著者
川崎 展 上田 陽一 酒井 昭典 森 俊陽 佐羽内 研 橋本 弘史
出版者
産業医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

下垂体後葉ホルモンの一つであるオキシトシン (OXT)は疼痛調整に関与していることが示唆されている。本研究の目的は、OXT-単量体赤色蛍光タンパク1 (mRFP1)トランスジェニックラットを用いて、急性ならびに慢性炎症・疼痛モデルラットを作製し、視床下部・下垂体後葉・脊髄におけるOXT-mRFP1融合遺伝子の発現動態を可視化・定量化し、OXTの役割を検討した。その結果、急性および慢性疼痛・炎症モデルラット、いずれにおいても下垂体後葉系におけるOXTの産生・分泌の亢進および視床下部室傍核-脊髄経路のOXT系が活性化しており、温痛覚の感受性に関わっていることが示唆された。
著者
長田 良雄 黒田 悦史 山田 壮亮
出版者
産業医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

炎症性疾患に抑制作用をもつ寄生虫を複数比較し、抑制効果に必須の因子を見出すことを目指した。腸管寄生線虫Heligmosomoides polygyrus (Hp) とマンソン住血吸虫(Sm)のマウス実験的1型糖尿病(T1D)抑制効果はSTAT6とIL-10二重欠損下においても観察できた。その際膵リンパ節や脾臓マクロファージが非典型的なM2様活性化を受けており、抗糖尿病効果に関与している可能性が考えられた。一方Smのコラーゲン関節炎抑制効果はSTAT6に依存していた。本成果により蠕虫の抗炎症機構の一端が解明された。将来の低病原性寄生蠕虫を用いた炎症性疾患治療法開発への貢献が期待される。
著者
黒田 嘉紀
出版者
宮崎大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2015-04-01

鉱物油の免疫学的影響について、鉱物油を投与したマウスの腹腔細胞、脾臓細胞を使用しT細胞、マクロファージ細胞及びB細胞への影響についてFCMを使用し、細胞表面レセプターについて検討した。T細胞ではCD28、ICOS、CD40L、PD1が増加していた。またマクロファージ及びB細胞についてはCD28、ICOS、CD40LのリガンドであるICOS-L、CD40、PD-L1 PD-L2はいずれも低下していた。これらの結果からT細胞は刺激され、マクロファージ細胞及びB細胞抑制される可能性が示唆された。
著者
柳原 敏昭 七海 雅人 狭川 真一 入間田 宣夫 菅野 文夫 堀 裕 山口 博之 誉田 慶信 佐藤 健治 齊藤 利男 飯村 均 乾 哲也 井上 雅孝 及川 真紀 岡 陽一郎 菅野 成寛 鈴木 弘太 長岡 龍作 奈良 智法 畠山 篤雄 羽柴 直人 若松 啓文
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

本科研がめざしたのは、歴史資料の再検討による、平泉研究の新たな展開のための基盤整備である。研究目的に即し、文献・考古・石造物の三班に分かれて研究を遂行した。文献班は、中尊寺文書を中心とする同寺所蔵中世史料の悉皆的な調査を実施し、多くの新知見を得た。また、平泉関係の文献史料を集成した。考古班は、経塚を中心とする12世紀代の遺跡の発掘調査を行い、日本最北端の経塚を確認するなどの成果を上げた。また、平泉に関連する北海道・東北地方の遺跡の集成を行った。石造物班は、平泉とその周辺の石造物を調査、資料化し、主要なものについて報告書に掲載した。結果、平泉研究に新しい面を開くことができた。
著者
藤原 奈津美
出版者
徳島大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

高齢者や有病者などの易感染性宿主は、口腔細菌による誤嚥性肺炎の発症リスクが高く重症化しやすい。さらに口腔環境が不衛生になりやすく、日和見感染菌の検出率も高い。緑膿菌の病原因子の一つである、ピオシアニンは、誤嚥性肺炎の病態確立に極めて重要な病原因子であることから、「不衛生な口腔環境下において口腔細菌がピオシアニン産生を促進させ、誤嚥性肺炎の重篤化をもたらす」可能性が考えられる。本年度は、口腔細菌の情報伝達物質や分泌蛋白を含む培養上清を緑膿菌に作用させて、非接触系でのピオシアニン産生促進効果について解析した。Streptococcus mutansなどの口腔レンサ球菌、Porphyromonas gingivalis, Fusobacterum nucleatumなどの歯周病原因菌、日和見感染の原因菌となる、Candida albicans, Staphylococcus aureusなどの口腔細菌の培養上清を添加した条件下で緑膿菌を培養し、ピオシアニンの産生量を測定した。その結果、F. nucleatumの培養上清を添加するとピオシアニン産生量が増加することを確認した。ピオシアニンとは異なる病原因子のピオベルジンにおいても同様の条件下で産生量を検討したが、産生促進の影響は示されなかった。F. nucleatumに着目し、F. nucleatum subspeciesや臨床分離株を用いてピオシアニン産生量の違いを確認した。ピオシアニン産生促進効果を発揮する物質をスクリーニングするために、F. nucleatum培養上清を熱処理しピオシアニン産生量を測定したところ、産生量が減少した。よって、ピオシアニン産生を促進する物質は、F. nucleatumの代謝産物中の、熱に対して不安定なタンパクである可能性が示された。
著者
冨田 武照
出版者
北海道大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2011

