著者
小松原 明哲
出版者
安全工学会
雑誌
安全工学 (ISSN:05704480)
巻号頁・発行日
vol.38, no.6, pp.352-358, 1999-12-15 (Released:2017-03-31)
被引用文献数
1

ベテラン作業者は,ベテランであるがゆえの認知行動特質がある.したがって,ベテラン作業者にあっても,その認知行動特質をふまえたシステム設計を行うことが,認知エラーを防止する上で有益であると考えられる.本稿では,ベテランの起こす典型的なヒューマンエラーを整理した.つぎに,行動形成要因について,フラストレーション解消行動がベテランに特有の要因であることを指摘した.これらをふまえ,認知エラーを防止するためのシステム設計の方策にっいて検討した.
著者
平川 晃弘 佐立 崚
出版者
日本小児血液・がん学会
雑誌
日本小児血液・がん学会雑誌 (ISSN:2187011X)
巻号頁・発行日
vol.56, no.5, pp.432-435, 2019 (Released:2020-02-07)

ランダム化比較試験の主たる目的は,対象集団に対する治療効果の検証である.ランダム化比較試験では,治療効果を正しく評価するための統計的な工夫や方策がいくつかある.本稿では,ランダム化,盲検化,評価項目,サンプルサイズ,解析対象集団に焦点を当て,ランダム化比較試験における統計的要点について解説する.
著者
Kenneth Sassen
出版者
Meteorological Society of Japan
雑誌
気象集誌. 第2輯 (ISSN:00261165)
巻号頁・発行日
vol.58, no.5, pp.422-429, 1980 (Released:2007-10-19)
参考文献数
14
被引用文献数
64 69

大気中を自然落下している板状氷晶の落下姿勢と氷晶の大きさとの関係を知るため,氷晶によって生ずる光学現象である光柱(light pillars)の拡がり角および散乱光強度の分布を光柱写真の解析から求めた。その結果,レイノルズ数(Re)にして1.0<Re<100の範囲氷晶は,基底面(basal plane)を落下方向に対して垂直,すなわち水平方向に保つような落下姿勢が卓越し,特にRe=10前後ではこの姿勢が最も安定な落下姿勢であることが判った。落下中の板状結晶の基底面の水平方向からの傾き角は,大気中の乱れのため一般的には,水平方向を中心にガウス分布をしている。これら観測結果と,大気光学現象との関係や雲構成要素の性質のアクチブリモートセンシングについて議論を行った。
著者
三浦 周 関口 真理子 大倉 拓也 小竹 秀明 白玉 公一 斉藤 嘉彦 カラスコ-カサド アルベルト 阿部 侑真 辻 宏之
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 C (ISSN:13452827)
巻号頁・発行日
vol.J106-C, no.9, pp.344-353, 2023-09-01

5G/Beyond 5Gと衛星通信を含む非地上系通信網(Non-Terrestrial Networks:NTN)の連携に関し,現在の動向や技術課題,情報通信研究機構(NICT)による研究開発の取組みを俯瞰的に記述する.衛星通信を含むNTNプラットホームが低軌道(Low Earth Orbit:LEO)衛星,高高度プラットホーム(High-Altitude Platform Station: HAPS)等の登場や電波・光技術の進展によって従来よりも大容量化,低遅延化,低コスト化が進んでいる.これを背景として,衛星通信/NTN-5G/Beyond 5G連携のためのネットワークアーキテクチャや無線アクセス方式が検討され,The 3rd Generation Partnership Project(3GPP)等での標準化が進んでおり,国内でも議論や提言,構想の提案がなされている.衛星通信/NTN-5G/Beyond 5G連携のキーとなる技術はネットワーク技術と,これを支える電波・光技術である.NICTでは,Beyond5Gにおける海・空・宇宙をつなぐ3次元ネットワークの実現を目指して衛星通信/NTNと5G/Beyond 5Gの連携技術の研究開発の取組みを進めている.ネットワーク技術では,異なる特徴をもつ複数のネットワークを連携させ,ユーザ及び運用事業者の満足度を最大化するため,統合的なネットワーク制御が必要である.そのため5Gネットワークと衛星の連携の研究や,NTNと地上系を相互接続するためのシステム構成の検討,リソース割当アルゴリズムの開発を行っている.電波技術では,高速大容量化を実現するための高周波数帯(Ka/Q/V帯)の利用,高速大容量化のためのマルチビーム化と周波数利用効率を向上するためのデジタル化を活用したリソース割当の柔軟性の向上,移動体地球局の柔軟性向上のための電子走査型平面アンテナ(AESA)の開発を行っている.光技術では,高速大容量通信や小型軽量化を実現できる利点を生かし,GEO衛星やLEO衛星,HAPS,ドローン等様々なプラットホームに搭載可能な光通信機器の開発や,地上衛星間光通信における大気揺らぎを補償する補償光学の研究を行っている.
著者
山本 政幸
出版者
一般社団法人 日本デザイン学会
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集 日本デザイン学会 第66回春季研究発表大会
巻号頁・発行日
pp.266, 2019 (Released:2019-06-27)

