著者
藤井 茜 巷岡 祐子 河野 達夫 榎園 美香子 槙殿 文香理 陣崎 雅弘
出版者
日本小児放射線学会
雑誌
日本小児放射線学会雑誌 (ISSN:09188487)
巻号頁・発行日
vol.39, no.1, pp.47-51, 2023 (Released:2023-04-15)
参考文献数
9

胸骨骨折は,長管骨骨幹部骨折や肋骨骨折と同様に児童虐待を示唆する最も特異な徴候の一つと考えられているが,文献的にはあまり報告されていない.胸骨骨折の多くは胸骨柄と体部の間で起こり,特に小児では分節脱臼/骨折の形式を示す.ルーチンの全身骨単純X線写真撮影法は,上肢との重なりや不適切な撮影範囲により,胸骨病変の描出が不十分で評価に適さない場合がある.胸骨を意識して,脊椎側面像を上肢挙上位で撮影する,胸骨側面ターゲット撮影を追加するなどの工夫が有用である.また胸部CTは急性期・陳旧性ともに骨折の検出に優れる.虐待を見逃した場合の影響の重大さに鑑みて,臨床的に虐待が疑われるにもかかわらず画像上の確証に乏しい場合には,胸部CTを積極的に用いることが正当化されると考える.日本医学放射線学会画像診断ガイドライン(2021)では,虐待を疑う状況における肋骨骨折の検出に関して,適切な線量設定のもとに胸部CTを行うことを弱く推奨している.
著者
熊谷 成将
出版者
Japan Society of Sports Industry
雑誌
スポーツ産業学研究 (ISSN:13430688)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.1_71-1_81, 2022 (Released:2022-01-20)
参考文献数
18

Pacific league teams have been the champion teams in the NPB for the recent eight years, and ability differences among the relievers in both leagues have been noted. Major determinants of team wins during the regular season might be different between both league teams. To explore the determinants of win rate in each league, the current study analyzed team stats. Two major findings associated with baseball stadium size were found. First, central league teams can offset poor pitching performance by batting, although the effect of good pitching on team wins among central league teams is smaller, compared to that of pacific league teams. Second, increasing the number of stolen bases per game does not have a significant effect on team wins. Pitchers in the central league teams should improve pitch mix to reduce the number of home runs allowed per game.
著者
島田 昱郎 村中 英寿
出版者
石油技術協会
雑誌
石油技術協会誌 (ISSN:03709868)
巻号頁・発行日
vol.53, no.6, pp.463-474, 1988 (Released:2008-03-27)
参考文献数
25

The Neogene formations in the Noto Peninsula are widely distributed as an extention of the “Green tuff” basin formed in the inner zone of Northeast Japan. The Suzu and the Himi-Nadaura areas, among them, are well known as the standard Neogene sequences of the Noto-Hokuriku district, Central Japan.In order to obtain some information on geochemical evaluation for petroleum source rock, 119 argillaceous rock samples collected from each Formations of both areas mentioned above were examined through the stratigraphic variation of organic constituents and maturation obtained by extractable organic matter, visual kerogen and Rock-Eval analysis.The average values of organic carbon contents of the Nazimi and the Iizuka Formations (Middle Miocene) in the Suzu area, and the Sugata Formation (Middle Miocene) in the Himi-Nadaura area are high more than 2.0 per cent. They are higher than ones of the other Neogene oil field areas along the Japan Sea side. The results of Rock-Eval analysis, however, show that argillaceous source rocks from these Formations are immature in terms of organic maturation. Althogh the source rocks are immature, on the basis of those results and other geochemical and geological information, some considerations on the expectancy for the occurrence of immature hydrocarbon deposits in this distrct have been also presented.
著者
宮部 浩道 後長 孝佳 安藤 雅規 波柴 尉充 都築 誠一郎 田口 瑞希 植西 憲達 武山 直志
出版者
一般社団法人 日本集中治療医学会
雑誌
日本集中治療医学会雑誌 (ISSN:13407988)
巻号頁・発行日
vol.22, no.6, pp.523-526, 2015-11-01 (Released:2015-11-06)
参考文献数
8
被引用文献数
1 1

水中毒に起因する低Na血症は,多量の利尿を引き起こし急激な血中Na濃度上昇をきたすことがあり,osmotic demyelination syndrome(ODS)を惹起する危険性がある。我々は水中毒に伴う低Na血症の急激な補正を防ぐ目的で,大量の自由水輸液を施行した症例と酢酸デスモプレシンと3%高張食塩水を併用した症例を経験した。いずれも血中Na濃度上昇は12 mmol/l/day以下に制御可能であった。水中毒に起因する重症低Na血症の治療に際し,酢酸デスモプレシンと3%高張食塩水を使用した治療法は,有効かつ安全であると考えられた。
著者
下橋 淳子 西山 一朗
出版者
日本食生活学会
雑誌
日本食生活学会誌 (ISSN:13469770)
巻号頁・発行日
vol.19, no.3, pp.247-250, 2008-12-31 (Released:2009-05-01)
参考文献数
11
被引用文献数
4 1