サメ・エイ類を含む軟骨魚類は、現在でも生きている原始的な脊椎動物と考えられており、その生殖システムを解明することは私たちの生殖システムの起源を知る上で極めて重要である。特にサメ・エイ類には卵生(卵を産む)と胎生(赤ちゃんを産む)のグループが共存しており、私たち哺乳類に見られる胎生がいかに進化してきたのか明らかにする格好の材料である。私は、沖縄美ら海水族館と共同で、卵生のトラザメが呼吸システムをいかに獲得するのか詳細に調査を行った。調査には実体顕微鏡による行動解析、組織切片の観察などを中心に行った。その結果、トラザメの胎児は卵殻の中にいる期間に大きく呼吸システムを変化させることが明らかになった。具体的には、前半の期間には外鰓を用いて呼吸を行うが、後半の期間には筋肉や骨格系の発達に伴って水をポンピングする能力を獲得し、内鰓を用いて呼吸を行うようになる。このような呼吸システムの変化は脊椎動物の進化の初期にすでに獲得されていた可能性がある。さらに、私の過去の胎生のエイ類の研究によって得られた結果は、トラザメで見られた呼吸システムの変化は胎生のサメ・エイ類でも見られる可能性があることを示している。この結果は、卵生と胎生はまったく異なる生殖システムなのではなく、ある程度同じシステムを共有していることを示唆している。胎生と卵生のシステムに今回共通性が見出せたことで、卵生から胎生への進化の過程の一端が解明できたと評価できる。
著者
曽我部 真裕 井上 武史 堀口 悟郎
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

曽我部は、研究全体のとりまとめを行うとともに、「基本的情報の提供・流通の体制のうち公共放送のあり方」に関して、報道の任務について論じ(「任務は権力監視、独立性が生命線」Journalism328号(2017年))、また、関連して判例の検討等を行った(「2017年マスコミ関係判例回顧」新聞研究799号(2018年))。また、「補完的に民意を表明・調達する手法」として、デモ規制のあり方について検討した(「市民の表現の自由」宍戸常寿・林知更(編)『総点検 日本国憲法の70年』(岩波書店、2018年))。井上は、分担テーマである「民主政に関与するアクターの規律」について、民主政に関するフランスの憲法規定の変遷を統計的、網羅的に検討し、かつ民主政のあり方を問い直す最近の改憲議論を取り上げて、その動向を探る研究を行った(「フランス第5共和政における憲法改正:最近の改憲論議も含めて」辻村みよ子編集代表、講座政治・社会の変動と憲法:フランス憲法からの展望第Ⅱ巻『社会変動と人権の現代的保障』、信山社、2017年)。堀口は、昨年度に引き続き、分担テーマである「専門的知識を創出・供出する制度」として、学術の中心をなす機関である大学に関する検討を行った。具体的には、①高等教育の無償化が大学に与える影響(斎藤一久=安原陽平=堀口悟郎「高等教育の無償化に向けての憲法改正の是非」季刊教育法195号(2017年))、②大学運営に対する学生の参加が大学教員の学問活動に与える影響(堀口悟郎「(学会報告)学生の参加と教授の独立」比較憲法学会、2017年10月28日、同志社大学)について考察した。
著者
平野 恵美子
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

