著者
土田 陽平 齋藤 誠紀 中村 浩章 米谷 佳晃 藤原 進
出版者
日本シミュレーション学会
雑誌
日本シミュレーション学会論文誌 (ISSN:18835031)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.32-36, 2021 (Released:2021-06-15)
参考文献数
12

福島第一原子力発電所の廃炉に伴いトリチウム水の海洋放出が検討されている.また,将来の発電技術として期待されている核融合発電では,トリチウムを燃料として用いる.そのため,トリチウムの生体への影響を詳細に解明することが求められている.我々は,ヒトDNA中の軽水素がトリチウムに置換した際に生じる壊変効果がDNAを損傷するメカニズムを,分子動力学法を用いて解明することを目指している.壊変効果の影響を理解するためには,まずDNA中の各々の軽水素について,トリチウム置換のしやすさを評価する必要がある.そこで本研究では,ヒトDNAテロメア構造のバックボーン中に存在する水素原子を対象に,トリチウム置換のしやすさの指標を得るために分子動力学計算を実施し,各水素の溶媒接触表面積を計算した.計算結果から,バックボーン中の水素原子の中ではH5の水素の溶媒接触表面積が大きいことが判明した.
著者
Hyowon KIM Seungjun LEE Seohyun CHO Kihoon KIM Kidong EOM Jaehwan KIM
出版者
JAPANESE SOCIETY OF VETERINARY SCIENCE
雑誌
Journal of Veterinary Medical Science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
pp.23-0224, (Released:2023-09-04)

A 15-year-old, spayed female, Scottish Straight cat without any traumatic history was presented with swollen abdomen and diagnosed as an abdominal wall hernia. Abdominal ultrasound revealed thickened, irregular, and hypoechoic change of abdominal wall muscle adjacent to defect. During the herniorrhaphy, multiple nodules were identified in the subcutaneous tissue around the defect. Histological examination of the nodular tissue was performed, and it was confirmed as mammary gland tumor. After the surgery, metastatic changes of the pancreas were identified, and pleural effusion and ascites were also confirmed. The patient deteriorated rapidly and died 78 days after the surgery. This is the first case presenting abdominal wall hernia induced by malignant tumor in veterinary medicine.
著者
小田 悠介 Philip Arthur Graham Neubig 吉野 幸一郎 中村 哲
出版者
一般社団法人 言語処理学会
雑誌
自然言語処理 (ISSN:13407619)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.167-199, 2018-03-15 (Released:2018-06-15)
参考文献数
41

本論文では,ニューラル翻訳モデルで問題となる出力層の時間・空間計算量を,二値符号を用いた予測法により大幅に削減する手法を提案する.提案手法では従来のソフトマックスのように各単語のスコアを直接求めるのではなく,各単語に対応付けられたビット列を予測することにより,間接的に出力単語の確率を求める.これにより,最も効率的な場合で従来法の対数程度まで出力層の計算量を削減可能である.このようなモデルはソフトマックスよりも推定が難しく,単体で適用した場合には翻訳精度の低下を招く.このため,本研究では提案手法の性能を補償するために,従来法との混合モデル,および二値符号に対する誤り訂正手法の適用という 2 点の改良も提案する.日英・英日翻訳タスクを用いた評価実験により,提案法が従来法と比較して同等程度の BLEU を達成可能であるとともに,出力層に要するメモリを数十分の 1 に削減し,CPU での実行速度を 5 倍から 10 倍程度に向上可能であることを示す.
著者
濱田 信夫
出版者
Osaka Urban Living and Health Association
雑誌
生活衛生 (ISSN:05824176)
巻号頁・発行日
vol.48, no.3, pp.131-138, 2004 (Released:2005-01-27)
参考文献数
11
被引用文献数
4

The distribution and composition of dirt on the interior of washing machines were examined. Dirt accumulated most at the bottom of spin tubs with large aluminum die-cast flanges and accumulated in constant weight in other parts. Dirt consisted of mold, textile fiber and zeolite, added to detergent as a water softener. Zeolite was a main component of dirt adhering to the interior of washing machines. Mold hyphae were present more in the upper part of the interior, and large amounts of textile fibers were contained in dirt from other parts of the interior. Weight of dirt on the spin tub increased with increasing of length of use, which differed from the quantity of surfactants on the interior. Environmental factors affecting mold contamination in automatic-type washing machines were also studied. As regards factors related to nutrients, no correlation was found between recycling of bath water and mold contamination in washing machines. However, the quantity of surfactant adhering to the washing machine interior was found to promote mold contamination. Ways of controlling mold contamination in washing machines are also discussed.
著者
川勝 真喜 鈴木 和憲
出版者
東京電機大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

