著者
大月 隆寛 岡田 顕宏 坂梨 夏代 武井 昭也 横田 久貴 飯田 俊郎 菊地 暁 赤川 智保 吉岡 精一
出版者
札幌国際大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

メディアコンテンツと「地域」の関係について、従来の人文社会系諸領域からのアプローチを方法的に概括し、激変しつつある現在の情報環境において有効な新たな視角を学際的・領域横断的に模索する考察を行った。文化資源としてのメディアコンテンツの視点から、富良野市および近郊にある「文化資源(文化財資産)」の調査を行い、富良野が持つ文化資源の掘り起こしと、それが町の活性化-町おこしにどう利用されているのかを歴史的に捉え現在の問題点の抽出を試みた。官民連携についての住民の意識についての調査も行い、『北の国から』がどのように記憶されているのか、当時実際に関わった人たちなどへの聞き書き取材もできる限り行った。
著者
長谷川 毅 西脇 宏樹 矢嶋 宣幸 大田 えりか 野間 久史
出版者
昭和大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2019-04-01

質の高い「チーム医療」の実現には、「多職種連携教育」が重要である。「根拠に基づいた医療」を実践するために「臨床研究リテラシー」は全ての医療者に必須の能力として求められている。「臨床研究リテラシー」の習得のためには、知識の学習だけでなく実際にデータを用いて臨床研究を実践することが非常に効果的であるが、データの入手、整備や構築が困難なことが少なくない。本研究は「多職種連携教育」の一環として情報通信技術を活用した「臨床研究リテラシー」修得のための実践研究である。「系統的レビュー」英文原著臨床研究論文出版活動を継続的に支援し、「臨床研究リテラシー」の普及と次世代の指導的人材育成を行う。
著者
岡野 ジェイムス洋尚
出版者
東京慈恵会医科大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2015-04-01

細胞1個もしくは少数の細胞からなる神経回路を狙い撃ちして照射し観察できる放射線医学総合研究所のマイクロビーム細胞照射装置 (SPICE)を活用し、陽子線によって引き起こされる神経活動を経時的に観察した。細胞内カルシウムを可視化する蛍光色素を細胞内に導入し、顕微鏡による経時的蛍光イメージングを行い、マイクロビーム照射時と非照射時のニューロンの活動を比較検討した。細胞はマウス大脳皮質由来一次培養ニューロンを使用した。その結果、照射したニューロンは照射直後に活性化し、逆に照射細胞周辺のニューロンでは活動の低下が観察された。これらの観察から陽子線が神経活動・脳活動に影響を及ぼす可能性が強く示唆された。
著者
土生川 光成
出版者
久留米大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2003

比較的急性期で薬剤未投与のPTSD患者10名(PTSD群)に対して治療前後で主観的および客観的睡眠評価を行った。主観的睡眠評価は自記式の睡眠日誌と夢日誌にて、客観的睡眠評価は睡眠ポリグラフ検査(PSG)とアクチグラフ・モニタリングにて行った。PTSD群の治療前のPSG所見と、PTSD群と年齢・性別を一致させた健常者10名のPSG所見を統計学的(ANOVA)に比較した。PTSD群では健常者に比べ、中途覚醒時間が有意に増加し(35.9±19.7分 v.s 11.1±6.6分, P<0.01)、睡眠効率が有意に減少していた(85.5±2.5% v.s 94.9±2.1%, P<0.0001)。睡眠構築においてはPTSD群でStage 1睡眠が有意に増加し(11.6±5.7% v.s 6.8±2.8%, P<0.05)、Stage 3+4の深睡眠が有意に減少していた(7.9±7.4% v.s 18.1±7.9%)。また悪夢の訴えの多いPTSD患者ではREM睡眠の中断(REM interruption)が特徴的で、Percentage of REM interruptionsは健常者に比べPTSD群で有意に増加していた(9.8±8.6% v.s 2.2±1.8%)。さらにPTSD群ではCAPS(PTSD臨床診断面接尺度)の下位項目である悪夢の得点(頻度+強度)と中途覚醒時間およびPercentage of REM interruptionsが正の相関を示した(各々、R=0.77,P<0.01,R=0.63,P<0.05)。また夢日誌とアクチグラフ・モニタリングの組み合わせにより、PTSD患者2名で外傷体験に直接関連した悪夢の出現後に30-40分に及ぶ中途覚醒(睡眠維持困難)を認めた。これらの結果より、PTSD患者での外傷体験に直接関連した悪夢は、中途覚醒時間の増加やREM睡眠機構の異常(REM interruption)を引き起こす重要な因子であることが明らかとなった。内分泌学的検査は船舶事故後にPTSDを発症した3例で24時間ホルモン採血を施行したが、健常者に比べ、11:00から20:00の間のコルチゾールが低下せず高値を示した。これはPTSD患者では健常者に比べ、朝起床後から夕方までストレスが持続していることを示唆する所見であった。薬物療法の効果の検討では、パロキセチン投与により7例のうち4例で悪夢が消失し、3例で悪夢が軽減した。またベンゾジアゼピン系睡眠薬では十分な睡眠確保が得られず、熟眠感が欠如しているような場合、クロルプロマジン投与が有効であり、5例中4例で深睡眠が増加し、熟眠感の欠如も改善した。
著者
小椋 聡子 赤沼 潔 桐野 文良 塚田 全彦
出版者
東京藝術大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2020-04-01

