著者
西山 正吾 Lozi Julien 高橋 真聡 孝森 洋介 美濃和 陽典 斉田 浩見 Guyon Olivier
出版者
宮城教育大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2019-04-01

本研究の目的は、銀河系の巨大ブラックホールを周回する星の観測を通した、ブラックホール重力場での一般相対論の検証である。そのためにまず、すばる望遠鏡の補償光学装置に装備する赤外線波面センサーを開発する。赤外線波面センサーの導入により、ブラックホールに近い、明るい赤外線星を補償光学のガイド星として観測することができるようになる。これにより一般相対論の検証に適した晩期型の星の観測が可能となる。この開発が終わり次第、ブラックホールを周回する星の観測を開始する。年数回のモニター観測を継続し、その視線速度の変化から、ブラックホールがつくりだす重力場を測定し、一般相対論の予想との整合性を検証する。
著者
梅村 雅之 長尾 透 松田 有一 高橋 労太 大内 正己
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2019-04-01

本研究では,最先端の理論と観測を統合したアプローチにより多重AGNを徹底的に調べ,超巨大ブラックホールの起源を明らかにする。理論では,一般相対論的輻射磁気流体コードを用いたブラックホール降着円盤の精密なモデル構築,AGNと銀河の共進化ならびに超巨大ブラックホール合体のシミュレーションを行う。観測では狭帯域フィルターを製作し,Lya, CIV, HeII輝線のコンビネーション観測を実現するとともに,連結NBフィルターによる線幅の広い1型AGNの観測を行うことで,赤方偏移2~3における多重AGNのカタログを作成する。そして,理論と観測を突き合わせることで,多重AGNと銀河の共進化過程を探究する。
著者
本原 顕太郎 小西 真広 児玉 忠恭 尾崎 忍夫 小山 佑世 林 将央
出版者
国立天文台
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2020-04-01

銀河がどのように生まれ、現在の宇宙で見られる形にまで進化してきたか、を明らかにするには、z>1以前にまで遡ってその物理状態(星形成率、星質量、金属量など)を調べる必要がある。本研究では大型近赤外線分光カメラSWIMSのための近赤外線面分光ユニットを開発し、これらをすばる望遠鏡およびTAO望遠鏡にを取り付けてz>1銀河の分光観測サーベイを行う。星形成最盛期における銀河を空間的に分解して分光し、その物理状態の空間分布を明らかにすることにより、形成期の銀河進化の過程を明らかにする。
著者
岡 朋治 竹川 俊也 西山 正吾 野村 真理子 浅山 信一郎 松本 浩典
出版者
慶應義塾大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2020-04-01

本研究課題は、銀河系(天の川銀河)中に1億個以上浮遊すると考えられる「見えない」ブラックホール、および銀河中心に遍く存在すると考えられる「超巨大ブラックホール」の種となる「中質量ブラックホール」を、星間空間に広がる分子ガスの分布・運動の情報を使用する全く新しい手法によってくまなく検出しようとするものです。この研究によって、銀河系内のブラックホールの空間・質量分布が明らかにされます。これからブラックホールの合体・成長の様子を把握することができ、これを礎にして「ブラックホール天文学」が創始されることが期待されます。
著者
大内 正己 長峯 健太郎 小野 宜昭 高橋 慶太郎 SILVERMAN John
出版者
国立天文台
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2020-04-01

PFS分光探査による銀河形成と宇宙再電離研究のため、一様なターゲット選択と星質量推定に必須の近赤外線画像をCFHT望遠鏡観測で準備し, 2022年からのPFS分光探査を実現する。これにより、赤方偏移0.7-7の30万個の銀河スペクトルを取得し、銀河間物質(IGM)の中性水素(HI)ガス分布を描く新しい手法も駆使しながら宇宙大規模構造の中で放射と物質交換を通して形成される銀河の描像を探る。特に、宇宙再電離期の電離泡の存在の有無、銀河間のガスのフィラメントが普遍的存在する銀河形成の検証、星形成フィードバックの原因を探る。
著者
坂井 南美 野村 英子 花輪 知幸 大橋 聡史 奥住 聡
出版者
国立研究開発法人理化学研究所
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2020-04-01