老人保健施設においてBGMとして高周波音を含む音源と含まない音源を2週間ずつ流し,音楽呈示前後で認知症患者の精神症状を評価する方法の1つであるNeuropsychiatric Inventory,(以下NPI)スコアの差を比較した.回帰分析の結果, 高周波音を含む音源と含まない音源の呈示期間の前後のNPIスコアの差に有意差があり,FRS呈示時にNPIスコアの増加が抑えられていた.我々はこれまでに別の施設でも同様の結果を得ている.このことから人の耳に聞こえない高周波音を含む音楽や自然音は,可聴域の音のみを呈示した場合よりも認知症高齢者の周辺症状(BPSD)の緩和に効果がある可能性が示唆された.
著者
亀田 貴雄 桑迫 拓哉 白川 龍生
出版者
公益社団法人 日本雪氷学会
雑誌
雪氷 (ISSN:03731006)
巻号頁・発行日
vol.85, no.4, pp.199-222, 2023-07-15 (Released:2023-09-04)
参考文献数
35

冬期の平均的な積雪深を表す指標として年平均積雪深を新たに導入し,従来から用いられている年最大積雪深による結果と比較した.その結果,北海道,東北,北陸で気象庁が観測する 48 地点での過去60年間の年平均積雪深のトレンドは北海道日本海側3地点,北海道オホーツク海側1地点,北陸6地点で減少を示し,北海道太平洋側4地点,東北太平洋側1地点で増加を示した.年平均積雪深を用いることで従来の年最大積雪深では検知されなかったトレンドを新たに6地点で検出することができた.年最大積雪深のトレンドは年平均積雪深の1.6~3.4倍となり,年最大積雪深を用いて平均的な積雪深を評価すると変動傾向は過大評価となることがわかった.一方,48地点を冬期気象に基づき6つの地域に分類し,地域ごとの年平均積雪深と年最大積雪深の経年変化を調べた.その結果,年平均積雪深では北海道太平洋側は増加,北陸は減少のトレンドが検出できた.年最大積雪深では北海道日本海側と北陸で減少のトレンドを検出できた.48地点の積雪深と気象指標(冬期平均気温,北極振動)との関係,積雪期間,積雪初日,積雪終日の変動,顕著な積雪深減少が続いている北陸での減少理由を議論した.
著者
牧野 俊一
出版者
玉川大学ミツバチ科学研究所
巻号頁・発行日
vol.22, no.3, pp.106-112, 2001 (Released:2011-03-05)
著者
三谷 保弘
出版者
保健医療学学会
雑誌
保健医療学雑誌 (ISSN:21850399)
巻号頁・発行日
vol.7, no.2, pp.54-60, 2016-10-01 (Released:2016-10-01)
参考文献数
8

本研究の目的は,マーチング演奏が体幹運動と体幹・下肢の筋活動に及ぼす影響について検討することである.10 名の女子大学生を対象とし,トランペットならびにマーチングユーフォニアムを用いたマーチング演奏時の体幹運動と体幹・下肢の筋活動を測定した.トランペットならびにマーチングユーフォニアムを用いたマーチング演奏では,いずれも自然歩行に比べて上部体幹の最大後傾角の増大と,上部体幹の最大前傾角,左右傾斜可動範囲,左右回旋可動範囲の減少が認められた.また,僧帽筋,腰部傍脊柱筋,大腿直筋,大腿二頭筋,腓腹筋の筋活動の増大が認められた.これらの楽器を用いたマーチング演奏では,体幹・下肢の力学的負荷が増大することが示唆された.
著者
FUJIBE Fumiaki MATSUMOTO Jun
出版者
The Association of Japanese Geographers
雑誌
Geographical review of Japan series B (ISSN:18834396)
巻号頁・発行日
vol.95, no.2, pp.55-68, 2022-12-29 (Released:2022-12-28)
参考文献数
32
被引用文献数
2

