著者
田中 孝夫 荻田 太 田巻 弘之 齊藤 和人
出版者
鹿屋体育大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

本研究の目的は、一流競泳選手のパフォーマンスを決定する要因の解明、およびその競技力を向上させる新たなトレーニング法を開発することであった。その結果、一流競泳選手のパフォーマンスは、生理(体力)的要因より、むしろ推進パワーや抵抗、推進効率といった力学(技術)的要因の方が深く関与していることが明らかとなった。また、本研究で開発された高強度スプリントトレーニング、およびpush-offトレーニングは、無酸素性エネルギー供給能力、および最大推進パワーを効果的に向上させ、泳成績の改善に有効であることが証明された。
著者
天滿 敬 佐治 英郎 塩見 雅志
出版者
独立行政法人国立循環器病研究センター
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究は、近年動脈硬化治療の分子標的として注目されてきているFatty Acid Binding Protein 4(FABP4)およびMatrix Metalloproteinase 12(MMP12)に着目し、選択的阻害剤構造を基盤とした低分子核医学イメージングプローブの開発を目的とした。トリアゾロピリミジン骨格を有する125I-TAP1は高いFABP4親和性を認めた一方で高い非特異的結合性を示した。脂溶性を低減した18F-FTAP1は高いFABP4親和性・選択性を示し非特異的集積を低減した。さらに18F-FTAP1はFABP4発現組織のインビボPETイメージングが可能であることを示した。
著者
藁谷 哲也 江口 誠一 竹村 貴人 羽田 麻美 石澤 良明 三輪 悟 宋 苑瑞 梶山 貴弘 比企 祐介 前田 拓志 林 実花 神戸 音々 佐藤 万理映 LOA Mao BORAVY Norng
出版者
日本大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究では,アンコール遺跡からアンコール・ワット,バンテアイ・クデイ,およびタ・プローム寺院を選定し,寺院を構成する砂岩材のクリープ変形と風化環境を有限要素解析や高密度の熱環境分析をもとに明らかにした。その結果,砂岩柱の基部に見られる凹みの形成には,従来から指摘されていた風化プロセスに加え,構造物の自重による応力集中が関与していることが判明した。また,寺院は日射による蓄熱のため高温化,乾燥化が進み,砂岩材に対する風化インパクトの増大が生じていることが推察された。アンコール遺跡保全のためには,日射を和らげる緑地の緩衝効果を見直すことが必要である。
著者
大場 康弘
出版者
北海道大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2012-08-31

本研究では,星間分子雲における化学進化で重要な役割を担う星間塵表面反応による,アミノ酸の重水素濃集に関する研究をおこなった。もっとも単純なアミノ酸であるグリシンを超高真空反応チャンバー内に設置した反応基板(12K)に蒸着し,重水素原子と反応させた。FTIRやNMRで反応生成物を分析したところ,グリシンの重水素置換体の生成が確認された。反応には高い活性化エネルギーが存在するため,極低温での重水素置換体生成には量子力学的なトンネル効果が重要だと考えられる。本研究では,アミノ酸が星間分子雲における極低温表面原子反応によって重水素濃集可能であることを示した。
著者
田原 大輔 杉本 亮 富永 修 谷口 真人
出版者
福井県立大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2012-04-01

小浜湾への地下水湧出量を222Rn・塩分の収支モデルから推定したところ、地下水は、全淡水流入量の4~44%を占めており、河川流量の低下する夏季にその割合が高くなる傾向にあった。また、地下水から供給される溶存無機態の窒素、リン、ケイ素は、全陸水由来の栄養塩輸送量の平均で39%、58%、37%を占めていた。特に小浜湾の一次生産はリン制限下にあるため、地下水によるリン供給は小浜湾の生物生産において重要な役割を果たしていると考えられた。
著者
髙橋 麻衣子 (2013-2015) 高橋 麻衣子 (2012)
出版者
東京女子大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究の大きな目的は,児童・生徒の学習効率を最大限に引き上げる視聴覚メディアの在り方についての基礎的知見を提供することである。今年度も昨年度に引き続き,文字情報だけでなく音声や表情といった付加的な情報を同時に提示できる視聴覚メディアの在り方を提案すべく2つの実証研究を行なった。研究1では,視覚的な文字情報にそれを読み上げた音声情報を付与することが読解行動と理解成績に与える影響を検討した。36名の成人の参加者に,視覚的な情報のみ提示する黙読条件,音声情報を付与する音読条件と読み聞かせ条件の3つの条件下で説明的文章を読ませ,読解中の眼球運動と読解成績を測定した。その結果,黙読条件の読解成績が最も高いことが示され,成人の読み手にとっては文字情報に付与された音声情報が理解を妨げる可能性があることが指摘された。さらに各条件での読解活動中の眼球運動を分析したところ,文章読解中の視線の停留回数や停留時間は黙読条件で最も少なく,音読条件で最も多いこと,読み聞かせ条件の眼球運動は黙読条件のものに類似していることが示された。これらの結果は,成人の読み手は文字に音声情報が付与されていても,視覚的な文字情報をメインに処理して読解を行なっていることを示唆している。読みに熟達すると読み上げ音声が邪魔になる可能性があり,電子教科書の音声読み上げ機能は使用者の読解能力によって調整できるようにする必要があることが提案できた。研究2では,文字の音声情報だけでなくそれを読み上げる話者の表情動画を付与した場合,発話内容の理解にどのような影響があるのかを検討した。36名の成人を対象とした実験の結果,発話者の声の感情よりも表情そのものが受け手の理解に寄与することが示され,インターネットを介した会議などでの話者の顔の表示がコミュニケーションを円滑にする可能性が示された。
著者
梶原 行夫
出版者
広島大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

