著者
畠山 裕康
出版者
東北大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究では、細胞内の任意の分子の一分子計測を容易に可能にする材料と手法の提供を目的とした。そのために、極めて安定で明るい蛍光ナノ材料、量子ドットに対して、低分子リガンドと特異的共有結合を形成するタグタンパク質を利用した目的分子との特異的結合能の獲得と細胞膜透過性ペプチドを利用した細胞膜透過性の獲得の2点を試みた。前者については目的を達成したものの、後者は導入効率等に課題があったため断念した。しかし、エレクトロポレーション法により低い細胞毒性にて高効率な細胞内導入を可能にすることができた。これにより細胞内におけるミオシンの一分子計測を行うことができ、本研究の目的を達成することができた。
著者
下吉 美香
出版者
神戸大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2011

1.研究の目的物事を「たとえ」を使って表現することは,その物事の本質,しくみをしっかり理解しているということである。また,私たちは,新しい概念を獲得したり,目に見えない現象を概念として獲得したりする時,「たとえ」を用いて表現することが少なくない。つまり,「たとえ」は人の理解を促す効果があると言える。よって,科学概念を「たとえ」を交えながら,他者の合意を得られるように説明しようとすることは,思考を深化させたり,拡張させたりする可能姓をもっていると仮定し,その効果を検証することを本研究の目的とした。2.研究の方法「電気」「宇宙」等,主として,目に見えない科学現象を含む単元で「たとえ」表現をとりいれる場を設定した。また,それ以外の素材を題材としている単元についても,「たとえ」表現を積極的に用い,自分なりの考えをまとめたり,他者の合意を得ることができるような説明をしたりし,科学概念の構築をはかっていくようにした。そして,「たとえ」表現を用いた子どもの様相から,その実際的効果を検証した。3.研究成果(1)意図的に「たとえ」表現を用いていくように支援していくことの必要性「電気」に関する基礎的研究(2011,06)において,3学年では,「カミナリ⇔ビリビリする,稲妻」「花火⇔明るい」など,これまでの経験から表面的に受け止めている傾向がみられた。しかし,6学年では,「魔法使い→量を変えられる」をはじめとし,量の変化,2極性,電流,抵抗といった性質に迫っていく傾向がみられた。これらより,生活経験,既有知識の量が,表現に関係するとともに,学習経験が大きく寄与するとも言える。よって,意図的に「たとえ」表現を用いていくように支援していくことの必要性は明確であると結論づけた。(2)単元終末段階への「たとえ」表現導入の有効性前回調査(2011,06)と比較し,第2回調査(2011,10)では,全体の語彙数,電気の概念をとらえた表現が増加し,単元内での学びに基づきながら表現されているものであった。また,「電気」の生み出され方について,単元の終末時に,電気の利点や特徴等の概念を総合的にとらえた表現が見られ,総合的な概念形成にも有効にはたらくことが示された。これらのことより,単元終末段階への「たとえ」表現の導入は,学習支援として一定の効果があると結論づけた。(3)科学的思考力の深化,拡張を支える「たとえ」表現の効果第6学年を対象とした「宇宙」に関する調査(2011,10)において,月の満ち欠けの周期やその原理について,「機械」「数列」「ボタン」等にたとえ,順序や規則性があることや,継続して変化することを表現し,概念の獲得へ向かっていることが確認できた。また,「太陽」「月」「地球」の位置関係について,「家族」「メリーゴーランド」「シーソー」等にたとえ,互いに関連し合うような生活事象や,距離がありながらも互いに影響し合っている状態を表現し,空間認識の獲得へ向かっていることも確認できた。さらには,宇宙の壮大さ,美しさを「魔法」「宝物」「美術」にたとえた表現もみられた。これらの様相より,「たとえ」表現は,子どもの自然観をゆさぶり,科学的思考の深化,拡張を支えるものとして,有益に機能していくものであると結論づけた。
著者
出澤 正徳 施 衛富
出版者
電気通信大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1995

