著者
佐藤 卓己 Takumi Sato
雑誌
社会学部紀要 (ISSN:04529456)
巻号頁・発行日
no.別冊, pp.1-26, 2011-03-15
著者
栗田 慎也
出版者
日本支援工学理学療法学会
雑誌
支援工学理学療法学会誌 (ISSN:24366951)
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, pp.47-54, 2022-09-25 (Released:2023-09-25)
参考文献数
22

目的:糖尿病性神経障害(以下、DN)患者を対象に運動療法と抗力を具備した継手付き体幹装具Trunk Solution Core(以下、TSC)の併用効果を検証した。方法:対象は血液透析療法を行う40代男性のDN患者1名とした。研究はAB型シングルケースデザインを用いた。A期は歩行練習を行う従来練習期とし、B期は歩行練習にTSCを使用した介入期とした。介入期間は両期とも2週間とし、非透析日の週3回を頻度で合計4週間とした。評価は快適歩行速度と介入前後の修正Borg Scaleの差とした。効果判定は標準偏差帯法を用い視覚的に分析した。結果:各期【A期/B期】の平均値は歩行速度(m/s)が【0.7±0.1/1.0±0.1】、修正Borg scaleの差が【3.5±0.8/2.3±0.8】と介入期に改善を認めた。結論:血液透析療法を伴うDN患者にTSCの使用は疲労感少なく、歩行能力改善が得られた。
著者
奥村 智志 小久保 知由起
出版者
大分県立看護科学大学看護研究交流センター
雑誌
看護科学研究 (ISSN:24240052)
巻号頁・発行日
vol.21, pp.41-49, 2023 (Released:2023-05-24)
参考文献数
16

本研究は、精神科看護師の研究成果活用に対する意識の影響要因を明らかにすることを目的とした。日本全国の精神科医療機関に勤務する看護師を対象に、無記名自記式質問紙調査を行い、協力が得られた82施設の精神科看護師4,774 名に質問紙を配布し、2,999名の分析対象者を確保した。重回帰分析(Stepwise法)の結果、職位や教育背景に関わらず、看護師が高頻度で文献を閲読し、精神科看護実践力が高く、論文投稿経験を有する場合に正の影響を与え、精神科経験年数が長い場合に負の影響を与える可能性が示唆された。また、組織風土として強制的な風潮がなく、看護師の自律性に基づく合理的な組織管理が整備されていることが、研究成果活用への意識を高める環境的条件であることが示唆された。組織として文献や研究に親しめる支援整備や自由闊達な雰囲気を醸成することで、看護師の実践力向上の意欲が引き出され、研究成果活用の意識が触発されると考える。
著者
後藤 哲久
出版者
日本マイコトキシン学会
雑誌
マイコトキシン (ISSN:02851466)
巻号頁・発行日
vol.66, no.1, pp.57-62, 2016-01-31 (Released:2016-02-16)
参考文献数
18

Aspergillus section Flavi にはアフラトキシン産生菌,非産生菌が含まれていることが知られている.しかし,アフラトキシン産生菌と,非産生菌あるいは分類的には産生菌でありながら産生能を持たない(失った)菌との関係,あるいはカビは何故アフラトキシンを産生するのか,という疑問にはまだ明確な答えは見つかっていない.
著者
高橋 阿貴
出版者
日本動物心理学会
雑誌
動物心理学研究 (ISSN:09168419)
巻号頁・発行日
vol.62, no.2, pp.147-162, 2012 (Released:2013-01-28)
参考文献数
68

This review is an introduction to a recently developed technology “optogenetics” that allows researchers to directly manipulate the activity of aimed neurons with millisecond (ms) order in a behaving animal. Two types of microbial opsin, channel rhodopsin 2 (ChR2) and halorhodopsin (NpHR), are commonly used as the tools for optogenetics. ChR2 responds to blue light to induce neuronal firing via cation influx, whereas NpHR responds to yellow light to inhibit neuronal activity via Cl- influx. This review first introduces these and other opsins that have been used for optogenetics. Next, three methods to introduce these foreign genes into mouse nervous system are going to be explained: 1) viral infection, 2) in utero electrophoresis, and 3) transgenic mouse. Then, this review illustrates how neuron-type specific expression of the opsin gene can be achieved, and also how the optic stimulation of opsins that expresses in the deep brain structure can be accomplished. Finally, how the optogenetic technique has been used for behavioral neuroscience will be discussed by focusing on the studies about amygdala microcircuit that mediates conditioned fear.
著者
田中 雄一郎
出版者
学校法人 聖マリアンナ医科大学医学会
雑誌
聖マリアンナ医科大学雑誌 (ISSN:03872289)
巻号頁・発行日
vol.50, no.4, pp.205-213, 2023 (Released:2023-05-16)
参考文献数
17

