著者
小川 拓
出版者
共栄大学
雑誌
共栄大学研究論集 = The Journal of Kyoei University (ISSN:13480596)
巻号頁・発行日
no.15, pp.193-219, 2017-03-31

逆上がりの魅力は、「跳び上がり」ができないような高い場所でも、体位回転をさせることにより、手の届くところであれば、鉄棒の上に上がることができるというところである。人間は高いところに登ったとき、危険から身を守ることができる場合がある。小学校で、体育を教えるとき、「技」としての「逆上がり」ではなく、後者のような「危険を回避する手段」として指導していくことも大きな目的の一つになってくる。子供にとって逆上がりは、あこがれの技であり、やりたい体育技の上位に入ってくる。逆上がりができることで、体育ばかりか他の分野でも良い影響があった子供を多数見てきた。子供の「勲章」ともなりえる逆上がりを達成させ、向上意識や自己肯定感を高めたい。逆上がりができることでの子供の変容や運動力学的に見た「逆上がりの特性」、「逆上がりの効用」から「指導法」までを検証し、逆上がりの必要性や有用性を提示していきたい。
著者
土屋 敦
出版者
日本生命倫理学会
雑誌
生命倫理 (ISSN:13434063)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.190-197, 2007-09-20 (Released:2017-04-27)
参考文献数
10

本稿の目的は、1960年代半ばから1970年代初頭にかけて全国地方自治体で展開された「不幸な子どもの生まれない運動」の内実及び、この「障害児」の出生抑制政策がこの時期興隆した社会構造的要因を明らかにすることを通じて、そこにこの時期日本社会における優生政策の再興隆の契機が存在したこと、そしてこの運動が日本の優生政策上の一つの転換点を画する運動として存在した事実を跡付けることを目的とする。また、同時期に、この政策が導入された社会的土壌及び「障害児」の出生抑制が「必要」とされた同時期の社会構造的要因を明らかにすることにある。
著者
中村 成夫
出版者
日本医科大学医学会
雑誌
日本医科大学医学会雑誌 (ISSN:13498975)
巻号頁・発行日
vol.9, no.3, pp.164-169, 2013 (Released:2013-07-08)
参考文献数
7
被引用文献数
2 2

Reactive oxygen species (ROS) are produced from molecular oxygen. ROS are the reduced forms of molecular oxygen and have high reactivity to biological components e.g. lipid, protein, and nucleic acid. ROS are considered to cause various diseases e.g. arteriosclerosis, myocardial infarction, cancer, and so on. A living body protects against ROS by antioxidant enzymes e.g. superoxide dismutase (SOD) and catalase. Natural antioxidants e.g. ascorbic acid (vitamin C) and α-tocopherol (vitamin E) also scavenge ROS. Recently, some novel artificial antioxidants are synthesized and are expected to a lead compound for drugs.
著者
Suzuki Yuya
出版者
Arachnological Society of Japan
雑誌
Acta Arachnologica (ISSN:00015202)
巻号頁・発行日
vol.71, no.1, pp.59-61, 2022-06-30 (Released:2022-07-02)

This paper describes field-based observations of male-male agonistic behavior in a longlegged sac spider Cheiracanthium eutittha (Araneae: Cheiracanthidae). Males of the species exhibited a characteristic agonistic behavior, where two males hung from leaves with a dragline, with all of their long legs entangled with each other and pushed each other’s body aggressively. To the best of my knowledge, this is the first video-based report of male-male agonistic behavior associated with usage of elongated legs in this spider family.
著者
篠田 謙一
出版者
公益財団法人 日本学術協力財団
雑誌
学術の動向 (ISSN:13423363)
巻号頁・発行日
vol.20, no.5, pp.5_15-5_19, 2015-05-01 (Released:2015-09-04)
参考文献数
6
著者
渡辺 春巳
出版者
中央大学商学研究会
雑誌
商学論纂 (ISSN:02867702)
巻号頁・発行日
vol.58, no.5・6, pp.267-316, 2017-03-01
著者
藤本 猛 フジモト タケシ Takeshi FUJIMOTO
雑誌
清泉女子大学人文科学研究所紀要
巻号頁・発行日
vol.38, pp.23-46, 2017-03-31