本研究の最終目標は、錯視現象を心理学的プローブとして、人間の視覚システムの3次元空間知覚メカニズムを探り、その数理的モデルを構成し、視覚メカニズムの解明に貢献することである。特に、視覚刺激が運動する場合についての新しい錯視現象を探索し、従来には全く予想できなかった新しい現象が見出された。相関をもって運動する複数物体が群としての運動と群内での相対運動として知覚される現象が見出され、剛体条件や軌道条件等、脳内の表現をより単純化する表現単純化原理の作用を推測させる。また、両眼立体視において斑点状視覚刺激を運動させたとき、静止時には全く知覚できない視覚刺激の運動とは異なった表面構造の運動(構成的運動)が知覚される現象が見出された。新たに見出されたパントマイム効果では3種類(全面支持、背面支持、側面支持)の手がかりが考えられ、体積的な透明知覚に側面支持手がかりが不可欠であること、また、従来の多層ランダムドットステレオグラムにおける透明視とは本質的に異なるものであることが確かめられた。さらに、視覚刺激を、互いに異なる複数の構造間を遷移するように運動させたときに錯視対象の分離・融合とその遷移におけるヒステリシス現象が見出され、定量的な計測によってその存在が確認された。水平方向に運動する2群のランダムドットパターンの奥行き関係が異なって知覚されるというこれまでの知見では全く説明できない現象が見出された。さらに、ランダムドットステレオグラムで両眼非対応部に存在するドットが手前側に知覚され、それが物理的に可能な配置であることが証明された。これはこの分野の研究者間で信じられていた仮説(両眼非対応領域は背景の深さに知覚される)を覆す新しい発見である。これら、本研究において新たに見出された動的錯視現象の背後には、さらに多くの未知の現象が隠されており、視覚システムにおける空間知覚メカニズムを解明において有力な手がかりとなるものと期待される。
著者
森 茂男 レザーイーバーグビィーディー ハサン 藤元 優子 竹原 新 藤元 優子 竹原 新 アーベディーシャール カームヤール
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

本研究は、現代のイラン人が保持する伝統的な祭祀・信仰に関する資料をデータベース化することにより,これまで断片的にしか提示されてこなかった当分野の研究資料を一元化し、研究の効率を格段に向上させることを目指したものである。その結果、イラン国内でのイスラム以前の遺跡をはじめとする資料収集、データベース構築に係る作業、文学論への応用研究に係る研究活動を実施した。
著者
西村 欣也 三浦 徹 岸田 治 道前 洋史 北野 准
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2011-04-01

北海道の固有種であるエゾサンショウウオ(Hynobius retardatus)の幼生は、捕食者生物、餌生物、同種幼生の存在に呼応して生態学的機能を有する表現型可塑性を示す。そのため、進化生態学、発生生物学を融合する研究の優れたモデル生物である。本研究では、エゾサンショウウオ幼生が捕食者生物存在下、餌生物存在下で可塑的に発現される形態変化について、幾何学的形態解析法を用いて定量的に明らかにし、その分子発生学的メカニズムを調べる出発点として形態変化と関連するゲノム情報の探索を行った。さらに、生息域全域を網羅する5地域集団間で、表現型可塑性に伴う形態変化の反応規範と、遺伝マーカーの変異を調べた。
著者
吉田 弘司
出版者
比治山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

本研究では,個人の表情識別能力を精密に測定可能な課題を開発した。健常成人において,この課題で測定された表情に対する感受性と視線行動との関連を調べたところ,喜び以外の表情について感受性の高い参加者は,表情を観察するときに目を見る傾向が強いことがわかった。また,高齢者は喜び以外の表情認識に困難を示すが,彼らは目を見る傾向が少ないことがわかった。自閉症スペクトラム障害児においても表情識別の困難が見られたが,成長に従って表情が読み取れるように変わると同時に,目を見るように変化することがわかった。
著者
小澤 守 松本 亮介
出版者
関西大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

特別の保炎機構を持たない管状火炎燃焼器とその周囲に水管を配置することによって高性能の小型蒸気発生器を構築し,その燃焼特性,伝熱特性,排ガス特性,燃焼の安定性など,装置設計上,必須のパラメータの把握を行った.水管としてはベローズ型フレキシブルチューブをらせん状に巻くことにより,燃焼室外壁を構成し,燃焼室長さを短く抑え,かつ十分な伝熱面積を確保することが燃焼/沸騰伝熱双方の安定性に極めて効果的であることを明らかにした.
著者
野口 麻穂子
出版者
国立研究開発法人森林総合研究所
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

