著者
大日向 耕作
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

多成分からなる食品を摂取すると消化管酵素により分解され膨大な分子種が生成する。これまで我々はペプチド構造-活性相関情報を基盤に膨大な分子種を含むペプチド混合物から生理活性ペプチドを効率的に探索し、一群の生理活性ペプチドが存在することを明らかにした。さらに本研究では、中鎖ペプチドの経口投与により強力な神経調節作用を示す場合があることを見出した。これらの中鎖ペプチドは、吸収を前提とした作用機構とは異なり、まず、消化管に作用し、求心性迷走神経を介し、あるいは体液性に、中枢へとペプチドシグナルが伝達されると考えられる。食品タンパク質に由来する中鎖ペプチドによる神経調節作用の新しい腸―脳連関を解明した。
著者
三宅 義明
出版者
東海学園大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

香酸カンキツ果汁のストレス緩和作用の追究にあたり、まず、地域特産の香酸カンキツに含有する機能性成分の特徴を調べた。新姫(三重県熊野地区特産)からフェルラ酸誘導体を、マイヤーレモンから4-ヒドロキシケイ皮酸誘導体の新規抗酸化物質を見出した。各香酸カンキツの抗酸化活性は、ユーレカレモン、スダチ、新姫が高かった。エルゴメーターによる運動中にユーレカレモン果実粉末で調製されたレモン果実水を摂取した場合、運動後の休憩で自律神経の副交感神経活動が活発になることが見られ、ストレス緩和作用が示された。レモン果実に含まれるフラボノイド、香気成分が影響していると示唆された。
著者
安達 正明 榎本 文彦 秋田 純一
出版者
金沢大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

振動下にある垂直走査型干渉計の光路差変化をレーザでリアルタイムかつ高速高精度に計測する手法を開発し,変化情報を基に一定の位相変化終了後毎にLED光を瞬間点灯させ干渉縞を撮影した.この手法で計測した形状結果を分析しさらなる高精度化には点灯 & 露光中に加わる振動もその影響を補正する必要を見出し,露光中の光路差変化履歴を基に振動影響を補正して位相を抽出する方法も開発し,その効果を実験で確認した.
著者
関口 和雄 後藤 順久 吉田 直美 生江 明 新谷 司 高橋 紘一 小椋 喜一郎 李 忻 土屋 昌
出版者
日本福祉大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

「介護・福祉の経営学」の構築を目指し、サービスを提供する事業者の経営とマネジメントについて4つの焦点に絞って研究を行った。1つに、制度・政策と地域への環境対応における不確実性と不安定が揺らぎもたらし、経営の基盤の確立と自立が求められている。2つに、質の高いサービスの提供については、介護職をはじめ人材の育成と職場づくりが鍵になっている。3つに、介護・福祉人材の確保では、何よりも高い離転職に対応し定着をはかるため、職場における精神的サポートや学習支援、仕事の達成感や承認、キャリアビジョンの展望が大きく影響していた。4つに、財務・会計面について、会計ルールの確立、行政・監事・外部監査の整備といった基本的な問題が山積していた。
著者
渡辺 明日香
出版者
共立女子短期大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-28

ストリートファッションの調査・分析を基軸とし、日本のファッションの特異性と海外発信性について検証を行った。定点観測の写真資料の集積、写真の整理およびデジタルデータ化、日本の第二次大戦後から現在に至るストリートファッションの史的研究を遂行することで、ファッションの概念変化とメカニズムの変容を究明した。これらの結果、ストリートファッションがクールジャパンの対象となった理由は、従来のファッション変容に関わる文脈やファッション・システムとの無関連性にあることが明らかとなった。
著者
小玉 亮子
出版者
横浜市立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

