著者
谷川 武
出版者
東京大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1994

職業ストレスが、免疫系に及ぼす影響を明らかにする目的で某発電所の電気技術職に従事する男子124名を対象にJob Content Questionnaire(Karasek,1985)の日本語版(川上ほか、1992)に基づき、職場の主要な3つの心理社会的ストレスである仕事の要求度、仕事のコントロールおよび上司と同僚からの支援度(社会的支援)を調べた。これと同時に対象者の細胞性(T,BおよびNK細胞分画数)および液性(血清IgG,IgA,IgM,IgDおよびIgE値)の免疫能を測定した。仕事の要求度が中央値よりも高く、仕事のコントロールが中央値よりも低く、社会的支援が中央値よりも低い者を高ストレス群(年齢25-36,平均31歳,n=21)、仕事の要求度が中央値よりも低く、仕事のコントロールが中央値よりも高く、社会的支援が中央値よりも高い者を低ストレス群(年齢23-36,平均30歳,n=13)と区分した。高ストレス群は、低ストレス群より血清IgG値が有意に高く、CD8^<brioht>+CD11a-細胞分画(細胞障害機能を有するとされるCD8+CD11a+細胞の前駆細胞)数が有意に低かった。その他のリンパ球分画数および血清免疫グロブリン値には両群間で有意な差は認められなかった。本研究から、職業ストレスが高いことにより血清IgG値の上昇と末梢血中のCD8^<brioht>+CD11a-細胞分画数が低下することが示唆された。
著者
木村 昭郎 原田 浩徳 大瀧 慈
出版者
広島大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2002

原爆被爆者の高令化に伴い骨髄異形成症侯群(MDS)の増加がみられているが、広島市内の4病院において過去15年間に診断されたMDSをリストアップし、87例の被爆者MDSを集積した。被爆者情報は研究代表者の所属する広島大学・原医研が構築した被爆者データーベース(13万人)によって確認し、個人骨髄線量は当研究所が構築したABS93Dによって検索し、放射線被曝による発症相対リスクの統計学的解析をすすめている。予備的結果としては、以前院内統計によって得られた1Svあたり2.5よりさらに高い値が得られている。次に、被爆者MDSでは白血病関連遺伝子AML1遺伝子のラントドメインに高頻度に点突然変異を認め、変異を認めた例の被ばく線量は比較的低線量と考えられた。そこで、標本等の試料を過去にさかのぼって収集し、被爆者10例を追加して解析をすすめた。また、AML1遺伝子のラントドメインよりC末端側についても、非被爆者を含めて点突然変異を5例に見出した。ラントドメイン以外に変異を見い出したのは最初であり、このうちの1例は点突然変異により発現されるAML1分子は正常のものよりも大であった。AML1の変異は放射線誘発MDSに特異的である可能性を有しておりAML1変異と被爆との関係を明らかにすることで、放射線誘発MDSの発症機構を解明することが出来ると考えられる。
著者
文 世一 矢澤 則彦 安藤 朝夫 佐々木 公明
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1996

(1)交通計画、地理学、都市・地域経済学をはじめとする関連分野において、情報通信及び交通システムの整備が経済活動に及ぼす効果について論じた文献をレビューし、空間のレベル、企業のタイプ、コミュニケーションの形態ごとに、情報通信と交通システム整備の効果をいかにとらえるべきかについて論点整理を行なった。(2)オフィス企業が都市内の他企業と行うコミュニケーションの手段と回数、および都市内での立地選択をモデル化した。ここではコミュニケーションの質的レベルを明示的に考慮してコミュニケーションの手段選択を定式化している。情報通信費用の低下が都市内交通需要、及び企業の立地分布に及ぼす効果をシミュレーションによって分析した。その結果、通信費用の低下によって交通需要は増加する場合と減少する場合があること、企業の立地分布は分散化することなどが示された。(3)都市間コミュニケーションのための情報通信・交通システムの整備が、企業の本社-支社の機能配置に及ぼす影響を通じて広域的な空間構造の変化を分析した。ここでは企業間(他都市に立地する取引先と)、および企業内(同じ企業の本社と支社の間)の二通りのコミュニケーションを行うオフィス企業の行動をモデル化した。このモデルは、一企業の立地選択を定式化するだけではなく、多数の立地行動の間の相互依存関係と立地均衡を通じて都市規模の分布を求めることができる。このようなモデルにもとづいて、支社の立地と都市規模が交通システムや情報通信システムの変化によってどのような影響を受けるかを分析した。その結果、情報通信システムの整備は、支社の立地を促進するが、交通システムの整備は本社への集中化をもたらすことが示された。
著者
渡邊 嘉典 作野 剛士
出版者
東京大学
雑誌
特別推進研究
巻号頁・発行日
2005

