著者
野村 尚樹 宮島 昌克 山岸 宣智 藤原 朱里
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木学会論文集A1(構造・地震工学) (ISSN:21854653)
巻号頁・発行日
vol.69, no.4, pp.I_1002-I_1012, 2013
被引用文献数
3

近年,我が国では多くの地震が発生し,多くの犠牲者が発生した.地域住民の地震あるいは津波に対するリスク認知が不十分なために被害が拡大したと言われ,多くの地域ではそれらを教訓に自主防災活動に取り組み始めた.しかし,地域におけるリスク認知度に大きな個人差があり,活動の弊害になっていることも事実である.本研究では,2007年能登半島地震を経験した輪島市臨港地域周辺の住民を対象としたアンケート調査を実施し,地域住民の地震津波災害に関する意識を把握し,防災リスクマネジメント研究の1つである防災リスクコミュニケーション研究の基礎的資料とすることを目的とする.
著者
柴田 美紀
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

本研究では、米軍基地の存在がどのように沖縄県民の「英語」に対する意識とその学習動機に影響しているかを調査した。軍雇用者128名と非軍雇用者153名から得たアンケート回答を分析し、次の点が明らかになった。(1)軍雇用者のほうが英語学習の必要性を強く認識している。(2)「沖縄人」という帰属意識を持つ回答者が大半であったが、基地問題を外へ向けて発信する道具として英語をとらえてはいない。また、10名にインタビューした結果、基地問題と沖縄における雇用の複雑な現状が浮き彫りとなった。
著者
武田 健 菅又 昌雄
出版者
日本毒性学会
雑誌
日本トキシコロジー学会学術年会 第36回日本トキシコロジー学会学術年会
巻号頁・発行日
pp.1803, 2009 (Released:2009-07-17)

ナノマテリアルの次世代健康影響―妊娠期曝露が子に及ぼす影響 武田 健 (東京理科大学薬学部、ナノ粒子健康科学研究センター) 菅又昌雄 (栃木臨床病理研究所) ナノマテリアルの次世代健康影響について紹介したい。 1.ディーゼル排ガス妊娠期曝露の脳神経系への影響: 排ガス中のナノ粒子は、母から胎仔に移り、未発達の脳血液関門を通過して脳内に移行することが示唆された。産仔脳にび慢性の多発性微小梗塞と判定される所見が認められた (Sugamata et al JHS,2006)。排ガス微粒子投与でも同様な所見が認められた。 2.酸化チタンナノ粒子の影響: 酸化チタンを妊娠マウス皮下に投与すると、粒子が産仔の脳に移行すること、脳末梢血管周囲に異常を引き起こすこと、脳の特定の部位にカスパーゼ3陽性細胞が認められることなどが明らかになった(Takeda et al JHS, 2009)。さらに神経伝達物質のモノアミン系の代謝異常も認められた。また、網羅的遺伝子発現解析並びに選択的遺伝子発現解析の結果からも様々な異常が明らかになった。 3.結論: 上記の結果及びその後の研究結果から以下のことが示唆される。ナノマテリアルは吸入、気管内、点鼻、皮下など投与法に関わらずナノマテリアルが妊娠した母マウスの血流にのれば、仔に影響を及ぼす。生まれてから成長する過程で様々な症状として現れ、それらは時として、重大な疾患の発症、増悪化に繋がる。 我々の研究と国内外で蓄積されつつある研究報告から、ナノ粒子はバクテリア、ウイルス、プリオンに続いて第4の病原体(正確には病原物質)と表現したくなるほど様々な病態を引き起こす。ナノ粒子は特に血管及び血管周囲に大きな影響を及ぼしている。 (本研究は井原智美栃木臨床病理研究所部長、押尾茂奥羽大学教授、二瓶好正東京理科大学教授をはじめ多くの研究者の指導や協力のもとに行われてきた。院生・学生を含むすべての共同研究者に深謝申し上げます)
著者
Ichikawa Marina
出版者
瀬戸臨海実験所
雑誌
PUBLICATIONS OF THE SETO MARINE BIOLOGICAL LABORATORY (ISSN:00372870)
巻号頁・発行日
vol.36, no.3, pp.119-139, 1993-11-30