本研究は、1920年代において、家庭教育がどのように議論され、どのような役割が求められたのかを、明らかにすることを目的とした。このことは、列強の競合する時代に、国民国家としてのアイデンティティの強化が求められるなかで、近代家族がどのような役割を果たしたのかを分析するものである。本研究におけるキーワードは<母の日>である。1920年代という時代に、国際的にどのように議論されたのか、また国民国家内部でどのように議論されたのか、多くの国家で母の日が制度化されていく際の議論をその相互の関連性を検討した。母の日が創出されたアメリカでの議論、国民国家の再建という課題をおったドイツにおいて母の日が果たした役割を、ドイツとアメリカとの緊張関係に注目しながら分析し、国民国家と近代家族の緊張関係を明らかにすることを試みた。研究成果は大きく分けて二部構成となっている。第一部では、1920年代前後における母の日と家族に関する議論をまとめた。Kodama, 2003のMather's Dayの論文は、2003年にミネソタ大学比較女性史ワークショップにおいて報告したものを、ワークショップ参加者の助言をふまえて再構成した。小玉2006の「母の日」の論文では、議会資料を追加して議論をすすめ、小玉2007の「父の日」の論文は、父の日の成立過程を明らかにすることにより、いっそう母の日の役割が浮かびあがることから執筆されたものである。さらに、小玉2004の「少子化」に関する論文は、ドイツで母の日が普及する背景となった、出生率低下という社会問題を検討したものである。さらに、小玉2007の「ヴァイマル憲法」の論文は、母の日がドイツで普及したヴァイマル期の国制のなかで、家族と母性に関する議論を分析した。第二部では、親子関係、家族関係に関する、現代日本における言説分析をおこなった。1920年代の比較家族史研究は、現代日本における家族分析を考慮することによりいっそう現代的意義が浮き彫りになると考えている。今日的問題を射程にいれて歴史を検討する、その試みのための現代分析の論文も執筆した。
著者
北崎 充晃
出版者
豊橋技術科学大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2010

本研究では,自分に向かって歩いてくる他者の知覚について,その視覚情報処理の機能と仕組みを解明し,人とロボットがお互いに歩き回るようなダイナミックな場面で潜在的で自動的なコミュニケーションを成立させる要因を特定し,人とロボットが自然に共生できるシステムの提案を行う。特に,潜在的コミュニケーションに深く関与する「顔」や「しぐさ」の情報を操作し,歩行者(人やロボットなど)の方向知覚に及ぼす影響を心理物理学的手法によって研究する。本年度も昨年に引き続き,歩行者刺激をコンピュータでリアルタイムに制御して広視野スクリーンあるいはCRTディスプレイに提示し,観察者の行動反応を心理物理学的手法で測定した。昨年度,多数の歩行者のうち自分に歩いている者あるいは外れていく者を検索する課題を被験者に課し,歩行方向の差にとって,向かってくる歩行者が見つけやすい社会的知覚モードと,外れていく歩行者を見つけやすい一般物体知覚モードの2つがある可能性を発見した。これについて種々のロボット刺激および光点刺激(バイオロジカルモーション),そしてそれらの倒立刺激を用いてさらなる検討を行った結果,ヒトの外観に近い刺激やヒト性に関与する特性が強いほど,社会的知覚モードが見られやすいことを報告した。一方,ヒト刺激の表情および音声に情動を含めた刺激では有意な差は得られず,情報付与の方法の再検討を行っている。さらに,自己の移動イメージを脳波からデコーディングする実験を行い,多チャンネル計測を用いれば単一試行脳波からでもある程度の推定が可能なこと,その際スパースコーディングの適用が効果的であることを示した。これらの研究成果から,自然に行き交えるロボットの設計指針として,ある程度ヒトらしい外見(特に四肢があること)をしていること,およびその動作パタンがヒトらしいことが正確な歩行方向知覚に必要であり,顔の向きは効果の強い知覚への伝達情報であることが示唆された。
著者
梅野 圭史
出版者
鳴門教育大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2007

昨年度の研究結果より、「体育授業の場における葛藤価値検査」の診断結果は、体育授業改善の指標になり得る可能性の高いことが推察された。とりわけ、「体育授業に対する価値観」が形成される小学4年生において両者の密接度の高いことが示されたことは、この時期に葛藤内容を多分に含んだ運動教材を導入すれば、彼らの道徳性の発達に大きく貢献するものと考えられる。そこで今年度は、小学校4学年3学級を対象に「スポーツか、暴力か」の葛藤を含みもった「スポーツチャンバラ」を実践し、単元前後の比較より葛藤価値判断力がどのように変容するのかについて検討した。その結果、4段階からなる葛藤価値検査の診断結果に対して、χ2検定を施したところ、単元前と単元後の間に有意差は認められなかった。しかし、S3段階とS2段階を境に、EX-S3段階とS2-S1段階とに大別した場合、単元後に葛藤価値判断力が有意に高まるとする結果が得られた。これには、学習者行動分析における「従事」の「間接的活動」が関係していることが認められ、スポーツチャンバラの審判活動に積極的に関与できるかどうかが葛藤価値判断力に影響を及ぼすものと考えられた。以上のことから、スポーツチャンバラにおける審判活動が積極的に展開できれば、葛藤価値判断力が高まることが認められるとともに、葛藤価値検査の有用性が確かめられた。
著者
南角 学
出版者
京都大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2010

