著者
張 準浩
出版者
東北大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2008

我々はLC/MS分析法でTetrodotoxin(TTX)類を定量してフグ中での分布を調べたところ、フグ卵巣では5,6,11-trideoxyTTXはTTXと同程度に多量に含まれることがわかった。そこで、この類縁体が段階的な還元反応を経てフグ体内でTTXへ変換するのかどうか、あるいはTTXが還元的な代謝をうけてtrideoxyTTXへ変換するのかどうかを調べることとTTXの起源生物の再検索を目的にした。(1)TTX生産起源生物の検索-北里大学山森との共同研究であり、鬼沢漁港から採集したプランクトンからTTX類が検出され、現在は実験結果の再現性を調べている。(2)ミドリフグとハチノジフグの毒性分・含量の分析-我々が確立したLC/MS法を用いて東南アジアに棲息するミドリフグの毒成分と含量を調べた。特に日本産のフグに多く含まれているTTX、5,6,11-trideoxyTTXがミドリフグにも多く含まれていて、その毒量はTTXが0.6~293.7nmol/g、5,6,11-trideoxyTTXが0.4~150.6nmol/gであった。(3)韓国産のクサフグの毒成分及び含量の分析-韓国産のクサフグにも日本産と同じようにTTX類が多く含まれていた。TTX,5,6,11-trideoxyTTX,6,11-dideoxyTTXが卵巣、皮膚、内臓に多量含まれていた。卵巣で、TTXが129~263nmol/g、5,6,11-trideoxyTTXが289~603nmol/gそして6,11-dideoxyTTXが77~310nmol/gであった。
著者
寺田 由美
出版者
北九州市立大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2002

本年度は,主として,20世紀初頭のアメリカ合衆国で展開されたユダヤ人移民の母親による抗議行動について,史料収集ならびに論文作成を行った。当該期のユダヤ人移民の母親による抗議行動として,コウシャー肉ボイコット(食糧暴動)と家賃ストライキのふたつがあげられるが,本年度は特に前者に注目し研究を進めた。女性の「合衆国市民」としての意識形成を検討するにあたって,労働者階級,特に移民女性がとった行動やその際に使われたレトリックを分析することは重要であり,それを前年度までの主たる研究対象としてきたWASPを中心とするエリート女性の行動やレトリックと比較することで本研究に大きな成果があがると思われる。食糧暴動は,17〜19世紀のイギリス,フランス,ドイツなどのヨーロッパ諸国,あるいは日本や中国などアジア諸国でもしばしば発生しており,またそれに関する優れた先行研究も多数存在する。合衆国でも1837年の小麦粉の「独占」に伴う食糧価格高騰に抗議して起こった暴動についてH・ガットマンが言及しているものの,総じてヨーロッパやアジア諸国に比べると研究がすすんでいない分野であるように思われる。加えてヨーロッパの食糧暴動研究に関して最も重要な研究を行ったE・P・トムスンは,暴動の主唱者が非常にしばしば女性であったとしながら,それについて十分な説明をしていない。こうしたことを踏まえて,20世紀初頭の合衆国におけるユダヤ人女性が扇動したコウシャー肉暴動を1902年の事例に沿って分析した。この暴動に関して,少数ながら国内外でいくつかの先行研究があるが,これらの研究は概ねこの暴動をたんなるモラル・エコノミーの発露とは見ておらず,当該期のほかの改革運動や労働運動とのつながりを読み取ろうとしているように思われる。しかし,コウシャー肉暴動や家賃ストライキと他の運動とのつながりを十分に考察し論じている先行研究は非常に少なく,これらのユダヤ人移民女性による行動は移民史の中のエピソードとして扱われている場合が大半で,暴動の実態そのものもあまり知られていない。そこで本年度は,収集した史料から1902年のコウシャー肉暴動の実態を,原因の明確化と暴動の進展,また暴動の際に用いられた抗議の手法やレトリックに沿って具体的に明らかにすることに主眼をおいた。コウシャー肉の高騰が直接の原因で1902年の暴動は起こったのであるが,その背景には東欧ユダヤ人の家庭像,食習慣,合衆国での苦しい生活とならんで,「トラスト」問題が見え隠れしており,本年度の研究でこれについて言及した。次年度以降,さらにユダヤ人移民女性の抗議行動に関する研究を進めていく予定である。
著者
阿久津 美紀
出版者
学習院大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2016-04-22