研究の概要美術工芸、特に「金属工芸(金工:鋳金技法、鍛金技法、彫金技法)」の分野において、着色技法は作品表面を色彩豊かに表現する手法として重要な役割を担う。そのひとつに各地で伝承されてきた「おはぐろ(お歯黒)(鉄漿)」着色がある。現在も美術金工作品の色調表現として使用されているだけでなく、文化財美術品の保存修復や復元においても重要な要素となる。本研究では、各地の 「おはぐろ」着色液の組成および着色工程を系統的に調査するとともに、分析技術を用いて着色層の色調発現機構を解明する。さらに得られた知見を活用し、銅合金試料への着色再現を実施する。
著者
粂田 昌宏
出版者
京都大学
雑誌
挑戦的研究(萌芽)
巻号頁・発行日
2017-06-30

本研究は、音波で遺伝子をコントロールする技術の開発に向けて、①細胞音波照射設備の構築・②音波応答遺伝子の網羅的探索・③音波応答遺伝子領域の抽出・④音波による細胞分化操作、の各研究計画を推進した。その結果、独自に構築した音波照射システムを用いて、約400の音波応答遺伝子を同定することに成功した。これらの遺伝子の制御領域の音波応答性を検証したところ、有意な応答を示すものは得られたが、その応答性は高くはなかった。筋・骨細胞分化に対する音波照射の影響を調べたところ、筋分化が有意に促進されることを見出した。本挑戦的研究は、音波による遺伝子操作・細胞操作への道を拓く画期的な成果が得られたものと総括できる。
著者
分部 哲秋 長島 聖司 佐伯 和信
出版者
長崎大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1999

形質人類学的側面から九州地方から出土している弥生人骨の地域的特性に関する研究を遂行した。調査対象人骨は長崎大学に保管されている資料を用い、縄文時代と同様に漁労・採集に生活基盤をおいていた西北九州地域の弥生人骨、南九州離島群出土の弥生相当期人骨と大陸からの渡来系と考えられる北部九州地域の弥生人骨について骨計測、頭蓋小変異観察を行い、次の結果を得た。1.西北九州及び南九州離島弥生人の計測的特徴(1)西北九州弥生人は、北部九州弥生人と比較して脳頭蓋がやや小さく、特に高径が小さい。頭型は西北九州弥生人の方がやや短頭に傾く。顔面頭蓋では幅径はほぼ同じであるが、顔高、上顔高の高径にはかなりの差が見られ、北部九州弥生人よりも著しい低顔傾向を示す。また、西北九州弥生人の顔面は平坦ではなく、立体的である。(2)南九州の弥生相当期人は、大局的には西北九州弥生人と同類で縄文系の弥生人と考えられるが、頭型が短頭に傾くことと顔面の平坦性がやや強い点で西北九州弥生人とは違いが見られる。(3)各遺跡ごとでの男性の平均推定身長値は、北部九州弥生人が162cm以上あるのに対し、西北九州及び南九州弥生人は160cm以下であり低身長である。2.西北九州及び南九州弥生入の頭蓋形態小変異形質の特徴(1)西北九州弥生人の出現頻度は、北部九州弥生人と比較して眼窩上孔が低頻度で出現し、逆に舌下神経管二分、翼棘孔、頬骨後裂、横後頭縫合残存は高頻度で出現する。この傾向は縄文人に酷似している。(2)南九州弥生人の出現傾向は西北九州弥生人に類似するが、舌下神経管二分と顎舌骨筋神経管が低頻度である点でこれと異なる。(3)外耳道骨腫は、西北九州及び南九州弥生人に高率で出現しており、形質のみならず生活様式が北部九州地域の弥生人と異なっていたことが示唆された。
著者
坂本 文徳 香西 直文 鈴木 義規
出版者
独立行政法人日本原子力研究開発機構
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