我々は、「速い音速測定」と呼ぶ新たな実験手法が、液体中の「ゆらぎ」=エントロピーの直接観測として利用できること、また、水の液体-液体相転移現象の理解を深めるために非常に有効であること、を近年提言し、この手法による独自の液体研究を行っている。本研究では①水-アルコール系、②水と類似の熱力学異常が観測されているテルル系、を主な対象として、この手法の有効性を立証すると共に、それぞれの系のゆらぎの状態を議論した。
著者
田上 英一郎 BHASKAR P. V. BHASKER P.V.
出版者
名古屋大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2006

海水中の有機物の起源や動態は、懸濁態有機物や溶存態有機物毎に、それぞれ個別的に炭素安定同位体やバイオマーカーを用いて研究されてきた。本研究では、同一海水中に含まれる懸濁態有機物や溶存態有機物について、陸源性及び海洋性有機物を分子レベルで明らかにし、伊勢湾-黒潮域を対象に、それらの動態を明らかにすることを目的とする。具体的には、濾紙上に捕集できる懸濁態有機物と共に、脱塩・濃縮が可能な溶存有機物高分子画分について、陸起源性高分子有機物、海洋性有機物を生産する動物、植物、細菌に由来する分子を区別しつつ、それらの動態を解明する。伊勢湾は、本州中央部に位置する閉鎖性内湾で、広大な集水域を有する木曽三川を中心に陸起源性有機物が負荷される一方、富栄養化による高い基礎生産による海起源性有機物の負荷も大きい。このような伊勢湾を南下すれば、そこには世界の海洋環境のなかで、最も貧栄養海域である黒潮海域が存在している。本研究が対象とする海域は、上記研究目的達成には理想的モデル海域と言える。9月23日〜25日、三重大学所属勢水丸の航海において、伊勢湾奥から伊勢湾口外部大王崎にいたる測線で、一般海洋観測を行い、淡水-海水混合状態や生物現存量、等を把握すると同時に懸濁態及び溶存態有機物試料を連続的に採集した。得られた試料については、炭水化物、アミノ酸・タンパク質及び蛍光・吸光物質等の全量分析を行った。
著者
堺 正太朗
出版者
北海道大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2012

土星内部磁気圏におけるダスト-プラズマ相互作用について, 過去の観測結果に基づきイオン速度が共回転速度から遅れる原因が調べられ. イオン速度はダスト密度が大きい, あるいはダスト層の厚さが厚い時に減少することが明らかとなった. また磁気圏イオン速度は電離圏電気伝導度にも強く依存することが明らかとなった. そこで本研究では電離圏電気伝導度を求めるために電離圏プラズマ密度, 速度, 温度を数値計算によって求めた. プラズマ密度は高度1200km付近で最大値10^<10>m^<-3>となった. 速度は高度10000km以下でプロトンのような軽いイオンは上向きの速度, 重いイオンは下向きの速度を持った. 特に上向き高速流イオンは土星系において初めて提案した結果である. これは遠心力及び分極電場による加速と重力によるバランスによるものと考えられる. 温度は従来の結果から極端に高くなった. 高度2000㎞付近で2000K, 高度10000kmで20000Kとなった. 低高度ではジュール加熱が, 高高度では磁気圏からの熱流が温度上昇に寄与していることが明らかとなった. 電離圏電気伝導度はローカルタイム依存性を示した. 昼間, 伝導度は最大となり明け方に最小となる. これは磁気圏イオン速度のローカルタイム依存性を示唆している. 以上の結果から, 土星内部磁気圏は強く電離圏と結合していることが分かった. これらの成果はまもなく論文投稿予定である.カッシーニ・ラングミュアプローブのデータ解析を行い, エンセラダスプリュームのプラズマ特性を調べた. 土星内部磁気圏ではプリュームが重要なパラメターである. 電子密度とイオン密度の比はエンセラダスに近い領域で0.01, 離れると0.4となった. これはプリューム内に大量の荷電ダストが存在していることに一致している. これらの結果も論文投稿準備中である.
著者
内藤 久子
出版者
鳥取大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