斜面崩壊が冷温帯林の更新初期過程に果たす役割を明らかにするため、2013年8月の大雨に由来する斜面崩壊跡地と、隣接する未攪乱の林床で実生の動態を調べた。2014年に定着した実生は、複数の林冠構成種において斜面崩壊跡地に多く、斜面崩壊による地表攪乱が定着を促進していることが示された。小型の種子を持つスギとウダイカンバの実生は、斜面崩壊跡地でのみ認められたが、落下種子量が少なく、実生の生存率も低かったことにより、優占には至らなかった。また、斜面崩壊跡地内では、攪乱タイプ(発生域、流走域、堆積域)の違いが、土壌の水分条件を介して実生の成長と植生回復のプロセスに影響を及ぼしていることが示唆された。
著者
野島 孝之 長嶋 和郎 竹上 勉
出版者
金沢医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

横紋筋肉腫と鑑別診断上,問題となる悪性軟部腫瘍症例について組織学的,分子生物学・遺伝子学的検討を行った。その結果,横紋筋肉腫の組織学的な診断には,免疫組織化学的にデスミン,サルコメリックアクチンが有効で,両者は大部分の腫瘍細胞に陽性を示したが,ミオグロビンは極一部の腫瘍細胞の胞体内に陽性を示すに過ぎなかった。CD99(MIC2遺伝子産物)は横紋筋肉腫の70%の症例に陽性所見を得、CD99の横紋筋肉腫の診断への有効性を示唆する。しかし,染色態度はEwing肉腫/PNET群では細胞膜に強度の陽性所見を示すのに対し,横紋筋肉腫では細胞質内に弱い染色態度を示すに過ぎず,診断学上の価値はデスミン,サルコメリックアクチンに劣ると思われる。横紋筋肉腫の胞巣型では異なる染色体上の2つの遺伝子、PAX3、あるいはPAX7とFKHRが部分的に結合し、正常とは異なるDNA配列により異常な蛋白を産生し、腫瘍が発生すると考えられている。遺伝子解析ではPAX-FKHRの再構成キメラ遺伝子の存在が胞巣型に特異的であり,検索した胞巣型全例にこのキメラ遺伝子を検出した。鑑別診断上問題となる悪性リンパ腫,Ewing肉腫/PNET群,悪性線維性組織球腫,胎児型横紋筋肉腫では検出されなかった。一方,多形型横紋筋肉腫7例中1例にPAX-FKHR変異遺伝子を検出した。組織学的には多形細胞,巨細胞を交える紡錘形細胞肉腫の像で,胞巣型の部分は全く含まれていなかった。PAX-FKHR変異遺伝子の検出は1例のみであるが,PAX-FKHR変異遺伝子の存在は胞巣型と多形型の腫瘍発生機構における類似性を示唆するものであった。
著者
波多 賢二 西村 理行
出版者
大阪大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

軟骨細胞分化に必須の転写因子 Sox9 は、様々な転写共役因子と転写複合体を構築することにより軟骨細胞分化を誘導する。本研究では軟骨細胞分化過程における Sox9 転写ネットワーク因子の同定とその機能的役割の解明を行った結果、転写因子 Arid5b はヒストン脱メチル化酵素Phf2 と結合し、Phf2 を Col2a1 遺伝子プロモーター上に誘導することにより H3K9Me2 の脱メチル化を促進することが明らかとなった。本研究により Sox9 と Arid5b の協調作用によるエピジェネティックな軟骨細胞分化調節機構が明らかとなった。
著者
木村 宣美
出版者
弘前大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

RNR構文ではRNR要素以外の要素に顕在的左方移動が適用されて導かれるわけではない。等位項における対称性が破綻している、RNR要素は本来の位置にあることから、併合による統語物の線形化を適切に捉えることのできるin-situ削除分析が優れている。2種類のBeを仮定することで、法助動詞の根源的意味が好まれることに説明を与えることができる。Beは上昇動詞である、beは小節を補部にとる、動詞のbeと助動詞のbeがあると仮定することで、倒置文の線形化を適切に捉えることができる。動詞句削除におけるbeの振舞いは、beingが動詞で、beとbeenが助動詞であるとする語彙的特性に基づき捉えることができる。
著者
シン ユーチン
出版者
政策研究大学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