体細胞が増殖分裂する過程で、複製された染色体のコピーが娘細胞へ均等に分配されるためには、染色体の中心部分にある動原体が反対方向からのスピンドル微小管によって捕らえられることが重要である。このためには、細胞分裂のときに、動原体部分の接着が維持されていることと、その向きが正しく制御されることが必要である。この過程には、我々が酵母において発見し命名したシュゴシンとMoa1というタンパク質が本質的な役割を持つことが明らかになった。この機構は、ヒトにおいても保存されていると考えられる。
著者
広田 亨
出版者
(財)癌研究会
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2006

動原体は、細胞分裂期に染色体に形成される構造物で、正確な染色体分配監視機構の、いわば最終検問である「紡錘体形成チェックポイント」の起点として中心的な役割を担っている。本研究では、がん細胞の特徴の一つである「染色体不安定性」の病態を明らかにするために、生細胞の顕微鏡的解析によって本チェックポイントの定量化を目的とし、がん細胞におけるチェックポイントの脆弱性と染色体不安定性との関連性を検討することに繋げることを目標としている。動原体が紡錘体により牽引されたことをどのようにして感知するのか、古くよりそのセンサーの存在が目されているものの、その本体は全く分かっていない。われわれは、この命題にアプローチすべく、動原体にかかる力によって動原体の形の変化をモニターすることから開始した。即ち、動原体の内側よりに存在するCENP-Aとそれより外側に局在するMis12を、それぞれ緑色、赤色蛍光で標識した、"張力センサー細胞"なる細胞を作成した。この細胞を観察した結果、動原体中のCENP-AとMis12の蛍光は極めてダイナミックに別れたり重なったりすることが観察され、動原体は弾力性を有する構造体であり、中期の間、伸張をくりかえしていることが判明した.われわれは、染色体構築因子コンデンシンIのノックダウン細胞では、後期開始が遅延することを報告したが(Hirota, et. Al.,2004)、この細胞を調べると、動原体の伸張頻度が著しく低下していることが分かった。コンデンシンIのノックダウンによるセントロメアの脆弱化が、動原体にかかる張力の発生を妨げてために、紡錘体チェックポイントが稼働していると考えられた。これらの観察結果は、張力を検出するセンサーは動原体の中に存在していることを示唆しており、現在、チェックポイント機能との関連性を調べている(Uchida et a1.,未発表)。
著者
永井 美之 速水 正憲 内山 卓 足立 昭夫 山本 直樹 塩田 達雄 長澤 丘司 松下 修三 生田 和良
出版者
東京大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1995

本研究は延べ約80名の研究者を、1。HIVの複製機構、2。病態のウイルス学的基盤、3。病態の免疫学的基盤、4。エイズの動物モデル、5。感染と病態の制御の5つの柱のもとに組織し、細胞、モデル動物、そして自然宿主であるヒトのレベルでのHIV感染機構の解明、感染に対する宿主応答の実体の解明をとおして、エイズ発症の仕組みを理解するとともに感染発症の阻止と治療のための新しい方法を開発することを目指した。3年間の取り組みの結果、HIVの複製過程におけるウイルスの各蛋白と細胞分子との新しい特異的相互作用の発見とその実体解明、病態進行速度と密接に関連するウイルスゲノムの特異的変異と宿主側蛋白および遺伝子多型の同定、ウイルス排除のための細胞傷害性T細胞エピトープの同定、HIV複製に必須のヒト因子を導入したマウスの開発、ヒト細胞移入SCIDマウスによるHIV感染評価系の確立、ウイルス病原性研究のためのサルモデルの開発、ウイルス特異的反応およびウイルスと細胞の特異的相互作用を標的とする新しい抗ウイルス候補剤の発見および開発、などの多くの成果をあげた。その結果、細胞レベルから個体レベルにわたって、感染と病態を制御する新たな局面の数々が分子レベルで解明されるとともに、それに基づくエイズ制御の新しい戦略を示唆することができた。今後の重要課題の一つとして、高リスク非感染者、長期未発症者などの解析により、HIV感受性と病態進行を決定する宿主の遺伝的基盤と免疫学的基盤の解明がある。また、多剤併用療法奏効例の解析による免疫能再構築の実体解明も重要である。さらに、エイズのすざましい世界的拡大に対処するために、ワクチン開発の取り組みの強化は必須である。
著者
三柴 数
出版者
鳥取大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究の目的は、メッシュベース画像処理の基本モデルを構築することである。これを実現するために、初年度はメッシュを用いた処理で成果をあげている画像リサイズについて、手法を一般化したリサイズモデルを構築した。次年度は、一般化メッシュリサイズモデルをメッシュベース画像処理の基本モデルへ拡張することを試みた。その拡張に、グラフ信号処理を用いたアプローチを用いた。結果として、一部の画像処理については、メッシュベース画像処理を用いて実現可能であることを確認できた。この成果によりメッシュベース画像処理のさらなる発展が期待できる。
著者
左 久 小田 伸一 萩野 顕彦 大谷 昌之
出版者
帯広畜産大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2001

