著者
薬本 武則
出版者
共栄学園短期大学
雑誌
共栄学園短期大学研究紀要 (ISSN:1348060X)
巻号頁・発行日
vol.26, pp.85-108, 2010-03-31

純粋美術は、人間の本質的存在自体に限りなく迫った表現を求める美術活動のことですが、これに対応する言葉として応用美術があります。応用美術とは、一般的に日常生活において必要な商業美術や工芸品などを意味しますが、この日常的な意識による表現を排除して、人間の本質に基づいて表現する純粋美術に近い存在に児童画があります。児童画は、基本的に世俗的な欲望や駆け引きのない純粋な魂からの叫びを率直に表現しているので技術的には劣っているが、専門家と言われる人で優れた技術力は持ってはいるが、いつの間にか人間の本質的魂を忘れかけた純粋美術表現者に与えた影響は大きものがありました。その代表的な人には、クレー、ミロ、ピカソなどがいたことはよく知られています。 そこで、ここでは、純粋美術と児童画の接点を人間におきながら考えてみたいと思います。
著者
栃谷 泰文
出版者
大学図書館研究編集委員会
雑誌
大学図書館研究 (ISSN:03860507)
巻号頁・発行日
vol.67, pp.1-10, 2003-03

国立大学図書館協議会が提唱する世界的な学術文献流通に向けたグローバルILL/DDフレームワーク(GIF)構想とNII-OCLC ILLシステム間リンクの現在の概況をのべ、GIFが構想されるに至った背景2点、(1)1995年のカルコンにおける日米情報流通拡大の決定と(2)日本の大学図書館の国際ILLの状況を説明し、日米大学図書館関係者による国際ILLの改善に向けた取り組みについて報告する。
著者
小島 弘道
出版者
一般社団法人日本教育学会
雑誌
教育學研究 (ISSN:03873161)
巻号頁・発行日
vol.71, no.1, 2004-03-30

現代の学校経営改革は戦後第3の改革と位置づけることができる.1956年に制定された地方教育行政法とそれに基づいて展開された各種の施策や指導によって形成された学校経営の秩序(「56年体制」)を変容ないしは転換したものとの認識である.そう言える根拠を見い出し,それを理論的に深める必要がある.他方,56年体制の変容どころか完成だとする理解もある.いずれにしても,学校経営の経営主体とマネジメントをめぐって展開されている議論である.さらに新しいタイプの公立学校の導入のための法的措置を平成15年中に行うことが閣議決定されている.この改革提言は学校経営改革がマネジメントの問題である以上にガバナンスの問題として定式化されてきていることを端的に示すものである.学校経営をガバナンスの問題として定式化することは,マネジメントの問題として定式化されてきた学校経営理論の文脈にどのようなインパクトもつものとなるのか.この問題は現在進行中の教育改革の意義を把握するうえで欠かすことの出来ないものであろう.我々は以上のことを学校のガバナンスとマネジメント問題としてとらえ,ガバナンスとマネジメントが56年体制と現代の改革ではどういうかたちをとっているか,またそれらのかたちの間の連続,非連続のかたちをどう描くかをテーマとしていきたいと考える.そのことを通して21世紀の学校ガバナンスとマネジメントの在り方をさぐっていきたい.
著者
中崎 昌雄
出版者
中京大学
雑誌
中京大学教養論叢 (ISSN:02867982)
巻号頁・発行日
vol.28, no.4, pp.829-875, 1988-03-31
著者
尾崎 行生 大久保 敬 増田 順一郎
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

食用ハス(レンコン)肥大の日長反応感受部位を調査したところ,いずれかの葉で短日を感受すれば,根茎の肥大が起こることが分かった.低(赤色光/遠赤色光)比率のフィルムで被覆した栽培を行うと,長日条件下であっても根茎の肥大が促進された.短日処理開始2週間後には根茎の肥大反応が起こり始め,この反応にはジベレリンが関与している可能性が高いことが分かった.食用ハスの根茎は「休眠」を持ち,その「休眠」は低温によって打破されると考えられた.
著者
丸尾 いと
出版者
九州産業大学
雑誌
九州産業大学芸術学部研究報告 (ISSN:02867818)
巻号頁・発行日
vol.38, pp.307-323, 2007