本研究は、保護者のいない児童、被虐待児など家庭環境上養護を必要とする児童を公的な責任で養育する、「社会的養護」(以下、社会的養護)に関する記録や記録管理システムを日本においていかに成り立たせ、社会的養護で養育された経験をもつケアリーヴァー(care leaver)の記録へのアクセスをいかに促進するかという課題について研究を行うものである。前年度から引き続き、日本国内の社会的養護の施設に保存される資料を整理・分析し、入所児童の傾向を把握すると同時に、国外の社会的養護に関する記録管理の動向についても調査した。特に、海外ではオーストラリアで実施された性的虐待に関する調査から、社会的養護の記録とレコードキーピングの役割について検証するために、オーストラリアアーキビスト協会を中心とした専門職団体の提言について分析を行った。また、メルボルンで開催された、社会的養護で生活する子どもの権利と記録管理についての会議、「Setting the Record Straight: For the Rights of the Child」に参加し、当事者からヒアリングを行った。さらに、社会的養護の選択肢の一つとして近年、日本で関心が高まっている特別養子縁組に関する記録管理についても、民間の養子縁組あっせん機関を訪問し、アンケート調査を実施した。アンケート分析結果やその成果については、今年度刊行された報告書にまとめている。
著者
水口 幹記 洲脇 武志 喜多 藍 名和 敏光 佐々木 聡 高橋 あやの 清水 浩子 藤井 誠子 松浦 史子 田中 良明
出版者
藤女子大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

本年度は、ベトナムと中国を中心対象地域に設定し、研究を進めていった。1、研究検討会の開催:国内において、計三回の研究検討会を開催した。特に第二回には、立教大学日本学研究所と「前近代東アジアにおける術数文化の伝播・展開―日本とベトナムを中心として―」と題した大規模検討会を共催した。ここでは、ベトナム(ハノイ国家大学)からファム・レ・フイ氏を招きご報告を頂いたほか、外部スピーカーもお招きし、広く意見交換を行い、一般聴衆へも本研究課題の意義を伝えることができた。この概要は『立教日本学研究所年報』に掲載予定である。2、『天地瑞祥志』研究会への参加・翻刻校注の刊行:毎月一度開催される『天地瑞祥志』研究会に参加し、本資料の輪読・校注作業が進展した。本年度は、本書第十六・第十七の翻刻校注が刊行でき、研究作業が大いに進展した。3、国内外調査:複数の研究班メンバーが共同でベトナム調査を敢行した。多くの漢籍を所蔵するハノイの漢喃研究院を中心に文献調査、史跡調査を行った。調査先は、漢喃研究院のほか、国会議事堂地下展示室・タンロン王城遺跡・ベトナム国立歴史博物館・文廟(以上ハノイ)・バクニン省博物館・陶おう廟碑・延応寺(以上バクニン省)などであった。特に、漢喃研究院の院長や研究員と懇談し、今後の協力を取り付けたこと、また、国宝に指定されている隋代の仁寿舎利塔銘を実見・調査できたことは、今後のベトナムの歴史と術数との関連を考える上で大きな収穫であった。また、現地の道教研究者とも意見交換を行うことができ、今後の研究の足がかりを得ることができた。その他、各研究班により、各地の資料館・図書館・文庫での調査が行われた。4、関連論文の翻訳:ベトナム語の論文としては、グエン・コン・ヴィエット「漢喃暦法の文献における二十八宿に関する概要」を日本語に翻訳することができ、研究班メンバー全員での共通認識形成に役立った。
著者
相馬 直子
出版者
横浜国立大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

