著者
大谷 元
出版者
信州大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1993

1.牛乳k-カゼインのグリコマクロペプチド(106-169域)は単球/マクロファージに結合し,インターロイキン-1レセプターアンタゴニストの生産を誘導することによりBリンパ球やヘルパーTリンパ球の増殖・分化を抑制する。また、グリコマクロペプチドの単球/マクロファージへの結合は,グリコマクロペプチド分子内のシアル酸を末端にもつ糖鎖やホスホセリン残基のような強い負の荷電などの複数の負の荷電を介して起こる。2.牛乳k-カゼインのラクトフェリンは肥満細胞からの化学情報伝達物質の遊離を抑制することにより,抗アナフィラキシ-活性を有する。また、ラクトフェリンはペプシン消化することにより,未消化ラクトフェリンの場合とは異なった機構で作用する抗アナフィラキシ-成分を生じる。3.牛乳αS_1カゼインとk-カゼインはマクロファージの活性化に対して抑制的に,β-カゼインは促進的に働き、抑制的に働くαS_1カゼイン,k-カゼインおよびカゼイン由来の抑制ペプチドはすべてマクロファージに結合し,促進的に作用するβ-カゼインやそれ由来の促進ペプチドはマクロファージに結合しない。4.鶏卵アビジンはサプレッサーTリンパ球に結合し,サプレッサーTリンパ球上への1L-2レセプターの発現を抑制することにより,サプレッサーTリンパ球の増殖を抑制する。また,ウズラ卵オボアルブミン,オボトランスフェリン,オボインヒビターおよびリゾチームもTリンパ球やBリンパ球の増殖抑制作用を有しており,ウズラ卵オボトランスフェリンの抑制作用はリンパ球に特異的な細胞障害性とリンパ球増殖抑制成分の誘導による。さらに,ウズラ卵オボインヒビターのリンパ球増殖抑制作用はリンパ球増殖抑制因子の誘導による。
著者
金兼 弘和
出版者
東京医科歯科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

原発性免疫不全症(primary immunodeficiency disease: PID)は、先天的に免疫担当細胞に欠陥がある疾患の総称であり、障害される免疫担当細胞(例えば、好中球、T細胞、B細胞など)の種類や部位により300以上の疾患に分類される。臨床症状は易感染性のみならず、自己免疫疾患や悪性腫瘍も合併も高頻度であり、これらの合併症が前面にでるPIDも存在する。単一遺伝子病でありながら、臨床的多様性が広く、epigeneticな要因などが想定されているが、詳細は明らかではない。最近、腸内細菌叢がさまざまな疾患の病態に関わっていることが報告されているが、PIDの腸内細菌叢に関する研究はまだ多くない。本研究ではPIDでも自己免疫疾患の合併が多く、腸内細菌叢の異常を伴うことが予想される炎症性腸疾患(inflammatory bowel disease: IBD)の合併が多い疾患を対象とし、腸内細菌叢がPIDの病態にどのように関わっているかと明らかにする。本研究では家族性腸管ベーチェット病の原因として同定されたA20ハプロ不全症ならびにIBDを高頻度に合併するX連鎖リンパ増殖症候群2型であるXIAP欠損症を対象とした。両疾患はPIDのなかでも比較的稀であるが、当科はレファレンスラボであり、多数例の患者をフォローしており、信頼性のあるデータが得られる可能性が見込まれる。患者ならびに家族から同意を得て、患者本人ならずに同居家族から糞便を採取した。また造血細胞移植を受けたXIAP欠損症患者では移植後の検体も採取した。便からDNAを採取し、次世代シークエンサーを用いた腸内細菌叢の解析を行っているところである。
著者
内舩 俊樹
出版者
横須賀市自然・人文博物館
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010-04-01

