著者
神崎 真哉
出版者
近畿大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究は、マンゴーの花成制御因子とされるMiFTの発現様式を解析し、環境要因や樹体要因がMiFTの発現と花芽形成に及ぼす影響を調査するとともに、MiFT以外の花成関連遺伝子を単離して解析することを目的として行った。その結果、MiFTの発現増加には15℃以下の低温に約130時間遭遇すれば十分であることが示された。また、葉齢によってMiFTの発現量が異なることも明らかとなった。一方、MiFT以外の花成関連遺伝子として、低温遭遇前後で発現量が変動する候補遺伝子をいくつか得ることができ、現在解析を進めている。
著者
池田 賢司
出版者
名古屋大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2012

本年度は, メタ理解の正確さに関して, 文章の読解過程を規定する要因として達成目標に焦点を当てた検討を行った。達成目標は大きく習得目標(例えば, 課題を通じて認知能力を向上させる)と遂行目標(例えば, 他の人よりも課題でより高い点数を獲得する)に分類される。特に習得目標はモニタリングを含むメタ認知的活動と関連しているため, 読解中に自分自身の理解状況や処理過程をモニタリグしていると考えられる。そのため, 習得目標が与えられた場合には, 遂行目標が与えられる場合に比べメタ理解は正確になることが予測される。実験では, 実験参加者にはまず達成目標の教示が与えられた。なお, 本実験で用いた教示により, 参加者の達成目標を操作可能であることが, 先行研究により示されている。達成目標の教示が与えられた後, 参加者に6本の文章の読解を求めた。読解後, 各文章の理解度を7件法で評定させた。最後に理解テストを実施した。実験の結果, 統計的な有意差は検出されなかったものの, 習得目標が与えられた場合に, 遂行目標が与えられた場合に比べ, メタ理解はより正確になるという仮説と一致するパターンが得られた。効果量の推定などから, 本研究において有意差が検出されなかったのは, サンプリングエラーの可能性も十分に考えられるため, 今後の研究へ向けての重要な指針を提供する研究となったと考えられる。また, メタ理解の正確さの介入法として, 本研究から目標の操作という可能性を提示できたといえる。つまり, 学習者に習得目標を持たせるよう方向付けることができれば, メタ理解の正確さは改善する可能性がある。しかしながら, 習得目標で得られたメタ理解の正確さもそれほど正確なものとはいえないため, メタ理解の正確さをより改善する方法, あるいは向上させる要因を明らかにすることが今後の研究では重要になると考えられる。
著者
荻野 弘之 佐良土 茂樹 辻 麻衣子 中村 信隆
出版者
上智大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

(1)幸福主義の源泉であるアリストテレス倫理学研究の進展。複数の倫理学書を総攬することで「包括主義」対「卓越主義」の論争に対して調停的な読解の可能性を探った。(2)ヘレニズム時代とローマ期ストア哲学の幸福論の読み直し、特にエピクテトスの現代的読解の可能性を開拓した。(3)1980年代以降の徳倫理学の隆盛は哲学史的研究の深化と連動しているが、コーチングを哲学的に基礎づける新しい試みを開拓しつつある。(4)「人生の意味」を問題とする倫理学の傾向に対して、幸福の概念を幸福感という主観的要素に還元しようとする前提の妥当性を検証した。(5)これは昨今経済学で言及される「幸福度」の指標の批判に通じる。
著者
長尾 真 中村 裕一 小川 英光 安西 祐一郎 豊田 順一 國井 利泰 今井 四郎 堂下 修司
出版者
京都大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1994

感性情報は情報科学でこれまで取り扱ってきた情報に比べ、はるかに微妙なものであり、また主観的、多義的、状況依存的で曖昧なものである。従って、情報科学的なアプローチと心理学、認知科学的アプローチの両者の共同により、この微妙で曖昧な情報の客観的な記述と抽出、感性情報のモデリングの研究を行った。得られた成果は次のようである。多くの会合を持ち、討論を行なって、感性情報の概念を明らかにした。 (全研究分担者)変換構造説に基づいて感性的情報の認知機構を明らかにした。 (今井) 画像パターンの学習汎化能力に感性的情報がどのようにかかわるのかの学習モデルを作成した。 (小川) 官能検査法の感性の計測に利用する方法を明確化した。 (増山) 新しい人間の視覚現象を発見し、そのメカニズムの研究を行い、画像の認知における感性の働きを究明した。 (江島) 微妙な曲率をもった曲面の見え方の画像解析の研究を行い、三次元世界と二次元世界との対応について究明した。 (長尾、中村) 雑音の聞こえ方についての実験を行ない、人間の感性にかかわる概念との関係を明かにした。 (難波) 音声の微妙な特徴の抽出の研究を行ない、同様な概念との関係をを明かにした。 (河原) 人間の表情変化の計測をし、その位相情報を取り出し、人間の感情との関係を明かにした。 (国井) ロボットのセンサーフュージョンと自律性についての実験を行ない、感性的行動のできるロボットの基礎を与えた。 (安西) ソフトウェアの使い易さ、使いにくさを感性的立場から評価した。 (豊田) テキスト・リーディングにおける人間の眼球運動の観察を行ない、視覚の感性的側面が果たす役割、効果を明かにした。 (苧阪)
著者
菊地 達也 鎌田 繁 柳橋 博之
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