第一に、調査結果を国際学会で発信し、ダブルケアの国際比較研究を発展させるための重要なインプットを得ることができた。具体的には、国際的なケア政策研究者が集まった、”Transforming Care Conference:INNOVATION AND SUSTAINABILITY”(伊)と、ヨーロッパ社会政策学会の”50th Anniversary Conference of the Social Policy Association Social Inequalities: Research, Theory, and Policy”(英)である。特に、前者では、サンドウィッチ世代の国際比較研究をしてきた北欧の研究者や、家族ケアの実態分析をしてきたイタリアの研究者から大変有益なコメントを得て、その後の論文や発表にも活かされている。後者は、ヨーロッパの文脈でのケアの複合化に関する貴重なコメントを得た。第二に、学術雑誌(医療と社会、都市計画)への論文掲載とともに、日本大百科全書といったデジタルソースで調査研究の発信を行った。日本大百科全書でダブルケアという概念が掲載されるようになった。本研究で山下順子氏と開発した、狭義・広義のダブルケア概念が社会的に幅広く認知され、その実態がより明らかにされるようになっている。第三に、ダブルケア関連のシンポジウムや研究会を通じて、調査結果を幅広く社会へ発信し、当事者や支援者のネットワーキングを行った。本研究プロジェクトでは、深刻な財政難・少子高齢化に対応した、多主体連携の「自治型・包摂型の地域ケアシステム」を提示することを目指しており、シンポジウムや研究会を通じても大変貴重なインプットを得る機会となった。第四に、ダブルケアと仕事の両立に関する追加調査を、横浜市の地域ケアプラザや地域子育て支援拠点の協力を得て2018年3月から実施した。
著者
堅田 利明 KAPIL Mehta FABIO Malava 星野 真一 仁科 博史 MALAVASI Fabio MEHTA Kapil 櫨木 修
出版者
東京大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1997

本研究では、レチノイン酸によるヒトHL-60細胞の分化で誘導され、NAD分解(NADase)活性をもつエクト型酵素のCD38について、伊国トリノ大学Malavasi博士及び米国テキサス大学Mehta博士らとの共同研究により、CD38を介する細胞内シグナル伝達機構、CD38の酵素化学的特性、及びCD38の転写制御機構などを検討し、以下の知見を得た。1、抗CD38モノクローン抗体(IgG1)でHL-60細胞を刺激すると、癌遺伝子産物p120^<c-cbl>を含む細胞内蛋白質がチロシンリン酸化され、さらにG蛋白質と共役する化学遊走因子受容体刺激を介する活性酸素産生が増強された。この活性酸素産生の増強は、CD38抗体のFc部分がFc_γII受容体を刺激して、G蛋白質を介するイノシトールリン脂質3キナーゼの活性化を増強した結果であった。2、ラットCD38を認識するポリクローナル抗体を作製して中枢組織での局在を解析した結果、CD38はアストロ細胞に強く発現していた。さらに共焦点レーザー顕微鏡を用いた観察から、細胞表層のCD38は酵素反応の進行にともない何らかの化学修飾を受けて不活性化されることが明らかにされた。3、CD38の反応産物のADP-riboseは、老化への関与が指摘されている翻訳御修飾であるadvanced glycation end products(AGE)化のよい供与体となることが示された。4、糖鎖修飾を受けたCD38と結合する50-kDaタンパク質をリンパ組織に同定し、CD38のNADase活性がレクチンとの結合により阻害されることを見出した。5、ヒトCD38遺伝子の遺伝子発現について解析し、核内レチノイン酸受容体のRAR(α)/RXRが結合する応答配列が第1イントロン上に存在することを見出した。
著者
秦 吉弥
出版者
大阪大学
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2015-04-01