Warm season precipitation in most parts of Japan comprises early summer (Baiu) and autumn (Shūrin) rainy periods with a relatively dry mid-summer. We aimed to determine details on the features of the seasonal progress of precipitation during the warm season in Japan. We assessed the timing of maximum and minimum precipitation based on daily records of Japanese dense local Kunai observations and AMeDAS networks collected at 522 stations for 95 years from 1926 to 2020. The maximum precipitation during Baiu has a northward delay, with a transition zone from the end of June to around July 10 at about 37°N, whereas Shūrin has three precipitation peaks corresponding to late August, mid-September, and early October over a wide area of Japan. The timing and intensity of the precipitation maximum varies according to the El Niño-Southern Oscillation (ENSO) phase, but the northward delay of the Baiu peak and multiple Shūrin peaks are found both in El Niño and La Niña years. Toward the past 30 years, the Baiu has lengthened, the mid-summer minimum is earlier, and the main peak of Shūrin precipitation has become less distinct.
著者
照井 慶太 小松 秀吾 篠塚 俊介 平本 龍吾
出版者
特定非営利活動法人 日本小児外科学会
雑誌
日本小児外科学会雑誌 (ISSN:0288609X)
巻号頁・発行日
vol.47, no.7, pp.1026-1032, 2011-12-20 (Released:2017-01-01)
参考文献数
26

14歳男児.急性虫垂炎・多臓器不全に対し虫垂切除を施行.術後,多発性消化管穿孔に対しトライツ靭帯から20・80cmの小腸に2箇所の腸瘻を造設し,完全静脈栄養で管理した.周術期には47日間の透析を要した.第87病日,心不全(駆出率37%)を認めたが,精査にて明らかな原因を見出せず,微量栄養素欠乏が除外診断として残った.亜セレン酸Na静脈内投与及び,腸瘻間の60cmの空腸を用いてL-カルニチン投与を開始したところ,3週後には駆出率68%と改善を認めた.心不全時,遊離カルニチン・セレン血中濃度は標準値下限をわずかに下回る程度であったが,腸瘻閉鎖後に遊離カルニチンが著明に低下した.カルニチン血中濃度低下は症状発現時期とずれることがあり,心不全時に潜在的な欠乏があったと思われる.多くの危険因子(絶飲食・透析・腸液流出)を併せ持っていたことからも,本症例の心不全はカルニチン欠乏に起因すると考えられた.
著者
三上 岳彦 平野 淳平 財城 真寿美
出版者
The Association of Japanese Geographers
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
pp.18, 2013 (Released:2013-09-04)

江戸幕末期の1850-1860年代は,小氷期の終了期に相当するが,日本では公式の気象観測記録が無いために気温変動の詳細は不明であった。一方,演者らの研究グループでは日記天候記録に基づく18世紀以降の気候復元や19世紀前中期の古気象観測記録の発掘とデータベース化を行っている。そうした一連の研究によって,江戸幕末期に相当する1850-1860年代の夏季気温が一時的にかなり高温化していたことが明らかになった。本研究の目的は、日本の小氷期末に出現した夏季の一時的高温化の実態を明らかにし、気象観測データの得られるヨーロッパや北アメリカにおける同年代の気温変動と比較しながら、高温化が半球的な大気循環場の変動とどのように関連していたのかを考察することである。
著者
原 裕太
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
E-journal GEO (ISSN:18808107)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.70-86, 2021 (Released:2021-03-03)
参考文献数
50
被引用文献数
4 3

中国では,環境汚染,内陸水産養殖業の急速な発展にともなう水田環境の喪失,農村部の貧困問題を改善するため,新たな農業のかたちが模索されている.中でも近代的な稲作と水産養殖の統合は,地域経済を発展させつつ水田環境と生態系を保全するための有効な方法の一つとして注目を集めている.一方,多くの地域では,依然として水田養殖の普及率は低い.その要因として,野生種の生息域内外ではその動物の養殖業の競争力に地域差があること,養殖動物の消費需要の地域的偏りと生育に必要な気候環境が制約条件になっていること,都市部の消費者の間で,水田養殖に関する生態学的なメリットやブランドの認知が広がっておらず,付加価値の創出に課題を抱えていること等が挙げられる.加えて,今後の課題として,養殖に導入された種による陸水域生態系への影響と,食の嗜好変化によって伝統的な方法を維持する中国西南地域へ近代的な水田養殖が無秩序に拡大すること等も懸念される.