宦官とは、去勢された男性のことを指す。ユーラシア大陸に広範に見られるこの風習は、中国においては紀元前の古代から存在し、彼らは特に禁中にて皇帝の身辺に奉仕し、一種の奴隷でもあり、また官僚でもある存在であった。そして最高権力者たる皇帝との距離の近さから、しばしば政治に介入し、専横な振る舞いが見られ、その特異な身体的特徴もあって、非常に負のイメージの強い存在である。 そんな宦官に関する北宋時代の史料を見ていると、宦官の「子」や「妻」という表現をよく目にする。言うまでも無く宦官には生殖機能がなく、子ができるはずがない。このことにつき改めて諸史料を調査し、検討を加えたところ、北宋初期に命令が出され、30歳以上の宦官には養子一人を取ることが認められていることが判明した。これによって基本的に北宋時代の宦官には、養子によって家が継がれ、その養子の多くがまた宦官となって次代の皇帝に仕える、というシステムになっており、結果としていくつかの宦官の家柄が成立していたことが推測される。また彼らのなかには複数の養子を兄弟として育てたり、皇帝の声がかりなどで妻を娶り、宮中とは別の場所に邸宅を構えるものも存在し、宦官でありながら一般官僚と変わらぬ家族生活を営むこともできていたことがわかった。 北宋時代の後宮が、基本的には限られた宦官一族によって支えられていたことが分かったが、その実態については史料が限られているために全面的に解明することは不可能である。しかし零細な史料をつなぎ合わせると、歴代皇帝の後宮に仕えたいくつかの宦官一族の存在が見つかった。その一つが李神福にはじまる一族であった。六代十二人の存在が確認できるこの一族は、初代から第六代までの歴代皇帝に仕え、特に李神福は太宗・真宗皇帝に50年以上も仕え、穏和な性格で知られた。その曽孫である李舜挙は軍事面で神宗皇帝に仕えて戦死したが、その散り際の潔さ、忠誠心の厚さによって、司馬光・蘇軾ら当時の士大夫から賞賛された人物だった。 以上判明した北宋時代における宦官の実態は、これまで抱かれてきた宦官の負のイメージとはいささか異なるものであったといえるだろう。
著者
畠 佐代子 新野 聡 富樫 悦夫 上野山 雅子 澤邊 久美子
出版者
公益財団法人 宮城県伊豆沼・内沼環境保全財団
雑誌
伊豆沼・内沼研究報告 (ISSN:18819559)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.53-62, 2018-10-24 (Released:2018-10-24)
参考文献数
20

宮城県仙台市若林区内において,カヤネズミMicromys minutusの新産地を3ヶ所発見した.新産地のうち,広瀬川左岸河川敷で発見された生息地は,国内における本種の分布の北限として知られる坪沼よりも北に位置しており,新たな北限となる.新産地の周辺は圃場整備や護岸工事が進み, それぞれの生息地が孤立した状態であると推察されることから,生息環境の早急な保全が求められる.
著者
鈴木 貴之
出版者
The Philosophy of Science Society, Japan
雑誌
科学哲学 (ISSN:02893428)
巻号頁・発行日
vol.42, no.2, pp.2_13-2_28, 2009 (Released:2010-02-15)
参考文献数
26
被引用文献数
1

Brain sciences can show that our acts are caused by deterministic processes in our brain and that our acts are often influenced by unconscious brain processes, but these facts alone cannot deny free will. Brain sciences are important rather because they, along with other biological and behavioral sciences, offer the data that seem troublesome for compatibilists. The problem of free will cannot be solved either by conceptual analysis alone or by empirical research alone. Whether we endorse reductionism or non-reductionism, it is necessary to revise our commonsense concept of free will to establish compatibilism.
著者
工藤 雄大 千葉 親文 長 由扶子 此木 敬一 山下 まり
出版者
天然有機化合物討論会実行委員会
雑誌
天然有機化合物討論会講演要旨集 57 (ISSN:24331856)
巻号頁・発行日
pp.PosterP63, 2015 (Released:2018-10-01)