豊かな芸術文化の国として知られるロシアは、バレエや音楽などで常に優れた才能を輩出している。ボリショイ劇場(モスクワ)やマリインスキー劇場(サンクトペテルブルク)は、その象徴であり、ロシア芸術を代表する存在だと言える。しかしこの広大な国の音楽芸術文化の諸相は実に様々で、モスクワとペテルブルクの二都市だけでも、無数の劇場やコンサートホールがあり、その運営方法も公的なものから私設のものまで幅広い。特に19世紀半ば以降、資本家が台頭し、芸術家のパトロンとなって私立のオペラ団を経営する者も現れ、その水準や革新性は、マリインスキー劇場やボリショイ劇場のような帝室劇場に匹敵するか、凌駕し、影響を与えるほどだった。またこのことは、ロシアの貴族文化の伝統とも関係があると考えられる。ヨーロッパの貴族は昔から、自分達の邸宅に小劇場を持ち、使用人を出演させたり、時に自らが出演して演劇を楽しむという習慣があった(それは自分達の楽しみだけではなく、賓客をもたらしたり、支配者たる王を讃えたり、あるいは自分達の財力を誇示し、権威を高めるために行うこともある)。ことロシアにおいては、農奴劇場というものがあり、農奴俳優や農奴音楽家の存在が知られている。一方、上流階級の貴族達も、非常に高度な音楽教育を受けていたことが明らかになりつつあり、私達が現代の常識や物差しで想像しているだけでは、その本当の姿を知ることはできない。本研究では、当時の新聞や批評など一次資料を用いて、19世紀後半のロシアにおける、音楽・劇場文化の実態を明らかにして、日本でも人気の高いロシア音楽のさらなる理解を深め、最終的には政治や経済の状態に左右されずに、日本とロシアの友好的な関係を築くことに貢献するのを将来の目的に据えている。
著者
川島 京子 鈴木 晶
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究は、日本バレエ史上最大のメルクマールと位置付けられる「東京バレエ団」(1946年結成、1950年自然消滅)の実像を明らかにするとともに、その歴史的意義を考察することを目的としている。具体的には、(1)これまで明らかになっていなかった東京バレエ団の活動実態および上演作品を、現存資料、聞き取り調査から、その実像を浮かび上がらせること、(2)東京バレエ団の活動とその後「世界有数のバレエ大国」と称されることとなる日本バレエ界の発展との因果関係の考察、(3)東京バレエ団の結成、解散の原因ともいえる日本バレエ界の特殊性を、今日的視点から捉えなおすことである。
著者
鈴木 晶 市瀬 陽子 海野 敏 関 典子 渡沼 玲史 長野 由紀 村山 久美子 森 立子
出版者
法政大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

他の芸術分野に比べて、舞踊学は大きく遅れをとっており、とくにバレエに関する学術研究はまだ乏しい。私たちはそれを打開すべく、バレエ文化史研究の発展のための基盤整備に取り組んだ。本研究の最大の成果は、近代バレエが生まれた19世紀初頭においてバレエ発展の中心であったパリ・オペラ座の全上演記録データベースの作成であるが、この世界初の試みを無事完成させることができ、その成果の一部を舞踊学会にて発表した。他の研究成果についてはすべてウェブサイトに掲載することができた。これによって、わが国のバレエ研究に大きく貢献したと自負している。
著者
國府方 吾郎 横田 昌嗣 齊藤 由紀子
出版者
独立行政法人国立科学博物館
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

琉球列島の沖縄群島小島嶼に分布する絶滅危惧植物の固有性解明およびに分類に関するする研究を行った。特筆成果として、伊是名島産イトスナヅルを固有種とする見解の支持、琉球列島固有種マルバハタケムシロのオセアニア産との隔離分布の支持、ヤエヤマスズコウジュの久米島での新産地発見などが挙げられる。また、同小島嶼産絶滅危惧植物42種類の自生地外系統維持への追加、360点の標本データベース化、そして、得られた成果に基づく絶滅危惧植物と生物多様性等に関する企画展等を社会発信として行った。
著者
永尾 雅哉
出版者
京都大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2013-04-01

Marrubium vulgareという植物の抽出液中に6-octadecynoic acid (6-ODA)という三重結合を有する珍しい脂肪酸見いだしたため、その機能について解析した。まず合成により量を確保した上で、核内受容体のPPARγのアゴニストとして機能し、前駆脂肪細胞の分化系を用いて、脂肪蓄積促進活性があることを確認した。また、GPR40という別の細胞膜に存在する受容体を介して、膵臓β細胞株であるMIN6において用量依存的にインスリンの分泌を促進することを見いだした。また、飽和脂肪酸であるパルミチン酸の脂肪毒性による小胞体ストレスの誘導に対して保護的な効果を示すことを見いだした。
著者
西條 政幸
出版者
国立感染症研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究により.世界で初めてウイルス学的に証明されたアシクロビル耐性HSV-1による新生児脳炎患者の報告をした.DNApol関連ACV耐性HSV-1の性状を解析し,多くの耐性株は神経病原性が低下しているものが多いものの,中には病原性が維持されているウイルスも存在する.また,DNApol関連ACV耐性HSV-1のほとんどがガンシクロビルに感受性を有し,逆にフォスカルネットには交叉耐性を示すことが明らかになった. ACV耐性HSV感染症の増加等が予想されることから,今後,病原ウイルスの薬剤感受性を調べる耐性の構築と,その結果に基づく適切な治療ができるようにする必要がある.
著者
松村 暢隆 小倉 正義 竹澤 大史 緩利 誠 石川 裕之 石隈 利紀
出版者
関西大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