特に若い原始星L1527について、化学診断を通したエンベロープ・円盤構造の同定、円盤のワープ構造の発見など、独自の手法による成果を挙げてきた。このような初期円盤構造は、原始惑星系円盤で捉えられているリングやスパイラル構造、また、系外惑星における軌道面の多様性の起源の端緒を捉えたものであり、より多くの初期円盤の観測でその一般性を検証することが求められる。数auスケールでの円盤構造の高分解能観測によりこの課題に応えるとともに、多波長観測により、ダスト成長を円盤構造形成過程との関係から解明する。これらを通し、"原始星進化の過程で、惑星形成がいつ始まるか"という問題を提起し、その大要を明らかにする。
著者
今村 友彦
出版者
諏訪東京理科大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2009

林野火災など、傾斜地で発生した火災による火炎の形状は、水平面におけるそれとは異なり、火炎が斜面へ倒れ込み、延焼拡大を助長する要因となる。そのため、傾斜地における火炎形状を把握・予測することは、防火対策上非常に重要であるが、現在までに詳細な研究はなされていない。本研究では、傾斜地における火災性状を体系的に解明することを目的とし、その第1段階として、火炎形状に及ぼす傾斜角度の影響を実験的に検討した。その結果、(1)傾斜面における火炎は、周囲空気の巻き込みが不均一であることから、負圧になりやすい斜面上方向へ吸いつき、斜面上を這うこと、(2)斜面における火炎は、全体としての長さは発熱速度のみに依存して決まり、傾斜角度によって決まる長さ分だけ斜面上を這い、その後、発熱速度と傾斜角度のつりあいに応じた長さだけ立ち上がる。発熱速度に対する依存性は、水平面上で発生した火炎同様Q^<*2/5>に比例すること、が明らかとなった。
著者
小川 彩子
出版者
学習院大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

musicの語源であるラテン語のmusicaおよび、さらにその語源である古典ラテン語のムーシケーの語義的変遷を調べることによって、いかにして古典ラテン語のムーシケーという語が音楽の意味に収斂していくのかを調べることが、本研究の趣旨である。まず、古典ギリシア語のムーシケーには、原義的に「神の言葉を伝えるもの」という意味があることをプラトンの読解から明らかにした。そのうえで、アウグスティヌス『音楽論』においてmusicaの意味がかなり限定されることを捉え、後期アウグスティヌスにおいて「神の言葉を伝えるもの」が音楽に他ならなかったことを明らかにした。
著者
宮崎 剛司
出版者
旭川大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2017-04-01

本研究目的は、仮想現実を用いてヘッドマウントディスプレイを装着し臨地に近い看護体験を提案する新しい教育方法を開発して、この教材の安全性と学習効果を自律神経測定器と脳波測定器で分析することである。また、視聴後には、質問紙にて新しい教材の有用性を検証した。分析方法は、学習者をこれまでの視聴覚教材と本研究で開発した教材との2群に分けて比較した。この結果、これまでの学習方法より、本研究による教材では容易に多重課題を繰り返し学習できることを可能としながら安全性と学習効果があると示唆された。この成果は、今後さらにこのような教材の発展や応用の教育効果を確かめるひとつの指標となるだろう。
著者
小川 道雄 中口 和則 柴田 高 宮内 啓輔 NAKAGUCHI Kazunori
出版者
大阪大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1985

従来、膵分泌性トリプシン・インヒビター(PSTI)は膵臓にのみ存在し、膵管内におけるトリプシンの活性を阻害する役割を担っているとされてきた。われわれは血中PSTI測定のためのRIA系を確立し、血中PSTIが膵疾患以外にも外科手術後や重度外傷後に著明に上昇すること、その上昇が血中の急性相蛋白の変動と有意の正の相関をなすことを明らかにした。また悪性腫瘍患者でも進行例では血中PSTIが上昇していた。このような事実から血中PSTIは侵襲に対する生体の反応として血中に増加しており一種の急性相蛋白であると考えられる。PSTIは膵臓以外の各種臓器に存在していた。また各種悪性腫瘍組織にはPSTI陽性細胞が存在し、培養細胞系の免疫組織学的検索やノザン・ブロッティングの結果から、このPSTIは腫瘍細胞において産生されていることが証明された。PSTIの構造は上皮成長因子(EGF)のそれと類似していた。このことから急性相蛋白としてのPSTIの作用がEGF様の作用ではないかと考え、PSTIを線維芽細胞に作用させ、そのDNA合成に対する効果を検討した。その結果PSTIにはDNA合成促進作用のあることがわかった。ひきつづいて、培養細胞系にはPSTI受容体が存在すること、その受容体はEGF受容体とは異なることを明らかにした。血中PSTIは侵襲に反応して血中に増加する。そして血中PSTIの作用は組織の損傷に対して再生あるいは修復のための情報の伝達に関連していると考えられた。これらの結果から、悪性腫瘍細胞において産生されたPSTIにもこのような成長促進因子としてのPSTIと共通した作用があることが示唆された。
著者
森田 幸子
出版者
長崎大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2010