ロボトミーはモニスのノーベル賞受賞で奇跡の治療として市民権を得る。しかし受賞からわずか3年後に,クロルプロマジンというロボトミーに対する最も強力なライバルが現れる。ロボトミーの負の側面,すなわち手術死亡率の高さや人格の変化などが問題点として顕在化しロボトミーに対する世間の風向きが変わる。ロボトミーに批判的な映画や様々な社会スキャンダルが登場し奇跡の治療が悪魔の手術に転落する。ロボトミーに対する社会の評価の変貌を読み解く。
著者
鄭 大聲
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.97, no.4, pp.265-274, 2002-04-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
4
被引用文献数
1

マッコルリは朝鮮半島の代表的な伝統酒であり, 韓国で一般的に飲まれている濁酒である。現在の韓国の大衆酒は焼酎になっているが, マッコルリには伝統酒としての魅力があり, またマッコルリを通じて韓国の伝統的な国民生活や文化を窺い知ることができる。日本の酒類関係者にとってもたいへん興味深いお酒であろう。筆者はマッコルリをはじめとする朝鮮半島の酒類について造詣が深い。そこでマッコルリについて, そのつくり方や歴史, 文化及び生活との関わりについて詳細に解説していただいた.
著者
新開 統子 増本 幸二 白根 和樹 堀口 比奈子 根本 悠里 伊藤 愛香里 田中 尚 相吉 翼 佐々木 理人 千葉 史子
出版者
特定非営利活動法人 日本小児外科学会
雑誌
日本小児外科学会雑誌 (ISSN:0288609X)
巻号頁・発行日
vol.56, no.6, pp.966-970, 2020-10-20 (Released:2020-10-20)
参考文献数
13

【はじめに】外傷による打撲と手術に伴う皮下組織の腫脹・疼痛に対し,通導散を用いて良好な結果を得た症例を経験したので報告する.【症例1】14歳男児,自転車走行中にトラックと接触し全身を打撲した.受傷後1日目から打撲部の腫脹疼痛に対し通導散と頭痛に対し五苓散を5.0 g/日で開始し,経過良好で受傷後3日目に退院した.打撲部の腫脹は受傷後6日目で軽快したため,通導散と五苓散を2.5 g/日に変更し,13日目には消失した.通導散は13日間投与した.【症例2】10歳男児,木村氏病が疑われた左下顎部の腫瘤を摘出した.顔面創部周囲の腫脹と疼痛に対し,通導散を術後1日目から2.5 g/日で7日間投与した.初回は苦味のため服用できなかったが,術後2日目からは服用でき,創部周囲の腫脹は術後2日目をピークに減少し,術後9日目には消失した.【まとめ】通導散は,局所の炎症や浮腫,疼痛を軽減させ,急性期に用いる漢方として有用であると考えられた.
著者
佐藤 美奈子
出版者
言語科学会
雑誌
Studies in Language Sciences (ISSN:24359955)
巻号頁・発行日
vol.20, no.2, pp.69-81, 2022-09-01 (Released:2022-09-01)
参考文献数
20

本研究では、ネパール、フィリピン、ブラジル、中国等、外国につながりをもつ7人の複言語話者である高校3年生を対象に母語認識インタビューを行った。その結果を「継承語(第一言語)」、「現地語」(日本語)、英語という3つの観点から考察し、彼らの各言語に対する複層的な認識と、その認識を基盤とするアイデンティティの表出を質的に分析する。
著者
宮脇 梨奈 加藤 美生 河村 洋子 石川 ひろの 岡 浩一朗
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
pp.23-021, (Released:2023-09-05)
参考文献数
24