Saccoglossans collected in the central and southern Ryukyu Islands are described. Of 21 species recorded, II species are described as new: Volvatella angeliniana, Aplysiopsis wrangeliae, Costasiella paweli, C. usagi, C. vegae, C. rubrolineata, C. iridophora, C. kuroshimae, Elysiobranchus ryukyuensis, Elysia .flavipunctata, and E. minima.
著者
山中和明
雑誌
JIM
巻号頁・発行日
vol.15, pp.797-799, 2005
被引用文献数
1
著者
北村 直子
出版者
京都大學人文科學研究所
雑誌
人文學報 = The Zinbun Gakuhō : Journal of Humanities (ISSN:04490274)
巻号頁・発行日
vol.105, pp.35-67, 2014-06-30

16世紀から18世紀にかけて書かれたユートピア文学では,大航海時代末期から重商主義・啓蒙主義時代にいたるヨーロッパ人の視野拡大を反映し,架空世界と既知の空間との落差をふたつの要素によって強調した。(a) 空間的距離: ヨーロッパからの遠さ。主人公の遭難の地点が実在の固有名 (地名・緯度経度) を使って表現される。(b) 意味論的落差:身体的・文化的・政治的な違い。空間的距離によって説得力を保証され,語りの視点の設定を工夫することによって強調される。(a) のような既知の固有名の使用はユートピア文学が次代のリアリズム小説と共有する要素である。いっぽう (b) の特徴はユートピア文学の「報告」としての性質を支える要素であり,ユートピア文学の報告者 (語り手,視点人物) は当時のヨーロッパ人を代表してヨーロッパと架空世界との落差に驚いてみせ,読者にその違いを強調してみせることによって読者の反応を先導しようとする。読者を誘導するこの仕掛けを物語論では「評価」と呼ぶ。「評価」のマーカーは物語一般に見られる自然なふるまいである。なお,20世紀に書かれた架空旅行記においては,語り手の「評価」のマーカーがときに欠如しており,読者が視点人物と容易に同一化できない。本稿では,こういった物語装置の分析を通じて,報告体物語の機構を検証し,トマス・モアからシラノ・ド・ベルジュラック,スウィフトを経てサドにいたる空想旅行記の暗黙の前提を可視化することをめざす。いかなる物語も,多かれ少なかれ「出来事の報告」という側面を持っている。本稿は,さまざまな物語ジャンルのなかでも,とりわけこの報告というコミュニケーション様式に特化したユートピア文学を分析的に特徴づけることによって,報告という言語行為がもつ小説史上の意味を考察する。視点操作や物語行為の本質を解明するためには,物語作品の意味内容以上に,物語の暗黙の前提を研究することが有効と考えるからである。

3 0 0 0 OA 鉄道統計資料

著者
鉄道省 編
出版者
鉄道省
巻号頁・発行日
vol.昭和6年度 第2編 建設 工務 工作 電氣 研究, 1938
著者
小林 哲郎 高 史明
出版者
神戸大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2015-04-01

本研究は、ヘイトスピーチの温床となる誤った信念が検索エンジンの利用によって強化される可能性を明らかにすることを目的として、2つのオンラインフィールド実験を行った。まず、平成27年度の実験では在日コリアンに関する客観的に誤ったデマ命題を検索することによって、デマ命題を正しいと考える人の割合は有意に低下することが明らかにされた。しかし、検索行動は同時に韓国人に対する感情温度を低下させることが示された。平成28年度は検索時の動機を操作する手続きを追加して実験を行った。本研究の成果はInternational Congress of Psychologyなど複数の国際会議で発表された。
著者
森山 至貴
出版者
早稲田大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

