著者
小川 容子 嶋田 由美 杉江 淑子 林 睦 村尾 忠廣
出版者
鳥取大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

歴史的研究, 調査研究, 実験的研究の3分野に分かれて音楽科に求められる「学力」について検討し, 音楽学力に関する幅広い議論を積み上げるための基礎づくりをおこなった。歴史的研究では,(1) 戦後の文部省研究指定校や研究実験校, 調査協力校に関する報告書・資料集の収集,(2) 調査対象地域及び対象県の選定とフィールドワークを主とした実態把握を中心に研究を進めた。調査研究では,(1) 全国の元音楽教師, 現役音楽教師を対象とした質問紙調査の実施,(2) 調査対象者並びに対象グループの選定とインタビューを主とした聞き取り調査の実施を中心に研究を進めた。実験的研究では,(1) 音楽能力調査及び学力検査の追試と分析,(2) 国際比較に基づく児童・生徒の音楽学力の実態把握,(3) 新音楽学力調査問題の開発作成をおこなった。
著者
元兼 正浩 波多江 俊介 梶原 健二 梁 鎬錫 畑中 大路 金子 研太 藤原 直子 佐藤 晋平
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

本研究では教育行政における費用効果分析の可能性を試論的に追究した。特に大韓民国で40年に亘って実施されている校長資格研修に注目し、その費用と効果の関係を検証した。現職の教頭(教監)に対し、360時間、一人あたり約30万円のコストをかけて実施されている校長資格研修に実際に2ヵ月半、参与観察し、受講者や関係者にインタビューを研修後まで追跡し実施した。校長公募人事の導入や、時間数半減などの政策変更によってこの3年間でもその位置づけは大きく変質し、受講者の意識にも変化がみられるが、制度的基盤によりその外部効果性は高く、そのことが費用対効果の高さを維持できているものと結論づけられる。
著者
源栄 正人 大野 晋 柴山 明寛 三辻 和弥 佐藤 健
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究では、次世代地域防災システムとして構造ヘルスモニタリング機能を有する地域版早期地震警報システムの開発とその利活用の検討を行った。迫り来る宮城県沖地震に対する100万都市仙台の地震被害低減を図るために、三陸沿岸の2観測点、伝播経路にあたる2つの観測点、および仙台の公共建築物に設置された地震計による観測波形情報をIP網により東北大学のサーバにリアルタイム伝送するシステムを構築した。また、前線波形情報を用いた高精度地震動予測を可能にする防災システムについて検討した。利活用の一つとして開発システムを利用した学校での防災教育を行った。開発したシステムは2011年東北地方太平洋沖地震を経験した。得られた地震観測記録は、地震前後の建物の振動特性の変化など構造ヘルスモニタリング研究に貢献した。
著者
西浦 敬信 南條 浩輝 森勢 将雅 中山 雅人
出版者
立命館大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

危機的状況を的確に検知して周囲に報知するシステムは,安全安心な社会基盤の構築には必要不可欠である.特に人は危機的状況下では叫ぶ習性があることから,本研究では叫び声や異常音などの危機情報を検知し周囲に報知する危機検知・警報システムの基盤形成を試みた.具体的には(1)音環境における叫び声や異常音など危機情報の検知(2)検知した危機情報の構造化と理解(3)危機情報を報知するための警報音の設計(4)上記を統合した危機情報の検知・警報システムの構築に対して研究を実施し,その有効性を確認した.
著者
須川 修身
出版者
東京理科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2000

消防設備安全センターの「音声警報のあり方連絡会」が既に警報用シグナルの作成条件として下記の6条件を提示しており、これに基づいて女声による予報、男声による警報音が作成され、実際に一部の高齢者施設では火災を報知する音声として使用されている。【警報用シグナルの作成条件】(1)注意喚起を引く感じであること。(2)音のとおりが良いこと。(3)適度に緊張する感じであること。(4)あまり不安な音としてせき立てないこと。(5)耳障りな音でないこと。(6)ありふれた音でないこと。これらの条件を考慮し、これに高齢在館者に避難の呼びかけを行う「音」を組み合わせて音-音声-音を聞かせて、その認識の良否を直接面談によって5段階方式で評価した。また、呼びかけの「音」についても30種の中から予備的な評価で選別し、火災など異常状態を報知するにふさわしいものを選び、上記の音声との組み合わせを行った。多くの施設ではナースの音声は女声であるため、異常事態になったても親しみのもてる、耳に馴染んだ女声で呼びかけを行ってもらいたいという評価があると同時に、異常時であるとの重大さを認知するには普段とは異なる男声が望ましいとも評価も同様にあり、いずれも報知内容が明確で火災場所がイメージしやすい伝え方で伝達する事が肝要である。異常時を知らせる音質としては、火災のイメージと結びつきやすいサイレンなどの認知が高いが、これは今まで受けた訓練や日常的・経験的な「すり込み」に依るためである。火災を知らせる音(あるいは音声)は、すり込みになっている事が決定的要因である。このため「音(報知音)」を小中学の頃から消防訓練とともに聞かせ、強固な「すり込み」を行って高齢化した場合においてもこれが生かせるようにしておく必要があることが判った。
著者
菅野 素子
出版者
鶴見大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