本研究の主要な成果は以下のとおりである。1. 1994年から2008年にかけての中国の全体的な貿易黒字は100%加工貿易によるものであり、中国とG7諸国及びその他の主要な貿易相手国との二国間貿易収支を決定するものである。2.人民元が上昇すると、中国の加工品輸出だけでなく、加工品輸入も減少する。人民元の上昇が中国の貿易収支にもたらす全体的な効果は限られている。さらに、人民元の上昇は、中国で生産された付加価値商品には影響をもたらすが、「中国製」商品に組み込まれたあらゆる付加価値に影響を与えるわけではない。3.人民元上昇のパススルーは不完全である。日本では、中国からの輸入品価格にパススルー効果は見受けられない。4.現在の貿易統計により、米中の二国間貿易不均衡は大幅に拡大している。中国の対米貿易黒字の大部分は、第三国から移ってきたものである。貿易統計の改革が求められる。
著者
小林 泰男 竹中 昭雄 三森 真琴 田島 清 松井 宏樹
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

本研究は草食動物消化管の未培養細菌群の生理・生態を明らかにし、繊維質の消化メカニズムも解明に近づこうとするものである。主に反芻家畜(ウシおよびヒツジ)のルーメン細菌に焦点を当て、これまでDNAレベルで存在のみ認識されていた菌群の分離・培養にチャレンジした。またウマやダチョウの大腸微生物の解析も手がけた。ルーメン内繊維付着性菌群U2は独自に開発したFISH法により牧草茎部に多く存在すること、それらはナイロンバック法で茎部をルーメンに浸漬することで容易に簡易集積できること、抗グラム陰性菌用の抗生物質を添加した液体培地内でさらに集積可能なことを明らかにした。その後PCRスクリーニングを活用することで多くの菌株の中からU2に属する2株の単離に初めて成功した。これらはいずれも繊維付着能を有し、マルラーゼは持たないがセロビオヒドロラーゼを、またキシラナーゼのほかに極めて高いアラビノフラノシダーゼ活性を有することをつきとめた。以上のことから、U2に属する細菌は、単独で繊維質を分解するのではなく、セルロース分解者の近傍に位置し、セルロース分解産物を利用すること、またセルロースを取り巻くヘミセルロース、とくにその側鎖を解離することに貢献しているものと推察された。大腸の細菌遺伝子ライブラリーから、ダチョウおよびウマは既知繊維分解菌の系統的近傍に未知の菌群を多く有していること、ウマは和種馬に特有の菌群が多く存在し、それらが和種馬の繊維分解に貢献している可能性があることを示唆できた。また和種馬は軽種馬にはほとんどみられない大型の繊維分解性プロトゾアを大腸に多く有していることを見つけた。これらの結果は、草食を規定する消化管微生物相の多様性とこの研究領域の奥深さを強く示唆するものであり、いっそうの解析の必要性が感じられる。
著者
蟹江 憲史 KABIRI N. KABIRI N KABIRI Ngeta
出版者
東京工業大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2012

当研究の目的は、気候変動ガバナンスと法的拘束力のある地域気候変動レジームの制約についての分析を行いつつ、位置づけていくことにあり、また、当事国の発展の必要性とグローバルな利益に注意を払いつつ、経済的なベネフィットにも寄与することが可能な、地域気候変動レジームのタイプについて形付けることであった。地域統合における、東アフリカ共同体(EAC)と南アフリカ発展共同体(SADC)の気候変動ガバナンスレジームの新興アーティキュレーションは存在する。どちらの共同体も気候変動に焦点を当て主張することができ、政策決定者は、この取組みを推進すべきであると考えられる。しかしながら、2つの共同体には明白な違いがあり、EACにおいては相当な進展を示しており、一方、SADCは、気候変動レジームを形成している段階にある。制度構造が部分的にこの違いの原因となっており、また、このような構造がなぜSADCに欠落しているかという説明が必要となってくる。しかし、EACについても、法的拘束力をもつレジームの達成を妨げる、いくつかの障害も記録されており、プロジェクトやプログラム構成がSADCより進んでいることを除いては、このケースはEACにおいても同じ状況にあるといえる。これら阻害要因を無くすためにより多くの投資が必要であり、共同体の気候変動ガバナンスアジェンダをさらに前進させるためにも、関連する政策手段を講じる価値があると考えられる。当研究により得られた成果により、具体的に国際開発を実現するような目標や指標を同定し、またその実現のためのガバナンスのフレームワークを導き出し、論文、学会発表等を通して、提言することが出来た。JSPSからのFundを通して、アフリカ等での市場調査を行い、様々な国際会議への参加が可能となり、円滑に研究を進めることが出来、十分な成果を導き出すことが出来た。
著者
林 秀弥
出版者
名古屋大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

