著者
清地 ゆき子
出版者
日本語学会
雑誌
日本語の研究 (ISSN:13495119)
巻号頁・発行日
vol.6, no.2, pp.46-61, 2010-04-01 (Released:2017-07-28)

本稿は,日中語彙交流の視点から日本で訳語として成立した恋愛用語が,1920年代に中国語に借用されたことを明らかにすることを目的として,日中異形同義語「三角関係」と"三角恋愛"の成立及び定着過程を考察したものである。結論は次の4点てある。(1)「三角関係」は,1910年代後半に森鴎外や島村民蔵により訳語として成立した可能性が高い。(2)"三角関係"は1920年代初め,日本語借用語彙として中国人留学生らの創作作品などを介して中国語にもたらされた。(3)中国語では"三角関係"ではなく,1920年代前半に日本でも一時期使用された"三角恋愛"が定着した。(4)中国語において"三角恋愛"が定着した背景には,1920年代前半に,《婦女雑誌》を中心として,恋愛が頻繁に議論された社会状況があった。
著者
白石 正 丘 龍祥 仲川 義人
出版者
Japanese Society of Environmental Infections
雑誌
環境感染 (ISSN:09183337)
巻号頁・発行日
vol.13, no.2, pp.108-112, 1998-04-30 (Released:2010-07-21)
参考文献数
12

注射部位の皮膚消毒には80vol%消毒用エタノール (ETOH), 70vol%イソプロパノール (IPA), 80vol%メタノール変性アルコール (NEO) が使用されている.これらの同等性の如何を検討する目的で, それぞれの試験液 (未希釈液) と1.5倍, 2倍, 3倍希釈液の各種臨床分離株に対する殺菌効果および医療従事者 (n=10) を対象とした皮膚の除菌効果を検討した.その結果, 3種の未希釈液および1.5倍希釈液は各種細菌を15秒で殺菌したが, 2倍希釈液では30秒の接触でETOHに比しIPA, NEOがより高い殺菌効果を示した.皮膚の除菌率ではETOHの未希釈液は99.0±1.3%となり, 2倍希釈液85.0±18.6%および3倍希釈液61.3±30.58%との間に有意差が認められた.NEOにおいても未希釈液98.9±1.6%と2倍希釈液95.2±5.3%および3倍希釈液68.4±35.7%との間で有意差が認められた.しかし, IPAでは未希釈液の除菌率97.7±4.0%と3倍希釈液の除菌率77.3±29.1%の間にのみ有意差が認められた.これらより, 基礎的検討において各消毒剤の未希釈液および1.5倍希釈液は高い殺菌効果を有していたが, 臨床的検討ではIPAがETOHおよびNEOに比し, 高い殺菌効果を示したことから, 総合的に見た殺菌力ではIPA>NEO>ETOHであることが認められた.

11 0 0 0 OA サダ祭と寒食節

著者
井本 英一
出版者
一般社団法人 日本オリエント学会
雑誌
オリエント (ISSN:00305219)
巻号頁・発行日
vol.26, no.2, pp.13-30, 1983 (Released:2010-03-12)

New Persian sada was derived from Middle Pers. *sadag/*satak, which was derived from Old Pers. *sataka-. OPers. *sataka- meant ‘the hundredth’ that is, ‘the hundredth day.’In Shahnameh several references to sada together with the No Ruz festival are found. Originally the sada festival was held on the hundredth day from the winter solstice, say, about Farvardin 10th; it lasted to Farvandin 13th (April 2nd).The Easter fires are also held about almost the same time and a new fire is lit on the Easter eve.The ancient Chinese held the Han-shih-tsieh _??__??__??_ ‘festival of eating cold food’ on the 100th, 103rd or 105th day from the winter solstice. It was held from April 2nd to April 5th. During the three days all fires were put out and a new fire was lit on the last day. The day was the last day of an ancient spring New Year.Sada was the last festival of the No Ruz festival and the new fire was lit on that day.
著者
西村 正貴
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.59, no.12, pp.812-821, 2017-03-01 (Released:2017-03-01)
参考文献数
7