本研究課題は「イングランドの状況」という時代状況の言説と小説との関係をオイルショック後の1975年から英国が福祉国家としての経済社会構造の大変革を経験した1990年までの15年間にわたって研究したものである。「イングランドの状況」は17世紀後半に始まる産業化の弊害として生ずるネイションの分断に対する懸念の表明だが、現在では一般的にも特殊な意味でも使用される。そこで当該研究期間に発行された新聞雑誌などジャーナリズムにおける一般的な用法および同期間に出版された小説を調査の対象とし、その結果を比較検証した上で関連づけた。こうした再検討は当該期間における「イングランドの状況小説」の再構築につながった。
著者
吉野 由起
出版者
三重大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本課題はロマン派期文芸における妖精表象の実態をスコットおよびホッグの作品群に焦点をあて検証した。両者による土着の口承伝統を巡る論考や、詩や小説での妖精の描出例は数多く多岐に亘り、一見懐古的な様相の背後に隠された先鋭的な近代性、独創性と実験性に溢れ、同時代英国文壇で稀有な存在感を放ったと考えられる。これらの例の検証の結果、両者の妖精譚は同時代現実世界に向けた眼差しの体現であり、啓蒙主義の開花とロマン派期文芸の独特の展開をみたスコットランドにおける両潮流のせめぎ合いの顕現であり、口承伝統と古典叙事詩の借用を折衷した神話創造の試みで、両者の文学性に密接に関連するという仮説の裏付けを得た。
著者
桂 紹隆 稲見 正浩 小川 英世
出版者
広島大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1993

本研究の目的は、ディグナーガの主著『集量論自注』(Pramanasamuccaya-vrtti)の第5章「アポーハ論」の詳細な和訳研究にあった。そのため、上記の研究組織に、原田和宗・本田義央の両氏をくわえて、同書の読書会を定期的に開催した。その際、従来十分に利用されてきたとは言いがたいジネーンドラブディの『復注』(Tika)の重要性に着目し、その和訳研究にも並行して取り組んできた。その結果、次の様な重要な方法論的問題を自覚するようになった。すなわち、大変不完全な2種のチベット語訳しか存在しない『自注』の解釈にあたっては、従来の研究者が試みてきたように、出来るかぎりのサンスクリット断片テキストを収集して、原型としてのサンスクリット・テキストを想定した上で理解するのが最も有効な方法である。我々の研究グループにおいても、既に原田氏によって、ジャンブヴィジャヤ師の梵文還元の試みに基づく、貴重な還元サンスクリット・テキストが完成されている。また、それに基づく和訳も原田氏のものと、研究代表取者桂のものが、準備されつつある。いずれ近い将来に公刊の機会を得たいと願っている。他方、比較的良好なチベット訳が1本存在する『復注』の場合は、必ずしも『自注』と同じ方法論が適用できないことが判明した。勿論、ジャンブヴィジャヤ師は、常に還梵テキストの提示を試み、成功してきたのであるが、以下の我々の和訳研究が示唆するように、『量評釈自注』(Pramanavarttika-Svavrtti)などの引用を除いて、サンスクリット断片が極端に少ない『復注』の場合還梵テキストの提示は必ずしも容易ではないし、また、あまり実りの多いものとは言えない。むしろ、かつてシュタイケルナ-が提案した、断片テキストの階層的処理というプラマーナ・テキスト研究の方法論を積極的に適用すべきである。
著者
後藤 友嗣
出版者
国立天文台
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2008