本年度は、いくつかの自治体(都市部に集中している)で採用されている同性パートナーシップ制度と、ネオリベラリズムの結びつきに関して重点的に検討をおこなった。結果として、同性パートナーシップを推進する論調が抱える負の側面についての考察が主要な研究上の課題となった。その際、鍵概念として「新しいホモノーマティヴィティ」(Duggan)を考察の主要テーマとした。結果として、本年中の業績には、同性愛者のみにとってのイシューとしてだけではなく、他異性愛主義的な社会にとっての同性婚・同性パートナーシップという切り口によるものが大部分となった。 具体的には、「日本のゲイは「普通の存在」になったのか」(『ジェンダーとセクシュアリティで見る東アジア』勁草書房所収)という論文を執筆した。また、同性愛者のライフスタイルや社会運動を、同性愛者に限らないさまざまなセクシュアルマイノリティのライフスタイルや社会運動の文脈に置き直すために、クィア・スタディーズの視座に関する検討をおこなった。具体的には「「新しさ」の罠にはまらないために」『現代思想』2018年4月号所収)。本研究課題の方法論的側面に関する作業として、研究者自身の採用する方法であるインタビューについても、理論的検討をおこなった(「居場所がしんどい、現場が怖い」『現代思想』2017年11月号所収)。本年度は、研究のアウトリーチ活動として、各種媒体へのコラムの執筆、講演などもおこなった。これらの機会における聴衆の反応は、フィードバックとしてとても有意義なものであり、今後の研究に活かしていく計画である。
出版者
日経BP社
雑誌
日経エレクトロニクス (ISSN:03851680)
巻号頁・発行日
no.793, pp.59-68, 2001-04-09

「やっぱり,Javaがどうってことよりも,デザインとかで選んじゃいますよね。ソニーのオレンジ色のやつなんて,すっごくかわいいじゃないですか」(ソフトウエア会社の広報担当者)。 「Javaケータイ」の快進撃が止まらない。NTTドコモが他社に先駆けてJava対応サービス「iアプリ」を開始したのは2001年1月末1)。
著者
持田 徹 BERGLUND L. G. 堅田 兼史 佐古井 智紀 長野 克則 嶋倉 一實 吉野 博
出版者
社団法人空気調和・衛生工学会
雑誌
空気調和・衛生工学会論文集 (ISSN:0385275X)
巻号頁・発行日
no.72, pp.67-74, 1999-01-25
参考文献数
19
被引用文献数
8

体感温に及ぼす湿度の影響をみるために被験者実験を行い,その結果と人体の熱平衡式から算出される等温感線の特徴について検討した.椅座・裸体状態で実験を行い,"少し暖かい"と"暑い"と申告した時の,平均皮膚温とぬれ面積率の関係を観察した.その結果,温感申告値が等しい時,高湿・中湿・低湿環境で平均皮膚温とぬれ面積率はそれぞれ独自の値をとり,かつ,両者が一定の関係をもって変化していることを知った.この特性を熱平衡式に組み込んで得られる等温感線は,湿り空気線図上で微係数がいずれもマイナス値を示し,高湿ほどその微係数が大きく,低湿に移行するに従って微係数が小さい曲線となり,体感温に及ぼす湿度の影響が一定でないことがわかった.
著者
江口 浩二 大川 剛直
出版者
神戸大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2007

情報爆発時代と呼ばれる今日、インターネット上に発信された情報は, 発信者にも制御不能な形で流通することが少なくなく、一旦流通したこれらの情報はアンドゥーすなわち発信される前の状態に戻すことは通常不可能である。また、これらは膨大な他の情報に埋没しがちであるため、既存の手段で探し当てるのは容易でない。本課題では、とくに、人物や組織等に対する誹謗中傷、ならびに、災害、事故、事件などの風評に着目し、それらの発見を支援するための技術基盤として、情報検索および情報追跡手法を開発する。平成20年度は主に以下の基本技術の開発に取り組んだ。1.逐次的に配信される文書系列に対するトピック追跡問題のため、情報理論に基づく語の重みづけ法を開発し、従来手法と比較して有意な改善を実現した。2.ブログポスト間のハイパーリンクとブログボストの潜在トピックに着目して、ブログ空間における情報伝搬を解析する手法を開発し、現実のプログデータを用いた評価実験によって有効性を示した。3.人物名や地名などのエンティティ(固有表現)がタグ付けされた文書の集合から、エンティティ間の関係を示すネットワークを推測する手法を実現した。4.タグで構造化された文書の集合から推定した潜在トピックに基づいて、構造化文書を効果的に検索する手法を実現した。Wikipediaデータを用いた評価実験によって提案手法の有効性を示した。5.マルコフ確率場モデルに基づく語間依存性のモデルにより、自然言語文で表現された質問から構造化クエリを構築し、高精度なWeb検索を実現した。
著者
今村 浩一郎 濱住 啓之 渋谷 一彦 佐々木 誠
出版者
一般社団法人映像情報メディア学会
雑誌
映像情報メディア学会誌 : 映像情報メディア (ISSN:13426907)
巻号頁・発行日
vol.54, no.11, pp.1568-1575, 2000-11-20
被引用文献数
51