明朝体とゴシック体の読みやすさについて、書体サイズ12Q(18H送り)、16Q(24H送り)、24Q(36H送り)における比較実験を行った上で、ゴシック体の本文(400字の本文横組み)への適性を検証することを目的とした。12Qと24Qでは明朝体の読了時間が短かったが、16Qではゴシック体がわずかに短かかった。
著者
山口 裕文 久保 輝幸 池内 早紀子 魯 元学
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.64, no.4, pp.127-139, 2019 (Released:2020-01-28)
参考文献数
117

シロザとアカザを含む“あかざ”Chenopodium albumに関する中国における文化認識の変遷を把握する目的で清代以前の64の漢籍にみられる“あかざ”の漢名と生態的・形態的特徴および利用の記述を調査した。“あかざ”は,雑草(非有害)や食用(蔬または羮,穀物),杖,灰の素材として認識され,三国時代までに萊,藜,藋,釐,拝,蔏および茟などの文字で表され,唐宋代には灰條,灰藋,白藋,青藜,金鎖夭,紅灰藋,鶴頂草など2,3文字でも表記されるようになり,明代には紅心の藜(および丹藜,藜菜,臙脂菜,舜芒穀,観音粟など)と葉に白粉をつける灰藋(および灰條,灰条,灰菜,灰條莧など)との2群で認識され,清代には地膚や絡帚,薇,苜蓿などとの混同が修正され,藜または灰藋に集約されていた。調査した漢籍のうち80%の文献に用途が示され,用途の記された文献のうち蔬(菜または羮)に関する文献は71%あり,杖(藜杖)に関する文献は59%あった。
著者
押川 渡
出版者
公益社団法人 腐食防食学会
雑誌
Zairyo-to-Kankyo (ISSN:09170480)
巻号頁・発行日
vol.67, no.7, pp.273-279, 2018-07-15 (Released:2019-01-30)
参考文献数
19
被引用文献数
2 2

大気腐食環境下でのACMセンサの測定例について,事例を挙げて解説した.10分ごとに得られたセンサ出力と湿度データを解析することにより,濡れ時間,海塩付着量が推定でき,降雨時のセンサ出力を補正することで屋外における腐食速度が推定可能となった.
著者
籠谷 公司 西川 賢 廣野 美和 楠 綾子 伊藤 岳
出版者
中央大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2023-04-01

外交的抗議は軍事的行動や経済制裁とは異なり、標的国の国民に物理的な損害を与えない。しかし、安全保障政策が顕著な争点である限り、外国からの否定的な声明でさえも標的国の国民の間に愛国心を引き起こすかもしれない。自国の国益と相手国の対外政策が相反する場合、抗議をしなければ事態の更なる悪化を招き、抗議をすれば相手国内の反発や相手国からの強硬策を招いてしまう。それゆえ、外交的抗議のジレンマが存在する。こうした学術的背景を踏まえ、本研究では「いかなる場合に外交的非難がラリー現象を引き起こし、国家間の緊張を高めるのか」という学術的問いの答えを探す中で、外交的抗議のジレンマの解決策を探る。
著者
尾上 耕一 星野 真一
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.136, no.3, pp.150-154, 2010 (Released:2010-09-13)
参考文献数
35

通常のmRNA分解は3’末端ポリ(A)鎖の短縮化が第1段階であり,翻訳終結と共役して開始される.一方,ナンセンス変異を有する異常mRNAは,NMDと呼ばれるmRNA分解機構により正常なmRNAとは別経路を介して即座に分解される.NMDはナンセンス変異に起因する異常な短鎖タンパク質の生成を防ぐ防御機構として重要であるが,mRNAの急速な分解に伴う機能性タンパク質の欠如により致死的な疾患の原因となることがある.そのような疾患の治療薬として,最近PTC Therapeutics社において開発されたAtalurenが注目されている.Atalurenはナンセンス変異の結果生じた異常な終止コドンの読み飛ばしを引き起こし,機能性タンパク質の産生を可能にする.現在,臨床試験の段階にあるAtalurenだが,有効性,安全性ともに優れておりナンセンス変異に起因する多くの疾患への適応の拡大が期待される.
著者
岸本 麻子 井野 千代徳 多田 直樹 井野 素子 南 豊彦
出版者
耳鼻と臨床会
雑誌
耳鼻と臨床 (ISSN:04477227)
巻号頁・発行日
vol.56, no.3, pp.101-110, 2010 (Released:2011-05-01)
参考文献数
4

日常診療でしばしば遭遇する疾患であるにもかかわらず、それを主訴として受診することはまれである口角炎について、医師として何を診るベきかを細菌検査などより検討した。口角炎は年齢によって受診する主訴、病原菌が異なることが分かった。29 歳以下の年齢では、口内ないし咽喉頭異常感症に随伴し病原菌は主疾患の病原菌と同じであることが多い。30 歳以上では、口内乾燥症、ストレス性疾患である口内ないし咽喉頭異常感症に多く見られた。細菌検査結果で 60 歳以上の症例ではカンジダ属が 35.1%に、MRSA が 19.3%に検出されたことが特徴的であった。口角炎はビタミンB2、B6などの欠乏で発症しやすくなる。欠乏の原因とし胃腸障害、抗生剤の服用、ストレス、肝障害などがあり、口角炎は、眼前の患者の背景を読むヒントとなり得るものと考えた。
著者
小林 哲
出版者
Ecology and Civil Engineering Society
雑誌
応用生態工学 (ISSN:13443755)
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, pp.113-130, 2000-07-21 (Released:2009-05-22)
参考文献数
98
被引用文献数
24 22