平成29年度は,過去の大規模地震(1923年大正関東地震,1993年能登半島沖地震,1995年新潟県北部の地震,2016年熊本地震など)によって発生したダイナミック地すべりを対象に,臨時地震観測や常時微動計測などを実施し,得られた記録などに基づいて地震時の地すべり挙動を事後推定することに成功した.当該研究成果については,論文集や国内外の会議において発表を行った.1923年大正関東地震については,根府川,震生湖,地震峠の三つの地すべり地を対象に,臨時地震観測や常時微動計測などを実施し,得られた観測・計測記録などに基づき地盤震動特性を評価した.そして,地盤震動特性と特性化震源モデルの組合せにより,本震時に当該地すべり地に作用した地震動を推定した.その結果,三つの地すべり地に作用した地震動の特徴が大きく異なることなどを明らかにした.1993年能登半島沖地震および1995年新潟県北部の地震については,特に深刻な被害が発生した市街地(造成宅地など)を対象に常時微動計測などを実施し,既存の強震観測点で得られた地震動記録の援用の可能性などに関しても検討を行った.2016年熊本地震については,特に甚大な被害が造成宅地において発生した益城町,阿蘇市,宇土市,南阿蘇村を中心に,臨時地震観測や常時微動計測などを実施し,得られた観測・計測記録などに基づき地盤震動特性を評価した.特に,益城町では,常時微動計測を広域かつ高密度に実施するだけでなく,断続的・継続的にも実施することによって,地盤震動特性をより詳細に評価することを試みた.
著者
井柳 美紀
出版者
静岡大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

本研究の目的は、デモクラシー下の市民的資質との関わりで教養教育の果たす役割について、特に、J.S.ミル、マシュー・アーノルド、ニューマンなどを主な対象としつつ、19世紀イギリスの思想史的文脈において検討することである。同時に、現代における市民的資質の育成の観点から教養教育の役割について考えていくことをも目的とする。一昨年は、マシュー・アーノルドに関する論文や現代の若者の市民的資質に関する論文を書いたが、昨年は、まず、(1)図書において、共著として、熟議民主主義に関する章を執筆したが、これは本研究において市民的資質の一つとしての熟議に関する資質・問題を扱ったものとして位置づけられるものである。ここでは、熟議民主主義の前提として熟議する文化や環境の育成が必要であることなど、熟議民主主義の可能性や今後の課題について検討を行った。(2)そのほか、19世紀イギリスに関する政治的教養についての研究を、マシュー・アーノルド以外に同時代の教養論争に注目しつつ進めたが成果の公表は次年度となる。既にJ.S.ミルやマシュー・アーノルドについて市民的資質との関連から論文を執筆しているが、現在は、特に、19世紀後半におけるイギリスの教養論争において、民主化や産業化が起きる中で、従来の古典中心の教養教育に対する批判がおきる中で、新たな大学の役割や学校教育の役割などに関しておきた議論に着目しながら検討を行っている。(3)また、市民的資質と教養教育との関連で、シティズンシップ教育や教養教育に関する講演会を自治体向けに複数実施したり、一般市民向けの公開講座を実施するなど、本研究の成果を地域にも還元している。
著者
尾崎 純一 石井 孝文 神成 尚克
出版者
群馬大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

本研究は、標題のシステム構築に必要な二種類のカーボンアロイ触媒の開発を目的とした。過酸化水素生成選択性をもつ触媒の開発では、第4周期金属を添加したポリマーを炭素化し、その過酸化水素生成を評価した。第2の触媒は、ヘテロポリ酸を固定化するための塩基性カーボンアロイであり、この触媒のキャラクタリゼーションと3-methyl-3-buten-1-ol酸化反応特性を評価した。その結果、表面塩基性をもつカーボンがヘテロポリ酸の固定化に有効であること、担持されたヘテロポリ酸の電子状態と酸化触媒活性および選択性をカーボン担体の表面特性でコントロールできる可能性を見出した。
著者
都留 俊太郎
出版者
京都大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2013-04-01