We propose a method of cancelling the coupling loop interference at a relay station in a Single Frequency Network (SFN) in Digital Terrestrial Television Broadcasting (DTTB) using an Orthogonal Frequency Division Multiplexing (OFDM) signal. This loop from a transmitting antenna to a receiving antenna can distort and oscillate the signal. The loop is cancelled by a replica of it generated by a frequency-domain adaptive cancellation algorithm. The method covers both QAM-OFDM (Quadrature Amplitude Modulation-OFDM) and PSK-OFDM (Phase Shift Keying-OFDM). Computer simulation demonstrated that this method effectively cancels the loop.
著者
小倉 義光 奥山 和彦 田口 晶彦
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.49, no.7, pp.541-553, 2002-07-31
参考文献数
35
被引用文献数
11

これは,関東地方で1995〜97年の梅雨明け以降の7月と8月,日本気象協会のSAFIRが観測した日々の発電状況の多様性を,大気環境を表すパラメータの組合せの違いに起因するとという見地から理解しようとする試みの第1部である.序論的性格を持つ.まず,関東地方の夏期における発雷の地理的時間的平均分布などを概観する.次に,1日当たり雲放電数が100以上であった65日を選んで,発雷域の地理的分布およびその時間的変化から,発雷パターンを山岳型・山岳から平野型・平野型・広域型の4種に分類する.さらにそれを地上・高層天気図やアメダスデータなどと対比して,各日の主要な雷雨(発雷域)を発生させたトリガーを推定する.その結果によると,気団雷が26日,総観スケールとメソスケールの前線による界雷が31日,上層の擾乱や台風による渦雷が8日であった.気団雷の中で可能な形態の1つ,すなわち平野域での水平或いは鉛直対流による雷雨と思われる例は認められなかった.
著者
小暮 敏明 渡辺 実千雄 伊藤 隆 嶋田 豊 寺澤 捷年
出版者
社団法人日本東洋医学会
雑誌
日本東洋醫學雜誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.48, no.3, pp.349-355, 1997-11-20
参考文献数
16
被引用文献数
1 1

温経湯が奏効した原発性シェーグレン症候群(pSjS)の三例を報告した。症例1は, 67歳, 女性。1992年4月に目のゴロゴロ感を自覚, 11月砺波総合病院受診。抗核抗体(+), 乾燥性角結膜炎の存在, 唾液腺シンチで分泌低下からpSjSと診断。点眼薬で加療されたが無効のため1995年6月同院東洋医学科受診, 温経湯を投与したところ眼・口腔乾燥症状の軽快が得られ, 6ヶ月後乾燥性角結膜炎の改善が確認された。症例2は73歳, 女性。1987年腰痛で当科受診し和漠薬治療を受けていた。1991年胸鎖関節痛が出現し当科入院。シルマーテスト(+), 抗SS-A抗体(+), 口唇生検でリンパ球浸潤の存在より, pSjSと診断。温経湯の投与後1ヶ月で胸鎖関節痛は消失し, 赤沈などの炎症反応も正常化した。しかし, この例は乾燥症状の改善は得られなかった。症例3は39歳, 女性。1991年6月多関節痛, 口腔乾燥感を自覚し近医受診, 高γ-グロブリン血症, 抗SS-A抗体(+), 唾液腺シンチで分泌低下からpSjSと診断,非ステロイド性抗炎症剤を受けていた。和漢薬治療希望で1994年3月当科受診。多関節痛が強いため, 桂枝加苓朮附湯等を投与し関節痛は軽減。口唇乾燥と月経痛から温経湯に転方, 口腔乾燥感, 目のカサカサは軽快したが, 手関節痛の出現のため2ヶ月後, 桂枝加朮附湯加減に転方した。これらから温経湯のpSjSへの応用の可能性が示唆されるとともに, 乾燥症状だけでなく, 関節痛という腺外症状にも有効であったことから, 本方剤を運用するうえで示唆に富む症例と考えられた。