目的 近年,インターネットは,情報を検索し取得するだけでなく,情報発信や共有も可能となっている。それに伴い医療・健康分野でも,健康情報を収集する能力だけでなく,双方向性に対応した多様な能力も必要とされるようになっている。しかし,両方の能力を評価する尺度は見当たらない。そのため,本研究では欧米で開発されたDigital Health Literacy Instrument (DHLI)の日本語版を作成し,その妥当性と信頼性について検討した。またデジタル・ヘルスリテラシー(DHL)の程度と対象者の特徴との関連を明らかにした。方法 尺度翻訳に関する基本指針を参考にDHLI日本語版を作成した。社会調査会社にモニター登録している20~64歳男女2,000人(男性:50%,年齢:40.7±12.0歳)にインターネット調査を実施した。DHLI日本語版,社会人口統計学的属性,健康状態,インターネットの利用状況,eヘルスリテラシー(eHEALS)を調査した。構成概念妥当性は,確証的因子分析による適合度の確認,基準関連妥当性は,eHEALSとの相関により検討した。内部一貫性および再検査による尺度得点の相関により信頼性を検証した。DHLと各変数との関連は,t検定,一元配置分散分析および多重比較検定を用いた。結果 確証的因子分析では,GFI=.946,CFI=.969,RMSEA=.054と良好な適合値が得られ,日本語版も原版同様に7因子構造であることを確認した。またeHEALS得点との相関(r=.40,P<.001)を示し妥当性が確認された。信頼性では,Cronbachのα係数は.92であり,再検査による尺度得点の級内相関係数はr=.88(P<.001)であった。尺度得点は,主に性,世帯収入,健康状態,インターネットでの情報検索頻度および使用端末が関連していた。また信頼性の評価,適応可能性の判断,コンテンツ投稿の下位尺度得点が低い傾向にあった。結論 DHLI日本語版は,日本語を介する成人のDHLを評価するために十分な信頼性と妥当性を有する尺度であることが確認された。DHLの低さが健康情報格差につながる可能性もあるため,DHLの向上が必要な者や強化が必要なスキルの特定をし,それに合わせた支援策を検討する必要がある。
著者
鈴木 智大 前川 文彦 浅川 倫宏 崔 宰熏
出版者
宇都宮大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2019-04-01

スギヒラタケは食用とされていましたが、摂取者に原因不明の急性脳症が相次ぎ、現在もその毒性メカニズムは不明のままです。申請者らは複数の毒成分が、スギヒラタケによる急性脳症の発症機構に関与するという以下の仮説を立てています。本研究ではこの説を立証するだけでなく、この毒性物質の新規なタンパク質分解活性に着目することで、治療・予防への道筋を切り開くとともに新たな酵素としての応用展開を目指します。
著者
遠藤 信幸 弘中 満太郎
出版者
九州病害虫研究会
雑誌
九州病害虫研究会報 (ISSN:03856410)
巻号頁・発行日
vol.63, pp.55-61, 2017-11-28 (Released:2019-02-13)
参考文献数
16
被引用文献数
2 2

The attractiveness of incandescent lamp (54W) and mercury lamp (100W) light sources to stink bugs (Heteroptera: Pentatomidae) was compared under field conditions. Although the degree of the attractive effect differed among stink bug species, 5.6–304.6 times as many bugs were caught in the mercury lamp trap than in the incandescent lamp trap. The total photon numbers in the spectral sensitivity region for stink bugs (250–650nm) were almost the same between the two lamps; however, the mercury lamp emitted about 16 times more photons than the incandescent lamp in the ultraviolet region (250–400nm), which is highly attractive to stink bugs. When the mercury lamp was covered with a UV-absorbing filter, which blocked about 90% of the photons in the ultraviolet region, the numbers of trapped Glaucias subpunctatus (Walker), Plautia stali Scott, and Halyomorpha halys(Stål) decreased to less than 25% of those trapped using the non-filtered mercury lamp. These results indicate that the high attractiveness of the mercury lamp to some stink bug species is partly due to strong light intensity in the ultraviolet region.
著者
井出 留美 伊藤 喜久治 平山 和宏 武藤 志真子
出版者
日本食生活学会
雑誌
日本食生活学会誌 (ISSN:13469770)
巻号頁・発行日
vol.16, no.3, pp.205-214, 2005 (Released:2006-08-04)
参考文献数
8
被引用文献数
3 2