本研究は、ハプスブルク帝国支配下のチェコ諸領邦において展開された宮廷社会を背景に、後期ルネサンスからバロック期に至る「チェコ音楽」の発展の諸相を、政治史・社会史・文化史の視座から読み解き、更に同地域における「人文主義」の開花について深く洞察することにより、同時代の「中欧文化」の歴史の一端を明らかにするものである。その成果は、同時期の「チェコ音楽」を、近現代の「チェコ音楽」創成への礎石と位置づけ、ヨーロッパ文化史の中でその卓越した発展の様態を解明するものとなった。
著者
弓削 繁
出版者
岐阜大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

本研究は、拙著『六代勝事記の成立と展開』(平成15年、風間書房刊)の成果を承け、承久の乱後に明確になってくる、イデアとしての帝王と現実の天皇とを峻別する二元的な王権思想について、その変容と展開の姿を中世文学史の中に見定めようとするものであった。まず、乱前の思想状況を捕捉するために、改めて『愚管抄』について検討した。その結果、『愚管抄』は国家の基本形態を宗廟神の意思によるものとして、「文武兼行ノ摂録」の出現を歴史の道理と説く原理論的な著作であることを確認することができた。一方、乱後に成った『六代勝事記』は、儒教的な徳治主義の立場から政治の善悪による帝位の有限性を説く鑑戒の書であるが、中に幕府側を正当化する政子の神功皇后再誕説が含まれているのが注意される。すなわち、これを自己の存在証明として利用したのが『吾妻鏡』であり、この話に天照大神の政子への示現(の夢想)を重ね合わせることで、<政権神話>を作り上げていく『吾妻鏡』の構想を明らかにすることが出来た。次に『神皇正統記』や『梅松論』になると、国王を相対化するものとして「天道」が措定されてくるが、その思想形成過程の詳細については続考を期したい。この外、『徒然草』第226段の背景に承久の乱の記憶が存することを明らかにし、また新資料として『五代帝王物語』の高松宮家本と、『人幡宮愚童訓』の岩国徴古館本を略解を付して紹介した。なお、当初の計画では軍記物語や説話集へも視野を広げる予定であったが、問題が多岐にわたることもあり、多くを今後の考察に委ねざるを得なかった。
著者
中井 善一 塩澤 大輝 田中 拓
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

本課題では,高輝度放射光のX線回折を用いたコンピュータトモグラフィ(DCT)法を開発し,アルミニウム合金およびステンレス鋼多結晶体の結晶粒の形状を三次元的に同定した.その結果,SPring-8の偏向電磁石を利用した汎用のビームラインでも,結晶粒の形状および位置を三次元的に同定することができた.各結晶粒の塑性ひずみを同定するため,結晶方位の拡がりを測定した.この結晶粒方位の拡がりは,転位構造と関連した結晶粒のモザイク性と関連しており,塑性ひずみの増加とともに結晶方位の拡がりが増加した.また,疲労過程中の損傷の蓄積もDCTによって測定することができた.
著者
佐藤 容子
出版者
東京農工大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

アイルランドの詩人・劇作家・神秘家であるウィリアム・バトラー・イェイツの夢幻劇における表象構造を以下の観点から多角的に分析した。すなわちイェイツが体系的に用いる頭韻によるサウンド・シンボリズム、アイルランドのフォークロアと溶け合ったスピリチュアリズムの要素、さらに日本の能との接触という観点である。劇作としては『鷹の泉』、『骨の夢』、『煉獄』を取り上げ、能『景清』、『熊坂』、『錦木』、『求塚』との関連性を明らかにした。
著者
藤本 康雄 池上 忠治 日向 進 山口 重之 西田 雅嗣 竹内 次男
出版者
京都工芸繊維大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1993