本研究の目的は、シリアにおいて大きな政治的影響力を持つイスラム少数派、アラウィー派(ヌサイル派)の思想形成の過程を解明し、彼らとの類似点が多く関係も深いドゥルーズ派との比較を通じ歴史的シリアにおける少数派の文化的特徴を明らかにすることであった。研究の結果、アラウィー派の源流思想はイラクにおけるイマーム派系の極端派伝統の中から生まれたものであり、少数派相互の関係性の中でそれぞれの独自の思想が形成されたことが判明した。
著者
安保 正一 山下 弘巳
出版者
大阪府立大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1997

色素ロ-ダミンB(RhB)をミクロ孔やメソ孔を有するゼオライト(ZSM-5、MCM-41)に吸着させ、担体の変化に伴うRhBの光物理化学特性の違いについて検討した。RhBの分子径よりも小さい細孔を有するZSM-5ゼオライトに吸着したRhBは蛍光寿命がnsオーダーのものに加え数百psオーダーの蛍光寿命を示し、RhBがゼオライトの外表面に、モノマー種およびダイマー種として存在することが解った。一方、RhBの分子径より大きいメソ細孔を有するゼオライトに吸着したRhBの蛍光寿命はnsオーダーの長い寿命成分のみが観測され、モノマー種のみでダイマー種の存在は見られないことが解った。すなわち、メソ細孔を持つゼオライトを用いて機能性色素を孤立した分布状態で吸着できることが解った。さらに、Ti種が四配位構造で高分散状態で固定化されているTi-MCM-41ではTi種とRhBが相互作用することにより、高い吸着量の範囲まで孤立した分布状態でRhBが存在できることを見出し、光増感型光触媒系の設計に適した反応場を構築できることが解った。また、Ti-MCM-41触媒は光照射下NOを選択性良くN_2とO_2に分解し、主にN_2Oを生成する粉末TiO_2光触媒とは異なった反応性を示した。以上の結果は、RhB-Ti-MCM-41が可視光照射下で機能し、粉末TiO_2光触媒系と全く異なる触媒選択性を有する色素増感光触媒として作用する可能性を強く示唆するもので、新規な光触媒の設計に重要な知見を与えるものである。
著者
吉田 朗彦
出版者
国立研究開発法人国立がん研究センター
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

小円形細胞肉腫とは、小型の円形細胞の増殖からなる肉腫の総称である。この中にはユーイング肉腫など既知の腫瘍型も複数含まれるが、5-10%ほどの症例は現在の診断基準では分類できず、そうしたなかに再認可能な腫瘍型を同定することが、最適な治療法の選択や開発に不可欠である。我々は、次世代シーケンスをはじめとした遺伝子解析や臨床病理学的解析を用いて分類不能小円形細胞肉腫を詳しく調べ、CIC遺伝子融合陽性肉腫やSMARCA4欠損型胸部肉腫といった、新しい腫瘍型の臨床病理像や遺伝子異常を明らかにした。
著者
戸井田 敏彦
出版者
千葉大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