【目的】人工股関節置換術(THA)において,術前の痛みがなくなった患者が,次に期待することは「きれいに歩くこと」や「杖なしで歩くこと」である.しかし,THA術後の3次元歩行解析を行った報告では,中殿筋機能不全などの股関節機能低下に起因する姿勢制御や歩行障害が指摘されており,術後早期から歩行障害に対する有用なトレーニング方法の開発が急務となっている.本研究の目的は,臨床で実施されることの多い荷重位でのトレーニングの筋電図学的分析を行い,運動機能の向上のためにより有効なトレーニング方法を検討することである.【方法】対象はTHAを施行され術後4週が経過した16名とした.測定課題は,術側を支持脚とした前方への昇段動作,側方への昇段動作,片脚立位,および快適速度での歩行の4条件とした.測定筋は術側の大腿直筋(RF),中殿筋(Gm)とし,測定には表面筋電図計を使用した.各動作課題の筋活動を二乗平均平方根により平滑化し,最大収縮時の筋活動を100%として正規化した.統計には,Friedmanの検定後に多重比較法を用いた.【結果と考察】RFの筋活動は,前方への昇段動作46.8±25.1%,側方への昇段動作59.4±34.3%,片脚立位25.0±15.8%,歩行30.7±20.5%であり,多重比較の結果から,側方への昇段動作において他の3つの動作に比べ有意に高い値を示し,前方への昇段動作では片脚立位,歩行に比べ有意に高い値を示した.また,各動作のGmの筋活動は,前方への昇段動作40.6±17.6%,側方への昇段動作55.1±24.6%,片脚立位60.7±28.2%,歩行48.5±23.9%であり,多重比較の結果から,側方への昇段動作において前方への昇段動作に比べ有意に高い値を示し,片脚立位において前方への昇段動作と歩行に比べ有意に高い値を示した.以上から,THA術後早期における荷重位での筋力トレーニングとして,側方への昇段動作は運動機能の向上のために最も有効なトレーニング方法であることが示唆された.
著者
雙田 珠己 干川 隆
出版者
熊本大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

本研究の目的は3つある。 1.健常者がズボンを着衣する時の生理的負担を評価する 2.運動機能障害者の着脱動作を分析し、障害別に動作特徴を把握する 3.障害に応じてズボンを修正し、修正効果を確認する。その結果、ズボンの着衣動作は自律神経の働きに影響することが示唆された。さらに、脳性マヒ、二分脊椎、脊椎損傷の3患者について、ズボンの着脱動作を分析し、脳性マヒの症例についてはズボンの修正を行った。
著者
齋藤 直樹
出版者
盛岡大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

本研究から得られた第一の成果は、「根源的な身体衝動」をめぐるニーチェの一連の思想に「言語論」的な観点からアプローチすることを通じて、ニーチェの哲学を「情動的言語使用の哲学」として新たな視点から体系的に再構成したことである。また第二の成果として、合理的な言語使用を前提とした「他者の了解」から身体的共感に根ざした「他者の承認」へと問題の中心をシフトさせつつある現代の「コミュニケーション理論」の展開、とりわけその「承認論的転回」をめぐる議論との比較検討を通じて、「情動的言語使用の哲学」が持つ現代的な意義を明らかにしたことが挙げられる。
著者
奥野 裕子
出版者
大阪大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2010

学童期の高機能広汎性障害と診断された子どもとその保護者を対象に、Problem-Solving Training(PST)を実施し、PST前後で子どもに対しては「対人的自己効力感尺度(松尾・新井, 1998)」、保護者に対しては「家族の自信度アンケート」「子どもの行動チェックリスト: Child Behavior Checklist(CBCL)」を指標にその有用性を検討した。結果として、子どもの外向的問題行動、母親の子どもに対する対応への自信に改善がみられた。
著者
斎藤 一久
出版者
東京学芸大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

ドイツ連邦憲法裁判所の判例において、基本権の介入段階で、スティグマの効果を考慮する判例がいくつか出された。これはアメリカ憲法理論における法の表現的側面との類似性が見出しうる。しかしどのような種類の人権がその射程にあるのかについては未だ明確ではない。日本においても、政府の情報提供、国旗・国歌問題、生活保護の問題では、スティグマ効果を取り入れた基本権の理論構築も可能であると考えられる。
著者
吉田 正尚
出版者
福島県ハイテクプラザ
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2007

