著者
中川 裕志 小野 晋
出版者
言語処理学会
雑誌
自然言語処理 = Journal of natural language processing (ISSN:13407619)
巻号頁・発行日
vol.3, no.2, pp.3-18, 1996-04-10
被引用文献数
4

終助詞「よ」「ね」「な」は,書き言葉の文には殆んど用いられないが,日常会話において頻繁に使われており,文全体の解釈に及ぼす影響が大きい. そのため,機械による会話理解には,終助詞の機能の研究は不可欠である.本論文では,代表的な終助詞「よ」「ね」「な」について,階層的記憶モデルによる終助詞の機能を提案する.まず,終助詞「よ」の機能は,文の表す命題が発話以前に記憶中のある階層に存在することを表すことである.次に,終助詞「ね」「な」の機能は,文の表す命題を記憶中に保存する処理をモニターすることである.本稿で提案する機能は,従来の終助詞の機能が説明してきた終助詞「よ」「ね」「な」の用法を全て説明できるだけでなく,従来のものでは説明できなかった終助詞の用法を説明できる.Japanese sentence final particles(JSFPs henceforth) are used extremely frequently in utterances. We propose functions of Japanese Sentence Final Particles YO NE and NA that are based on a hierarchal memory model which consists of Long Term Memory, Episodic Memory and Discourse Memory. The proposed functions of JSFPs are basically monitoring functions of the mental process being done in utterance. YO shows that the propositional content of the utterance that ends with YO was already in the speaker's Episodic Memory or Long Term Memory, while NE and NA show that the speaker is processing the propositional contents with the contents of speaker's memory. The proposed functions succeed in accounting for the phenomena yet to be explained in the previous works.
著者
八重樫 文
出版者
福山大学
雑誌
福山大学人間文化学部紀要
巻号頁・発行日
vol.6, pp.123-133, 2006-03-01

本稿では、その概念拡大と解釈の不定性が指摘される「デザイン」に関する今後の議論の共通基盤を築くために、現代社会における「デザイン概念」の整理を行った。その結果、(1)「(英語としての)design」の語義から捉え、その解釈を人間の根源的営為にまで拡げた観点、(2)近代デザインの専門性を背景とした観点、の2つの解釈が錯綜した状況であることが確認された。
著者
藤木 篤 杉原 桂太
出版者
名古屋工業大学技術倫理研究会
雑誌
技術倫理研究 (ISSN:13494805)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.23-71, 2010

本稿では、日米両国における工学倫理の教科書の変遷過程を概観し、その後のわが国に適した教科書を作成する上での課題について述べる。アメリカにおける近年の出版動向を確認すると、従来アメリカ式の工学倫理の特徴とされたプロフェッショナリズムはさらに強調され、同じく特徴として挙げられてきた個人主義的傾向は勢いを弱めつつあることが明らかになる。一方わが国の教科書は、アメリカに強く影響を受けているにもかかわらず、上記の点、すなわちプロフェッショナリズムを前提とする社会契約モデルを採用するか否か、また個人主義的傾向をとるか否かについて、執筆者ごとのスタンスの違いが表れるため、未だ標準化という方向へ向かっていない。こうした状況は、工学倫理導入当初からわが国において議論され続けてきた問題、すなわち「専門職概念をどのように受容するべきか」という問題へと帰着する。つまり、わが国で技術者が置かれている実際の立場と、社会契約モデルが前提とする技術者像の間に乖離があるために、両者の間に齟齬が生じ、結果的にこのような複雑な状況を生み出しているのである。したがって、われわれは今後、技術者の社会的地位とその責任について議論を行う必要がある。日本に適した工学倫理の教科書を作成するためには、我々はあらためてこの問題に向き合わねばならない。
著者
村上 正行 丸谷 宜史 角所 考 東 正造 嶌田 聡 美濃 導彦
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.34, no.3, pp.299-307, 2010
被引用文献数
6

本稿では,授業映像シーンへのコメントの付与及び授業映像の要約が可能なシステムSceneKnowledgeを開発し,本システム及び授業デザインの有効性を明らかにするために,2年間の授業に対して,質問紙調査を行った.その結果として,(1)授業映像がシーンに分割されていることによって,受講生が授業に関するコメントをを読み書きする際や授業映像の要約を作成する際に有用だった(2)受講生は,コメントを書くことを通して,授業内容を振り返り,自分の意見について考えることができた.また,他人のコメントを読んで,自分の考えと相対化させ,より深く考えることによって,授業に対する関心が高まった(3)授業映像の要約を作成することを通して,新しい観点を発見し,自分なりの考えをまとめることによってモチベーションを高めていた,の3点が分かり,高次な学習活動に結びついていると考えられる.
著者
又吉 里美
出版者
岡山大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010-04-01