本研究の目的は宇宙最遠方のQSOを発見し、これを用いて宇宙最電離を解明することにある。本年度はUKIDSS近赤外線サーベイによって新しく観測されたデータを用いてQSO候補天体の選択を行った。これら候補天体を同定するため、主としてハワイ大学の8-10mの望遠鏡を用いて分光観測を行ったが新しいQSOは発見できなかった。UKIDSSサーベイの進行状況が全計画の1/2程度まで進んでおり、QSOの個数密度の進化をz<6から外挿すると、この領域でのQSO発見の期待値は~4個程度である。従ってこの領域のQSOの発見個数が0であることは、QSOの個数密度がz>7において大きく減少していることを示している。これはQSOの進化史にとって劇的な変化であり、QSOの進化理論に制限をつけることができる重要な結果である。現在はこの結果を最終確認すべく、UKIDSSサーベイの残り1/2の領域について鋭意探査を継続中である。QSO探査と平行して既知の遠方QSOに関する調査も行った。昨年度我々がその周囲に取り巻くホスト銀河およびライマンα輝線星雲を発見したz=6.4におけるQSOを10m望遠鏡を用いて詳細分光観測を行った。この分光データを用いて、QSOを背景光として利用することにより5.615<z<6.365における宇宙の電離度の調査を行った。QSOを背景光とした直説的な方法による宇宙の電離度の探査がz=6.365の遠方にまで遡って行われたのはこの研究が初めてである。この結果5.915<z<6.365の間において、ガンピーターソンの谷とよばれる全くQSOの紫外光が検出されない暗黒領域が見つかった。これは200Mpcという前例をみない広大な領域に及んでおり、5.615<z<6.365の宇宙は再電離が完了しておらず、宇宙がより中性であった暗黒時代にさしかかっていると考えて矛盾しない。
著者
須曽野 仁志 下村 勉
出版者
三重大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

学習者が自分自身へ宛てた手紙をデジタルストーリーテリング(digital storytelling、略称「DST」)で表現する授業設計及び実践にとり組んだ。具体的に、大学生を対象とした実践は三重大学教育学部授業で、中学生対象の実践は三重県志摩市立浜島中学校で行われた。学習者が授業でDST制作にとり組んだ感想を質的分析し、授業デザインのためのコメントをカテゴリー化した。さらに、授業実践を通じて、手紙形式のDSTは人に伝える言語活動を充実するために有効であり、「自分への手紙」をテーマに設定することが学習者自身の生き方を内省することにつながることが明らかになった。
著者
井上 治 小松 久男 栗林 均 宇野 伸浩 藤代 節 柳澤 明
出版者
島根県立大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

本研究課題は、北方ならびに中央ユーラシア地域の複雑で多様な文化を、歴史学・言語学・文学・人類学などの手法を有機的に組み合わせ、時代・地域・学問分野・方法論などの研究上の境界を超えて考究することを目指した。基本視点は異文化受容と文化変容の過程に設定し、文献資料・口頭伝承などの資料の分析を通じて、在来要素と外来要素の存在、外来要素の波及・流入過程、外来要素の流入による在来要素の変容と定着過程、在来要素の干渉による外来要素の変容と定着過程、それらの中間に存在する諸媒体などに着目して、受容・変容・定着という文化の動態を把握すること、各地域における異文化受容と文化変容のモデル化の可能性を追求すること、上記の動態あるいはモデルの相互比較により地域間の異同とそれを生んだ歴史的・社会的諸要因を究明すること、各地域における「伝統」の再構築とアイデンティティやエスニシティのダイナミズムの実態を明らかにすること、これらのいずかの側面にアプローチし、以下のような研究が行われた。(1)清朝で編纂された5言語対訳辞典『御製五体清文鑑』の研究上の問題点、(2)イランのモンゴル人政権における婚姻関係、(3)南方に移住したバルガ人たちの社会・文化変容プロセス、(4)シベリアのチュルク諸語の言語状況の動態、(5)ポスト社会主義時代のトゥバの文化的産物と文化実践の変容過程、(6)中央ユーラシアのテュルク系叙事詩の主人公側意識の多様性、(7)元における高麗在来王朝体制の保全のあり方、(8)古代ボン教の変容とその継続性、(9)モンゴル英雄叙事詩の年齢表現と「七冲」という易学の概念との関係、(10)19〜20世紀前半のモンゴルの祖先崇拝儀礼における伝統的価値観と仏教的価値観の整合過程のモデル化。また、島根県立大学服部文庫所蔵のモンゴル語、テュルク諸語文献の目録(暫定版)を完成させた。
著者
川尻 洋平
出版者
京都大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2010