穀物を加工して栄養素を強化したシリアルには様々な種類があり, 玄米シリアルのようにビタミン・ミネラルをバランスよく含むものや, 小麦ふすまシリアルのように食物繊維が豊富なものなどがある。過去の研究で, 全粒穀物シリアルを摂取することにより, 肌状態, 特に吹き出物や皮膚の赤みに良い影響を及ぼしたとするものがあるが, シリアルの成分の何が肌状態の改善に寄与しているかは, 明らかになっていない。また, 他の食品成分で肌状態が改善されたとする研究もあるが, タンパク質やカロテノイドに関するものなどであり, ビタミン・ミネラル全般や食物繊維に関する研究は少ない。今回は, シリアルの成分のうち, 2大特長とも言える, (1) ビタミン・ミネラルのバランス, (2) 食物繊維のどちらの要素がより皮膚の健康に寄与するかを検証するため, 朝食欠食の習慣がある22~35歳の女性21名について, それぞれ上記2つの特徴を持つ全粒穀物シリアルの, 皮膚に及ぼす影響について調べた。21名を3群に分け, 1群はコントロール群とし, その他は, ビタミン・ミネラルのバランスに優れた玄米シリアル群と, 食物繊維を豊富に含む小麦ふすまシリアル群とに二分した。実験期間は全部で6週間とした。最初の2週間は, どの群も普段通りの食生活とし, 食物繊維の効果を確認するため, 発酵食品全般や, 供試シリアル以外のシリアルは摂取しないように指導した。次の2週間は, コントロール群は普段通りの食事, それ以外の2群には, 全粒穀物シリアル (玄米シリアル, もしくは小麦ふすまシリアル) 40gを, 朝1回と, 昼か夜どちらかの1回, 計1日に2食のシリアルを毎日摂取させ, それまで摂っていた炭水化物をシリアルに置き換えるよう指導した。最後の2週間は, 3群とも, 発酵食品や食物繊維の多い食品を摂らずに, 普段通りの食生活とし, シリアルは摂取しないよう指導した。 (株) エフシージー総合研究所において, 2週間毎に測定した項目は次の通りである。体重, BMI, 体脂肪率, 皮膚水分量 (電気伝導度型SKICON-200), 皮膚弾力 (キュートメーター), 皮脂量 (透過光比率型セブメーター), 皮膚拡大写真撮影 (メディカルニッコール), 皮膚キメ写真, 排便回数, 美容専門家による視診触診, 皮膚状態・体調に関するアンケート。いずれの顔面皮膚計測も, 同研究室の23℃, 50% Room Humidityの恒温恒湿室にて15分間座位安静後実施した。また, 計42日間の食事記録 (シリアル摂取前14日, 摂取中14日, 摂取中止後14日)。食事記録は, 栄養計算ソフト「Basic4」で解析し集計した。なお, 本試験は, ヘルシンキ宣言に基づきその原則を遵守し, 被験者には試験目的を説明して同意が得られた上で実施した。その結果, 玄米シリアルグループ・小麦ふすまシリアルグループとも, 全期間を通して, 一日一回程度の定期的な排便回数を保った。この間の栄養素摂取状態は, 小麦ふすまシリアルグループは, 食物繊維とビタミンB1, B2と葉酸が非摂取期間に比べて有意に高い値を示した。玄米シリアルグループは, 主にカルシウムと鉄, ビタミンA・B1・B2, C, ナイアシン, ビタミンE, 食物繊維など, バランスよくビタミン・ミネラルと食物繊維の摂取量が有意に増加した。Fig.1と2は, それぞれ右目尻と右頬の水分量の変化を示しており, 玄米シリアル群で, 摂取期間の2-4週に, 水分量が増えていることがわかる。また, Fig.3は, 皮膚の弾力性の変化を示したもので, 有意差はないものの, やはり玄米シリアル群で, 摂取期間である2-4週に, 皮膚の弾力性が増えていることがわかる。Fig.4a~dは玄米シリアルを摂取した30代女性の皮膚のキメ写真である (キメとは, 皮膚の表面に広がる網目のような凹凸のこと。高い部分の “皮丘”, 皮丘の間を溝のように走る “皮溝”, “毛孔” で形づくられる。均一に整った格子状の美しい起伏が続く状態が, キメの細かい皮膚と言うことができる)。Fig.4aはウォッシュアウト前, Fig.4bはシリアル摂取前, Fig.4cはシリアル2週間摂取後, Fig.4dはシリアル摂取中止後2週間で, 摂取2週間後に皮膚のキメ, すなわち皮溝と皮丘の織り成す起伏が整ってきている。以下にシリアルによる今回の試験成績をまとめる。ビタミン・ミネラルと食物繊維のバランスに優れた玄米シリアルは, 肌に問題のある若年女性の肌状態を改善させた。食物繊維の豊富な小麦ふすまシリアルは, 肌状態の改善に寄与しなかった。シリアルは, 若年女性の栄養素摂取状態を良くするのに寄与した。特にカルシウムや鉄, ビタミンA・B1・B2, C, ナイアシン, ビタミンE, 食物繊維など, 皮膚の健康にとって大切な栄養素の摂取増加に寄与した。
著者
青野季吉 等編
出版者
河出書房
巻号頁・発行日
vol.第8巻, 1955
著者
高島 響子 児玉 聡
出版者
日本生命倫理学会
雑誌
生命倫理 (ISSN:13434063)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.75-85, 2012-09-19 (Released:2017-04-27)