ウランを特異的に集めるタンパク質を効率的に特定する新規の手法を開発した。この方法は、サイズ排除カラムを利用した液体クロマトグラフィーと質量分析器を組み合わせた検出系を利用している。実際に、この方法を利用して、酵母タンパク質からウランを集めるタンパク質特定を試みたところ、46キロダルトン程度の大きさのタンパク質がウランを集めることを明らかにした。そして、そのタンパク質は硫黄を含むアミノ酸(メチオニンとシステイン)を構成要素としないことが示唆された。
著者
横田 陽匡
出版者
日本大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2019-04-01

糖尿病網膜症(以下、網膜症)は糖尿病患者の増加と相まって、我が国の中途失明の主因になっています。網膜症を予防するためには血糖コントロールが重要であることは言うまでもありません。しかし血糖コントロールを良好に維持することは容易なことではなく、網膜症の予防に対してその効果にも限界があります。我々はレニンの前駆体であるプロレニンと網膜症の関連性を明らかにしました。そこでプロレニンを標的として網膜症に対するワクチンを作成することに成功しました。実際に糖尿病マウスに接種したところ、網膜神経機能が保護されインスリン感受性も改善していたことから、網膜症のみならず他の糖尿病合併症に対しても効果が期待されます。
著者
河田 雅圭 杉本 亜砂子 牧野 能士 丸山 真一朗 横山 潤
出版者
東北大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2016-04-01

近年発見されたC. elegans の姉妹種であるC. inopinataを用いて、体長の進化に寄与した遺伝子を特定することを目的とした。二種間で大きな体長の差が生じるL4幼虫期と成虫期で、発現パターンが、種間で異なる遺伝子として2699遺伝子が検出された。6種の線虫のうち、C. inopinataの系統でのみ正の選択圧が42の遺伝子で検出され、その中に、daf-2があった。daf-2は細胞膜で発現するインスリン受容体で、C. elegansの変異体は体サイズが大きくなることが知られ、daf-2遺伝子の進化が体サイズの進化に対して大きな影響をもつ可能性が示唆された。
著者
松田 一徳
出版者
北見工業大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2017-04-01

Koszul代数の概念は、標準的次数付き二次代数に対して定義されるものである。本研究課題の目的は、(1)Koszul代数と関連が深い環論的不変量の研究、(2)Koszul性と他の環論的性質との関係の研究、(3)Koszul代数の例の構成、の3つの視点からKoszul代数を多角的に研究することであった。主な研究成果は以下の通りである。1. 任意の正整数r、sに対しCastelnuovo-Mumford正則度がrかつh多項式の次数がsとなるKoszul代数が存在することを示した。2.剰余環がKoszul代数となることが知られているエッジイデアルに関して、いくつかの研究成果を挙げた。
著者
吉澤 誠 杉田 典大 八巻 俊輔 湯田 恵美 山家 智之 田中 明 山邉 茂之
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2020-04-01

不完全な自動運転は,運転者の乗り物酔いのリスクを高める可能性があるため,交通事故を誘発する恐れがある.そこで本研究では,不完全な自動運転中の運転者の乗り物酔いの発症条件の解明とそれに伴う交通事故との因果関係を明らかにするとともに,乗り物酔いを低減する自動車に具備すべき具体的手段を得るために,次を行う.1)不完全自動運転中における乗り物酔いの発症条件の実験的解明,2)乗り物酔いを発症した運転者の判断・操作能力の低下と交通事故間の因果関係の解明,3)乗り物酔いを客観的・定量的に判断する自動車用センシングシステムの構築,4)不完全自動運転中の乗り物酔いを低減させる手段の提案とその効果の実験的検証.
著者
高橋 浩晃 大園 真子 宮町 宏樹 谷岡 勇市郎 蓬田 清 吉澤 和範 中尾 茂 一柳 昌義 山口 照寛 ゴルディエフ エフゲニー ブイコフ ビクター ゲラシメンコ ミハイル シェスタコフ ニコライ ワシレンコ ニコライ プリトコフ アレキサンダ レビン ユーリ ワレンチン ミハイロフ コスティレフ ドミトリ チェブロフ ダニラ セロベトニコフ セルゲイ
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2013-04-01