泌乳牛へのルーメンバイパス加工デンプン給与が血漿成長ホルモン濃度や乳量・乳成分などに及ぼす影響を検討する4つの実験を行い以下の結果を得た。1.泌乳牛のデンプン利用能を調べるために、泌乳初期牛に40日間、米粉デンプンを日量0.5-1.5kg給与し、乳量および第一胃内容物性状を調べた。デンプン1.0kg以上を摂取した牛の第一胃内プロピオン酸モル比は上昇、pHは低下し、日乳量は減少した。バイパス性デンプン給与日量は1.0kg以下が適切と判断された。2.泌乳初期牛に90日間、バイパスパルミチン酸、リノール酸Caおよび米粉をリノール酸Caで皮膜処理したバイパス性デンプンを1日4,000kcal相当量給与した。日乳量増加は給与熱量からの期待値にほぼ匹敵し、バイパス性デンプン給与が泌乳量をより高めることはなかった。3.泌乳中期牛に180日間、バイパス性デンプンを1日1kg給与すると、開始後約100日間は日乳量が泌乳進行に伴って低下せ、バイパス性デンプン給与が泌乳持続性を高める可能性が示唆された。試験期間中の血漿IGF-1濃度はバイパス性デンプン給与牛111.1ng/mlと材料給与牛が対照牛よりも有意に高く、グルコース濃度は給与前後とも定常値で推移し、NEFA濃度は試験開始より次第に低下し給与2ヶ月後からほぼ一定の値となった。4.泌乳中期牛15頭に60日間、バイパス性デンプンを給与し、血漿GH濃度、GH分泌刺激ペプチド(GHRP)負荷GH分泌反応を検討した。バイパス性デンプン給与牛の第一胃内pHとVFAs濃度は給与前後で変化せず血漿GHの日内平均濃度、GHパルス高、基礎濃度およびパルス数は増加する傾向が認められたが、GHRP負荷反応は対照牛と違いがなかった。これらの試験結果は、泌乳牛へのバイパス性デンプン給与が成長ホルモン分泌を高め、泌乳の持続性を高める可能性があることを示唆している。
著者
神田 和幸 木村 勉
出版者
京都工芸繊維大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2015-04-01

聾者の言語である手話は学校教育が始まる以前から存在した。手話の歴史は聾者の歴史と同じ長さである。現在から手話の源流を探るには未就学聾者の手話を採集し研究するしかないが、離島や僻地などに人知れず居住し高齢化により絶滅に近い状態にある。未就学聾者の手話は数手話、色名手話、親族名称がないなどの特徴があり、指さしが多いのが特徴的である。一方、生活に密着した語彙は現代の手話よりも描写力があることがわかった。個人方言性が強いが共通性もみられる。
著者
宮崎 正康
出版者
東洋英和女学院大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1993

「経済復興政策と経済団体」に関して、以下の研究を行った。1.戦後復興政策に関連して、企業再建整備の過程で累積した重点産業の新勘定赤字を処理する政策について分析を深めた(発表論文を参照)。2.戦後の株式市場の復興と育成において、財界、政界、官界が果たした役割について検討した。(1)戦後、GHQにより証券取引所が閉鎖され、株式市場はほとんど何もないところから再建されることとなった。株式を介した直接金融の発展が、企業復興・経済発展に不可欠であることを認識し、株式市場の復興に最も積極的に活動した政治家は池田勇人であり、金融人では一万田尚澄等であった。(2)日本証券取引所の平和不動産への改組、証券取引所の再開、東京証券株式会社の日本証券金融会社への改組、投資信託の営業許可等、株式市場の復興・育成に関する占領期の大きな問題の解決には、それぞれ池田勇人や一万田尚澄等のバックアップやGHQへの働きかけがあった。(3)株式関係者、あるいはより広く経済関係者は、これらの有力者を公的・私的にもりたてる行動をとった。例えば池田については、池田の出席る二黒会や火曜会といった会が定期的にもたれていた。二黒会には、小林中、堀田庄三、水野成夫、東畑精一とともに、山一証券の小池厚之助が参加していたし、火曜会には、桜田武、水野成夫、小林中、永野重雄とともに野村証券の奥野綱雄が参加していた。
著者
橋本 礼子
出版者
神戸女子大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