矯正治療時の歯根吸収には、いまだ予防法がない。ビスフォスフォネートは、破骨細胞をアポトーシスへ誘導することにより骨吸収抑制の作用を発現することが知られている。また、これまでの研究でビスフォスフォネートは矯正学的歯の移動と歯根吸収それぞれを抑制するということがわかっている。本研究では、ビスフォスフォネートの投与量等を検討することにより歯の移動を妨げることなく歯根吸収を抑制できるのではないかと考え、実験を行った。マウスの第一臼歯と前歯部を超弾性のNiTiクローズドコイルスプリングでつなぎ、歯の移動開始時から、左側第一大臼歯頬側粘膜下にそれぞれのグループで、さまざまな濃度のビスフォスフォネートを2日おきに注射で投与した。コントロールであるPBS投与の右側第一臼歯を対照群とした。12日間矯正力をかけ歯を移動させた後に歯の移動距離を測定、その後、第1臼歯を取り出し、軟組織を次亜塩素酸ナトリウムで除去後、走査型電子顕微鏡で歯根吸収の評価を行った。ビスフォスフォネート2μg投与群において、歯の移動距離はPBSのみ投与群と比較して有意に減少し、また歯根吸収もPBSのみ投与群と比較して有意に減少した。ビスフォスフォネート20ng、200ng投与群では歯の移動、歯根吸収においてPBSのみ投与群と比較して有意な差は認められなかった。他のいずれの濃度投与群においても、PBSのみ投与群と比較して歯の移動も歯根吸収も有意差を認めない、もしくは、歯の移動も歯根吸収も有意に抑制するという結果が得られた。本研究で、ビスフォスフォネートは投与量によって歯の移動および歯根吸収に同様な影響を与えることがわかった。またビスフォスフォネートは投与量により歯の動きを抑制ヘコントロールし歯根吸収を予防する可能性が示唆された。
著者
梅村 正幸 松崎 吾朗 高江洲 義一
出版者
琉球大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2018-04-01

結核菌感染における免疫応答では、IFN-γ産生を主体とする細胞性免疫が最も重要な役割を担っている一方で、我々は炎症性サイトカインであるinterleukin(IL)-17Aが結核菌感染防御においても重要であることを明らかにしてきた。近年、我々は結核菌感染組織由来のTcR γδT細胞が抗原特異的な刺激においてIL-17A産生増強することを見出した。しかし、その産生増強メカニズムは未だ不明瞭な点が多い。そこで、TcR γδ T細胞がどのような機序により抗原特異的なIL-17Aを産生誘導するのか検討した。野生型C57BL/6(WT-B6)マウスに5x10e6 cfuのMycobacterium bovis BCGを気管挿管法により経気道感染させ、感染20日後の肺からリンパ球を調整した。WT-B6マウス由来の抗原提示細胞(APC)と肺リンパ球を結核菌精製抗原(PPD)存在/非存在下で共培養し、IL-17A産生T細胞(Th17およびγδ17細胞)を検出した。その結果、BCG感染肺においてIL-17A産生T細胞が認められ、PPD刺激において抗原特異的γδ17細胞の顕著な増強がみられた。加えて、この反応が培養上清中の液性因子に依存するのか、あるいはcell-to-cell contactが必要であるのかを明らかにするため、肺リンパ球とAPCを非接触型共培養法を用いて培養した。この非接触型共培養の条件下においても、PPD刺激によりγδ17細胞の増加が認められ、IL-23p19 KOマウス由来APCにおいても同様の結果が得られた。培養上清中の液性因子による影響を調べる目的でIL-1βおよびIL-23の中和処理をしたところ、γδ17細胞の増強は著しく減退した。一方、APCを介さず、感染肺リンパ球に直接PPDを投与したところ、γδ17細胞の増加が認められた。
著者
齊藤 宣一 土屋 卓也 谷口 雅晴 降籏 大介 村川 秀樹 菊地 文雄 河原田 秀夫 牛島 照夫 宮下 大
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