本年度は、昨年度に台湾の中央研究院及び国立台湾図書館で収集した資料へ分析を加え、その成果をアメリカ技術史学会の年会で発表することができた(審査有り)。さらに、そこで得たコメントをもとに論文を執筆し、East Asian Sicence, Technology and Society 誌に投稿した。現在審査中で、平成28年度中のアクセプトを目指している。さらに、昨年度に引続き、断続的に台湾の彰化県二林郡でフィールドワークを行い、二林蔗農事件に関する聞き取り調査を進めた。この調査研究の成果は、The Third Conference of East Asian Environmental History(審査有り)と台灣二林蔗農事件90週年紀念國際學術研討會(招待講演)で発表した。発表の際に得たコメントをもとに論文を執筆・投稿することは、平成28年度の課題として残された。また、1920年代の甘蔗栽培技術改良について前々年・前年度までの自らの研究成果を踏まえて、International Conference on the History of Science in East Asiaにて報告を行った(審査有り)。他に、『アジア・太平洋戦争辞典』(吉川弘文館、2015年10月)の「皇民化運動」・「蔡培火」・「林献堂」の三項目について執筆を担当した。
著者
小池 裕子 西田 泰民 岡村 道雄 高杉 欣一 中野 益男
出版者
埼玉大学
雑誌
試験研究
巻号頁・発行日
1985

〈目的〉貝塚からは古代人の食事に関する直接的な情報を内包する糞石、あるいは土器、石器付着物が出土している。これらの遺物から残存している脂肪酸を非破壊的に抽出し、その脂肪酸組成を基に動植物を同定して、先史時代人の全般的な食糧組成を直接復原しようとするのが本研究の目的である。〈研究結果〉 61年度は、糞石等の材料のほか、旧石器遺跡から出土する焼石および縄文時代以降の土器付着物を分析対象に加えた。1 現生動植物のスタンダード作成:今年度は栽培植物を含め約60点を追加し、また文献による検索を進め、古代人の利用した動植物をほぼモウラした。2 糞石資料の分析:60年度に行った東北地方のほか、縄文後晩期の田柄貝塚、同大木囲貝塚、縄文後期の古作等の貝塚出土資料を加え、合計58点を分析した。ステロール分析を行ない、糞特有のコプロスタノールを検出した。脂肪酸組成、ステロール組成から推定すると、陸棲哺乳類のほか、水産動物や植物など多様な食糧組成が含まれることがわかった。3 焼石資料の分析:60年度の多摩ニュータウンの他、野川中州北遺跡において系統的なサンプリングを行ない、合計20点分析した。4 土器資料の分析:60年度の曽利・寿能遺跡のほか、縄文時代草創期の壬遺跡,早期の鶴川遺跡、前期の諏訪台遺跡、中期の曽利遺跡、後期の宮久保遺跡,晩期の亀ケ岡遺跡,古墳時代の式根島吹之江遺跡,北海道オホーツク期の北大構内遺跡,近世の東大構内遺跡の合計180点を分析した。5 それらの結果を、飽和脂肪酸/不飽和脂肪酸,高級脂肪酸/中級脂肪酸,コレステロール/植物ステロールの比を軸にした3次元座標上にプロットしてみると、それぞれの遺物の植物,陸上動物,水産動物の組成を知るのに有効であることがわかった。
著者
島岡 まな
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

フランス刑法(1992年)は、日本の刑法(1907年)と比較し、ジェンダー平等的である。それは、①差別罪、②セクシュアル・ハラスメント罪、③夫婦間強姦を含む配偶者間暴力の犯罪化・加重処罰、④網羅的な性犯罪処罰等に表れている。その基礎には「ジェンダー差別は人権侵害である」との問題意識がある。多くの男女平等推進立法が刑法に影響を与えている。日本刑法のジェンダー不平等性をめぐる議論の遅れは、 社会の男女不平等の反映に過ぎない。2000年にパリテ(男女議員同数)法を可決し2007年以来男女同数の内閣を実現しているフランスに倣い、日本も政治分野でのクォータ制の導入が必要であろう。
著者
高橋 亨
出版者
東北大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2004