本研究は大山方言の文法を記述することを目的とした大山方言の総合的研究である。主な成果は以下の3点である。(1)音韻体系および音韻変化の過程を考察し、大山方言における緩やかな口蓋化を指摘した。(2)はだか格を含めて16個の格形式を整理し、その機能を明らかにした。(3)動詞の形態について、動詞活用のタイプ、文末形式、連体形、テンス・アスペクトについて整理した。
著者
荒木 哲郎 池原 悟 塚原 信幸 小松 康則 田川 崇史 橋本 憲久
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-パターン処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.83, no.6, pp.1516-1528, 2000-06-25
被引用文献数
10

漢字OCR, ワープロ, 音声認識装置などの入力装置を使用して計算機に入力された日本語文には, 通常, 誤字, 脱落・誤挿入文字などの誤りが含まれるため, これらの誤りを自動的に検出し訂正する技術が期待されている.本論文では, 誤字誤り, 誤挿入誤り, 及び脱落誤り(いずれも誤りは1文字以上)を対象に, m重マルコフ連鎖モデルを用いて誤りの種別を識別し, 誤り文字列を訂正する方法を提案する.また, 本手法の効果を検証するため, 2重マルコフ連鎖モデルを利用して, 漢字仮名交じり表記された新聞記事文(1, 200文)を対象に, それらが誤字, 脱落文字及び誤挿入文字を含む場合(いずれも誤りは, 擬似的に生成された1文字または2文字)について, 誤り種別及び文内の誤り位置と文字数を自動的に検出, 並びに訂正する実験を行った.その結果, オープンデータの誤字, 誤挿入, 脱落の誤りを, 単に, 誤りとして検出(これらの3種のいずれかの誤りとして検出)する精度は, それぞれ, 1文字の誤字または誤挿入誤りの場合は適合率77.2%, 再現率95.0%, 2文字の誤字または誤挿入誤りの場合は適合率79.3%, 再現率99.5%, また, 脱落誤りの場合は適合率61.3%, 再現率36.5%の精度で検出できることがわかった.更に, 誤りの種別や誤り長を含めた検出精度は, 誤字または誤挿入の1文字誤りの場合は, 検出が適合率60.1%, 再現率73.0%で行うことができ, 更に訂正は誤字の場合が適合率41.2%, 再現率50.0%, また誤挿入の場合が適合率41.9%再現率52.0%の精度で自動的にできることがわかった.これと比べて, 脱落誤りの検出と訂正は容易ではないが, 検出が適合率54.6%, 再現率32.5%, また訂正が1文字の場合には適合率29.4%, 再現率17.5%の精度で行えることがわかった.オープンデータとクローズドデータによる適合率, 再現率の差は, 標本量の増加に伴い, 新聞記事文5年分の付近で, かなり接近してくることがわかった.
著者
山田 賢 日下部 茂
出版者
情報処理学会
雑誌
研究報告システムソフトウェアと オペレーティング・システム(OS) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2010, no.24, pp.1-6, 2010-07-27

我々は、メモリアドレス空間を共有するスレッド間の参照の局所性に着目し、そのようなスレッドのマルチコアプロセッサ上での時分割及び空間分割実行を集約的に制御できる、コア間時間集約スケジューラを提案している。提案スケジューラはマルチコアプロセッサの各プロセッサコア間で共有するキャッシュといったメモリの階層を活用し、プログラムの実行性能を向上させることを目的としている。本稿では、MapRdeuce 型プログラミングモデルのオープンソース実装である Hadoop のアプリケーションを、マルチコアプロセッサシステムで実行する際のノード内マルチスレッド処理における提案スケジューラの効果について評価する。TaskTracker が起動する map/reduce タスクの集約実行を制御することで実行性能の向上が観測できた。We have proposed Inter-Core Time Aggregation Scheduler which tries to utilize the locality of references between sibling threads, which share the same memory address space, on commodity multi-core processors. Our thread scheduler controls both time and space multiplexing of the sibling threads to utilize the cache shared by multiple processing Cores on a multi-core processor in enhancing the performance of multithread programs. In this paper, we evaluate the effect of our scheduler in executing Hadoop application on a commodity multi-core processor. We observed performance improvement by controlling the execution of map/reduce tasks under a TaskTracker.
著者
佐藤 暁子 米村 惣太郎 亀山 章
出版者
日本緑化工学会
雑誌
日本緑化工学会誌 (ISSN:09167439)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.32-37, 2006-08-31
被引用文献数
4