政府が行っている統計調査の結果は,Excel等のファイルを中心に政府統計の総合窓口(e-Stat)というWebサイトで一元的に提供されている。しかし,従来の報告書をベースにしたExcelファイルが多数あり,データの抽出などが困難な状況となっている。これを解消するためにデータベース化を進め,プログラムから直接データを取得できるAPI機能の提供も行ってきた。そして,統計データの利活用をさらに高度にすることを目的として,オープンデータでは最も優れているといわれるLinked Open Data(LOD)での提供を2016年から開始した。本稿では,政府統計のデータ提供の現状を説明するとともにLODによる統計データの提供について,その設計等の考え方,利用方法などを中心に説明する。
著者
菊地 滋夫
出版者
日本文化人類学会
雑誌
民族學研究 (ISSN:24240508)
巻号頁・発行日
vol.64, no.3, pp.273-294, 1999-12-30 (Released:2018-03-27)
被引用文献数
1

東アフリカ海岸地方後背地における緩やかなイスラーム化は, この地域に顕著に見られる憑依霊信仰と密接に関連している。しかし, すべての精霊が, それによって憑依された者にイスラームヘの改宗を要請するというわけではない。ある一群の精霊が他と比較して格段に強力かつ危険と見なされており, これらによって憑依された人々が, 心身の病状の悪化を避けるべく, 多少なりともイスラーム的な生活を送ることを余儀なくされるのである。他方, イスラームヘの改宗者たちのなかには, 病院における病気治療の失敗や, 学校教育からの疎外といった経験に言及する人々がいる。本稿では, カウマ社会における改宗者たちへの聞き取り調査に基づいて, 改宗の意味づけに一定のパターンを認めうることを示すとともに, イスラームヘの改宗が求められる憑依霊と, 病院や学校教育からの疎外という経験が相応する歴史的関係の一端を解きほぐすべく検討を試みる。
著者
清水 いと世 舟場 正幸 松井 徹
出版者
日本ペット栄養学会
雑誌
ペット栄養学会誌 (ISSN:13443763)
巻号頁・発行日
vol.19, no.Suppl, pp.suppl_32-suppl_33, 2016-06-30 (Released:2017-04-10)
参考文献数
3

アンケート調査により得たイヌの手作り食レシピと成書におけるイヌの手作り食レシピの食材と量より、食品成分表を用いて栄養素量を算出し、AAFCO養分基準(2016)の最小量及び最大量と比較した。8割以上のレシピがCa、Cu 、Zn、ビタミンAの最小量を下回り、一方ヨウ素やビタミンDの最大量を上回るレシピがあった。本試験の結果より、AAFCO養分基準を満たすように手作り食を調製する際には、上記の不足しがちな栄養素を多く含む食材を用い、過剰となりがちな栄養素を多く含む食材の量に配慮する必要があることが示された。
著者
高木 憲太郎 時田 賢一 平岡 恵美子 内田 聖 堤 朗 土方 直哉 植田 睦之 樋口 広芳
出版者
日本鳥学会
雑誌
日本鳥学会誌 (ISSN:0913400X)
巻号頁・発行日
vol.63, no.2, pp.317-322, 2014 (Released:2015-04-28)
参考文献数
17
被引用文献数
4

