸疾患(IBD)の我が国で急激な増加を鑑みて、同様の炎症性の腸疾患であるceliac病も、生活習慣の欧米化を背景に、潜在的に増加の可能性が示唆される。特に腹部症状が似ているIBD患者に潜在する可能性を考え調査した。特異的抗体の陽性例がみられたが、HLA・病理検査でceliac病確診例はなかった。血清抗体のみで、アルゴリズムに沿った診断を行わないとnon-celiac diseaseをceliac病と過剰診断する恐れもある。
著者
武田 啓司
出版者
東京大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

マイクロSQUID磁束計はマイクロ~ナノメーターサイズの微小磁性体1個の磁性を測定するのに適した高感度な磁気測定装置である。これまで6K以下で動作するフランスグループの低温超伝導タイプのみが開発されていたが、申請者らはより高温までの測定を目指して高温超伝導タイプを開発した。分子性強磁性体のマイクロ結晶の磁化曲線測定を行い、温度4-70K、磁場8kOeまでの範囲でスピン感度10^8μBを達成し、更にダイポール計算との組み合わせにより、初めてマイクロSQUIDスタンドアローンで磁化の絶対量決定に成功した。
著者
柿木 隆介 渡邊 昌子 金桶 吉起
出版者
岡崎国立共同研究機構
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2001

本研究に用いたMicro-SQUIDは特注で製作した世界唯一の機器であり、まさに萌芽的研究の主旨にかなった研究テーマであった。この3年間は実用化における諸問題の解決に力点を置いて研究を行なった。すなわち、SQUID自体の問題に加え、磁気シールドルーム(これも世界で最も小型のものを特注した)にも多くの問題が発生した。さらにソフトウェアの多くも新たに作成したが、初期マイナートラブルが多く発見され、それを1つずつ解決せねばならなかった。昨年夏にはようやく実用化が可能となり実験を開始する事ができた。先ず末梢神経の記録を行った。指を刺激して手首部を上行する活動電位の計測を行った。Micro-SQUIDの極めて高い空間分解能は、上行する刺激信号が4双極子であること、またその伝導時間が平均58.7m/secであることを明らかにした。信号が上行する状況をmsec単位で明確かつ詳細に記録したもので、世界で初めての報告であった。また同様の刺激条件時に頭皮上にMicro-SQUIDを置いて初期大脳皮質反応の記録に成功した。現在は、さらに聴覚、視覚などの刺激による反応記録も行っている。現在はヒトを対象とした研究が主体であるが、今後はさらにサルでの実験も考慮している。さらに交通事故による「引き抜き症候群」患者の検索を目的として、先ず健常人を対象として腕神経叢より頚部神経節に至る末梢神経近位部の検索を行なった。Micro-SQUIDの極めて高い空間分解能は、上行する刺激信号が4双極子であること、またその伝導時間が平均約60m/secであることを明らかにした。来年度は多数の臨床例を対象として検査を行なっていく予定である。
著者
金桶 吉起 乾 幸二 渡辺 昌子
出版者
生理学研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

本研究は、仮現運動知覚および第2次運動知覚について、生理学的研究を脳磁図および機能的磁気共鳴画像にて行った。ランダムドットパターンを用いた仮現運動刺激では、ちらつきと運動の知覚を外的刺激を変化させずに与えることができる。よって刺激によらず運動知覚に伴う内的な脳機能の違いを検討することができた。結果は、運動知覚が惹起されるときはちらつきが惹起されるときと比して100ms前後から高い神経活動を示した。これは両者の知覚が視覚系の早い段階から競合しながら形成されていくことを示唆する。また、第2次運動知覚に関わる脳部位を機能的磁気共鳴画像を用いて検討した。第2次運動とは、明るさの時間変化を検出して運動を知覚する第1次運動知覚に対する概念で、物体の模様やコントラストなどの全般的な要素の位置の変化を検出することによって初めて知覚される。これまでにも同様の試みは多くなされてきたが、第2次運動知覚のみに特異的に関わる部位の同定はできておらず、臨床例の研究との結果に乖離があった。我々は、第2次運動知覚をもたらす視覚刺激を2003年に新たに創作した。この刺激は、第1次運動の影響を理論的に皆無にし、また第2次運動知覚の中でももっともその特徴を有するという性質を持つ。この刺激を用いて、脳磁図にて初めて第1次と第2次運動に対する反応の違いを明らかにした。今回は、この刺激を機能的磁気共鳴画像実験に応用した。視認性の影響を調べるために、第2次運動より見にくい第1次運動と、第2次運動、そして第2次運動と同程度の見易さの第1次運動、さらに第1次と第2次運動の両者の性質を持つ混合運動の刺激を用いて、それぞれに反応する脳部位を検索した。その結果、第2次運動に特異的に反応する部位は、上側頭溝後部にあった。この部位に障害を起こした臨床例が、第2次運動に特異的に知覚障害を起こしたことが報告されており、その結果とみごとに一致する。また、同部位は、biological motionや表情の変化にも特異的に反応することが知られており、高次の運動知覚に広く関わることが示された。
著者
山本 佐和子
出版者
同志社大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2017-04-01