本研究では、米国における放送・通信分野に関する企業結合規制及び反トラスト法に基づく企業結合規制の内容と両者の競合関係、これまでに多数行われてきた大型合併案件に関する競争当局と規制当局の判断等に着目し、競争当局による競争の実質的減殺要件や問題解消措置、規制当局による公共の利益や視聴者・利用者保護の観点からの問題解消措置など二元規制の要件や運用上の課題を明らかにすることにより、放送と通信の融合・連携が進展していく渦中にある我が国の放送・通信分野の企業結合規制の新たな枠組みのモデルや在り方について検討を行った。
著者
マニエー レミー
出版者
筑波大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

ナレッジ・マネジメントは先行優位性を生み出す源泉としてだけでなく、競争性の初期原動力としても認識されている。しかし、それぞれの組織は、その経験、人、設立環境によって一様ではないので、それぞれの組織はカスタマイズされた解決策を求めている。従って、KMに影響を与える先行要因を的確に指し示しすことができれば、それは企業の生産性を向上することに役立ち、国際情勢の熾烈な競争の中で生き残れるだろう。
著者
簑原 俊洋
出版者
神戸大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究によって政治外交史の分野からは検証が限定的であった戦前日本の暗号解読情報がいかにして政策決定に反映されたかについて一つの光を当てることがた可能となった。これにより、戦前の日米関係が再構成され、新たな視点で太平洋戦争への道を考察することができた。これを踏まえ、アウトプットとしてはプレゼンテーションによる研究成果公表に専念した結果、内外において数多くの報告機会を得ることがでた。その都度、有意義なコメントをフィードバックしてもらったため、今後の課題として残る単著の出版においてこれらを活かしたいと考えている。この他には、編著として英語論文を一つ、そして邦語論文を一つ公表することができた。
著者
田島 譲二
出版者
名古屋市立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

異なる光源下での対応する色再現を目指し、二色性反射モデルを利用し、カラー画像から光源色を推定する研究を行なった。まず対象物体がプラスティック製品のようなものである場合、正確に二色性反射モデルに従うことを確認した。その場合、一定色の物体の色度分布は一直線上に分布し、異なる色の物体の色度分布は光源色度で交わるはずである。それに基づき、デジタルカメラのγ特性の補正と光源色の推定を同時に行なう手法の開発を目指した。一眼レフカメラのrawモードの画像データと、それを手動セグメントした画像データを収集し、γ特性を双曲線関数で近似してその最適パラメータを探索し、光源色度推定性能を向上させることができた。
著者
赤羽 学 今村 知明 高野 裕久 上田 佳代 清水 厚
出版者
奈良県立医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

我々がこれまでに確立したインターネットを介した健康調査システムを用いて、アレルギー症状を日々収集し、黄砂飛来量・花粉飛散量との関係をみた。各症状の有無を従属変数とし、対象者の性別、年齢と各調査日の最高気温、湿度、黄砂量を共変数として一般化推定方程式を用いて分析した。アレルギー症状の有症状率は2月上旬から増加傾向を示し、黄砂の大量飛来日を起点として増加していた。黄砂量と関連が強かった症状は、鼻水、咳、目のかゆみであった。本研究では、黄砂によってアレルギー症状が誘発されている可能性が示唆されただけでなく、花粉症患者においては花粉飛散量と不眠にも関連があることが判明した。
著者
藪下 聡 岩田 末廣
出版者
慶應義塾大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

原子や分子の光イオン化過程を理解するには、通常の電子束縛状態だけでなく連続状態も定量的に記述する必要がある。この目的のために、解析的微分法で最適化した複素数軌道指数を持つスレーター型(cSTO)基底関数を数個用いることでクーロン関数を表現する計算手法を開発し、同時に最適化された軌道指数が、複素平面上で円弧上に分布するという面白い特徴を分析した。分子への応用を目的に、cSTO基底関数をN項のガウス型基底関数で展開する方法(cSTO-NG基底関数)を開発し、He原子の自動イオン化過程や水素分子の2電子励起状態自動イオン化状態の複素エネルギーの計算に応用し高精度な結果を得た。