ポリエチレン(PE)等のポリオレフィン(PO)類は一般に表面不活性であり表面修飾が非常に困難な材料である。しかしシラン系結合剤(3-ルメタクリロキシプロピルトリエトキシシラン)と微粒子を含んだ攪拌液相中にPO基材を浸漬し表面に微粒子を固定していく独自の手法であれば表面修飾が可能である。今回は何故表面修飾が可能なのか更に考察した。1.PO基材に表面修飾出来るシラン系結合剤の化学的条件を調べた。即ちシラン系結合剤分子の末端結合基を(a)メタクリロキシ基(b)エポキシ基(c)アミノ基(d)イソシアネート基の4種類のシラン系結合剤1%水溶液中にタングステン(W)微粒子及びPE平板を同時に投入し時間毎に基材表面に固定されるW量を定量した。その結果W量は結合剤(a)を用いた時が最多であり他3種の結合剤は殆ど固定されなかった。故に結合剤の結合基はPO基材の表面修飾に大きな影響を与えることがわかった。2.表面修飾可能なPO基材の物理的条件を調べた。即ち走査型プローブ顕微鏡によりPO基材の表面状態を評価した。可能なPE基材(高結晶且つ顔料無)の表面には板状結晶やラメラ晶などの高分子の整列部分が多数存在した。一方困難なPE基材(低結晶又は顔料有)にはそれらは見られなかった。3.溶媒極性を変化させ本現象の駆動力について検討した。即ち溶媒を水、メタノール、エタノール、n-プロパノール、n-ブタノールの順に極性低下させた時の各溶媒のW量は水が最多であった。また微粒子を投入せず結合剤のみ投入した場合の(a)〜(d)の各結合剤自体の固定量は結合基が非極性基である結合剤(a)が最多であった。このことは結合剤(a)は水分子間の水素結合ネットワークに入れず微粒子を伴いつつ水からはじかれる形で同じ非極性のPE基材表面に集まる現象即ち疎水性相互作用により微粒子固定されるものと推察された。
著者
岡 夏央
出版者
岐阜大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

核酸の生合成中間体であるカルボニル基がリン酸化されたヌクレオチドや、そのリン酸部位を修飾した化学修飾体の合成法の開発に取り組み、独自に開発した酸性活性化剤CMMTを応用することで、スピンラベルや蛍光色素を始めとする種々の官能基を持つリン酸基をイノシンのカルボニル基に導入する手法を確立した。更に、これらのリン酸エステルの生体内酵素に対する安定性について評価し、速やかに加水分解されることが分かったため、酵素耐性に優れたチオリン酸基をイノシンのカルボニル基に導入する手法の開発を試み、これを確立した。これらの化合物は、核酸の生合成経路を標的とする分子プローブや分子標的薬としての応用が期待される。
著者
稲本 隆平
出版者
香川大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

前庭と蝸牛の内外リンパ静水圧は同程度で、イソプロテレノールは前庭及び蝸牛の電位をそれぞれ変化させることなく、有意に前庭と蝸牛の内外いリンパ静水圧を上昇させた。イソプロテレノールによる前庭の内リンパ静水圧の最大変化量は蝸牛と比較して有意に小さかった。内リンパ嚢を閉塞した動物では、前庭内リンパ静水圧におけるイソプロテレノールの効果は蝸牛と同様に消失した。前庭と蝸牛では、イソプロテレノールは異なった方法で内リンパ静水圧を上昇させていると考えられる。
著者
新山 陽子 金 成学 KIM SongGak
出版者
京都大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2002