本研究は、中世室町期の「抄物」について、多くの先行説を類聚・列挙した「編纂抄物(集成抄物、取り合わせ抄物)」の言語研究資料としての性格を明らかにすることを目的として、文献資料の発掘・調査と言語事象の記述研究を行っている。本研究課題以降には、この種の抄物について、抄物の成立時期半ばの1530年頃から最末期の織豊期にかけて、公家・高家に漢籍注釈書として受容される様相を書誌学・文献学的調査によって明らかにし、その言語的特徴の由来を考察する予定である。今年度は、2018年度に研究発表した、中世後期~近世の注釈書における文末表現「~トナリ」について使用実態と文法的性格を論文にまとめ、抄物の成立背景と言語的特徴は、抄物と同時期の古典講釈・注釈史の中で捉え直す必要があることを指摘した。本研究では一昨年度までに、建仁寺両足院蔵「杜詩抄」に一般の仮名抄には殆ど見られない文末表現「ヂャ」や「ゾウ〈候゛〉」等が認められることを指摘してきたが、「~トナリ」もその一つである(約220例使用)。一方で、「~トナリ」は近世以降の通俗的な注釈書・学習書では多用されている。論文では、注釈表現「~トナリ」が、応仁の乱以降、即ち、口語的な仮名抄の多くが作られた時期と同時期に成立した「源氏物語」「伊勢物語」等の和文の注釈書で、原典の解釈(当代語訳)を示す用法で多用されるようになる実態を明らかにした。注釈書においてこの種の定型的な「~トナリ」が多用された要因には、当時の言語変化(亀井孝「言語史上の室町時代」『図説日本文化史大系』4、1957年)及び、古典の受容層の拡大・変容による注釈書の質的変容(伊井春樹『源氏物語注釈史の研究 室町前期』桜楓社、1980年)が関わっていると考えられる。
著者
中岡 淳
出版者
京都大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2021-08-30

本研究は、①比較法的な見地から、婚姻の自由と親の権利に関する「憲法上の権利」の規範内容に関する分析を行い、②その権利規範の分析を踏まえて、家族法の憲法適合性に関する日本の裁判例の判断枠組を再構成することを試みるものである。また、これらの権利概念の理論構築のために、③アメリカ法やドイツ法を比較研究の対象とすることで、これらの法体系においても、同性カップルの婚姻や親子関係の法的承認を契機として、婚姻や親子関係に関する法的理解に大きな変化が生じていることを描写する。
著者
鈴木 生郎
出版者
日本大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2018-04-01

本研究の目的は、相互的な存在論的依存(相互的根拠づけ)関係について理論的に整備するとともに、それをさまざまな形而上学的問題に応用することである。こうした目的を達成するために、2021年度は以下の研究を進めた。(1) 前年度に引き続き、(A)ある対象が特定の種に属すること、その対象がその種の成員として典型的な性質を持つこと、その対象その種に属するものとして同一性を保つことの間の相互依存関係を明らかにすることによって、持続の形而上学における「根拠づけの問題」を解決する論文をまとめ、出版することを目指す。また、根拠づけ概念に関する研究の応用として、(B) 死の害悪についての「タイミング問題」に対する、いわゆる「死後説」(人は死によって生じる害を、死後に被るとする説)に、より十全な擁護を与える論文を執筆するとともに、新たに着想を得た論点として、(C) 時間の哲学における「現在主義」と呼ばれる立場に対して、持続の事実を根拠づけるものは何かということに関する困難があることを指摘する課題にも取り組む。(2) 相互的根拠づけの概念に基づいて実体概念を解明する。特に、アリストテレス以来典型的な「実体」とみなされている中間的なサイズの対象が、その構成要素であるミクロな対象に対してどのような意味で「独立的」であると言えるのか、という問題意識のもとで、その独立性を相互依存関係のあり方から捉えることを目指す。
著者
河合 康典 越野 亮 三好 孝典
出版者
石川工業高等専門学校
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2018-04-01

本研究は,筋肉疲労に対して安全な電気刺激による遠隔リハビリテーションシステムの開発を行うため,今年度は下記の2つの課題について考える。課題①の筋肉疲労の推定と患者側での安全機構の開発については,これまでに行った筋電計は疲労推定の精度が悪く,脳波計では疲労推定ができなかった。そこで,外乱オブザーバとガウス過程回帰を用いた2つの疲労推定手法を考える。はじめに,外乱オブザーバを用いた方法は,疲労がない時の膝関節の運動モデルを用いて,疲労時には入力外乱が発生すると仮定することで,入力外乱の推定を行う。推定する入力外乱の平均値は,運動開始直後は小さいが,被験者が疲労を感じるにつれて徐々に増加していることから疲労を推定できることが分かる。次に,ガウス過程回帰を用いた手法は,外乱オブザーバと同様に疲労がない時の膝関節の運動モデルを用いて,疲労時には入力外乱が発生すると仮定して疲労推定を行う。測定値と運動モデルの差を入力外乱として考え,学習における入力を膝関節角度,出力を入力外乱とすることで,入力外乱の平均と分散を求める。運動開始直後は外乱の平均値が0に近いのに対して,被験者が疲労を感じるにつれて徐々に平均値の振れ幅が広がっていることから,疲労を推定できることが分かる。課題③の高速化と耐故障性を備えたクラウドシステムの開発については,AWS IoT から変更してNode.js を用いたクラウドシステムを考える。これまでの遠隔リハビリテーションシステムは,MATLABのSimulinkをベースにシステムを構築しているので,Node.js との通信の結合を行っている。
著者
緒形 雅則 石橋 仁
出版者
北里大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2019-04-01

本研究では、注意欠損多動症(ADHD)の症状に対する糖質を制限したケトン食の有効性、安全性を基礎的研究により明確にし、さらにその効果発現の機序を解明する。幼若期ドーパミン神経系傷害動物は、ADHDモデル動物として用いられている。本モデル動物が示す異常行動に対するケトン食の長期摂取の効果を複数の行動試験により確認する。さらにケトン食摂取がADHD治療薬の効果におよぼす影響を調べ、食事療法としての有用性を確認する。また、電気生理学的、組織学的手法を用いて効果発現機序を明確にし、今度のADHD治療薬の発展へと繋げる。