日本の本州・四国・九州などを流れる河川に生息するカニ類の生態をまとめ,河川環境におけるカニ類の生態的地位と現状について考察を加えた.カニ各種の分布と回遊のパターンから,6タイプを分けた.タイプAとタイプBは感潮域付近でのみカニ期を過ごし,タイプAは繁殖のための回遊はないがタイプBは繁殖のため河口域から海域へ水中を移動する.タイプCとタイプDはカニ期を感潮域から淡水域に沿った陸域で過ごし,タイプCは河川の淡水域から感潮域にかけてで卵を孵化させ,幼生は広い塩分耐性があり感潮域へと流れくだる.タイプDは繁殖のためカニが海域へと移動し,海域で孵化を行う,タイプEは河川の淡水域でカニ期を過ごし,成熟したカニが川を降り感潮域に達しそこで繁殖する.これらのタイプはいずれも浮遊生活期の幼生が海域を分散する.タイプFは全生活史を淡水域上流部で過ごし,幼生期は短縮される.河川ではカニの分布は感潮域周辺に集中している.干潟に多くみられるスナガニ類は底質の粒度組成に応じてすみわけており,ヨシ原など後背湿地にはイワガニ類が多く出現する.淡水域の下流~中流域では,モクズガニが水中に,ベンケイガニ類3種(ベンケイガニ,クロベンケイガニ,アカテガニ)が水辺から陸上に出現する.上流域では,サワガニが水中から陸上にかけて分布する.代表的なスナガニ科8種,コブシガニ科1種イワガニ科10種,サワガニ科1種についての生態をまとめ,紹介した.河川生態系においては,カニ類は感潮域で腐食連鎖の上で重要な位置を占めていると考えられる.特にスナガニ類およびイワガニ類は,感潮域において有機物を消費している.また巣穴を多数掘ることで堆積物に沈積した有機物の分解を助け,環境浄化を助けている.近年,底質の変化によりカニ類の生息場所が損なわれ,堰の建設による流れの遮断により回遊の過程が妨害を受けている.河川改修による後背湿地における植生の喪失も,カニ類の生息場所を奪う危険性がある.以上のような,カニ類の生態を考慮に入れた改修事業が必要と考えられる.
著者
井上 牧子 遠藤 知二
出版者
日本生態学会
雑誌
日本生態学会大会講演要旨集 第51回日本生態学会大会 釧路大会
巻号頁・発行日
pp.307, 2004 (Released:2004-07-30)

京都府京丹後市の箱石海岸では、今までの野外調査から8種のツチバチ類が生息し、それらの生息密度もきわめて高いこと、またいくつかの海浜植物ではツチバチ類が重要なポリネーターとなっていることなどが明らかになった。このように、ツチバチ類が海岸砂丘域において多様で高密度に生息できる要因のひとつは、それらのホストであるコガネムシ幼虫の多様性や生息密度の高さにあると考えられる。しかし、ツチバチ類成虫の地中での生態はほとんどわかっておらず、ホスト利用や寄生行動に関しても、ごく断片的な知見しか得られていない。そこで本研究では、同海岸でも特に個体数の多い、オオモンツチバチ、キオビツチバチ、ヒメハラナガツチバチの3種について、飼育個体を用いた寄生実験と寄生行動の観察を行った。実験にはシロスジコガネ、サクラコガネ属、ハナムグリ類の幼虫を用い、飼育容器にツチバチ類とコガネムシ幼虫を1個体ずつ入れ、1日後に寄生の成否を確認した。その結果、オオモンツチバチはシロスジコガネ(寄生成功率38%)に、キオビツチバチはハナムグリ類(50%)に、ヒメハラナガツチバチはサクラコガネ属の2種(ヒメサクラコガネ22%、アオドウガネ71%)とシロスジコガネ(5%)に寄生し、これら3種のツチバチ類ではホスト種が異なる傾向がみられた。各種ツチバチ類とそれらが実験下で利用したホスト種は、実際に同海岸における生息場所の分布が大きく重複しており、それぞれのコガネムシ幼虫が野外でも主要なホストとなっていると考えられる。また、利用したホストサイズについてみると、オオモンツチバチとヒメハラナガツチバチではホストサイズの幅が広く(オオモンツチバチ0.48g-2.92g、ヒメハラナガツチバチ0.36g-2.21g)、これはツチバチ類成虫の体サイズの性差と関連していると考えられる。さらに各種の攻撃行動の観察結果をもとに、攻撃行動の特徴や種間の相違についても報告する。