日本産ガロアムシ類(昆虫綱・ガロアムシ目)6種の分類学的再検討に向けて、日本各地からガロアムシ類を収集し、標本を形態データや画像とともにコレクションし、共同研究による分子系統解析を行った。原記載以来再検証されなかった西日本産2種(チュウジョウムシとイシイムシ)の確保に成功、これら2種のそれぞれ種としての特異性を確認するとともに、6種間の雌成虫の形態に基づく比較検討を行った。
著者
永見 智行
出版者
早稲田大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究では野球投球時の上肢・体幹部の動作がボールの回転に与える影響を明らかにした.その結果,(1)直球との差異という観点からは,変化球は3つのグループに分類されること,(2)3つのグループのうち,直球と同程度の回転スピードのまま回転軸方向を変更する球種群(スライダー,カーブ等)では,リリース直前の肘関節回外角度を増大させることで直球と乖離するような回転軸方向に調節していること,(3)この回外角度の変化およびそれに伴うボール回転軸方向の変化は,同一球種投球時の日間変動としても起こること,が示唆された.これらの結果は,投手のトレーニング,コンディショニングに活用できる可能性がある.
著者
青村 茂 角田 陽 中楯 浩康
出版者
首都大学東京
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2014-04-01

血液脳関門(BBB)は,血液から中枢神経系に取り入れる物質の選択や,血液中に有害と判断される物質が存在した場合,脳や脊髄への侵入を防ぐ脳毛細血管の機能である.頭部外傷時に頭蓋内で発生する衝撃圧力とBBB破綻のメカニズムを明らかにするため,BBBを構成する脳毛細血管内皮細胞,アストロサイト,ペリサイトを播種したin vitro BBBモデルに衝撃圧力を負荷し,BBBのバリア機能を経内皮電気抵抗値(TEER)で評価した.衝撃圧力が脳毛細血管のバリア機能を低下させ,BBBの破綻に繋がることを示した.
著者
金子 豊二
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2014-04-01

1.ティラピアの消化管でK+とNa+が主にどの部位でどの程度吸収されるのかを検討するため、消化管を複数の部位に分け、経時的に内容物を採取し、K+とNa+の濃度を測定した。その結果、胃から腸の前半部にかけてK+濃度が大きく減少した。また、時間経過に伴って胃内のK+濃度が徐々に低下した。このことから、餌料として口から摂取されたK+はまず胃に滞留している間にその多くが吸収され、腸の後半へ移行するにつれてさらに吸収が進むことが示唆された。2.消化管内のK+輸送に関わると考えられる輸送分子について、定量PCRによって組織別発現解析を行った。その結果、胃においてK+の吸収を担うとされるHKAおよびHKAと共役するカリウムチャネルKCNQ1が胃に特異的に発現していることが示された。一方、腸においてはK+、Na+、Cl-を輸送するNKCC2およびNa+とCl-を輸送するNCCbが特異的に発現していた。従って、胃においてはHKAとKCNQ1が、腸においてはNKCC2 とNCCbが、K+輸送に寄与すると考えられた。次に、これらの輸送分子に対する絶食の影響を検討した結果、胃における発現が確認されたHKAおよびKCNQ1の発現が、絶食条件下において低下する傾向が見られた。それに対し、腸において発現が確認されたNKCC2およびNCCbの発現は絶食条件において変化はみられなかった。3.ティラピアの胃を用いてサックを作製し、実際にイオンがどの程度輸送されているのかについて検討した。胃のサック実験は、採取した胃に調製した内液を入れたものを糸で吊るして培養液 (L-15) に浸し、1時間インキュベートした。その結果、内液のK+濃度の低下がみられた。さらに内液のpHの低下も認められたことから、胃内腔のK+と胃腺細胞内のH+が交換的に輸送されることが示唆された。
著者
徐 勝 赤澤 史郎 生田 勝義 市川 正人 大久保 史郎 松本 克美
出版者
立命館大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2005