本研究課題においては以下の研究を行うことにより,高温高圧水環境下における花崗岩の応力腐食割れ挙動に関する知見を得るとともに,岩石/熱水相互作用を考慮した花崗岩のき裂進展数値シミュレーションコードの基礎を構築した.平成17年度は前年度に引き続き,破壊特性に及ぼすひずみ速度の影響を観察するため,露頭花崗岩(飯館花崗岩)を用いて,ひずみ速度を変化させた3軸圧縮試験を実施した.封圧を変化させたときの破壊特性に及ぼす影響についても検討を行った.高封圧条件(100MPa)においては,特に超臨界水環境下においてはひずみ速度が減少するに従い,せん断破壊強度が小さくなることが示された.また,封圧が低い条件(50MPa)においてもひずみ速度の低下に伴うせん断強度の低下が観察されたが,高封圧条件で観察されたような顕著なせん断強度の低下は観察されなかった.本研究結果より,高封圧かつ低ひずみ速度条件において,き裂面近傍における応力腐食割れが促進されることを示唆する結果が得られた.また,得られた実験結果をもとに応力(封圧)とひずみ速度に関する破壊構成則を導き,き裂進展挙動数値解析コードの開発を行った.数値解析コードは従来のき裂進展モデルに上述の実験結果より得られた応力腐食割れの構成則を組込むことにより,実験室レベルの破壊現象を再現することができる.今後は地殻スケールの数100m規模での解析や,数年〜数100年単位でのき裂進展予測モデルの開発が必要となるが,本研究により得られた成果は,高温高圧環境となる地下岩体の力学挙動を解析するための重要な知見となる.
著者
三友 健容
出版者
立正大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1996

本研究にあたり基本文献として、1.Abhidarmakosa-vrtti-marma-pradipa. 2.Dam pa'i chos mngan pa mdzod kyi dgongs 'grel gyi bstan bcos thub bstan nor bu'i gter mdzod dus gsum rgyal ba'i bzhed don kun gsal.の2論を選定し研究を進めた。このうち、前者はインドにおける仏教論理学の確立者ディグナーガ(Dignaga,A.D.480-540)の手になるものであり、後者は上述の『倶舎論註』である。共にアビダルマ仏教のチベット受容・継承に関しては看過されえぬ重要な典籍である。しかしながら、本研究に至るまで校訂・翻訳等の成果は公表されていなかった。故にわれわれは、本研究を、この二典籍を基本資料として以下の計画のもとに遂行した。1, 校訂(Varlantの摘出と定本の確定)・データベース化2, 翻訳(特に1.の論書に対しては還元Sanskrltの想定)3, 「定義集」の作成上記の研究中、1に関してはコンピューター使用の至便を考慮して、北村・Wylie方式とAsiun Classic Input Project方式の折衷案である福田洋一氏の方法(cf.コンピューター処理を考慮したチベット語転写法の試案、日本西蔵学会会報38.1992.pp.23-24)を採用し、2並びに特に3に対しては、サンスクリットや漢訳も含めた複数のアビダルマ文献を参照した。以上の行程のもと、資料の正確な判読、有部数学の「定義集」に基づき、幾つかの新知見を発表したが、有部数学の整理は膨大な時間を必要とし、さらに詳細な検討を行わなければならず、研究を続行するものである。
著者
梅村 坦 庄垣内 正弘 三友 健容 吉田 豊 松井 太 鈴木 健太郎 李 肖 DESMOND Durkin-Meisterernst
出版者
中央大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

研究対象は、ベゼクリク千仏洞から1980~1981年に出土した非漢字の古文献約600点であり、その大部分は未公開の断片類である。使用される文字はウイグル文字、ソグド文字、ブラーフミー文字を中心とし、言語は古ウイグル語、ソグド語、サンスクリット語、トカラ語、漢語などにおよび、形式には写本、印刷があり、内容は仏教文献を中心として契約や公文書、詩、手紙などの俗文献に至り、10~13世紀頃のトゥルファンの複合文化を浮き彫りにする第一級の資料群であることが判明した。
著者
坂輪 宣敬 伊藤 瑞叡 三友 健容 久留宮 圓秀 佐々木 孝憲
出版者
立正大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1988