日本語方言の推量表現形式の変化傾向を探るため、高知方言を対象に文法記述調査と自然談話のコーパス調査を行い、推量表現形式群の使用傾向を質・量の両面から分析した。前節要素の品詞に制限があった老年層のものとは異なり、若年層の推量表現形式群は接続上の制限が薄れて単純化している一方で、談話機能的に違う性質を持つものとして使い分けられる傾向にあることが確認できた。
著者
山田 哲也 塚本 敏夫 中村 俊夫 小田 寛貴
出版者
(財)元興寺仏教民族資料研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

加速器質量分析(AMS)法による古代鉄製品の放射性年代測定を確立し、鉄製品に直接的な年代値を付与することを目的として、鉄試料に内在する炭素を汚染させることなく効率よく高純度に抽出し、高精度の試料調整を行った上で、名古屋大学年代測定総合研究センターのタンデトロン加速器質量分析計で微量の炭素を含有する古代鉄製品の^<14>C年代測定の有効性の検証をおこなった。鍛錬鍛冶実験を通じて、そのときに使用した木炭および鍛錬工程で得られた鉄試料のAMS法による^<14>C年代測定を行い、その年代値の検討をおこなった。その結果、鉄中の炭素履歴は、鍛錬実験に用いる前の木炭とほぼ同一の年代を示し、鉄中の炭素履歴は、鍛錬の際に用いられた木炭に置き換えられることがわかった。これまでの一連の研究成果とあわせて、鉄製品中の炭素は、各製作工程ごとに用いた木炭の炭素に影響を受けて、鉄製品中の炭素履歴が置換されるため、鉄製品に内在する炭素を抽出して^<14>C年代測定をおこなうことにより、古代の鉄製品に直接的に年代を付与することが可能であり、その鉄製品の^<14>C年代測定を行うことの有効性を確認することができた。しかし、今回測定した試料の年代値の中には、測定年代に測定誤差を越えたばらつきや、測定試料に炭素同位体分別が生じたり、鍛錬に用いられた木炭と造られた鉄の^<14>C年代値に若干の時間差がみられることがあった。これらの事象を今後、解明してゆくことが古代の鉄製品の^<14>C年代を測定して行く上での課題として残った。
著者
堀口 敏宏 太田 康彦 森下 文浩 井口 泰泉
出版者
独立行政法人国立環境研究所
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

イボニシから脊椎動物のRARとアミノ酸配列の相同性が比較的高いRAR様配列(イボニシRAR)が単離された。All-trans レチノイン酸(ATRA)添加時のウエスタンブロットにより、イボニシRARタンパクは発現したが、転写活性は誘導されなかった。イボニシRARとヒトRARαのリガンド結合部位を融合させATRA, 9-cis レチノイン酸, 13-cis レチノイン酸, All-trans レチノール添加時でもイボニシRARの転写活性は誘導されず、イボニシRARのDNA結合部位をヒトRARαリガンド結合部位と融合させると転写活性が誘導された。イボニシRARとRXRは相互作用すると考えられた。
著者
土屋 一彬
出版者
東京大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究では、生物多様性保全と生態系サービス維持向上のための課題である私有緑地の管理放棄問題の解決に向けて、社会的な観点から(1)緑地管理をとりまく多様な主体の間での地域生態知識の共有・継承プロセスの解明、そして経済的な観点から(2) 緑地管理のためのPESの実効性評価の2つの具体的課題に取り組んだ。その結果、(1)保全活動年数の増加は参加者の知識や経験を増加させる一方で、保全団体活動の継続性に対する問題も同時に発生していること、(2) PESを活用した管理促進策は、財源が確保されるだけでは十分ではなく、管理継続のための主体間の間での連携体制構築が重要になることが示された。
著者
山村 崇
出版者
早稲田大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

東京区部の零細オフィスビル集積地域を抽出し、街区単位で周辺環境特性を分析することで、零細オフィスビル集積地域の5類型を得た。また、零細オフィスビルが持続的に利用され続ける条件として、都心からの距離やビル内部の機能性などの「物理条件」、個人ビルオーナーによる管理の質・テナントの属性・権利関係などの「事業者条件」、コストパフォーマンスを中心とした「市場条件」の3要件が重要であることを明らかにした。またいずれの地域においても、手頃な価格のオフィス供給の存在が新たな都市型サービス業流入の要因となっており、零細オフィスビルが新産業育成の苗床として機能していることを明らかにした。
著者
松本 尚
出版者
東京大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1994