07年度は、本研究課題にかかわり、2回の日韓共同研究会および過去3年間にわたる共同研究の成果刊行を行った。まず、07年6月22、23日に第5回日韓共同研究会「現代日本と韓国の情報化・情報通信技術(IT)の発展と法的問題」(立命館大学BKCエポック21)を開催した。本共同研究は、1990年代半ば以後の日韓の情報化の到達点と法的諸問題を総合的に検討することを目的に、以下のような日韓の研究者が報告・討論を行った.第一部「インターネットにおける表現の自由と制限」(22日)では、(1)市川正人(立命館大学)「ネットワーク社会における表現の自由」、(2)黄ソンギ(東国大学校)「韓国のIT発展と民主主義」など、第二部では杉村豊誠(日本電信電話株式会社)「日本のIT企業の法的対応」、朴ソンホ((株)nhn)「韓国社会のIT発展と企業の対応」など、第三部では、(2)園田寿(甲南大学)「わが国におけるサイバー犯罪と刑事法制」、(3)黄承欽(誠信女子大学校)「インターネットポータルサービスによる名誉毀損の被害救済システム」など、2日間で計11本の報告を行い、資料集を作成・配布した。08年2月14日には第6回日韓共同研究「現代韓国の民主主義の新展開」(韓国・ソウル大学校湖厳会館)を開催した。本共同研究では「現代韓国の民主主義の評価」として李国運(ハンドン大学校)「盧武鉉政権下の民主改革の法的評価」、丁海亀(聖公会大学校)「盧武鉉政権下の民主改革の政治的評価」などの報告を行い、また05年〜07年度までの本共同研究の総合的評価を行うとともに、継続研究の今後の展望および計画について議論・検討を行った。また『立命館国際地域研究』26号(08年2月)に特集として第4回日韓共同研究の報告論文4本などが掲載された。成果刊行としては、過去5回の日韓共同研究会で報告された45本の論文から15本を加筆・修正した上で編集し、『現代韓国民主主義の新展開』(御茶の水書房、08年3月)として出版した。第5回共同研究会の成果刊行は、08年秋に刊行予定である。
著者
江頭 祐嘉合
出版者
千葉大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

神経毒キノリン酸の産生増加因子EPAやデヒドロイソアンドロステロンによるACMSDmRNAの低下は核内転写因子PPARαを介さないことを示した。糖尿病時の肝細胞内外におけるキノリン酸濃度を調べた結果、細胞内で生成したキノリン酸を細胞外へ積極的に排出する機構の存在が示唆された。脳神経マクロファージ細胞ミクログリアの培養液にLPSと食品成分を添加した時、ある種のポリフェノールはIDOの発現を有意に低下させることを示した。
著者
田中 康一
出版者
(財)東京都老人総合研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1996

大脳皮質シナプスにおけるアセチルコリン合成活性やそのレベルには加齢変化はないものの、脱分極刺激によるアセチルコリン放出が老齢シナプスにおいて低下することが種の違いを超えて認められた。この老齢シナプスにおけるアセチルコリン放出低下は、放出のトリガーとなるカルシウムイオン流入低下によることがカルシウムイオン蛍光指示薬を用いた実験で明らかとなったため,シナプスにおける電位依存性カルシウムチャネル(VDCC)の加齢変化を調べることを目的とした。大脳皮質シナプス膜のVDCCサブタイプの分布を各サブタイプに特異的なブロッカーを用いて調べたところ、L型チャネルが27%,N型チャネルが32%,P型チャネルが27%,Q型チャネルが23%であった。個体の老化によってP型チャネルの分布は全VDCCの16%となり,成熟期のラットに比べて著しく減少していた。さらに,シナプス膜への放射標識ブロッカーの結合実験によって,VDCC密度の加齢変化を検討した。その結果,25ヶ月齢では、L型,N型,Q型チャネルのBmax値,すなわち最大結合サイト数が6ヶ月齢に比べそれぞれ50%,35%,52%と顕著に減少していた。このVDCC密度の減少が、カルシウムイオン流入低下の直接の要因となっていることが推察された。また,L型チャネルブロッカー結合に対するKd値が老齢シナプスで成熟動物シナプスに比べて大きな値を示すことが認められた。この結果は、L型チャネルのブロッカーを結合するサブユニット(おそらく、α1サブユニット)の加齢による構造変化を反映している可能性を示唆していると思われる。以上,本研究の結果から、大脳皮質コリン作動性シナプスにおけるアセチルコリン放出低下とそれに伴うシナプス可塑性の加齢低下の根底には、電位依存性カルシウムチャネルの分布や密度の異常が関与していることが強く示唆された。
著者
井關 敦子 中塚 幹也 山口 琴美 山田 奈央 大橋 一友
出版者
岐阜大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