コンドロイチン硫酸(以下CS)は,グリコサミノグリカンに属する酸性多糖類である。構造的にはGalNAcにGlcAがβ1-3結合した二糖を構成単位とした繰り返し構造をもつ直鎖状多糖鎖で、GalNAcのC4位またはC6位,あるいは,GlcAのC2位に硫酸がエステル結合した化合物である。今回CSの経口的摂取における生体調節機能を明らかにするために,賦与が予想される抗炎症活性および抗アレルギー活性について,腸管免疫系に焦点を絞り,全身性免疫系への影響を分子レベルで定量的に解析した。その結果、以下のことが明らかになった。1.ウシ気管軟骨由来CS(分子量分布8〜22kDa、平均分子量15kDa)のマウス腸管からの吸収は、投与量の0.01%以下であること。2.上記CSを分子量により分画しても各画分のCSの硫酸化度、硫酸化の位置に違いがないこと。3.分子量12kDa以上のCSはほとんど経口吸収されないこと。4.腸管上皮間リンパ球(IEL)膜表面上のL-セレクチンにCSが結合し、サイトカイン産生を介して全身性免疫系を刺激すること。5.腸管吸収されたCS(分子量7〜5kDa)は脾臓細胞のヘルパーT細胞のI型、II型への分化誘導に機能すること。以上経口投与したCSはその分子量により代謝的運命が異なるものの腸管免疫系を介して全身性免疫に対しても作用する可能性が明らかになった。
著者
高松 哲郎 山岡 禎久
出版者
京都府立医科大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

ヒトの組織や臓器を生きたまま見る方法として、エックス線断層撮影法、磁気共鳴画像(MRI)法、超音波断層撮影法など様々な方法があり、実際に医療の現場で頻繁に使われ威力を発揮している。しかしながら、それらの方法の空間分解能はたかだか数ミリメートルであり、様々な創意工夫により年々その分解能は向上されているが、原理的測定限界がある。一方、光を使った生体計測が、近年注目されており、光コヒーレンス断層映像法(OCT)に代表される医療への応用が発展してきている。光を使うと非常に高い空間分解能で測定が可能であるが、反面、光は生体により散乱、吸収されやすいという性質を持つため、生体への浸透深度が短いという欠点があり、OCTの応用は血管内膜のように厚さが薄いもの、あるいは眼など比較的透明なものに限られてしまう。例えば、末梢血管のような10μmから100μmの大きさのものを生体深部で捉える方法がこれまでになかった。本研究では、光の高空間分解性と、超音波の生体内長距離伝播特性の両方を利用した、全く新しいイメージング技術である多光子励起光音響イメージング(multiphoton excitation-assisted photoacoustic tomography(MEAPAT))を提案した。この方法では、近赤外域の高ピークパワーを持つ光パルスを利用する。生体内に光パルスを集光して入射させると、焦点での高光密度により、焦点部でのみ非線形な吸収効果が誘発される。その非線形な吸収による光音響波を測定することにより、生体深部を高空間分解能で観測できる。様々な実験や考察(MEAPATと従来型光音響イメージングとの比較、MEAPATの深さ分解能の見積り、MEAPAT信号を増強する工夫)を行い、提案している方法によるイメージングシステムを構築し、その有効性を示した。結果は、MEAPATが生体深部を10μm以下の空間分解能で計測するのに極めて有効な方法であることを示している。
著者
毛利 嘉孝 清水 知子 近藤 和都 大久保 遼 日高 良祐
出版者
東京藝術大学
雑誌
国際共同研究加速基金(国際共同研究強化(B))
巻号頁・発行日
2019-10-07

2020年代初頭のメディアテクノロジーの発展が表現やエンターテインメント、文化芸術とそれを享受する人々の生活様式にどのように影響を与えているのか日本とアメリカのメディア環境、社会の比較研究を通じて明らかにする。特に(1)企業やサービス提供者、文化実践者(アーティストや開発者)(2)これを享受している若者層(主として大学生を中心とした男女)(3)大学研究者に対するフィールドワーク、聞き取り調査を中心とした質的な調査と資料収集・文献調査を通じて分析を行う。
著者
吉野 和寿
出版者
九州大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2005