今年度前半は、イタリア、ローマ大学のTorella教授の指導の下、研究を進めた。ローマ大学では、ウトパラデーヴァやアビナヴァグプタと同時代のヴィシュヌ教徒ヴァーマナダッタの『サンヴィットプラカーシャ』の授業に参加した他、学生たちとアビナヴァグプタの『パラマールタサーラ』を読む機会を得た。アビナヴァグプタ著『主宰神の再認識に関する反省的考察』認識章第五日課および第六日課の読解は終えたが、未出版注釈『主宰神の再認識に関する反省的考察注』については、写本の欠落等により、写本校訂および読解困難な箇所が残っている。また、部分的に現存するウトパラデーヴァ著『主宰神の再認識詳注』の断片を写本のマージンから回収している。これらの難読箇所の読解については、Acharya教授の協力を仰いだ。『主宰神の再認識詳注』の断片については帰国後、西日本インド学仏教学会学術大会およびJapan-Austria International Symposium on Transmission and Tradidonにおいて発表した。さらにウトパラデーヴァとアビナヴァグプタの関係についての発表をインド思想史学会で行った。これらの発表内容については、プロシーディングおよびJoumal of Indological Studiesに投稿予定である。またシヴァ教研究の世界的権威であるSanderson教授の授業にも参加する機会を得て、最先端のシヴァ教研究について新しい知見を得るとともに、『パラートリーシカー』の写本伝承などの情報を交換することが出来た。
著者
山田 昌孝 長岡 敏彦
出版者
名古屋商科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011-04-28

構成概念はその意味内容から傾性概念と理論的構成概念の二つに分類される。前者は観察された行動のラベルであり、後者は観察された行動の原因に関する情報(剰余意味)を含んだラベルである。消費者革新性もこの枠組みの範疇に入る。イノベーション採用行動の予測精度の向上を図るには、「理論‐傾性中間概念」を導入し、その測定スケールの開発の必要性を提唱した。本研究は、スケール開発に加えてイノベーション情報の乏しい状況にも対応できるよう「感度尺度」と「心の強い揺れ」という要因を加えてイノベーション採用意思決定過程の再構築を行った。共分散構造分析を用い、3つの採用事例を取り上げ、採用時期予測の向上に成功した。
著者
川本 徹
出版者
京都大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2009

本研究はジョン・フォードの監督作品を中心に、新旧のアメリカ映画を題材として20世紀のアメリカ文化社会のジェンダー表象を多面的、複合的に分析するものである。最終年度となる本年度は、昨年度までの研究成果を整理したうえで、それをより広範な問題領域に結び付けるための実験的、応用的考察をおこなった。前年度にひときわ重要なテーマとして再発見され、本研究の主要な考察課題として再規定されたのが、自然風景、ナショナリズム、ジェンダーという三項の複雑な相関関係である。本年度はここにテクノロジーの一項を付け加え、アメリカのジャンル映画の内部にこの四項の精妙なせめぎ合いが潜んでいることを、フォードの監督作品をはじめとする具体的なテクスト分析によって浮き彫りにした。またその過程においては、考察対象の選択範囲も20世紀中葉を中心としたものから、20世紀全体、さらには21世紀を射程に入れたものへと大幅に拡大した。より具体的な研究内容は以下の二点にまとめられる。1.ジョン・フォードのモニュメント・バレー表象(その内実については昨年度、『映画研究』掲載論文のなかで詳述した)を念頭に置きつつ、フォード以後のアメリカ映画作家たちのモニュメント・バレー表象(あるはそれに類するアメリカ西部の荒野表象)を比較考察した。2.以上の研究を遂行するなかで、アメリカ映画における自然とテクノロジーの関係を、後者にも力点を置いて考察する必要性が生じた。そこでフォードの監督作品を手がかりに、従前より多くの文化学者の関心を引きながらも、いまだ体系的な分析がなされてこなかった西部劇における列車の表象を、映画史初期から21世紀まで幅広く概観した。研究成果の一部はすでに公表が決定しているが、残りの部分についても早期に公表できるよう鋭意準備を進めている。
著者
白井 睦訓 三浦 公志郎 東 慶直
出版者
山口大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2004