本研究プロジェクトでは,構造保存型の数値解法として理工学各分野で広く応用されている有限体積法に対する数学的な基盤理論の開発とその現実問題への応用を行なった。基礎的な面では、離散ソボレフの不等式、補間誤差不等式の最良定数、離散Rellichの定理、離散最大値の定理、離散微分形式などについて応用指向の進んだ結果を得ることができた。応用面では、細胞性粘菌の数理モデルに対して、構造保存型の有限体積法を開発し、いままで未解決だった離散エネルギー不等式の証明に成功した。また、離散微分形式の応用としてLagrange力学に基づくエネルギー保存型数値解法の有限体積法への拡張を行なった。
著者
久恒 辰博
出版者
東京大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2005

近年、記憶にかかわる海馬においては、どんなに年をとっても新しくニューロンが生み出されていることが発見され、この現象が大いに注目されている。ところがこの新生ニューロン数は加齢とともに激減することも知られており、新生ニューロンを増やす諸条件の検索が望まれていた。本研究ではマウス脳梗塞モデルを用いて、その脳保護作用が確認されていたフラボノイド(カテキン)を使用して、ニューロン新生に対する効果を検証した。核酸アナログであるBrdUを成体マウス(8週令以上)に投与し分裂中の神経幹細胞をラベルした。そして、この2週間後ならびに6週間後にマウスより脳を取り出し、新しく生み出されたニューロンの数をダブルブラインド条件下で共焦点顕微鏡解析することにより、計測した。有意差検定の結果、カテキンによって、わずかではあるが、統計的に有意に新生ニューロンの数が増加することがわかった。この効果の仕組みを探るために、カテキンが血管内皮細胞に作用していることを想定し、マウス血管内皮細胞由来培養細胞株であるbEnd3細胞を用いて、生化学的な解析を行った。この細胞が、神経栄養因子の産生を誘導するeNOS分子を発現していることをウェスタンブロッティング法で確認した。そこで、bEnd3細胞をカテキンで刺激することで、NO産生が起こるかどうかを調べた。数回の実験において、カテキン刺激によりNOの産生が高まる傾向が見られたが、その応答にはばらつきがあり、なかなか再現性のよい結果が得られなかった。仕組みの解明には、他の細胞ラインあるいはインビボの実験が必要であると思われた。本研究の結果から、詳細な応答機構は未解明ではあるが、フラボノイド類により、海馬ニューロン新生が高められ、海馬回路の機能が保持されていることが推測された。
著者
増田 のぞみ 猪俣 紀子 東 園子 谷本 奈穂 山中 千恵
出版者
甲南女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

本研究の目的は、少女マンガ黎明期のジャンル形成過程において作家や編集者がどのような役割を果たしたのかを明らかにすることである。戦後日本のメディア文化をより深く理解するためには、少女マンガという世界的にも稀有なジャンルがどのような作家や雑誌によって作られてきたのか、黎明期の少女マンガの形成過程を多角的に問う必要がある。本研究では、1950年代から1960年代にかけての、「少女マンガ」というジャンルの黎明期とされる時期から活躍を続けるわたなべまさこ、牧美也子、水野英子、花村えい子といった女性のマンガ家たちに焦点を当て、それらの作家たちが少女マンガというジャンルとどのような関わりを持ってきたのかを明らかにすることを目指している。2018年度は、水野英子が呼びかけ人となり、少女マンガ黎明期に活躍した作家や編集者らによる座談会が計4回開催された「少女マンガを語る会」の活動に注目し、この座談会の記録を報告書として後世に残すための作業を進めた。また、少女マンガ黎明期の「少女」イメージに大きな影響を与え、その後は女性週刊誌などを舞台に「劇画」作品を描いた牧美也子を取り上げ、牧の作品と少女マンガジャンルとの関わりを掘り下げる調査を進めた。その内容については、2018年12月に仁愛大学にて行われた中部人間学会大会において、「黎明期少女マンガと牧美也子――「少女」イメージと女性向け「劇画」をめぐって」と題した成果報告を行った(報告者・増田のぞみ)。
著者
青山 裕彦 坂本 信之 松井 浩二
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2002