生態的回廊に関する研究は,回廊の設置や設置直後のモニタリング事例の紹介が多いが,生育環境における効果は長期的観点から検証することが必要である。本研究では,ニホンリスの生息地において,生態的回廊としてのエコブリッジの効果を把握するために,設置から8年経つエコブリッジを対象とし,ニホンリスの生息状況と生息環境およびビデオカメラを用いたエコブリッジの利用状況を調査した。その結果,エコブリッジは8年経過後も日常的移動・季節的移動のための回廊として利用されており,生態的回廊として機能していたことが明らかとなった。また,長期にわたり利用され続けていたことから,この地域のリス個体群の消滅を回避していると推測された。
著者
橘 誠
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2009

本年度は、アメリカのインディアナ大学・中央ユーラシア学部において在外研究を行い、主にこれまでの研究成果を国外に発信することに努めた。在外研究中、The Association for Asian Studies、The Mongolia Society、Annual Central Eurasian Studies Conferenceなどのアメリカの学会において、それぞれ"Mongolian Independence and International Law","Bogd Khaan Government and Qinghai Mongols","The Birth of the National History of Mongolia : On 'gangmu bicig ba nebterkei toli'"と題する報告を行い、またインディアナ大学内の東アジア研究センター、中央ユーラシア学部のコロキアムにおいても報告の機会を得、"Translationsin Early 20th century Mongolia"、"The Forgotten History of Mongolia : Bogd Khaan Govemment 1911-1921"という報告を行った。また、モンゴル国では、第10回世界モンゴル学者会議、第4回ウランバートル国際シンポジウム「20世紀におけるモンゴルの歴史と文化」、国際会議「モンゴルの主権とモンゴル人」において、それぞれ「モンゴル国の政治的地位-宗主権をめぐって」、「ボグド・ハーン政権の歴史的重要性-モンゴルにおける2つ『革命』」「20世紀初頭の『モンゴル史』における内モンゴル-帰順した旗について」という報告を行った。日本では、辛亥革命百周年記念東京会議において、「辛亥革命と『モンゴル』-独立か、立憲君主制か、共和制か」と題する報告を行った。その他、昨年上梓した『ボグド・ハーン政権の研究-モンゴル建国史序説1911-1921』のモンゴル語版〓〓〓〓〓〓〓〓1911-1921(『忘れ去られたモンゴル史-ボグド・ハーン政権1911-1921』)をモンゴル国において出版した。
著者
山口 智 盛 安冬 板倉 秀清
雑誌
全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.54, pp.285-286, 1997-03-12

遺伝子の進化の過程を模して最適化問題を解く遺伝的アルゴリズムに開する研究が盛んに行なわれている。これらの研究の多くは、適者生存 (淘汰)、他の遺伝子との混ぜ合わせ (交叉)、ランダムな遺伝子の変化 (突然変異)をもとに遺伝子の進化が進行することで最適化問題を解いている。近年の分子生物学の発展にともない、進化論に閲するさまざまな仮説があげられている。中原らの提唱するウィルス進化論は、進化の過程で遺伝子の変化にウィルスが関与することで、遺伝子が他の遺伝子と融合されると言うものである。ウィルス進化説では、新しく作られる遺伝子は親の遺伝子ばかりでなく他の種族の持つ形質を採り入れることすらある。この研究では、ウィルス進化論をモデルにした新しい遺伝的アルゴリズムを提案する。従来の遺伝的アルゴリズムが二つの遺伝子を混ぜ合わせることによって新しい遺伝子を生成するのに対して、本稿で提案する方法は、遺伝子プールの中を自由に渡り歩く素子 (以下この素子をウィルスと呼ぶ) を用いて新しい遺伝子の生成を行なう。ウイルスは、遺伝子プールの中を動き回りながら遺伝子の一部を自己の持つ遺伝子に書き換え新しい遺伝子を生成する。さらに遺伝子に、増殖、死、突然変異などの生命的概念を導入することによって、ウィルス自身の進化を促す。提案するアルゴリズムは、遺伝子プール内の遺伝子とともにウィルスが進化しながら解の最適化をはかる。また、ウィルスは最適化問題の解の一部とみることができる。これは、ウィルスがスキーマタ定理におけるスキーマの一つであると言える。本稿では、シミュレーション実験によりウィルスの進化がスキーマの進化であることを示す。

3 0 0 0 OA 三人旅(二)

著者
不詳(PD)[作詞]
出版者
ビクター
巻号頁・発行日
1928-06