MtF当事者は社会適応が低くqolが低いと報告される.MtF当事者2名にインタビューを行った.共通する点は,性別違和についてネガティブな価値観を持つとは限らずその価値観も多様であった.日常生活において他者の配慮があれば大きな困難なく生活でき,就業や経済状態が安定していること,家族がいることは重要であった.その他,29年度は,性の多様性に関わる以下の活動や研究を行った.29年9月に看護職,教育,研究職向けの講演会「LGBTを理解する」を岐阜大学は開催し,研究責任者は講師となった.LGBT支援団体からの協力も受け,科学研究費を活用しこの講習会を遂行した.この講習会は看護,教育,医療従事者のLGBTに対する認知を促した.29年12月には中部地方の看護職の.GBTに対する認識について質問紙調査を実施し,その結果は30年3月のGID学会で発表した.また,28年12月に実施した「岐阜県内の小中学校に勤務する養護教諭のLGBTに対する認識」に関する質問紙調査の結果が、30年3月GID学会誌に論文として掲載された.これらの調査や活動から,今後の研究を遂行するうえで重要な情報を得た.また研究を遂行するうえで,協力者を得る機会になっている.
著者
山内 裕
出版者
京都大学
雑誌
国際共同研究加速基金(国際共同研究強化)
巻号頁・発行日
2016

本基金を利用して滞在したコペンハーゲンビジネススクールの研究者との共同研究が進んでいる。まず、代表者のこれまでの鮨屋の研究を発展させ、教授の一人と工芸についての研究を始め、日本とヨーロッパの国際比較を行うと同時に、初期的な結果を本の1章として発表することが決まっている。またもう一人の教授とは料理のデザインに関する研究で協業しており、5月の国際会議で発表すると共に、ジャーナルに投稿すべく準備を行っている。また、これらの研究者との連携がより強化され、2017年度には2度日本に滞在し、今後も交流が計画されている。さらに共同で申請したデンマークの研究費を利用して、コペンハーゲンビジネススクールと京都大学の共同ワークショップを、6月に京都で9月にコペンハーゲンで実施した。またこの連携により、代表者の指導する博士課程の学生がコペンハーゲンビジネススクールに長期滞在し研究指導をうけるなど、その成果は着実に広がりつつある。南洋理工大学の研究者との連携も進み、2月に来日しワークショップを実施した。フランスの研究者との連携も拡大し、11月には新しい研究費を利用して、リヨン郊外のレストランでデータを収集することに成功した。このように、本基金での活動が国際共同研究のネットワークの拡大に大きく寄与している。米国滞在で進めたネットワーキングを利用し、これまで日本語で発表してきた独自の理論を、英語で発表する準備をすることができた。サービス科学の中心的なHandbookの一つのチャプターとして収録されることが決まっており、すでに最終稿を提出している。また、この研究の成果を組込む形で、従来から配信していたMOOC(大規模オープンオンライン授業)を大幅に改訂し配信している。
著者
三井 純
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

多系統萎縮症(MSA)患者群と健常対照者群に対して,血漿コエンザイムQ10濃度測定を行い,MSA患者ではCOQ2変異の有無にかかわらず血漿コエンザイムQ10濃度が有意に低いことを見出した.また,MSA患者からiPS細胞を樹立し,iPS細胞由来の神経細胞の分化誘導を行ったうえで機能解析をした.複合ヘテロ接合性にCOQ2変異をもつMSA患者では,ミトコンドリア呼吸機能ならびに抗酸化機能が低下していること,またCOQ2変異を持たないMSA患者でもアポトーシスが増加していることを認めた.これらの知見から,コエンザイムQ10の補充がMSA患者にとって有益である可能性が示唆される.
著者
山本 康貴 馬奈木 俊介 増田 清敬 近藤 功庸 笹木 潤 宋 柱昌 吉田 祐介 赤堀 弘和
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