[背景・目的] テトロドトキシン (tetrodotoxin, TTX, 1) は、電位依存性ナトリウムチャネルを強力かつ選択的に阻害する神経毒であり、致死性の食中毒を引き起こす。TTXはフグ、巻貝、カニなどの海洋生物、および陸棲の両生類であるイモリやカエルに含まれ、世界中に分布する。この特異な構造が自然界でどのように構築されるかは予測が困難であり、TTXの生合成経路は未だ解明されていない。既に我々も含めた複数の研究グループが海洋由来のバクテリアによるTTXの生産を報告しており1)、TTXは食物連鎖により海洋生物へと蓄積されると考えている。一方、陸上におけるTTXの生産生物は未同定である。唯一のラベル化合物の投与実験として、清水らによるイモリへのarginine, acetate等の投与例があるがTTXはラベル化されず2)、遺伝子解析からTTXの生合成経路に言及した研究もこれまでない。そこで我々は、TTX類縁体の化学構造が生合成経路を反映していると考え、新規TTX類縁体(生合成中間体)を得るために質量分析器を駆使した網羅的な探索を実施してきた3)。そして最近、有毒のオキナワシリケンイモリ (Cynops ensicauda popei) から、TTXのC5-C10が直接炭素-炭素結合した10-hemiketal-typeの類縁体の4,9-anhydro-10-hemiketal-5-deoxyTTX (2) を発見した。化合物2は国内外の複数の有毒イモリに共通して存在していたため生合成中間体であると考え、2の特徴的な骨格構造からモノテルペンを出発物とする新たな生合成経路の可能性を考えた (Fig. 1)4)。本研究では、推定した経路を基に更なる生合成中間体を探索したので報告する。また未解明であるイモリにおけるTTXの起源を追及した。Figure 1. Proposed biosynthetic pathway towards TTX based on the structure of 2.4) 1. 新規環状グアニジン化合物群とTTX生合成経路の考察 質量分析器を用いて推定した生合成経路における中間体を探索した。これまで我々は水溶性の高いTTX類縁体の探索法として、希酢酸加熱抽出、活性炭による前処理、HILIC-LC-MS/MS3c, 5)による解析を行ってきた。しかし、本研究のターゲットとなる生合成中間体はTTX類縁体よりも親水性が低いことが予想されたので、探索のステップをそれぞれメタノール抽出、ODSによる前処理、逆相カラムによるLC-MSへと変更し、より初期の生合成中間体に焦点を当てた探索法を新たに構築した。この疎水性化合物用の探索法と従来の親水性化合物用の探索法の二つの方法で予想生合成中間体の発見を目指した。1-1. Cep-210, Cep-212の構造解析疎水性化合物の探索では、C. e. popeiのメタノール抽出物から[M+H]+ m/z 210.1606 (C11H20N3O, err. 2.2 ppm, ESI-TOF-MS) の微量新規成分 (Cep-210, 3) を検出した。その分子式から、化合物3は予想生合成中間体に相当する可能性が考えられたため、大量抽出および単離・構造決定を試みた。化合物3をC. e. popeiの身体組織 (415 g、約70匹) からメタノールで抽出して分配操作を行った後、数種の逆相カラムと弱酸性陽イオン交換カラムを用いて単離した。得られた3(69 nmol、マレイン酸を内部標準として1H NMRの積分値より算出)をCD(View PDFfor the rest of the abstract.)
著者
水上 雅博 杉山 弘晃 有本 庸浩 東中 竜一郎 光田 航 小林 哲生
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会論文誌 (ISSN:13460714)
巻号頁・発行日
vol.38, no.3, pp.B-MA2_1-14, 2023-05-01 (Released:2023-05-01)
参考文献数
18
被引用文献数
2

Local governments have high expectations for dialogue systems that provide residents and visitors with dialogue on multiple tasks, such as tourist information, town office information, and daily life information. In addition, there is also an expectation for such dialogue systems to be given the personalities of characters possessed by local governments and to provide chat dialogues for residents. However, to give the personality of a character to the dialogue system, task dialogue data and dialogue manager that reflect the personality are essential. Based on the study of role play-based question-answering dialogue systems that reproduce characters, we propose a method for collecting dialogue data that enables task dialogue and a method of dialogue manager and response selection that facilitates task dialogue. We constructed a dialogue system that imitated a certain local government character using the proposed method and evaluated its effectiveness through a laboratory experiment and demonstration experiment. The results showed that our dialogue system had statistically better performance in both task-oriented dialogue and chat oriented one.