マルチプロセッサ上の通信機構や同期機構の定量的な評価を行うために、従来からクロックレベルの動作が詳細に観測できる実行駆動型の共有バス型マルチプロセッサのシミュレータを開発した。本研究では、このシミュレータの構成要素であるスヌープキャッシュにキャッシュインジェクション機能を追加し、外部からデータをキャッシュに注入する主体である広域構造体ブリフェッチ機構を実装した。作成したシミュレータを用いて、キャッシュインジェクションを使用したプリフェッチ機能の性能を、SOR、SAXPY等の応用プログラムを実行することにより評価した。評価の結果、キャッシュインジェクションは要素計算機間を結合するバスのトラフィックを減少させる働き、キャッシュを有効に活用する機能が有効であり、著しい性能向上がえられた。現在、本マルチプロセッサシミュレータはワークステーション上で動作しており、研究代表者が在籍する研究室の最新鋭高性能ワークステーション上で、シミュレーション実験を行った。大規模なシステムをシミュレートするためには大容量のメモリが必要になるため、ワークステーションのメモリを増設した。また、シュミレーション時間もかなり長くなるため、シミュレーション時になるべく多くの情報をログとして保存して、そのログ情報を利用してシステムの性能評価やキャッシュインジェクション機構の動作の解析そして機構の改善法の検討に役立てた。交付された予算は、シミュレーションを行なうシステムの補強に使用した。シミュレーションでは評価不可能な規模のアプリケーションに対する評価を可能にするために、Elastic Barrierを実装した密結合マルチプロセッサプロトタイプ「お茶の水1号」の研究開発も行った。「お茶の水1号」は4台のRISCプロセッサからなる密結合マルチプロセッサであり、完成時のピークパフォーマンスは600MIPS,400MFLOPSである。交付された予算の一部はこのプロトタイプ作製の部品の購入に使用された。このプロトタイプの設計並びに各機能の性能見積りについては報告発表を行った。
著者
林 奉権 徳永 勝士 中地 敬 小川 貴彦
出版者
公益財団法人放射線影響研究所
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

原爆被爆者の胃がん(腸型とびまん型)、大腸がん(近位結腸がんと遠位結直腸がん)および乳がんについて放射線関連がん発生に対する遺伝的背景の影響を調べた結果、IL10遺伝子型が放射線に関連するびまん型胃がんの発生に関係するかもしれないこと、CD14とIL18遺伝子型が放射線関連遠位結直腸がんと近位結腸がんの発生、ATM遺伝子型が放射線関連乳がん発生に関連する可能性を見出した。また、原爆被爆者の血液細胞内活性酸素(ROS)レベルに対する年齢と放射線被曝の影響を調べた結果、特にCD8+ T細胞の活性酸素レベルが年齢と被曝線量により増加しIL6R遺伝子型によって有意に異なることを見出した。
著者
彦坂 佳宣
出版者
立命館大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

『方言文法全国地図』の意志・推量、条件表現、敬語類などの言語地理学的研究に、国語史の知見、また特に近世期地方方言文献を探索・考察した研究により、およそ5 種の伝播類型を見出し、それによる日本語形成史を試論的に考察した。
著者
高清水 康博
出版者
新潟大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震による津波は,沿岸低地を数km に渡って遡上する巨大なものであった.この研究では,宮城県仙台市,岩手県陸前高田市,および北海道日高町で採取した砂丘を越えて沿岸低地を遡上する津波堆積物の定方位不撹乱試料の層相,粒度分布,磁気ファブリックから津波挙動の復元を試みた.その結果,仙台市と陸前高田市の津波堆積物の解析からは詳細な津波の流れ変化を読み取ることができた.すなわち,津波堆積物の詳細な堆積学的解析から過去の津波挙動の復元が有効であることを示すことができた.
著者
若菜 博 田中 邦明 前田 賢次 境 智洋
出版者
室蘭工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

日本の岩手・宮城・佐賀・長崎・鹿児島県などの海岸保護林、韓国の全羅南道・慶尚南道を対象に現地調査を行った。韓国では、魚つき林と防潮林が一つのものとして表記され、その一部は400年から300年の歴史を持っていることを確認した。岩手・宮城・長崎県では各地の防災関係副読本を収集できた。それらを踏まえ、津波防災に関わる実験の開発および授業プランを実施した。平成27年12月には、本研究課題をテーマとしたシンポジウムを開催した。韓国の木浦国立大学の洪善基教授を招き、地域社会の防災文化の継承のために、海岸林の特性を取り入れた防災教育の進展を図ることを提起した。