肺炎クラミジアの冠状動脈硬化部における感染状況を調べたところ、軽度、高度狭心症計50人の冠動脈硬化部の平滑筋細胞組織の100%で動脈壁平滑筋細胞に肺炎クラミジアの高密度感染を検出し、局所炎症の惹起に関与していた。肺炎クラミジアの約100遺伝子は真核生物の遺伝子に類似する。これら主要な病原因子と相互作用するヒト大動脈遺伝子を2ハイブリッド法を用いてcDNAライブラリーから検出した。肺炎クラミジアset遺伝子(ヒトクロマチン関連因子ホモローグ)やmpg1遺伝子は肺炎クラミジア自身か宿主のクロマチン構造に関連すると考えられ、ある種の細胞外マトリックス蛋白質(大動脈壁平滑筋層で弾性を制御している細胞外マトリックスタンパクファミリーフィブリンのEGF様Ca結合ドメイが相互作用ドメインであった)との相互作用が同定された(クラミジア感染患部で、大動脈弾性繊維の断裂病変形成に関与?)。この肺炎クラミジアのキネシン/ミオシン類似因子であるKhc蛋白質や封入体膜構成蛋白質であるIncA2をベイトにすると、それぞれミトコンドリア膜に局在する蛋白質ATP6,NADH dehydrogenaseとamine oxidaseが同定された(大動脈平滑筋細胞の増殖や脱分化制御に関与?)。この封入体膜遺伝子をHeLa細胞に導入・発現させたところ、発現タンパク質の局在はミトコンドリアに一致しており同膜電位を変化させて透過性に関与することがわかった。同遺伝子導入細胞はアポトーシスを起こしやすいことを解明した。これら相互作用因子の結合ドメインも解明した。それらの相互作用による宿主細胞変化をさらに解析中である。その他約80の全く新しい肺炎クラミジア菌?宿主間タンパク相互作用を検出している。50種程度の薬物スクリーニングの結果、アスピリンなど数種の薬物が肺炎クラミジア感染排除に働くことも判明した。肺炎クラミジア近縁種のクラミジア・フェリスの全ゲノム構造を決定したので両菌遺伝子の比較解析により動脈硬化関連因子探索の手がかりとなることが期待される。ヒト正常大動脈由来平滑筋細胞とHEp2細胞(対照)それぞれに肺炎クラミジア、クラミジア・フェリス菌を感染させて、ヒト3万遺伝子発現をマイクロアレイ解析して動脈硬化・心筋梗塞関連遺伝子データベースと比較することにより、肺炎クラミジア感染大動脈由来平滑筋にユニークな動脈硬化症関連遺伝子16コと新たな動脈硬化関連候補遺伝子合計224個を検出した)。
著者
太幡 英亮
出版者
東北文化学園大学
雑誌
若手研究(スタートアップ)
巻号頁・発行日
2008

本研究では、(1)既往研究を横断的にレビューする中で、環境の保全活用に効果を持つものとしての「物語」の働きが整理されたとともに、(2)具体的な「物語(アニメ作品)」を対象にした分析によって、永く愛される環境のもつ豊かな意味とそれをもたらす物語の構造について明らかにし、(3)具体的な「環境(保育園児の散歩環境)」を対象にして、物語が生み出されるための散歩環境との親密な関わり(ふれあい)を可能にする物理的空間の質を捉えた。以上、我々の持続可能で豊かな環境づくりのための、一つの強力なツールとなるであろう「物語」についての考察が深められた。
著者
岩崎 弥生 張 平平 浮ヶ谷 幸代
出版者
千葉大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

本研究は、精神保健医療福祉資源の乏しい地域におけるメンタルヘルスの関連要因を、個人的資源および社会文化的資源の視点から明らかにして、資源の乏しい地域におけるメンタルヘルス支援の開発を検討したものである。メンタルヘルスの関連要因として、身体的健康状態、対処スキル、農業生産性、地域の世代内・世代間交流、共同体の信頼・結束などが示され、メンタルヘルス支援の開発において、コーピングスキルや地域の世代内・世代間交流などを活用・強化する対象者との協働による対話型のアプローチの重要性が示唆された。
著者
北川 亘太
出版者
京都大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2013-04-01