敦煌莫高窟の壁画、出土文書は、発見以来多くの学問領域から注目され研究が為されてきたが、なお未解決の問題も多く残っている。本研究は対象を法華経にしぼり、壁画、彫刻、出土古写本類を素材に法華経鑚仰の様子の一端を解明した。美術の分野では法華経変を考察対象とし、その規模別分類を試み、大規模な経変画が時代を経て形式面、内容面ともに変化が生じたことを明し、更に描かれる品に注目して、その出現頻度を図示した。描かれる頻度によって製作年代における鑚仰の様相が推定されるが、見宝塔品、普門品の両品は特に盛んに造られた。これらの品に就ては単独に描かれる例も多く、前者は盛唐期に多く、西壁に描かれる例が大部分であった。後者はそれ程の傾向は窺知できなかったが、宋代まで、盛んに製作された。古写本ではスタイン本・ペリオ本を総合的に研究し、調巻・奥書に就て考察した。調巻では現行の七巻本、八巻本の他に十巻本という敦煌独自の遺例があり、その製作にあたり、竺法護訳「正法華経」の影響が看取された。また奥書の検討によって、近親者等の供養のために写経を行った例が極めて多いこと、長安で大規模な書写が行われ、それが多数敦煌に送られていたことなどを指摘した。北京本に就ては、未だ殆ど研究されていなかったが、「妙法蓮華経」を抽出し、写本点数が諸経典中第一であることを明し、また遺例の品数、長さ等を調査し、七巻本、八巻本、十巻本混在の様相を発見した。最後に、派生的テ-マである敦煌菩薩竺法護の訳経に就ての考察を試み、訳経の年代、訳経地、没年等の未解決の諸問題にスポットをあてた。特に訳経地に就ては、筆受などの訳経補助者の名を手掛りに「須真天子経」「正法華経」等が長安訳出であることを示した。また竺法護の訳経の特徴として校勘の不十分さなどに論及し、その原因として戦乱の時代であったこと、国家の保護がなかったことなどを指摘した。
著者
松井 利仁
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

交通騒音によって睡眠妨害以外の健康影響が生じることは必ずしも知られていない。しかし,近年の大規模な疫学調査などにより,虚血性心疾患や脳卒中の罹患率・死亡率の上昇が明らかにされてきた。欧州WHOはそれらの知見に基づいて,交通騒音による健康損失を障害調整生存年(DALY)で評価する方法を示している。本研究では,我が国にこれを適用する際の様々な課題について検討を行ない,DALY算定のための方法を確立した。
著者
佐藤 尊文 森本 真理 伊藤 桂一 野々村 和晃
出版者
秋田工業高等専門学校
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2016-04-01

本研究は、(1)カメラで数式を読み取り3次元グラフを表示するソフトの開発、(2)空間図形認識能力を評価するような指標の構築、(3)3次元グラフに関連する授業コンテンツの開発と社会への発信、という3つの内容からなる。3次元グラフの板書は難しく、導入時の授業で図形をイメージすることができずに、苦手意識のまま克服できない学生が多い。3次元グラフ表示ソフトはいろいろあるが、それぞれ数式の入力方法が異なり、授業などに導入する際には、使い方の説明に多くの時間が取られる。本研究は、(1)~(3)によって、空間図形に対する学生の苦手意識を減らし、能動的学修を推進する教育コンテンツの研究開発を目的とするものである。(1)について、平成29年度は、前年度に引き続きWindowsをOSとする端末でのソフト開発を進めた。カメラで撮った画像からの数式抽出、取得した数式が表すグラフのAR(拡張現実感)技術による特定のマーカ―への表示、タップやドラッグでグラフをいろいろと変化させる機能などについて、改良作業を行なった。また、カメラで読取ができない場合に対応し、手書き入力機能の開発を行ない、十分な精度で手書き入力ができるようになった。(2)について、平成29年度は、前年度に構築した評価指標に基づくCBT(Computer-Based Testing)を作成し、(1)のソフトを未利用の学生に対してこのCBTを実施し、指標の再検討を行った。(3)について、平成29年度は、高専シンポジウムにおいて(1)のソフトのデモを行い、実際に使ってもらって好評を得た。最終年度には、(1)のソフトを用いた授業設計シートの作成およびe-learningなどの自主学習のために利用できるコンテンツの開発を予定している。