研究分担者池上は本務(神戸大学文学部長)の都合上、先発隊としてフランスのパリとオーストリアのウィーンに赴き、関連予備調査と準備折衝にあたった。パリでは国立図書館、クリュニ-中世美術館、ル-ヴル美術館等、ウィーンでは歴史美術館、美術アカデミー美術館等を歴訪、ヴィラール・ド・オヌクールの画帖関連の絵画、彫刻を中心に調査を行った。その結果を後着の本隊に連絡報告の後、帰国した。調査本隊は8月末にパリに到着、レンタカ-(ルノ-・エスパース)を調達し、ヴィラールの修業地ヴォ-セル修道院と、オヌクール・シュル・エスコ-にヴィラール・ド・オヌクール協会本部を訪問することから調査活動を開始した。協会役員と資料・情報の交換を行い、ヴィラールの画帖に描かれた水車利用自動鋸装置の模型等を調査、藤本は協会員に推挙された。ランス大聖堂調査に際しては、1984年学術調査時に採取したゴシック建築家ユ-・リベルジェの墓石拓本の寄贈を果たした。ドイツではニュルンベルク国立博物館及びウルム市立古文書館で、中世羊皮紙図面多数を閲覧、一部実寸写真複写を入手した。チェコではプラハにP.パルラ-作の大聖堂を調査し、文化財保護局を訪問、ヴィジ・ブロッド修道院に、ヴィラールの画帖所載図面と類似のリブ・ヴォ-ルト架構建物を調査した。スロバキアのコシ-ツェではヴィラールが関与したと伝えられる聖エリザベート教会堂の実測を行った。ハンガリーではブダペストの文化財保護局と国立博物館でピリシュ修道院遺構の情報を得、その調査を実施、画帖所載分と類似の床タイル拓本等を得た。次いでオーストリアのウィーンに入り、美術アカデミー古文書館で建築古図面の実測調査を行い、一部複製を入手したほか、ザンクト・ステファン教会堂の建築家像を調査した。スイスではザンクト・ガレン修道院平面原図の調査を行ったほか、ロ-ザンヌでヴィラールの描いた大聖堂南袖廊バラ窓修理現場において実測調査の機会を得た。再度フランスに入り、ポアチエでは大聖堂聖歌隊席木彫に木の葉模様図案を見出し、またスケアの実測を行った。シャルトルでは大聖堂床舗石の迷路について、部分に留まったが拓本を採りを果たし得た。パリに戻りクリュニ-中世博物館に館長A.E.ブランデンブール氏を訪問、同氏の口ききで国立図書館秘蔵のヴィラールの画帖原本閲覧の念願が遂に叶った。写真撮影は許されなかったが、従来の複写本との比較で原図実寸を確認した。また一部の図柄に、何時の時期か不明であるが薄青色の着色を認め得た。一方、画帖研究家として知られるR.ベッシュマン氏と会い、意見・情報交換を行った。画帖所載投石機の模型復原と投擲実験は注目すべきものがあった。われわれのヴィラール・ド・オヌクール協会訪問と、同会に寄贈した藤本による画帖研究書は、直ちに会報に記事が掲載され11月例会に招待を受けるなど、大きな反響を呼ぶことになった。フランスほか6ヵ国にわたり旅程約12,000キロ、20余都市で訪問・調査した機関・建物は多数に及び、知遇、援助を得た人は数知れない。手続きや時間的な制約もあった中で、写真撮影も相当数をこなした。収集資料等を含め、その成果は多大であったといえる。現在、図面・写真・スライド等を鋭意整理中である。研究担当者藤本が平成6年3月末を以て本務校を退官することになるので、拓本資料はすべて、美術工芸資料館に寄贈し、分担者竹内のもとで整理保管することとした。その他の資料は、分担者日向、西田らの研究室に引き継ぎ、保管することになった。分担者西田は調査成果の一部を研究報告に導入しており、担当者も発表準備を進めているところである。ヴィラール・ド・オヌクール協会からは引き続き、雑誌記事のための照会が来ており、別途関係者からも藤本研究についての書信が寄せられるなど、今後の国際的研究へ進展が見込まれるに至ったことも一方の大きな成果であるといえよう。今回の現地調査により、ヴィラール・ド・オヌクールがハンガリーに赴いて旅を重ねた事績に、ある程度の裏づけを得た。また画帖に盛られたスケッチに類似の画題を多数見出し得たことや、画帖におけるローマ尺・カロリング尺の尺度用法について、われわれの仮説を実証し得たかと見られることを以て大きな成果と見たい。
著者
松下 栄子
出版者
岐阜大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