EUでは、環境に配慮した農業生産を行うなどの一定要件を満たした農業生産者に補助金等を支払うというクロス・コンプライアンス(CC)を適用した農業政策が実施されている。本研究では、CC受給要件を、農業由来の環境負荷などの外部性効果とみなして評価し、CC受給要件の内容設計に資する手法の開発や適用を試みた。農業生産活動由来の環境負荷に及ぼす環境影響を経営段階のミクロレベルや国全体のマクロレベルで定量評価できる手法の開発と適用を行い、CCを適用した新たな農業政策の設計に資する基礎知見を得ることができた。
著者
三輪 正人 中山ハウリー 亜紀 大久保 公裕 飯島 史朗 村上 亮介
出版者
順天堂大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

ドライスキンと同じく、ドライノーズの病態がアレルギー性鼻炎の前駆段階である可能性を実証するため、スギ花粉抗原鼻誘発前後の鼻粘膜上皮バリア機能の非侵襲的生理学的検査である鼻粘膜水分蒸散量、鼻粘膜上皮間電位差の測定、鼻汁浸透圧、pHの測定、鼻および口呼吸時の呼気凝集液中の過酸化水素濃度の測定、鼻粘膜上皮擦過細胞の糖鎖解析をおこなった。また、ドライアイの成因として、涙液の高浸透圧が考えられている。高浸透圧溶液のモデルとして5%の高張食塩水の点鼻誘発刺激をおこない、同様の検討を実施した。抗原特異的鼻誘発後、非特異的刺激である高張食塩水点鼻の両者とも、鼻粘膜水分蒸散量は増加、鼻粘膜上皮間電位差は減少し、鼻粘膜上皮バリア機能は低下したことが示された。抗原刺激後、呼気凝集液中のpHは上昇したが、高張食塩水刺激では有意な変化はみられなかった。両者共刺激後の呼気凝集液中の過酸化水素濃度も増加したが、異なる経過をたどった。鼻粘膜上皮擦過細胞の糖鎖の解析では、ABA, LCA, SSA lectinの反応性が、スギアレルギーの被験者で特異的ならびに非特異的誘発刺激後、減少していた。ドライノーズの病態とアレルギー性炎症、高浸透圧環境の関連性について引き続き解析中である。
著者
松田 一希
出版者
京都大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2012-04-01

テングザルの食物選択においては、同様の消化機構を有するが反芻行動が観察されていない他の霊長類種と大きな違いは見られなかった。一方で、糞の粒度の比較からは、テングザルが夜間にコンスタントに反芻行動をしている可能性を示唆する有力な結果が得られた。事実、夜間により高頻度で反芻行動を行っていることが、夜間行動をビデオ録画することにより明らかになった。また、野生下のテングザルは飼育下のテングザルに比べて、夜間により頻繁に覚醒と睡眠を繰り返しており、これは野生下のサルがより高い捕食圧に曝されている結果の行動であると解釈できた。
著者
遠藤 貢
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2019-04-01

本研究では、再編期にある「アフリカの角」地域の調査を実施することを通じ、2020年段階に向けた「アフリカの角」地域の国際関係を読み解く。そして、それと相互作用の中に展開するアフリカ大陸側の旧来の「アフリカの角」を構成してきた国々における新たな政治的ダイナミズムを明らかにする。現在の動きを示している「アフリカの角」地域の動静を丹念に追う作業を実施する。加えて、域内再編がもたらす国内秩序への影響を、より理論的に分析するための理論的可能性を検討する。その際には、政治体制変動研究の知見を生かし、国際政治と国内政治の関係性を読み解く理論枠組みの構築を目指す。
著者
川端 寛樹
出版者
国立感染症研究所
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2004