ロシア極東地域から中国東北部を含むアジア北東地域のテクトニクスの解明を目指し,地震とGNSS観測を実施した.2011年東北地方太平洋沖地震による広域的な余効地殻変動が観測され,ロシア沿海州地方は地震時変動を上回る変位が得られた.ロシア極東地域に展開した広帯域地震観測網のデータから,当該地域の上部マントル地震波速度構造を明らかにし日本海下に低速度異常を確認した.上部マントルの粘弾性構造の推定から,日本列島周辺で繰り返し発生する巨大地震がアジア北東地域に長期的な余効変動を引き起こしてきた事実を明らかにした.また当該地域の特徴的な地震活動を明らかにした.
著者
平泉 隆房
出版者
金沢工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

白山信仰と日吉(山王)信仰が、中世にどのように全国に広まっていったかを、現在の白山神社・日吉神社の分布図を作成し、それを参照しつつ検証した。中世前期までに成立した日吉社領が近江や北陸道を中心に全国に散在してみられ、その付近には現在でも多くの日吉神社が鎮座していることを確認した。白山神人と日吉神人、言い換えれば両信仰が対立することなく、協調して信仰圏の拡大につとめていたことも明らかとなった。なお、これらの勢力が、衰退した延喜式内社に入り込み、それぞれの地域の拠点としていた事例を多く検出することができた。あわせて、古代中世について、白山信仰に関するこれまでの研究史をまとめた。
著者
井澤 美苗 青森 達 望月 眞弓
出版者
慶應義塾大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2018-04-01

プラセボ効果は薬の効果に対する期待と過去に薬が効いたという条件付けが働くことに基づく効果であり、脳の認知機能を司る部位に関連がある。この部位は脳の前頭前野に位置し、近赤外線分光法(NIRS)を使用することでその活性度を非侵襲的に測定できる。また最近10年で、脳内化学伝達物質の遺伝子多型でプラセボレスポンダーとノンレスポンダーを区別するプラセボーム研究が台頭している。本研究では、脳内化学伝達物質の中でも5-hydroxitryptamine transporter ( 5-HTT ) 、Catechol-O-methyltransferase ( COMT )の遺伝子多型に注目し、プラセボ効果との関連性を検討することを目的としている。主観的指標として Stanford Sleepiness Scale( SSS )と Visual Analog Scale ( VAS )による眠気度調査を行い、客観的指標として近赤外分光法( NIRS )による脳血流量変化を測定した。また、5-HTT遺伝子多型 ( L/L、S/L、S/S ) とCOMT 遺伝子多型( Val/Val、Val/Met、Met/Met )を行なった。プラセボ投与前に比べ投与後で SSS と VAS ともに有意に眠気が改善された。NIRS では、認知を司る部位の脳血流量が投与後で有意に増加した。SSSとVASではVal/Met 群の方が Val/Val 群より大きな眠気改善傾向が見られた。またNIRS左脳での脳血流量は Met/Met 群が Val/Val 群と比較して増加傾向が見られた。有意差は見られないものの、Metアレルは Val アレルよりもプラセボ効果との強い関連性が示唆された。この結果は、78th FIP World Congress of Pharmacy and Pharmaceutical Sciences(英国・Glasgow、2018年9月)にて学会発表した。
著者
岸本 太一 岸 保行
出版者
東京理科大学
雑誌
挑戦的研究(萌芽)
巻号頁・発行日
2019-06-28

近年文化製品の国際展開は、国家戦略となるほどにまで活発化し、その拡大に示唆を与える研究は、社会から強く求められつつある。本研究では、日本におけるワインという成功事例を基に、文化製品の大衆品化メカニズムの解明を試みる。研究領域の細分化と専門化が進展する経営学において、本研究では複合領域的な視角を採用する。具体的には、製品開発論、生産管理論、サプライチェーンマネジメント、マーケティング、国際経営論、社会学(文化論)を活用して分析を行う。一方、最終目的に関しては、特定仮説の実証研究による短編論文が主流の中、「メカニズムの全体像を描く仮説群の提示」自体を目的に掲げ、著書による最終成果物公表を目指す。
著者
岡 弘樹
出版者
早稲田大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2019-04-25