ドイツの労働協約システムの再編過程を、①協約自治に対する政治的支援(干渉)の度合をめぐる対立 ②将来の分配と交渉力を左右しうる手続をめぐる対立 に注目ながら調査し、研究発表と論文公表を行った。本研究の意義は、様々な利害集団の交渉力の公平性を確保するうえで適正な交渉枠組み及び政治的支援の在り方とは何かについて、ドイツにおける社会的回答を明らかにする点である。具体的な調査項目と成果は以下の2点である。(1) 労働協約システムのアウトサイダーである派遣労働者の増加に対処する金属産業労組 金属産業労組による、派遣労働者の待遇改善の取組みに焦点を当てながら、伝統的に正規労働者志向の戦略を採用してきた当該組合が2000年代規制緩和後の労働環境に見合うアイデンティティーを再構築しようと試みてきたことを明らかにした。くわえて、当該組合が、企業が派遣労働を活用するというこの労働環境を所与としたうえで、雇用形態が多様化する中で求心力を高めようと試み、一定の成果を挙げたことを明らかにした。この研究を、『大原社会問題研究所雑誌』に査読論文として公開した。(2) 一般法定最低賃金導入までの論争 2013年連立協定において導入が決定した一般法定最低賃金をめぐる、過去20年間の社会運動と政策論争を概観した。論争での焦点は、①協約自治に対する政治的介入の度合 ②最低賃金の導入が雇用に与える影響 であった。本研究は、①について、政治的妥協の結果、代表的な2つの案の中間に帰結したこと、②について、経済研究機関の研究蓄積の結果、諸々の利害集団の見解が、雇用に対する大きな悪影響は考えにくいという認識に収斂したことを明らかにした。この研究を、Kyoto Economic Riviewに英文査読論文として公開した。
著者
井上 克巳 坂間 千秋
出版者
国立情報学研究所
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2014-04-01

時間的に変化する離散系を標準論理プログラムで記述し、その上での帰納推論方式を新たに考案し、状態遷移規則を学習するための方法論を提案する。基本方式として状態間の変位からブーリアンネットワークの状態遷移規則を自動的に学習するLFITを提案し、これをベースに様々な効率化や拡張方式を開発した。効率化にはBDDによる簡約化やトップダウン・アルゴリズムが、拡張には遅延効果・多値ドメイン・確率遷移を有するネットワークと非同期式更新が含まれる。LFITの応用では、遺伝子制御ネットワークやセルオートマトン学習、ロボットの行動規則学習、論理を自動的に学習する論理発見に適用した。
著者
大久保 茂男
出版者
高知女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2000

中重核領域における典型としてα-^<90>Zr間の相互作用が低いエネルギー領域におけるα粒子散乱の解析から調べられ,この質量領域においても予想外に吸収が強くなく,ポテンシャルを内部領域まで決定できることが示された。この相互作用をもちいて^<94>Moの基底帯の構造がクラスター模型で理解できることが示された。^<48>Crの基底回転帯でみられるバックベンディングのメカニズムおよび閾値付近におけるαクラスター構造が半微視的直交条件2αクラスター模型で明らかにされた。α-^<12>C散乱が低いエネルギーから高いエネルギーまで,^<12>Cに微視的波動関数をもちいたチャンネル結合法で系統的に解析され,フォールディング・ポテンシャルの有用性が示された。α-^<12>C間相互作用と虹散乱のエアリー構造から^<12>Cの第2励起0^+状態の3α粒子ボース・アインシュタイン凝縮が議論された。αクラスターに関係した研究の成果をふまえ,重イオンを含む核間相互作用とクラスター構造の研究が展開された。^<16>O+^<16>O散乱など虹散乱のエアリー構造のメカニズムが内部波・外部波の視点で分析され明らかにされた。気象虹と核虹の類似性と異質性がLunenburgレンズの概念をもちいて明らかにされた。核虹のエアリー構造の理解が低いエネルギー領域,(準)束縛状態における複合系のクラスター構造の解明に大きな役割を果たすことが示された。虹散乱の研究から^<32>Sにおいて^<16>O+^<16>Oクラスターバンド構造が存在することおよびこれらは3本存在しバンド状態は分散していること,もっとも低いN=24バンドは超変形構造をしていることが明らかにされた。典型核において超変形とクラスター構造の関係が明らかにされ,クラスター構造研究はより高い段階へと発展する可能性が開かれた。典型核^<32>S以外において,^<28>Siにおける^<16>O+^<12>Cクラスター構造と超変形の関係が論じられた。