ミヤマガラスは西日本では九州から東へ越冬地を広げた一方で,東日本では北から南へ越冬地を広げた冬鳥である.我々は東日本に渡来するミヤマガラスの渡りの経路と繁殖地を明らかにすることを目的として,秋田県大潟村八郎潟干拓地において20羽のミヤマガラスを捕獲し,太陽電池式の衛星追跡用送信機(PTT)を装着して追跡を行なった. 八郎潟で越冬していたミヤマガラスは,越冬中も10 km以上離れた男鹿半島や能代平野を行き来しながら過ごしていることが分かった.日本から海に向けて飛び立った地域は,道南の渡島半島(奥尻島を含む)が最も多く,このほか青森県の津軽半島や積丹半島から飛び立つものがいた.渡りの時期は,成鳥は4月5日までに日本を離れているが,若鳥は4月8日以降で,若鳥の方が遅かった.追跡を行なったミヤマガラスのうち11羽は日本海を越えてロシアの沿海地方に渡るまで追跡することができた.そのうち5羽は中国黒竜江省の三江平原周辺に到達し,3羽はロシアのブラゴヴェシチェンスクの東部に到達した.この結果から,東日本に渡来するミヤマガラスの繁殖地がこれらの地域であることが推定された.
著者
上岡 直見
出版者
公益財団法人 日本学術協力財団
雑誌
学術の動向 (ISSN:13423363)
巻号頁・発行日
vol.25, no.6, pp.6_30-6_35, 2020-06-01 (Released:2020-10-23)
著者
山口 拓美
出版者
経済理論学会
雑誌
季刊経済理論 (ISSN:18825184)
巻号頁・発行日
vol.41, no.4, pp.13-24, 2005-01-20 (Released:2017-04-25)

According to Marxian political economy, exploitation means extracting surplus labor. But Marx himself used the term "exploitation" in more general sense also. In his Capital,Volume III, Marx wrote that workers are exploited when capitalists save labor conditions at the expense of the workers. So we can find in Capital two definitions of exploitation: the narrow definition as extracting surplus labor and the broad definition as treating workers badly. With respect to the broad definition of exploitation, I think it is based on Kantian moral principle that obligates us not to treat other people merely as means for our own ends. Kant limited his moral principle to human beings. However, philosophers in today's society extend the principle to nonhuman beings, especially to animals. I think this view of exploitation is important for criticizing contemporary capitalism, because it has relevance for contemporary problems, such as sexual exploitation of women and children, exploitation of nature, and exploitation of animals. Among these problems, animal exploitation is the hottest topic on the political agenda in Europe. The European Treaties recognize animals as sentient beings, and the European Community has been improving animal welfare standard for the past two decades. Moreover the EC made a specific submission to the WTO Committee on Agriculture on "Animal welfare and agricultural trade". Today, animal exploitation is an issue of growing importance in global capitalism. This paper explores the moral basis of Marx's view of exploitation, considers the exploitation of nature, and then discusses the exploitation of animals in today's commercial agriculture.
著者
早川 文代 井奥 加奈 阿久澤 さゆり 齋藤 昌義 西成 勝好 山野 善正 神山 かおる
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.52, no.8, pp.337-346, 2005 (Released:2007-04-13)
参考文献数
40
被引用文献数
19 31

日本語のテクスチャー用語を収集し, 以下の知見を得た. 116人を対象としたアンケートによって用語を収集し, 討議により整理したところ332語を得た. これに文献調査の結果から94語を追加して426語とした. テクスチャーの研究者55人に用語の妥当性を評価させ, 専門家4人に面接調査を行って用語を削除, 追加し, 最終的に445語のテクスチャー用語を得た.1960年代に収集されたテクスチャー用語と比較したところ, “もちもち” “ぷりぷり” など新しい用語がみられた. また, 中国語などと比較すると, 日本語のテクスチャー表現は数が多いことが示された.テクスチャー用語の約70%は擬音語・擬態語であることから, 日本語のテクスチャー表現に擬音語・擬態語が重要な役割を果たすことが示唆された.