本研究の目的は、米国の食品安全管理システムを取上げ食品安全がどのようにコントロールされているかを総合的に分析・検証したうえで、日本のシステム構築への提言を行うことである。具体的な課題として以下の4つを設定した。1.安全性管理システムとそれを支える経済理論を検討する。2.食品安全管理の新しい手法として注目されている「リスクアナリシス」の手法について、とくに食肉を対象により詳細な実証分析を行い、その導入の到達点と問題点を解明する。3.以上にもとづいて、アメリカの食品安全管理システムの経験から得られる、日本の食品安全確保システム構築への知見をまとめる。4.食肉を対象にリスクアナリシスの手法にもとづく安全管理の基本モデルの提示を試みる。採用期間中は、文献と国内外の現地調査をもとに分析を行い、その成果を雑誌論文として公表した。主要な内容としては、まず、白米両国の食肉安全管理システムの検証として、安全管理システムの構造とそれを支える経済理論について検討した。ここでは、食肉安全管理体系を、民間戦略/自主的政策、法律による直接規制、法的インセンティブ政策という3つに整理し、食肉そのものの安全確保と、安全性情報の提供・管理という2つの側面に焦点をあてた。また、リスクアナリシスの手法について、詳細な実証分析を行い、その導入の到達点と問題点を解明した。具体的には、リスク査定結果とリスク管理政策を検討し、生産・流通の各段階においてリスク管理システムがプラン通り厳格に実施・運営されているか、また、その結果として、病原性微生物やBSE等への対策が確実に成果を上げているかを検証した。また、アメリカのリスクアナリシス、トレーサビリティ、HACCPなどに対する考え方・概念を整理し、EUや日本と比較しながら、安全管理システムのあり方をめぐる論点を明らかにした。あわせて、食肉に関する日米の安全性基準の違いとその根拠、WTO・SPS協定との整今性を検討し、それをもとにした「安全性基準の国際的整合」のあり方への課題提起を行った。
著者
片岡 啓
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

インド仏教論理学における語の意味の理論については,近年,資料状況が変わりつつあり,それに伴い従来の研究を見直すべき時期に来ている.報告者は,仏教の伝統の外側から仏教の意味論を見直すために,報告者自身がサンスクリット語写本に基づき批判校訂した『論理の花房』(紀元後9世紀後半頃)というバラモン教文献に基づきながら,そこにおける仏教説批判を詳細に検討することを研究課題とした.研究成果の中心となるのは,『論理の花房』における語意論,特に,仏教説批判の箇所である.三篇の訳注研究を発表するとともに,関連する研究論文五篇,および,批判校訂一篇を学会誌・紀要に掲載した.
著者
村瀬 晃平
出版者
近畿大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

カメラ画角や位置をコンピュータ制御し工場内での協調的な重労働動作を捕捉できる,三次元動作計測システムを開発した.下肢の屈曲動作計測をX線透過装置診断と比較したところ,本システムは作業着着衣時でも良い追従性を有することが証明された.加えて,膝関節の有限要素モデルを作成し非線形構造解析シミュレーションを行なった.靭帯の有無や少しの屈曲角度が荷重支持機能や周辺の最大応力値の増加に強く関与することを明らかにし,協調作業による微妙な姿勢変化が生体内の負担に大きく影響を与えていることが示唆された.
著者
グルゲ キールティ・シリ 山下 信義 秋庭 正人
出版者
独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2012-04-01

2014年にチェンナイより採集した河川水・底質試料について医薬品及び有害化学物質の分析を行った。先進国では過去50年以上にわたって汚染が進行している有機過フッ素化合物や有機シロキサンについては、インドの汚染は始まったばかりであることが柱状底質試料を用いた歴史的復元により明らかとなった。医薬品ではイブプロフェンの濃度が最も高く、薬剤耐性菌への関与が疑われるキノロン剤のオフロキサシン濃度が次いで高濃度であった。また、同じ底質試料の変異原性強度の空間的と鉛直分布を、コメットアッセイを用いて、多環芳香族炭化水素(PAHs)、およびそのハロゲン化物を指標として判定した。チェンナイ市・クーム川の底質は石油起源のPAHsによる高度な汚染が検証された。底質の変異原性の強さは、PAHsの汚染度に関連していた。また、4種類の下水汚泥の抽出物を雄性マウスに摂取させ、肝臓の遺伝子発現の変化をマイクロアレイ解析した。200以上の遺伝子について、それぞれの下水処理施設に特有な異なる誘導が見いだされ、排水の性質は排出元に大きく影響されることが示唆された。さらに、これまでに分離した446株の大腸菌のうち、セフォタキシムやイミペネムといった人の治療に汎用されるβ-ラクタム剤に耐性を示す169株(38%)の薬剤耐性因子等を詳細に解析した。12の抗菌剤に対する薬剤感受性を調べたところ2剤を除いて50%以上の耐性菌分布率を示した。また、全ての菌は3剤以上に耐性を示し、最も分布率が高かったのは10剤耐性菌(25%)であった。β-ラクタマーゼ遺伝子型別のうち、CTX-M型の分布率が66%と最も高く、次いでTEM、OXA、CIT型の分布率がそれぞれ約40%であった。無作為に選んだ36の環境水サンプルに由来する49プラスミドの全塩基配列を解読し、β-ラクタマーゼ遺伝子を含む各プラスミドの系統と薬剤耐性遺伝子の分布を明らかにした。