本論文は、十五年戦争に関わるものを撮影した代表的な写真家(山端庸介・土門拳・東松照明・江成常夫・土田ヒロミ)をとり上げ、その仕事を歴史の時間軸上で展開する試みである。まず第1章で'負の昭和'の措定と本論文で取り上げる五人の写真家を選んだ動機を述べる。次いで第2章では、五人の経歴と仕事をそれぞれ総括的に取り上げ、各人の概要を理解してもらう。第3章から第6章は、昭和史を四つに区切り、歴史上の時間軸に各作家の仕事(写真集)を時系列に並べて展開。そして終章では、'負の昭和'が五人の仕事を通じて十分に検証できることを提唱する。
著者
津田 侑 藤原 康宏 上原 哲太郎 森村 吉貴 大平 健司 森 幹彦 喜多 一
出版者
情報処理学会
雑誌
研究報告グループウェアとネットワークサービス(GN) (ISSN:21862583)
巻号頁・発行日
vol.2011, no.9, pp.1-8, 2011-03-10

Web サービスのユーザの傾向を調査するさい,利用ログのデータマイニングが主流である.これはユーザの行動の傾向を捉えるには有効であるが,行動の意図や意識といったユーザ心理を捉えることは困難である.そこで本研究では,定量的・定性的,両方の側面からアンケート調査や観察・インタビューといったエスノグラフィの手法を用い,インターネット生放送を中心としたユーザ行動の心理を分析する.Using data minings such as analysing logs on web-based services is in mainstream in order to survey users' trends on the services. This is efficient for analysing users' behaviors but is unefficient for analysing users' psychological factors, for example, intentions of their behaviors, decision-marking for their bihaviors on the services. In this research, the authors analyse users's psychological factors and their behaviors on the internet live-broadcasting services. The methods are a web-based survay and ethnographical methods - questionnaire, observation, and interview.
著者
住元 宗一朗 中川 博之 田原 康之 大須賀 昭彦
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J94-D, no.11, pp.1800-1811, 2011-11-01

近年増加したコンテンツ投稿型SNSでは日々膨大にコンテンツが増え続けるため,嗜好には合っているもののユーザが見逃してしまうようなコンテンツは少なくない.また,多くの推薦技術では精度を重視するあまり,その推薦結果に面白みがないという課題がある.本論文では,主に音楽,イラスト,詩等の創作者向けであるコンテンツ投稿型SNSにおける未知性,意外性を考慮した推薦手法について述べる.未知性に関しては,質の高いコンテンツを投稿する投稿者(有力投稿者)に注目し,コンテンツの質を確保しつつもロングテールのテール部分に属する,ユーザがまだ知らないコンテンツを推薦する.意外性に関しては,多くのコンテンツ投稿型SNSで利用されているFolksonomyを利用する.以上の二つの推薦部からなる推薦エージェントを提案し,イラスト投稿型SNSであるPixivの実データを用い,未知性,意外性に関する評価実験を実施した.その結果,推薦リストの6割に未知性,意外性のあるコンテンツが含まれ,本研究の有効性が確かめられた.
著者
岡太 彬訓
出版者
数理社会学会
雑誌
理論と方法 (ISSN:09131442)
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, pp.167-181, 2002-10-31 (Released:2009-02-10)
参考文献数
108
被引用文献数
3

社会学におけるクラスター分析法やMDS(多次元尺度構成法)の応用を概観し、手法の適用上で注目すべき点や問題点をとりあげ、これらの手法をより適切に利用し、また、より有意義な結果を導くにはどうすればよいのかを述べる。最初に、社会学に限らず、クラスター分析法やMDSの応用で一般的に留意すべき点、あるいは、多くの応用に共通して認められる問題点を述べる。次に、社会学における応用に焦点を絞り、それらの応用の特徴と具体的な問題点を述べ、問題点をどのように解決していけばよいのかを示唆する。次に、主として社会学で発達してきたクラスター分析法やMDSの手法、および、それらの利用方法に言及する。最後に、クラスター分析法やMDSの社会学における応用について、今後の展開の可能性を述べる。
著者
久保 伸夫
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.125, no.5, pp.279-284, 2005 (Released:2005-07-01)
参考文献数
12
被引用文献数
1

国民の35%が抗体を持ち,その半数がすでに発症しているスギ・ヒノキ花粉症は日本の国土の15%以上を占めるスギ・ヒノキ森林による季節性疾患であり,早春のわが国の社会生活と生産活動に大きな影響を与え,最近は若年者の患者も急増している.しかし,致死的でなく花粉飛散が終われば軽快するため,疾患としての恐怖感はなく,毎年繰り返すやっかいな自然災害という国民意識が広がっており,各個人における費用対効果で対策が講じられている.抗ヒスタミン薬は花粉症に対する標準的治療薬であるが,抗ヒスタミン薬に社会が求めているものは,疾患の治癒ではなく,安価で即効的に副作用なく症状を制御し,服薬しながら社会活動を維持することである.また通常薬物を服用しない青壮年層に多い花粉症患者は用法や相互作用など投与上の制約への意識も乏しい.つまり,有効性より安全性が優先されるべき薬剤といえ,眠気や認知機能障害,相互作用の有無が臨床上最も問題になる.特に,中枢作用は生産効率のみならず自動車や鉄道,航空機の乗務員では人命に係わる副作用となるが,その出現には極めて個人差が大きく,その理由は不明である.一方,PETによる一連の研究で薬物間での中枢移行性の違いは客観的に評価されるようになってきた.今後はH1受容体やP糖タンパクなどのSNPなど中枢作用の個人差の検討が課題になると思われる.
著者
小川 泰
出版者
物性研究刊行会
雑誌
物性研究 (ISSN:05272997)
巻号頁・発行日
vol.51, no.1, pp.A110-A125, 1988-10-20