脊椎動物は分節的に構成されていると考えられるが,その発生的基本単位は体節である.体節自身から発生する骨格や筋はもとより,脊髄神経や交感神経系の分節的形成も体節によって支配されている.本研究では脊椎動物のボディプラン形成機構を考察するため,体節から中軸骨格が形成される機構,とくにその胸部を特徴づける肋骨の部域特異的形態形成機構を題材に取り上げた.1.肋骨形成の3区画:体節周囲組織の肋骨形成との関わりを調べ,椎骨と結合している短い部分(近位肋骨)は神経管の底板や脊索に,その遠位にある長い部分(遠位肋骨)は表皮外胚葉に依存して発生することを示した.遠位肋骨はさらに壁側板に進入する部分(遠位肋骨胸骨部)としない部分(遠位肋骨椎骨部)の2区画に分けられる.これは近年提唱された(Burk, A),abaxial, primaxial区画にそれぞれ対応する.2.遠位肋骨形成と体節分化:表皮外胚葉と体節との相互作用を物理的に阻害すると,皮筋板の外側部(Sim 1),皮筋板辺縁近傍の椎板(Scleroaxis)の形成不全が示された.これらの遺伝子発現領域が遠位肋骨の形成に関わるのであろう.3.体壁筋の部域特異的形態形成〜腹壁筋の発生的分節性(1)体節の発生運命:腹壁の筋はほぼ第27体節のみからできることを移植実験から示した.その他の腰部体節は,肋骨のみならず,体壁筋も形成しないのである.(2)神経支配:ところが腹壁筋の支配神経は胸神経であった.筋の発生由来と支配神経の由来する分節が異なっており,支配神経からは筋の発生由来をいうことはできない.4.四肢形成と肋骨形成:胸部に四肢を誘導すると遠位肋骨胸骨部ができなかった.abaxial区画については,体壁と四肢が相補的に形成されるのである.5.中軸骨格原基の部域特異性の決定:体節形成の最も初期,原始線条から陥入する直前に,すでに決定されていることを,当該部位の移植と,そのHox遺伝子群の発現,形態形成能から示した.
著者
藤田 浩樹 山田 祐一郎
出版者
秋田大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

GLP-1とその分解酵素DPP-4の腎臓内シグナル伝達系とこれらをターゲットとした糖尿病性腎症に対する治療の可能性について検討した。進行性糖尿病性腎症マウスモデルKK/Ta-Akitaを用いた研究から、DPP-4阻害によりその基質の一つであるSDF-1αの発現が腎臓の糸球体上皮細胞と遠位ネフロンで増加すること、この発現増加は尿中ナトリウム排泄を促進し糸球体高血圧の改善をもたらすこと、SDF-1αからのシグナル遮断による腎保護効果の消失が示された。DPP-4阻害は腎臓内での活性型GLP-1のレベルを高めることに加え、SDF-1αの発現増加を惹起することで腎保護に貢献する可能性が示唆された。
著者
瀬戸 文美
出版者
東北大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2006

本研究は生活空間内において人間を支援するロボットの実用化に向けたより効果的な人間とロボットとの協調作業系の実現を目的として,ロボット自身,環境に存在する物体,協調作業の相手である人間の構造・運動の情報からそれぞれSelf-model,Object-model及びPartner-modelという構造・運動モデルを構築し,それらのモデルに基づく人間協調型ロボットの制御システムを提案することを目的にしている.本年度は,協調作業中においてロボットがSelf-Modelに基づいて自己衝突を回避するだけではなく,ロボットの周囲の物体の構造・運動情報から構築されるObject-modelに基づき,協調作業中における障害物回避,及び障害物回避と自己衝突回避を同時に実現する手法を提案し,実機を用いた実験を行うことによってその有効性を確認した.また,ロボットの関節可動範囲から構築したSelf-Modelに基づいて,ロボットが人間との協調作業中において関節の可動範囲限界等の問題を回避可能とする手法を提案し,実機を用いた実験を行うことによってその有効性を確認した.