δ-アミノレブリン酸合成酵素(ALAS)はミトコンドリアマトリックスに局在する短寿命タンパク質として知られている。ALASはヘム生合成系の律速酵素であることから、酵素量の調節はポルフィリン症と密接に関係している可能性がある。本研究ではALAS量の調節に関し、ラット肝臓ミトコンドリアにおけるALAS分解とその制御について検討した。これまでに初代培養ラット肝細胞及びミトコンドリアにおいて、ヘム生合成阻害剤存在下でALAS分解が抑制され、さらにhemin添加によりその抑制が解除されることを見出している。このことは、ヘムによる律速酵素分解速度調節を介したヘム生合成制御機構の存在を示唆するものである。昨年度、ALAS分解制御について解析した結果、ミトコンドリアにおけるALAS分解を促進する因子として、ヘムの他にcysteine (Cys)とascorbic acid (ASA)を同定した。今年度、これらの因子により促進されたALAS分解について解析を行い、以下に示す結果が得られた。ヘム生合成阻害剤投与ラット肝臓ミトコンドリアにおけるALAS分解について、プロテアーゼ阻害剤の影響を検討したところ、(1)Cysにより促進されるAbAS分解は、システインプロテアーゼ阻害剤であるleupeptinやE-64dにより阻害された。(2)heminやASAにより促進されるALAS分解は、leupeptin、E-64d、PMSF、o-phenanthoroline、epoxomicinにより阻害されず、効果的なALAS分解の阻害剤を見出すことが出来なかった。しかしながら、このALAS分解はラジカルスカベンジャーであるMCI-186により阻害された。これらの結果から、ミトコンドリアにおけるALAS分解は、システインプロテアーゼによるものとラジカルが関与するものの少なくとも2通りの分解様式があることが示めされた。
著者
河端 隆志 小田 伸午
出版者
関西大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

スポーツ時の精神的・身体的疲労が視覚情報-認知・運動制御能及び身体的行動体力の機能別に及ぼす影響について検討した。その結果、身体的行動体力の機能に及ぼす影響は高強度間歇的運動前後でVO2maxに13%の低下、サイドステップ及び前後方向ステップ動作に疲労の影響が強く現れた。また、・運動時視覚認知-運動制御系に及ぼす影響では、20分間運動時の認知―運動制御テストにおいて正答率は安静時に比べ各運動時テストにおいて増加したが、運動時テスト2回目と3回目では、正答率が低下、無回答率も低下し、平均正答時間は安静時に比べ1回目に短縮するが2回目及び3回目では正答までに時間を長く要する結果となった。
著者
海野 福寿
出版者
明治大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1992

1990年5月の慮泰愚韓国大統領の来日を契機に提起された朝鮮人強制連行問題は、その後の韓国人被害者が提訴した補償請求裁判やジャーナリスト・市民グループによる調査研究によって、動員の実態が明らかにされつつある。それは日本人に朝鮮植民地支配の責任を自覚させるうえで大きな役割を果たしたが、歴史学的見地からみた時、いまだ体系的・構造的にはとらえられていないように思われる。本研究は、そのような現状をふまえ、主として公開資料によりながら朝鮮人強制連行を政策史的観点から跡づけようとするこころみである。主要論点は以下のとおりである。1.強制連行の定義:植民地における強制連行の"強制性"を物理的強制としてではなく、法律と命令による法的強制に求めた。これにより占領地における労働力徴発や俘虜の強制労働と区別した。2.強制連行政策:3段階に区分される強制連行の政策的展開を、朝鮮における労働力再配分計画および戦争末期の軍要員確保政策との関連で位置づけた。3.動員規模:国外への動員数のみならず、朝鮮国内動員数についても把握することに努めた。推計値は国外119万人、国内319万人である。4.動員実態:韓国政府記録保存所所蔵の「倭政時被徴用者名簿」により慶尚北道48,021人分、慶尚南道29,864人分について実態分析を行った。5.違法性:1930年国際労働総会採択の「強制労働ニ関スル条約」等の労働規約の観点から朝鮮人強制連行の違法性と日本政府の責任を明らかにした。
著者
石坂 昌司 中川 真秀
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2018-04-01

エアロゾルを足場とした雲粒の発生過程は、気候変動予測における最大の不確定要素である。大気中には多種多様な微粒子が混在しているため、微粒子集合系の平均値解析では現象の解明に限界があり、個々の微粒子を直接観測可能な分析手法の開発が強く望まれる。本研究では、特に気候への影響が大きく、従来のレーザー捕捉法が適応できない黒色炭素粒子に着目し、単一の黒色炭素粒子を空気中の一点に非接触で浮遊させ、雲粒の発生を再現する新規計測法を開発する。これまでに我々が開発したドーナツビームを用いるレーザー捕捉法では、ロウソクの燃焼により発生した煤を一旦、固体基板の上に捕集し、マイクロマニピュレーターを用いて固体基板から黒色炭素微粒子を気相中に持ち上げ、レーザー捕捉空間内に導入する必要があった。2019年度は、燃焼によって発生した黒色炭素微粒子を固体基板に捕集することなく、そのままレーザー捕捉し計測するための実験手法の改良を行った。線香の燃焼によって発生した煙(黒色炭素微粒子)を光学顕微鏡のステージ上に設置した反応容器へ直接導入し、気相中において観測することに成功した。また、黒色炭素微粒子のオゾンによる不均一酸化反応を誘起するため、オゾン発生装置を設備備品として導入した。オゾンの発生量は、原料ガスの種類(空気または酸素)及びガスの流量に依存する。ヨウ化カリウム水溶液にオゾンガスを通過させ、遊離したヨウ素を酸化還元滴定することによりオゾンを定量し、実験条件の検討を行った。
著者
山下 桃
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2015-04-24