有機レドックスポリマーの高速な電荷交換反応に基づく電荷輸送・貯蔵能を起点に、水素(プロトン)交換反応への拡張によって同じ原理で水素が輸送・貯蔵されることを明らかにする。具体的には、 (1) 水素(プロトン)交換反応の解明と(2) 高い質量密度で水素貯蔵可能な有機レドックスポリマーの創出により水素の輸送・貯蔵が可能な分子・ポリマーを開拓する。分子設計・水素発生条件などの工夫から(3) 高速な水素輸送を可能とする分子要件を解明、最大限に引き出すことで、(4) 斬新な水素輸送・貯蔵材料の創出へと繋げ、基礎化学の確立とエネルギー輸送・貯蔵材料への展開を狙う。
著者
池上 めぐみ(朝戸めぐみ)
出版者
星薬科大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

肥満はうつ病や認知症などの中枢神経系疾患の発症リスクを上昇させる可能性が示されているが、その詳細は不明である。肥満は慢性的な全身性炎症を伴うことが知られている。また、炎症性サイトカイン類の上昇は中枢神経系の機能や細胞の形態を変化させることが報告されていることから、肥満による炎症性サイトカインの上昇が中枢神経を障害し、脳高次機能を低下させる可能性が想定される。そこで本研究では、肥満による脳高次機能障害が脳での炎症性反応に起因するという観点の下、記憶や不快情動反応といった脳高次機能に関わる脳部位である海馬と扁桃体に着目し、脳内の炎症反応に重要な役割を果たすとされるアストロサイトおよびミクログリアの変化を検討した。実験には4週齢のC57BL/6J系雄性マウスを用いた。食餌誘発性肥満 (DIO) マウスは高脂肪食を16週間負荷することで作製した。対照マウスは通常飼料で16週間飼育した。DIOマウスの海馬におけるGFAP陽性アストロサイトとIba-1陽性ミクログリアの変化を免疫組織学的手法により検討したところ、GFAP陽性アストロサイト数ならびにIba-1陽性ミクログリア数はいずれもDIOマウスで減少していた。次に、扁桃体のGFAP陽性アストロサイトおよびIba-1陽性ミクログリアの変化を検討した。その結果、対照マウスおよびDIOマウスの扁桃体においてGFAP陽性アストロサイトの発現は認められなかった。一方、DIOマウスにおいてIba-1陽性ミクログリア数は対照マウスと比べて減少していた。以上の結果から、DIOマウスでは、海馬におけるアストロサイトとミクログリア、および扁桃体におけるミクログリアが減少し、脳内環境が変化していることが明らかとなった。今後さらなる検討が必要であるものの、肥満に伴うこれらの脳内環境の変化が脳高次機能障害をひき起こす可能性が示された。
著者
深水 昭吉
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2010

タンパク質アルギニンメチル化酵素(PRMT)ファミリーのうち、PRMT1は細胞内のアルギニンメチル化の85%を担っている酵素であり、細胞質と核に存在する。一方PRMT8は、PRMT1と83%の高いホモロジーを持ち、細胞膜に局在するが、その基質と細胞機能は不明である。本研究では、細胞膜に存在するPRMT8がリン脂質を基質とする酵素であるかを検討し、細胞機能の解明を試みた。
著者
阪本 尚文
出版者
福島大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2015-04-01

天皇主権を基本原理とする明治憲法を国民主権を定める日本国憲法に改正することは、憲法の根本的支柱を取り除く一種の自殺行為であり法的に許されないのではないか?この現行憲法の正当性をめぐる難問を説明する通説が、憲法学者、宮澤俊義が提唱したとされている「八月革命説」(日本がポツダム宣言を1945年8月に受け入れた時点で主権は天皇から国民に移動し、法学的意味の「革命」が生じた)である。本研究では、政治思想史家、丸山眞男が八月革命説のアイディアを宮澤に敗戦直後に提供したと丸山本人が回想する新資料を東京女子大学丸山眞男文庫において発見し、現行憲法の正統性を担保する通説的学説の誕生過程を実証的に解明した。