近年英国で問題となっているスイスへの渡航幇助自殺は、渡航医療の一形態と捉えることができる。本稿では、英国国内の生命の終結をめぐる議論およびPurdy v. DPP判決の内容と判決後に出された自殺幇助の訴追方針を概観し、渡航幇助自殺が英国の自殺幇助の議論全体にもたらした影響について考察した。英国では、渡航幇助自殺を行った患者を手助けした家族は訴追されないケースが蓄積し、Purdy貴族院判決後には、自殺幇助における訴追方針の明確化が求められた。こうして、国内で自殺幇助を合法化することは実現しないまま、渡航幇助自殺を事実上許容する訴追方針が出された。国内の自殺幇助の問題が、渡航幇助自殺を包含する形で一応の解決に落ち着いたともとれる現状にあることがわかった。このような展開がもたらされたのは、渡航医療の存在が国内議論に変化を生じさせた結果だと考えられる。自国内で実施不可能な行為が、渡航医療の利用によって海外で実現されるケースが蓄積されることにより、国内規制の議論に一種の「緊張関係」が生じ、従来の論争構造とは異なる新たな展開が生まれる可能性が示唆された。日本においても、臓器移植や生殖補助医療などにおいて、渡航医療を利用するケースがすでに報告されており、今後はそのようなケースの蓄積が、国内の議論や規制に与える影響を検討する必要がある。
著者
淵上 哲司
出版者
安全工学会
雑誌
安全工学 (ISSN:05704480)
巻号頁・発行日
vol.36, no.1, pp.28-35, 1997-02-15 (Released:2017-05-31)

既存の建築物の耐震・防火性能を評価するためには,その性能に大きく影響する建築基準法や消防法といった防災法規の変遷を把握する必要がある. シリーズ第1回目は,建築物の「防火性能」にっいて取り上げ,防火性能に関する法令が現在に至るまでの改正の経緯と,改正の要因となった背景(火災事例など)について紹介する.
著者
大木志門編
出版者
龜鳴屋
巻号頁・発行日
2023
著者
福田 恭介 水口 美咲 松尾 太加志 志堂寺 和則 早見 武人
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
vol.92, no.2, pp.122-128, 2021 (Released:2021-06-25)
参考文献数
23
被引用文献数
1

The “Tip of the Tongue” (TOT) is a well-known phenomenon in which one cannot recall the name of a familiar person or object but can recall related words. In the TOT state, cognitive processing activities based on relating information are frequently performed. Blinking is suppressed when waiting for information and when inputting or processing information, and instead occurs at the end of the processing phase. However, the relationship between blinking and the TOT state is not yet clear. In this study, we investigated how the timing of blink suppression and occurrence changes during the TOT state. We presented successive facial photographs of famous people interspersed with those of unknown persons. The participant’s task was to name the person during recall-stimulus after each of the photographs. The participant’s responses were classified as “Recognized,” “TOT,” and “Not recognized.” Our results indicated that blink suppression occurred most frequently while waiting for the recall-stimulus period in “Not recognized” responses, whereas suppression occurred least frequently in TOT responses. We conclude that blink suppression and occurrence is related to memory-system-access processing.