発達障害や学習困難のある児童生徒について、広義の2E教育の観点から、得意や興味等の「認知的個性」を捉えて、それを活かして苦手を補う特別支援の方策を探った。認知的個性の自己チェックリストを開発して、それが通常学級の学習で有用なこと、また発達障害や学習困難な生徒の学習・生活支援に活用できることを示した。併せて、2E教育の多様な形態や可能なカリキュラムの変革について調査、考察した。
著者
浅田 進史
出版者
首都大学東京
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

第一次世界大戦を契機に勃発した日独青島戦争について、ドイツ・フライブルク連邦軍事文書館所蔵のドイツ総督府史料を基に再検討した。これまでの先行研究では、ドイツ総督府による戦争遂行の実態についてはきわめて不十分にしか分析されていなかった。本研究によって、ドイツ総督府が植民地統治下にあった中国系住民をいかに防衛戦に動員したかが具体的に解明された。さらに、従来山東問題や日独関係史の枠組みで議論されていたこの日独青島戦争が植民地戦争の歴史として再検証すべきであることが明らかになった。
著者
田島 美幸 佐渡 充洋 藤澤 大介 堀越 勝 大野 裕 横井 優磨 吉原 美沙紀 原 祐子 藤里 紘子 岩元 健一郎 石川 博康 岡田 佳詠
出版者
国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

本研究では、認知行動療法を活用した認知症の家族介護者向けの2つのプログラム(①集団CBT、②訪問看護師による個人CBT)を開発し有効性を検討した。【集団CBT】集団CBTプログラム(月1回90分、計5回)を実施したところ、75歳以下の介護者では、介護負担感、介護に対する否定的な感情において主効果が認められた(p<0.05)。【訪問看護師によるCBT】 訪問看護時に訪問看護師が実施できる個人CBTプログラム(1回30分、計11回)を開発した。また、介入の質を担保するために訪問看護師に対するCBTの教育体制(集団研修およびスーパービジョン)を整備した。現在、症例登録を継続中である。
著者
松村 幸子
出版者
公益財団法人がん研究会
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2012-04-01

標的とするがん細胞上での複数の相互作用と協同的な効果を利用することで、がん細胞を効率的に検出することを目指した。標的に結合するリガンドと、ペプチドの構造形成能力を組み合わせることで、リガンドを多数含むナノサイズのペプチド集合体を作製した。この集合体は、標的の膜タンパク質を発現するがん細胞に特異的に結合することができ、がん細胞を蛍光によって検出することができた。
著者
西村 史子
出版者
共立女子大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

本研究は、諸外国の非就学型の義務教育と公的支援について調査確認し、日本の義務教育の形態及び無償性の枠組みを柔軟化する試みである。米英仏ではホームエデュケーションとして制度化され、立法府で再三論議されながら、障害教育を除き、国家から家庭への経済的支援は殆ど無い。地方政府や民間奨学団体による支援は認められる。米国では、家庭の負担に対し、所得税の控除等を配慮している州はある。途上国では、ノンフォーマルエデュケーションを通じて、義務教育を拡充してきたが、近年は就学義務を徹底しつつある。政府はホームスクーリングの支援制度、登録制や監督強化、高等教育機関への進学保障を通じて、公教育への包摂化を進めている。
著者
久野 マリ子
出版者
國學院大學
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2019-04-01

共通語は東京方言を基盤とし、東京方言は関東方言を基盤としている。これまで首都圏の関東方言は共通語に近いとされ詳細な資料報告が少なかった。高年層が健在なうちに首都圏方言の基盤となった関東方言の記述と保存を行う。また、首都圏方言が公の場で用いられる共通語に対して、日常の生活語として使われる首都圏方言が、日本各地において特に若年層で、くつろいだ場で用いられる内々の共通語として受け入れられつつあることを明らかにする。方言の事象というより、「ゼーイン(全員)」のような第2拍目の撥音の音声変化が日本語音韻全体に浸透しつつある実態を明らかにしようとする。