本研究では,中生代の海生爬虫類モササウルス類の視覚復元をするために,近縁関係にある現生トカゲ類の眼球の軟組織と硬組織の関係性を明らかにし,化石として保存される鞏膜輪を用いた古脊椎動物の眼球構造の復元指標を構築することを目指した.鞏膜輪とは眼の中に形成される輪状の骨組織であり,魚類や鳥類を含む爬虫類に見られる.本研究では,現生トカゲ類54属58種について,鞏膜輪の内径・外径(硬組織)と水晶体の径,入射瞳の径,視軸長(軟組織)の相関関係を明らかにするために線形回帰分析を行った.その結果,鞏膜輪の内径と水晶体の径・入射瞳の径,鞏膜輪の外径と視軸長に強い相関関係があることが示された.またそれぞれの硬組織と軟組織の相対成長については,硬組織に対して軟組織が劣成長を示すことが明らかになった.さらに,系統一般化最小二乗法(Phylogenetic Generalised Least Squares:PGLS)による解析を行い,系統的影響を取り除いて各組織の関係性を求めた場合においても,劣成長の傾きはやや異なるが,それぞれの組織は相関関係にあることが示された.これらの結果を用いることで,絶滅爬虫類において鞏膜輪から眼球の軟組織の大きさをより正確に推定することが可能となり,視覚機能の推定と生態の復元が可能となった.また,水生適応が鞏膜輪の形態に及ぼす影響を調べるために,カメ類の鞏膜輪を比較した.カメ類は完全水生適応した現生爬虫類である.陸生種・水生種の鞏膜輪の形態を比較することで,水生適応による鞏膜輪の形態の変化の有無を明らかにできる.4種の陸生種,3種の海生種,2種の淡水性種の鞏膜輪の形態を比較したところ,1種のリクガメ類を除いて全ての種において鞏膜輪の形態に変化はなかった.このことから,カメ類においては鞏膜輪の形態に水生適応の影響はなく,系統的制約が強く働いていると考えられる.
著者
吉村 孝司
出版者
明治大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2010

企業による経営行動にはイノベーションのような社会に寄与する行動と、企業不祥事のような反社会的行動が存在し、その展開状況は特定企業に集中または連続・反復する場合が多い。本研究はこうした現象の要因としての個別企業が保有する企業遺伝子を企業対象アンケート調査により解明し、二種の企業遺伝子の存在を検証するとともに、創業期間の長期化に伴い、企業遺伝子の独自性が強化されていく傾向の存在を確認した。
著者
二宮 周平 立石 直子 金 成恩 嘉本 伊都子 高田 恭子 梅澤 彩 松久 和彦 松村 歌子 佐々木 健
出版者
立命館大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2019-04-01

3つの研究チームを設け、第1に「子の養育保障システム」として、①離婚後の親権・監護権の共同化、②面会交流の継続的実施を保障する仕組み、③養育費の分担と履行確保の仕組みを取り上げ、第2に「子の意思反映システム」として、④子の意見表明の保障、⑤子への情報提供、⑥子どもの手続代理人の活用を取り上げ、第3に「合意解決促進システム」として、⑦協議離婚、家事調停各段階の合意解決の促進、⑧DV事案への対応、⑨国際離婚とハーグ条約への対応を取り上げ、実務や隣接諸科学等からの検証を受け、現実的な「親の別居・親の離婚における子どもの権利保障システム」を構築する。
著者
清水 誠
出版者
東京大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

TGR5は胆汁酸をリガンドとするGタンパク質共役受容体であり、その活性化は抗肥満・抗糖尿病効果を示すことが知られている。本研究では、TGR5を活性化する食品成分のスクリーニングを行い、ノミリンを含む複数の食品成分を同定した。動物実験の結果から、ノミリンは肥満や耐糖能異常を改善する事を明らかにした。また、TGR5を活性化する他の成分(成分A)に関しても、高脂肪食による体重増加を抑制する効果がある事を明らかにした。