ペロフスカイト型酸化物は酸素八面体の積層構造を基本とし、関連構造をもつ一連の酸化物には強誘電体を初め、量子常誘電体から高温超伝導体までさまざまな物質が存在する。その特異な電気伝導度や物性は、応用に直接繋がる点でも物理的解明が必要とされる。本研究では、物質に内在する量子効果に注目し、構造特有のフォノンを見極め、種々のフォノンの媒介による相転移の解析理論を展開した。以下に、4つの研究項目別に述べる。1.クリーンな燃料電池の機構であるプロトン伝導に関しては、リチウム伝導との総合的な観点から、酸素八面体の積層構造(頂点接触型、辺接触型)と動くイオン(H^+,Li^+)の量子効果の差異により統一的解釈をし、国際会議で発表した(2004.8,2006.4)。2.量子常誘電性に関しては、srTiO_3の^<16>O→^<18>O同位体効果による常誘電-強誘電性転移の微視的理論を展開した。TOフォノンモードの役割を考慮し、STO18の圧力効果やSTO16の一軸性応力効果とも統合した理論にして国際会議で発表した(2006.5)が、拡張理論は次のIEEE国際会議で発表予定である(2007.5)。3.リラクサー特性については非鉛系物質の探索が急務で、小型大容量コンデンサーに即応用可のため、発現機構やリラクサー現象の特定、グラスとの相異等を理論的に明確にした。x線散漫散乱(静的特性)とNMR-NQRスペクトル(動的特性)の微視的理論開発に成功し、リラクサーの定義やグラスとの判別条件を突き止めた(論文発表済)。さらにペロフスカイト酸化物の逐次相転移を一般論で扱い、モルフォトロピック濃度相境界との関連を解明した成果は学会発表済(2006.5)で、全貌を纏めた論文は印刷中である。4.高温超伝導に関しては、角度分解光電子分光(ARPES)実験によるLOフォノンの示唆を考慮するため、実空間表示を用いたBCS拡張式を導出し、ペロフスカイト関連構造別に異なるTcの^<16>O→^<18>O同位体効果を説明し、国際会議で発表した(2005,8)。Tcの式における光学フォノンの役割を明確にし、クーパー対発生の機構をほぼ絞り込むことに成功し、次の低温物理国際会議(2008.8)で発表する素地を固めた。
著者
荒木 和秋 小糸 健太郎 清水池 義冶 井上 誠司 杉村 泰彦 淡路 和則 吉岡 徹 森 久綱
出版者
酪農学園大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

細断型梱包被覆機の登場は、日本の畜産業および酪農における自給飼料の生産および流通に大変革をもたらしている。本調査研究では以下のことが明らかになった。第一に、牧草や青刈りとうもろこしのサイレージおよび食品残渣を圧縮梱包することで長期保存を可能とする調製革新をもたらしている。第二に、圧縮梱包された自給飼料やTMRの広域流通を可能とする流通革新をもたらしている。第三に岩手県において青刈りとうもろこしの収穫、調製、給与の各作業の効率化による飼料構造の大変革をもたらしている。このことから細断型ロールベーラは日本畜産の競争力強化と飼料自給率の向上の有効な手段となりうることを明らかにした。
著者
北 寿郎
出版者
同志社大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

本研究は、激しいビジネス環境にさらされている産業において、迅速且つ適切に事業撤退する戦略の枠組みを構築することを目的とするものある。得られた結果をまとめると以下のようになる。ほとんどの産業において、撤退事例は、事業継続による赤字拡大を防ぐ目的のものがほとんどであり、Proactiveな撤退はほとんど見られなかった。しかし、その中でも市場における企業の成長軸からのかい離を常にチェックする仕組みを有したり、過去の撤退事例を巧みに内部資源化しそれを社内で共有するとともに、オープンイノベーションを推進している企業においては、戦略的撤退と呼んでもよい事例が見られた。
著者
田中 秀幸
出版者
京都大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

モデルの集合を与えるような多入力多出力システムの同定のための基礎として,新たな実現理論を提案した.また,これまでにある実現理論(確率実現等)を進め,フィードバックもとでのシステム同定(閉ループ同定)や非線形システムの同定のためのアルゴリズムを導出した.
著者
津江 光洋 中谷 辰爾
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

極超音速飛行を行うためのエンジンとして水素を燃料とした予冷ターボジェットがある.離陸からマッハ6に至る幅広い作動レンジで環境負荷物質の排出の少なく高効率のエンジンを実現するためには燃焼現象の理解が必要である.本研究では,予冷ターボジェットアフターバーナーにおける燃焼状態を把握するため,モデル燃焼器を用いた実験を実施した.また,同時に詳細反応モデルを使用した数値流体解析も実施した.高エンタルピ―風洞内の水素噴射において,高効率の燃焼形態の把握と窒素酸化物生成メカニズムを明らかにした.また,粒子添加二色法による非接触の水素火炎温度測定手法を提案し,有効性を示した.