ライム病はスピロヘータの一種ボレリア感染に起因する慢性の感染症で、抗菌薬による治療を行わなかった場合、慢性の関節炎、皮膚炎、神経炎に移行する。本研究では、ライム病ボレリアゲノムシークエンスが完了したボレリアB31株を用い、マウス感染モデルにおける病原性機構、特に関節炎発症メカニズムの解明を目的として以下の研究を行った。結果:1)B31株エピソームである28kb線状plasmid-4(lp28-4)を欠失した変異体では、接種部位から遠位に位置する関節組織において、関節炎の重症化が起らない事、即ち、この表現型では関節周囲組織へのボレリア侵入能、定着能もしくは組織での病原性が低下していることを明らかにした。2)炎症の度合いは組織での定着菌数と比例すること、すなわちlp28-4欠失変異体では、関節組織での定着菌数が低下していることを見出した。3)Lp28-4プラスミド上の因子同定を目的として、3種類の推定表層抗原遺伝子(BBI16,BBI36,BBI42)を相補し、感染実験を行った。これは、ライム病ボレリアは病原因子等の分泌機構を有さないこと、すなわち表層抗原に依存した病原機構が多いと考えられるためである。しかしながら親株であるlp28-3欠失変異体と比較し、本相補株では有意の関節炎増悪はみられなかった。まとめ:以上の結果から、lp28-4領域に関節炎を増悪させる因子が存在する可能性が示唆された。本因子には、ボレリアの関節周囲組織への浸潤を促進する機能があると考えられた。一方でlp28-4上の因子の特定にはいたらなかった。
著者
若井 建志 内藤 真理子 川村 孝
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011-04-28

歯科医師集団(21,260名)の平均9.5年間に及ぶ追跡調査において、喪失歯数が多い場合に、全死亡、脳卒中罹患、肺炎死亡リスクが高い傾向が認められた。また1日の歯磨き回数が多いほど、脳卒中罹患のリスクは低くなる傾向が観察された。一方、喪失歯数と虚血性心疾患、および歯磨き回数と全死亡、脳卒中罹患、肺炎死亡との間には有意な関連はみられなかった。
著者
山迫 淳介
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2014-04-25

多くの生物において、分布の拡大と分断は、その進化の道筋を解明する上で非常に重要である。とくに海洋は、陸上動物にとって大きな障壁となると考えられており、重要な分断要因の一つである。しかし、カミキリムシのような穿孔性昆虫では、幼虫の入った木材が海流によって運ばれることにより、海洋を超えて分散したと考えられる種が少なからず存在する。本研究では、飛翔能力が欠如しているにも関わらず、台湾から琉球列島の島嶼部を経て日本の沿岸域に広域な分布を示すウスアヤカミキリ属を用いて、海洋を超えた遺伝子流動を検証し、その進化史解明に取り組んだ。平成28年度は、昨年度に引き続き、台湾から日本の各地で遺伝子解析用サンプルの収集を行い、ミトコンドリアDNA(DNAバーコード領域を含むCOI領域)の塩基配列の決定を行った。さらに、次世代シークエンサーを用いた一塩基多型の検出も行い、これらの遺伝子情報に基づいて集団遺伝学的解析を行った。その結果、台湾から日本にかけて分布するウスアヤカミキリ属では、海洋を超えた遺伝子流動が頻繁に起きており、遺伝子流動は地理的な距離のみならず、黒潮の流れにも強く影響を受けていることが明らかとなった。一方で、これまで7種7亜種に区別されてきた本群は、本結果からいずれも種レベルでは未分化で、すべて同一種にするべきとの結論を得た。これは、ウスアヤカミキリ属においては、海洋は分散障壁とはなっておらず、むしろ海流を利用することによって広域な分布を獲得した一方で、その種分化は、その後も頻繁に起きる遺伝子流動によって妨げられてきたことを示唆する。本研究結果は、黒潮流域における生物の分散、進化、またその起源を考察する上で、興味深い例を提供すると考えられる。