色調の異なる味噌の表面色と80%エタノール抽出液のDPPHラジカル消去能を測定し, 味噌の熟成中に生成したメラノイジンの生成量と抗酸化性の関係を調べた。さらに, 0.5M-L-リジンと0.5M-D-グルコースの等量混液によるアミノカルボニル反応液の着色度とDPPHラジカル消去能の関係からもメラノイジンの生成量と抗酸化性との関係を検討した。1) 味噌の表面色の明度とDPPHラジカル消去能の間には, 相関係数r=-0.755 (α‹0.05) で有意な負の相関が認められた。2) 味噌の熟成過程におけるアミノカルボニル反応で生成したメラノイジンが多く, 赤褐色化の進んだ味噌ほどDPPHラジカル消去能が高値を示した。3) 大豆の抗酸化成分を多く含む豆味噌の八丁味噌や赤だしは, 米味噌や麦味噌と比較してDPPHラジカル消去能がかなり高かった。4) 0.5MのL-リシンとD-グルコースの等量混合液によるアミノカルボニル反応液には, 着色度とDPPHラジカル消去能の間に相関係数r=0.961 (α‹0.01) で強い正の相関関係が認められた。
著者
田村,正人
出版者
家屋害虫研究会
雑誌
家屋害虫
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, 2003-11-29

広義の食用昆虫には家屋害虫も少なくない.昆虫を適正に食べることは,動物性たんぱく(蛋白)資源の有効利用や害虫防除にもなるので,日本の代表的な食用昆虫,コバネイナゴ・クロスズメバチ・タマムシ・シロスジカミキリおよびアブラゼミ等の生態について述べた.三宅(1919)によると,日本の食用昆虫は8目55種で,最も多かったのはハチ目の14種,次いでチョウ目の11種,バッタ目の9種,甲虫目の8種などが多かった.薬用昆虫は10目123種にのぼり,最も多かったのは甲虫目の32種で,次いでチョウ目の26種,以下,順にカメムシ目の12種,ハチ目の9種,トンボ目の7種,バッタ目とハエ目の各6種,カマキリ目の4種などへと続く.いなご(蝗)は,全国の都府県で等しく食べられる国民的な食用昆虫で,かつては農村における秋の風物誌であった「いなごとり」も,強力な殺虫剤等の出現によって1950年代以降激減したが,1980年頃より水田をとり巻く環境の変化によってコバネイナゴが全国的に再び大発生の傾向にある.その後,飽食の時代を迎えた日本国民の関心は次第に「医食同源」に向いつつあるように思われる.いなごに次いで「蜂の子」が過半数の都道府県で食べられているのは,蜂類は社会性昆虫で,一度に大量入手が可能なためと思われる。昆虫は栄養価が高く,強壮剤として用いられるほか,薬用としては小児の疳(かん)に効くのが最も多い.現在,各地で人が食べている昆虫は,長い間の経験に基づいて伝承されて来たものであるからまずは食べられる昆虫と言えるが,できるだけ新鮮なものを食べ,安全性には充分配慮する必要がある.
著者
更科 紗和子 松崎 孝 小野 大輔 中村 龍 賀来 隆治 森松 博史
出版者
一般社団法人 日本ペインクリニック学会
雑誌
日本ペインクリニック学会誌 (ISSN:13404903)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.1-4, 2021-01-25 (Released:2021-01-25)
参考文献数
10

ドライアイ類似の慢性難治性眼痛の3症例を経験した.当院の眼科治療後難治性眼痛の治療プロトコールに基づき,オキシブプロカイン点眼検査,リドカイン静脈内投与,薬物療法,神経ブロックを行い,痛みの機序を考慮し診断的治療を施行した.眼科領域では,客観的所見と疼痛の乖離を説明する概念として神経障害性眼痛(neuropathic ocular pain:NOP)が報告されているが,病態が国際疼痛学会の提唱する神経障害性痛の定義に適さないため,本稿では神経障害性痛を部分的に有する神経障害類似の眼痛(neuropathic like ocular pain:NLOP)と定義して症例を提示した.
著者
日本集中治療医学会臨床倫理委員会
出版者
一般社団法人 日本集中治療医学会
雑誌
日本集中治療医学会雑誌 (ISSN:13407988)
巻号頁・発行日
vol.27, no.3, pp.231-243, 2020-05-01 (Released:2020-05-01)
参考文献数
5
被引用文献数
1