この論文は国立情報学研究所の電子図書館事業により電子化されました。
著者
松村 秋芳 高山 博 高橋 裕
出版者
日本人類学会
雑誌
Anthropological Science (Japanese Series) (ISSN:13443992)
巻号頁・発行日
vol.116, no.2, pp.202-206, 2008 (Released:2008-12-27)
参考文献数
29
被引用文献数
3

高等学校理科の検定済教科書における自然人類学に関連した記述(1952年以降)について調査した。これまでの学習指導要領の改訂の機会に学会の新しい情報がどの程度改訂版の教科書に盛り込まれてきたかについてしらべたところ,更新された記述内容は必ずしもその時代の新しい知見を反映していなかった。最近2回の学習指導要領の改訂では,霊長類としてのヒトという視点から基礎事項の記述が充実してきていることが見出された。人類の起源と進化について理解し,生物としてのヒトの本質を知るために,どのような教材が適切か,どの程度最新の知見を考慮すべきかは難しい問題だが,複合領域としての特性を生かした記載がなされるよう,配慮がなされる必要があると思われる。
著者
熊谷 友多 永石 隆二 木村 敦 田口 光正 西原 健司 山岸 功 小川 徹
出版者
Atomic Energy Society of Japan
雑誌
日本原子力学会和文論文誌 (ISSN:13472879)
巻号頁・発行日
pp.1109220008, (Released:2011-09-27)
参考文献数
15
被引用文献数
3 3

Zeolite is used for decontamination of radioactive water containing salts from seawater in the Fukushima Dai-ichi Nuclear Power Station. Evaluation of hydrogen production by water radiolysis during the process is important for a safe operation. Thus, hydrogen production from the mixture of zeolite and seawater was studied by γ-radiolysis experiment, and the hydrogen production during the process was evaluated. The measured yield of hydrogen from seawater was comparable to the primary yield in the γ-radiolysis of water. This result indicates that oxidation of hydrogen by radical products of water radiolysis is not effective in seawater. The measured yield from the mixture decreased at a high weight fraction of zeolite. However, the measured yield was higher than that expected from the direct radiolysis of water in the mixture, which would decrease proportionally to the weight fraction of water. This result suggests that the radiation energy deposited on zeolite is involved in hydrogen formation. From the measured yields, the hydrogen production rate was evaluated to be 3.6 mL/h per ton of radioactive water before the process and 1.5 L/h per ton of the waste adsorbent after the process.
著者
浜本 隆志 R.F Wittkamp 熊野 建 大島 薫 森 貴史 浜本 隆志
出版者
関西大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2005

最終年度にあたる本年は、ジュヴァルツヴァルト地方の冬至祭礼調査、宮崎県高千穂町での仮面を用いる冬至祭の儀礼調査、秋田県男鹿地方での新年の祭礼であるナマハゲおよびその周辺地域の祭礼調査といった、これまでの複数年度の調査をもとに、分析・考察をおこなった。ドイツ語圏を中心としたヨーロッパの通過儀礼と、日本を中心としたアジアの通過儀礼は意外と類似する部分が多いという認識に到達することになったが、そうした場合は、たいていがキリスト教文化の浸透以前、あるいはあまり浸透していない西欧の地域や地方のものであることが多いようである。あらためて、現在の世界各地で発生している文化摩擦や紛争の主な要因のひとつが、結局のところ、多神教と一神教の対立に起因しているのではないかという推測に蓋然性をみいだすこととなった。したがって、多神教的思考と一神教的思考というこの二項対立、たとえば、それは中沢新一が主張するところの対象性思考と非対象性思考の対立といえるのだが、これを乗り越えるために必要な思想や考え方を、世界の別の地域や住民たちのものにみいだすにしろ、まったく新たに創造していくにしろ、それともこれらのことが可能ではないときにはやはり、このふたつの対立を統合していくべき方法論を将来、模索していかなければならないだろう。本研究に従事した研究者の個別の研究成果によってなされている主張が、現時点における考察の結果の一部ではあるが、これらの成果によって、萌芽研究という本研究の役割は果たされたと思われる。