11 0 0 0 OA 唯脳論

著者
養老 孟司
出版者
The Robotics Society of Japan
雑誌
日本ロボット学会誌 (ISSN:02891824)
巻号頁・発行日
vol.7, no.5, pp.528-534, 1989-10-15 (Released:2010-08-10)
著者
野田 伸司 渡辺 実 山田 不二造 藤本 進
出版者
一般社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.55, no.5, pp.355-366, 1981-05-20 (Released:2011-11-25)
参考文献数
20
被引用文献数
3 4

親水性ウイルス (エンテロウイルス) および親油脂性ウイルス (アデノおよび被エンベロープウイルス) の合計11種類のウイルスに対する, メタノール, エタノール, イソプロパノールおよびN-プロパノールの不活化作用を検討した.エンテロウイルスはメタノールによつて最も強い不活化作用を受け, 次いでエタノールであつた. イソプロパノールによつては, AHCウイルスが長時間の感作でわずかに不活化されるのを除き, 他のウイルスは全く不活化を受けなかつた.親油脂性ウイルスの中, 被エンベロープウイルスはN・プロパノールによつて最も強い不活化を受け, 次いでイソプロパノール, エタノール, メタノールの順であつた. これに対し, アデノウイルスはエンベロープゥイルスと同様にN-プロパノールによつて最も強い不活化を受けるが, その他のアルコール類に対する感受性は大きく異なり, 以下メタノール, エタノール, イソプロパノールの順に不活化効果が示された. アデノウィルスにおいては, 特にエタノールに対する抵抗性の強さおよび20℃ においてはイソプロパノールによりほとんど不活化を受けないことが注目された.エンテロウイルス中のAHCウイルスおよび親油脂性ウィルス中のアデノウイルスを除外すると, 全体的な傾向として, エンテロウイルスは炭素数の少いアルコール類, 親油脂性ウイルスはこれと反対に炭素数の大きいアルコール類により, 不活化を受け易い傾向が認められた.
著者
Jianjun Gao Shasha Hu
出版者
International Research and Cooperation Association for Bio & Socio-Sciences Advancement
雑誌
BioScience Trends (ISSN:18817815)
巻号頁・発行日
pp.2020.03072, (Released:2020-04-13)
参考文献数
17
被引用文献数
39

Drugs that are specifically efficacious against SARS-CoV-2 have yet to be established. Chloroquine and hydroxychloroquine have garnered considerable attention for their potential to treat coronavirus disease 2019 (COVID-19). Increasing evidence obtained from completed clinical studies indicates the prospects for chloroquine/hydroxychloroquine to treat COVID-19. More randomized control clinical studies are warranted to determine the feasibility of these two drugs in treating COVID-19.
著者
熊谷 秀夫
出版者
Japan Society of Photogrammetry and Remote Sensing
雑誌
写真測量とリモートセンシング (ISSN:02855844)
巻号頁・発行日
vol.49, no.5, pp.326-331, 2010-11-12 (Released:2011-11-01)
参考文献数
5
被引用文献数
1

A GPS/IMU hybrid Inertial Navigation System is applied in wide range field to determine the position, attitude and heading. This paper introduces the various GPS/INS Systems and its Leading-edge Trend.
著者
宮﨑 友里
出版者
日本グループ・ダイナミックス学会
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
pp.si4-9, (Released:2019-02-23)
参考文献数
48

本稿は,地方自治体の行動原理について,社会心理学の理論を適用することの有用性を探るものである。これまで,政治社会学や政治心理学において,国家から個人に至るまで政治主体の心理性は繰り返し確認されてきた。しかしながら,政治主体を地方自治体に限定した場合,心理性の検討は極めて限定的であったと言えるだろう。地方自治体は各種の政策形成に取り組んでいるが,その中でも経済的利潤の増大を目的としているとは捉えがたい観光政策が散見される現状は注目に値する。そこで本稿では,地方自治体を自律した行為主体と措定し,その政策形成過程に対して,集団一般の行動原理について心理的側面から説明してきた社会的アイデンティティ理論の観点を導入して解釈する。注目する点は,地方自治体としての集団概念と,観光資源活用の関連である。本稿では,水俣市を事例として,水俣病を用いた来訪者誘致に至る過程について,水俣市の集団概念に注目しながら追跡する。事例分析の結果は,水俣市において水俣病経験が先進的経験として肯定的に意味づけられた時,水俣病を用いた来訪者誘致への取り組みが進展した,というものである。