日本集中治療医学会(以下,本会)臨床倫理委員会は,本会の正会員のうち看護師免許を有する者を対象に,集中治療領域においてDo Not Resuscitate(Do Not Attempt Resuscitation)〔以下,DNR(DNAR)〕の正しい理解と治療の開始・不開始,差し控え,中止の状況や,看護師の意識が2016年の調査結果1)と比較して,どのように変化したかを明らかにするためにアンケート調査を実施した。DNR(DNAR)の教育を受けたと回答した割合は,2016年の調査結果より有意に増加した。また,教育を受けた場所で最も多かったのは,学会主催のセミナーであった。DNR(DNAR)指示により,心停止時の心肺蘇生以外に侵襲の高い生命維持装置などの治療の終了や差し控えが行われている現状や,本来の対象以外にDNR(DNAR)が拡大解釈され誤用されている現状に変化はなかった。DNR(DNAR)の判断に,複数の医師と医師以外の医療従事者で行うと回答した割合は増加した。さらに,本調査では3学会合同「救急・集中治療における終末期医療に関するガイドライン」2)と厚生労働省の「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」3)を読んだと回答した者のうち,使用した経験を有したのは3,4割であった。また,本会より「Do Not Attempt Resuscitation(DNAR)指示のあり方についての勧告」4)が発表されたが,未だ臨床現場において混乱が生じている。したがって,本会臨床倫理委員会は,DNR(DNAR)の正しい知識と理解を得るため,繰り返し教育の機会を設ける必要性がある。
著者
伊藤 虹児 和穎 朗太
出版者
日本土壌微生物学会
雑誌
土と微生物 (ISSN:09122184)
巻号頁・発行日
vol.77, no.1, pp.18-28, 2023-04-30 (Released:2023-04-30)

地球上で屈指の微生物多様性を有する土壌では,土壌微生物群集が物質循環(生物地球化学的サイクル)を駆動し,その活動が植物への養分供給や気候調節といった生態系サービスを可能にしている。これを保全し,精緻に制御・予測するためには,土壌環境と微生物群集を併せた理解が不可欠である。しかしながら,バルク土壌を均質とみなした従来のアプローチでは土壌が本質的に内包する不均質性を見落とす可能性がある。そこで本稿では,先ず土壌環境中の不均質性の源である3 つの重要な要素;固相成分(母材,有機物,有機無機複合体),団粒構造と階層性,土壌孔隙を概説する。次に,これらの要素が生み出す不均質性と土壌細菌群集構造の関係性,また生態学的フレームワークを基にした土壌細菌群集の生態に関する研究例について紹介する。複雑な微生物群集構造と微生物ハビタットとしての微視的土壌環境を高解像度に解析できるようになった現在,土壌の微生物生態および微生物の駆動する陸域の物質循環の理解を格段に深化するチャンスが訪れており,将来的に土壌プロセスの理解の精緻な予測および持続的農業を支える土壌管理への基礎になることが期待できる。
著者
穴井 宏和 柴崎 亮介
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.57, no.1, pp.228-239, 2022-04-25 (Released:2022-04-25)
参考文献数
22

本研究の目的は,起業家の出身大学・出身企業とスタートアップの地理的近接性が成長に影響することを明らかにすることである.起業家の出身大学・出身企業は,外部リソースを調達するためのソーシャルキャピタルである.スタートアップのミッションは,社会課題を解決してイノベーションを引き起こすことと短期間で高成長を実現することとである.一方で,創業初期のスタートアップには,成長のためのリソースが不足している.起業家は,社会的なつながりであるソーシャルキャピタルを通してリソースを動員する必要がある.本稿では,スタートアップが成長するためには,単にスタートアップ集積地に立地することでは効果がなく,リソースとの近接性が成長要因であることを主張する.
著者
首藤 祐介 山本 竜也 坂井 誠
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.41, no.2, pp.137-147, 2015-05-31 (Released:2019-04-06)
被引用文献数
2

行動活性化療法は生活の中で強化される経験を増やす行動を活性化することを目的とした、抑うつのための構造化された短期療法である。本事例においては、大うつ病性障害により休職に至った29歳の男性に対して活動スケジュールと回避行動への介入を中心とした14回のセッションと2回のフォローアップ(1回45分)を実施した。その結果、活動が増加するとともに、Self-rating Depression Scale(SDS)の得点が65点から37点に減少していた。1年後もSDSの得点が37点であり、長期間効果が維持されることが明らかになった。このことから、行動活性化療法は回避行動や反すう、生活習慣の乱れによって抑うつ状態にあるクライアントに効果が期待でき、復職支援にも有効であると考えらえる。
著者
西尾 千尋
出版者
日本生態心理学会
雑誌
生態心理学研究 (ISSN:13490443)
巻号頁・発行日
vol.14, no.1, pp.35-50, 2022-05-01 (Released:2022-06-27)
参考文献数
53

近年,乳児の歩行の発達は,運動学的な観点からだけではなく,言語発達や社会的相互行為との関連に焦点を当てて研究されている.Adolph は,運動発達と行動の変化の関係について,新しい運動スキルを獲得することが,様々な心理的領域にまたがる発達的変化につながるという,発達のカスケードとして捉える見方を示した.本研究では,歩行を中心とした乳児の移動の運動発達研究を行ってきた Adolph の研究を概観し,研究のキーワードである,柔軟性と経験,変動性,日常の環境の観点から検討を行った.それらを踏まえ,移動の発達を生態学的な観点から研究することが,発達研究のこれからの展開にもたらす意義について考察した.